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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G06F
管理番号 1062310
審判番号 審判1999-35316  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-02-12 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-06-22 
確定日 2001-12-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第2570239号発明「実装部品検査用データ生成方法およびその方法の実施に用いられる実装部品検査装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第2570239号(平成3年7月30日出願、平成8年10月24日設定登録)の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)
[請求項1](本件発明1)
被検査基板上に実装された複数の部品につき、それぞれの実装品質を検査するのに必要な実装部品検査用データを生成するための実装部品検査用データ生成方法であって、
複数の部品種についてそれぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータと、各部品種毎にその部品種を識別するための識別情報とライブラリデータとを対応づけるための変換テーブルとを、あらかじめ記憶しておき、
前記被検査基板上の各部品について、その部品種を識別するための識別情報,実装方向,および実装位置を外部より入力した後、この入力された識別情報および前記変換テーブルを用いてその部品に該当するライブラリデータを読み出して前記実装方向および実装位置と合成することにより、前記実装部品検査用データを生成することを特徴とする実装部品検査用データ生成方法。
[請求項2](本件発明2)
被検査基板上に実装された複数の部品につき、それぞれの実装品質を検査するのに必要な実装部品検査用データを生成するための装置であって、
前記被検査基板上に実装された各部品について、それぞれその部品種を識別するための識別情報,実装方向,および実装位置を、それぞれ外部より入力して記憶する第1の記憶手段と、
複数の部品種について、それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを記憶する第2の記憶手段と、
前記各部品種について、それぞれその部品種を識別するための識別情報とライブラリデータとを対応づけるための変換テーブルを記憶する第3の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶される各部品の識別情報と前記第3の記憶手段に記憶される変換テーブルとを用いて、被検査基板上の各部品毎に、その部品種に該当するライブラリデータを前記第2の記憶手段から読み出した後、このライブラリデータと前記実装方向および実装位置とを合成して前記実装部品検査用データを生成する合成手段とを備えて成る実装部品検査用データ生成装置。

2.請求人の主張
本件特許の請求項1及び2に係る特許発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これに適用される平成5年改正前の特許法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきであると主張し、証拠方法として、甲第1号証(特開昭62-190448号公報)、甲第2号証(EDPS入門シリーズ5「新版システム設計入門」日本電気情報処理教育部編(第13刷昭和57年5月15日日本能率協会発行)141,149〜152頁)及び甲第3号証(Proceedings of the 1st European Test Conference,1989,IEEE p.229〜237)を提出している。

