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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) G06F 審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) G06F 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) G06F |
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管理番号 | 1062345 |
審判番号 | 審判1999-35770 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1983-09-21 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-12-20 |
確定日 | 2002-06-25 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1360590号発明「受付整理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第1360590号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 本件特許第1360590号発明(昭和57年3月12日出願、昭和62年1月30日設定登録。以下、「本件発明」という。)の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された「受付券を発行毎にその受付券に連続番号としての呼出番号を印字する受付券発行機と、受付する呼出番号及びこの呼出番号の受付券を受付する受付窓口の番号を夫れぞれを対応させて表示する表示盤と、呼出キースイッチ、チャイムキースイッチ、クローズキースイッチを有し、各受付窓口に配設された操作キー部及び呼出番号をモニター表示するモニター表示部で成る窓口操作盤と、これら受付券発行機、表示盤、窓口操作盤を連携して制御するマイクロコンピュータで成る制御盤をとを備えており、制御盤は前記窓口操作盤の呼出キースイッチの呼出信号により、その呼出信号を発した窓口操作盤の窓口番号と受付券発行順に従った呼出番号とを順次対応させて表示盤に警報音と共に表示すると共に、呼出信号を発した窓口操作盤のモニター表示部には表示盤に表示した呼出番号を表示するようにしたことを特徴とする受付整理装置。」にあると認める。 2.請求人の主張 これに対して、請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求め、以下の理由を挙げて、概ね次のように主張している。 (理由1)呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成が明らかではないこと、呼出信号の保留状態の解除手段が明確でないことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項の規定に違反している。(第1回口頭審理調書請求人の陳述の要領3(1)及び(2)参照。なお、当該調書には、上記「窓口番号」は、「受付番号」と記載されているが、これは、「窓口番号」の誤記である。) (理由2)発明の詳細な説明に記載されているとしても本件特許の権利範囲が不明確であるから、チャームキー、クローズキーの制御盤との相互関係並びにそれぞれの機能について特許請求の範囲に明記されるべきであること(以下、理由2の1という。)、複数の依頼者を利用可能な受付窓口に順次案内するという受付整理装置の作用効果を果たすために、現在表示中の受付券を有する依頼者が窓口に来たとき、「制御盤40は窓口操作盤20のスイッチの信号により、表示盤30の現在表示中の呼出番号を消去し、表示盤30が次の呼出番号を表示しうる状態にする」構成は、発明の構成に欠くことのできない事項であること(以下、理由2の2という。)から、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第5項の規定に違反している。(審判請求書8頁4行乃至11行、第1回口頭審理調書請求人の陳述の要領4(1)及び(2)参照。) (理由3)甲第1乃至2号証を提出し、甲第2号証に開示された取引システムにおいて、利用状況に応じて取引装置(1)〜(3)を同じ機能の3台の取引装置とし、各取引装置の番号に予約番号を順次対応させて予約番号表示装置7に案内表示することは、当業者が必要に応じて行う設計的事項であるから、本件発明は甲第2号証に記載の公知技術に基づき甲第1号証に記載の公知技術を参酌すれば、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する。(平成12年7月28日付意見書3頁4行乃至10行、5頁27行乃至6頁3行参照。) 3.被請求人の主張 請求人の上記主張に対して、被請求人は、概略以下のように反論している。 (1)理由1について 被請求人の主張を符号(イ)乃至(ヘ)を付して示すと、以下にとおりである。 (イ)(A)本件特許の出願公告公報の2頁第4欄15行〜27行目にかけて、「制御盤40は…窓口操作盤20の呼出キースイッチ22の呼出信号により、その呼出番号を発した窓口操作盤20の窓口番号と受付券発行順に従った呼出番号とを順次対応させて表示盤30の各表示器31、32に警報音と共に表示する」と記載され、 (B)同公報の同第4欄23行〜27行目にかけて、「このときの表示盤30に表示される