3.甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明
[甲第1号証]
甲第1号証には次の記載がある。
(ア)「部品が実装された被検査基板を撮像して得られる像を処理して前記被検査基板上の部品を検査する部品実装基板の検査装置において、前記被検査基板上に載せられる部品の基準データを部品毎に予め記憶している辞書部と、前記被検査基板上に実装される部品の位置、種類に応じて前記辞書部から部品の基準データを読み出して基準基板情報を作成する制御部と、・・・(中略)・・・とを備えたことを特徴とする部品実装基板の検査装置。」(特許請求の範囲)
(イ)「本発明は、部品が実装された被検査基板を撮像して得られる像を処理して前記被検査基板上の部品の有無,位置ずれ等を検査する部品実装基板の検査装置に関する。」(第1頁左下欄第19行から右下欄第2行)
(ウ)「このような自動マウント装置等を用いる場合には、マウント後にプリント基板をチェックして、このプリント基板上の正規の位置に正当なチップ部品が正しい姿勢(位置,方向)でマウントされているかどうか、また脱落がないかどうかを検査する必要がある。」(第1頁右下欄第9〜14行)
(エ)「第8図に示すように基準基板となる基準プリント基板2-1の種類等に関するデータおよびこの基準プリント基板2-1上に載っている各部品1の配置位置,取付け姿勢,形状,色,反射率等に関するデータおよびこれらの各部品1の検査処理手順等に関する情報(データ)を記憶する記憶部4と、」(第2頁左上欄第7〜13行)
(オ)「第1図は、この発明による部品実装基板の検査装置の一実施例を示すブロック図である。
この図に示す部品実装基板の検査装置は、基準プリント基板16-1に載せられている各部品19-1〜19-nの位置データと、種類データとをキー入力すれば、これらの種類データに基づいて辞書部35から各部品19-1〜28-nに関する形状データD3と、チップサイズデータD4と、2値化閾値D5とが読み出されて処理テーブル37(第5図参照)が作成され、この処理テーブル37と、キー入力された処理手順とに基づき前記基準プリント基板16-1(または被検査プリント基板16-2)の画像が処理されてパラメータが抽出されるように構成されたものであり、」(第3頁右上欄第2〜15行)
(カ)「情報入力部27は、基準プリント基板16-1の種類(例えば、基板ナンバ等)およびこの基準プリント基板16-1に載っている部品19-1〜19-nの種類,部品数,位置等に関するデータや処理手順(例えば、パラメータを抽出するときの手順)等の操作情報などを入力するためのキーボードやマウスとを備え、」(第3頁右下欄第11〜17行)
(キ)「処理部12は、画像入力部22と、画像処理部23と、メモリ24と、判定部25と、制御部28と、辞書部35とを備え、ティーチングモードのときに、前記情報入力部27から供給される部品19-1〜19-nの種類データを用いて前記辞書部35の部品辞書36(第3図参照)から各部品19-1〜19-nの形状データD3と、チップサイズデータD4と、2値化閾値データD5とを読み出して、前記形状データD3と、チップサイズデータD4とから第4図に示すようなウインド31-1〜31-nを作成するとともに、前記情報入力部27から供給される位置データと、前記各部品19-1〜19-nに対するウインド31-1〜31-nと、2値化閾値データD5とを対応させた処理データ37(第5図参照)を作成した後、この処理テーブル37および前記情報入力部27から供給される処理手順などを用いて、前記撮像部11から供給される基準プリント基板16-1の画像信号を処理して各部品19-1〜19-nのパラメータ(基準パラメータ)を抽出して記憶する。」(第4図左上欄第2行から右上欄第2行)
(ク)「辞書部35は、第3図に示す如く検査対象となる全ての部品に関するメーカデータD1,型式データD2,部品形状データD3,チップサイズデータD4,2値化閾値データD5等が記された部品辞書36を備えており、前記制御部28などからデータ要求信号を供給されたときに、前記部品辞書36からこのデータ要求信号で要求されるデータを読み出して、これを前記制御部28などへ供給する。」(第4図左下欄第2〜10行)
(ケ)「またメモリ24は前記制御部28から前記基準プリント基板16-1の画像データ,この基準プリント基板16-1上にある各部品19-1〜19-nのパラメータ(基準パラメータ),位置データ,種類データや処理手順,処理テーブル37などを供給されたときに、これらを記憶するものであり、前記制御部28から転送要求があったときに、この基準パラメータなどを前記画像処理部23や前記判定部25などへ供給する。」(第4頁右下欄第6〜14行)
(コ)「制御部28は、前記情報入力部27から入力された各部品19-1〜19-nの種類データに基づいて前記辞書部35から部品形状データD3と、チップサイズデータD4と、2値化閾値データD5とを読み出すとともに、これらの部品形状データD3と、チップサイズデータD4とに基づいてウインド31-1〜31-nを作成し、この後前記情報入力部27から入力された各部品19-1〜19-nの位置データと、前記ウインド31-1〜31-nと、2値化閾値データD5とを対応させた処理テーブル37(第4図参照)を作成したり、前記画像入力部22と、画像処理部23と、メモリ24と、判定部25と、辞書部35を制御してこれらをティーチングモードで動作させたり、検査モードで動作させたりするものであり、これら各モードのときに得られたデータ、処理テーブル37などは画像処理部23や定結果出力部26などへ供給される。」(第5頁左上欄第4行から右上欄第1行)
(サ)「まず、ティーチングモードにおいては第6図(A)で示されるフローチャートのステップST5が実行されて装置各部がティーチングモードにされるとともにステップST6で情報入力部27から基準プリント基板16-1の基板ナンバと、この基準プリント基板16-1上に載せられている各部品19-1〜19-nの位置データ,種類データ(メーカ名と、型式名)と、処理手順等とが入力される。
・・・(中略)・・・この後、制御部28はステップST8で辞書部35から前記各部品19-1〜19-nの種類データに、各々対応する部品形状データD3と、チップサイズD4と、2値化閾値データD5とを読み出すとともに、これらの各部品形状データD3と、各チップサイズデータD4とからウインド31-1〜31-nを作成し、この後ステップST9でこのウインド31-1〜31-nと、前記各部品19-1〜19-nの位置データと、各2値化閾値データD5とから第4図に示すような処理テーブル37を作成し、これを前記メモリ24に記憶させる。この後、制御部28はステップST10でこのメモリ24から前記処理テーブル37と処理手順とを読み出して、これを画像処理部23へ供給する。
・・・(中略)・・・
次いで、X-Yテーブル部10のテーブル15上に基準プリント基板が載せられれば、・・・(中略)・・・このTVカメラ20に基準プリント基板16-1を撮像させるとともに、画像入力部22〜判定部25を制御して前記TVカメラ20によって得られた前記基準プリント基板16-1の画像信号を画像入力部22によって画像データに変換させ、ステップST12でこの変換結果(基準基板画像データ)を画像処理部23へ転送させ、パラメータ抽出ルーチン40を実行させる。
このパラメータ抽出ルーチン40では、画像処理部23は第6図(B)に示すステップST12で前記処理テーブル37の位置データ(X1,Y2)〜(Xn,Yn)と、各ウインド31-1〜31-nとを用いて前記基準基板画像データから各部品19-1〜19-n部分(部品画像)を切り出す。
次いで、画像処理部23は、ステップST13で各部品19-1〜19-nに対する2値化閾値データD5によって前記各部品画像を2値化して、この後ステップST14でこの2値化結果からパラメータ(基準パラメータ)を抽出し、これを基準パラメータファイルとしてまとめてメモリ24に記憶させる。」(第5頁左下欄第2行から第6頁左上欄1第8行)
(シ)「また上述した実施例においては、メーカデータD1と、型式データD2と、部品形状データD3と、チップサイズデータD4と、2値化閾値データD5とを備えた部品辞書37を使用しているが、他のデータ、例えば全ての部品に関する基準パラメータ、処理手順等を備えた部品辞書を使用するようにしても良い。
このようにすれば、情報入力部27から基準プリント基板16-1上に載せられる部品19-1〜19-nの位置データと、種類データとを入力するだけで、この基準プリント基板16-1に関する全てのデータを入力することができる。」(第6頁左下欄第20行から第7頁左上欄第11行)

甲第1号証の上記記載事項(ア)(イ)等から、甲第1号証記載の発明も、被検査基板上に実装された複数の部品につき、それぞれの実装品質を検査するのに必要な実装部品検査用データを生成するものである。
そして、上記記載事項(ク)の辞書部に関する記載と、上記記載事項(サ)及び(シ)から、甲第1号証には、「複数の部品の種類データ(メーカ名と、型式名)についてそれぞれ部品形状データ,チップサイズデータ,2値化閾値データ等を対応づけた部品辞書をあらかじめ記憶しておき、被検査基板上の各部品について、各部品の位置データ及び部品の種類データを外部から入力した後、入力された部品の種類データを用いてその部品に該当する部品辞書を読み出して前記位置データと合成することにより実装部品検査用データを生成する実装部品検査用データ生成方法」が記載されている。(甲第1号証記載の発明1)

また、上記記載事項(カ)(キ)(ケ)から、情報入力部27から入力された部品の種類,位置等に関するデータはメモリ24に記憶されるものであり、また、上記記載事項(ク)の辞書部に関する記載、及び上記記載事項(オ)(キ)(コ)の制御部に関する記載などから、甲第1号証には「被検査基板上に実装された各部品について、各部品の位置データ及び部品の種類データを、それぞれ外部より入力して記憶するメモリ24と、部品の種類データについてそれぞれ部品形状データ,チップサイズデータ,2値化閾値データ等を対応づけた部品辞書を記憶する辞書部35と、メモリ24に記憶される各部品の種類データを用いて、被検査基板上の各部品毎に、その部品に該当する部品辞書を辞書部35から読み出した後、この部品辞書と前記部品の位置データとを合成して実装部品検査用データを生成する制御部28とを備えて成る実装部品検査用データ生成装置」が記載されている。(甲第1号証記載の発明2)

[甲第2号証]
甲第2号証には次の記載がある。
(ス)「(2)索引順編成(インデックス・シークェンシャル編成)
索引順編成は,データを記録する部分の他に,データ・レコード中のキー項目だけを集めて記録するインデックス部分を設け,このインデックスを利用してシークェンシャル処理とランダム処理の両方を可能とした編成法である。
・・・(中略)・・・
・シリンダ・インデックス・エリア
シリンダ・インデックス・エリアには,処理要求されたキー値を持つレコードが,どのシリンダに記録されているかを示す情報が記録される。
・・・(中略)・・・」(第149〜151頁)
(セ)「(3)索引編成(インデックス編成)
索引編成は,索引順編成と同様に,データを記録する部分の他に,データ・レコード中のキー項目だけを集めて記録するインデックス部分を設け,このインデックスを利用してシークェンシャル処理とランダム処理の両方を可能とした編成法である。
・・・(中略)・・・
・主索引(メイン・インデックス)
主索引には,データ・レコードの中から取り出されたキー項目と,そのデータ・レコードが記録されているアドレス情報を持っている。
これによって,処理要求されたキー値を持つレコードが,ファイル上のどこにあるかが判別できる。
・・・(中略)・・・」(第151〜152頁)

[甲第3号証]
甲第3号証には、概ね次の記載がある。
(ソ)「ほとんどのテストプログラムの編成のための他の重要な必要条件は、デバイスの名称を変えることが可能であるということである。ある会社は、部品の名称の付け方に関するそれ独自の基準を持っているであろうから、これらの名称を、外部のソースからきたデバイスと関連させるために、ある種の名称を変えるメカニズムが必要である。」(第235頁右欄第26〜33行、訳文第3頁第17〜21行)

4.本件発明1について
[対比]
本件発明1の「部品種」について、本件明細書には、段落[0029]に「前記ライブラリ28には、あらかじめ用意された検査に関する部品種毎のライブラリデータが格納されており、各ライブラリデータは、ライブラリ名,部品種名,部品サイズ,部品色,総合検査基準,検査領域数,ウィンドウ内検査基準などの各情報を含むデータ構造となっている。」、及び段落[0034]に「変換テーブル29は検査対象である基板上の各実装部品をどの検査情報を用いて処理するかを対応づけるためのもの、すなわち前記メモリ27に格納された各実装部品についての外部データに対し、前記ライブラリ28内のどのライブラリ名のライブラリデータを割り付けるかを対応付けるためのものであって、図9にこの変換テーブル29の具体例が示してある。同図の変換テーブル29では、A,B,C,D,・・・で示すメーカ毎の部品形式に対し、RB1068などの記号で表されるいずれかライブラリ名が対応させてある。」と記載されていることから、本件発明の「部品種」とは、各部品メーカが部品の種類、形状、サイズなどに応じて決定した番号である「部品形式」とは異なり、実装部品の検査のために作成された各ライブラリデータと対応するもので、実装部品の検査の観点から一つまたは複数の「部品形式」をまとめたものと解される。
この解釈は、請求人の「本件第1特許発明の構成における「部品種」について「外観によって部品の実装品質を検査する検査装置において良否判定を行うための検査情報の内容となる、部品およびリード形状寸法等の外形的特徴によって分類付与された符号」であって、部品型式等の部品の電気的特性等によって分類付与された符号とは異なると解される。」(第二弁駁書、第3頁第10〜14行)という解釈と変わらない。

次に、本件発明1と甲第1号証記載の発明1とを対比する。
甲第1号証記載の「部品形状データ及びチップサイズデータ」は本件発明1の「検査対象部位」に相当するものであり、また甲第1号証記載の「2値化閾値データ」あるいは上記記載事項(シ)にいう「基準パラメータ」は本件発明1の「検査基準」に相当するものであるから、甲第1号証記載の「部品辞書」は本件発明1の「ライブラリデータ」に対応する。
また、甲第1号証には「部品の実装方向」を入力することは明記されていないが、上記記載事項(イ)に「チップ部品が正しい姿勢(位置,方向)でマウントされているかどうか、」また上記記載事項(ウ)に「各部品1の配置位置,取付け姿勢・・・に関する情報(データ)を記憶する」と記載されており、さらに部品が正しく配置されているかどうかには単に位置だけでなく方向も必要なことは明らかであるから、甲第1号証記載の外部より入力される「部品の位置データ」は「実装方向」及び「実装位置」のデータを含むものと解される。そうすると、甲第1号証記載の「部品の位置データ」は本件発明1の「実装方向および実装位置」に相当する。
してみると、両者は次の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
被検査基板上に実装された複数の部品につき、それぞれの実装品質を検査するのに必要な実装部品検査用データを生成するための実装部品検査用データ生成方法であって、
複数の部品についてそれぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを、あらかじめ記憶しておき、
前記被検査基板上の各部品について、その部品を識別するための識別情報,実装方向,および実装位置を外部より入力した後、この入力された識別情報を用いてその部品に該当するライブラリデータを読み出して前記実装方向および実装位置と合成することにより、前記実装部品検査用データを生成する実装部品検査用データ生成方法。
(相違点)
本件発明1の「ライブラリデータ」が、複数の「部品種について」それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたものであり、その結果、本件発明1が、「各部品種毎にその部品種を識別するための識別情報とライブラリーデータとを対応づけるための変換テーブル」を有しているのに対し、甲第1号証記載の発明の「ライブラリーデータ」は、複数の「部品の種類データ(メーカ毎の部品形式など)」についてそれぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたものであり、その結果、甲第1号証記載の発明が「変換テーブル」を有しない点。

[相違点の検討]
請求人は審判請求書で、上記相違点は甲第2号証及び甲第3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているので、この点について検討する。
甲第2号証には、上記記載事項(ス)(セ)から、ファイル編成において、インデックス部分を設け、このインデックスを利用してデータにアクセスすることが記載されている。しかし、このインデックス部分は「索引」であって「キー項目」と「記録されたアドレス情報」とを1対1に対応づけるものであるから、部品を識別するための識別情報(メーカ毎の部品形式など)と部品種毎のライブラリーデータとを対応づけるための1対多を含む変換テーブルが記載若しくは示唆されているということはできない。
また、甲第3号証には、「ほとんどのテストプログラムの編成のための他の重要な必要条件は、デバイスの名称を変えることが可能であるということである。ある会社は、部品の名称の付け方に関するそれ独自の基準を持っているであろうから、これらの名称を、外部のソースからきたデバイスと関連させるために、ある種の名称を変えるメカニズムが必要である。」と記載されているのみで、この記載から「各部品種毎にその部品種を識別するための識別情報とライブラリーデータとを対応づけるための変換テーブル」が記載若しくは示唆されているということはできない。
したがって、甲第2号証及び甲第3号証記載の発明から、甲第1号証記載の発明において、「各部品種毎にその部品種を識別するための識別情報とライブラリーデータとを対応づけるための変換テーブル」と、複数の「部品種について」それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリーデータとを設けることを当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

また、請求人は、「「変換テーブル」によって、複数の「部品種を識別するための識別情報」を1つのライブラリデータに対応づけることについては、例えば、抵抗値が異なるために異なる識別情報が付けられるチップ型抵抗器において、外観検査の対象となる形状寸法が同じものが多数存在するのが実態であるから、本件第1特許発明の実施例のように「部品種を識別するための識別情報」として、部品のメーカが電気的特性によって命名する部品形式名を採用すれば、それらのなかに形状寸法が同じものが多数存在することになり、このような場合に、部品形式が異なっている複数の部品に対して同じライブラリデータを対応づけることは当然の結果であり、この点が当業者にとって推考困難であったとは到底考えられない。」と主張している。
この点に関して、平成13年6月1日に特許庁審判廷において行われた口頭審理において、請求人に対して、「変換テーブル」を設けることについて、技術水準を示す証拠を提出することを求めた。
しかし、提出された甲第5号証(ELECTRONIC PARTS CATALOG ’89)には、寸法が同じチップ型抵抗器であっても、メーカ毎に異なる部品形式で指定されることが示唆されているのみであって、本件発明の「変換テーブル」は何ら示唆されていない。
したがって、「変換テーブル」を記載若しくは示唆する証拠は提出されていないので、上記請求人の主張は採用できない。

[まとめ]
したがって、本件発明1は甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

5.本件発明2について
[対比]
甲第1号証記載の発明2と本件発明2とを対比すると、上記「4.本件発明1について[対比]」で検討した事項に加えて、甲第1号証記載の発明2の「メモリ24」「辞書部35」「制御部28」はそれぞれ本件発明2の「第1の記憶手段」「第2の記憶手段」「合成手段」に相当するから、両者は次の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
被検査基板上に実装された複数の部品につき、それぞれの実装品質を検査するのに必要な実装部品検査用データを生成するための装置であって、
前記被検査基板上に実装された各部品について、それぞれその部品を識別するための識別情報,実装方向,および実装位置を、それぞれ外部より入力して記憶する第1の記憶手段と、
複数の部品について、それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリデータを記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶される各部品の識別情報を用いて、被検査基板上の各部品毎に、その部品に該当するライブラリデータを前記第2の記憶手段から読み出した後、このライブラリデータと前記実装方向および実装位置とを合成して前記実装部品検査用データを生成する合成手段とを備えて成る実装部品検査用データ生成装置。
(相違点)
本件発明2の「ライブラリデータ」が、複数の「部品種」について、それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたものであり、その結果、本件発明2が「各部品種について、それぞれその部品種を識別するための識別情報とライブラリデータとを対応づけるための変換テーブルを記憶する第3の記憶手段」を有しているのに対して、甲第1号証記載の発明2の「部品辞書」は、複数の「部品の種類データ(メーカ毎の部品形式など)」について、それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたものであり、その結果、甲第2号証記載の発明2は「変換テーブルを記憶する第3の記憶手段」を有しない点。

[相違点の検討]
上記「4.本件発明1について[相違点の検討]」で検討したのと同様の理由で、甲第1号証記載の発明2において、「各部品種について、それぞれの部品種を識別するための識別情報とライブラリーデータとを対応づけるための変換テーブルを記憶する第3の記憶手段」と、複数の「部品種」について、それぞれ少なくとも検査対象部位と検査基準とを対応づけたライブラリーデータとを設けることを当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

したがって、本件発明2も甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1及び2に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-10-05 
結審通知日 2001-10-11 
審決日 2001-10-23 
出願番号 特願平3-214358
審決分類 P 1 112・ 121- Y (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩間 直純  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 平井 良憲
高橋 泰史
登録日 1996-10-24 
登録番号 特許第2570239号(P2570239)
発明の名称 実装部品検査用データ生成方法およびその方法の実施に用いられる実装部品検査装置  
代理人 牛久 健司  
代理人 井上 正  
代理人 浜野 哲郎  
代理人 岡田 春夫  

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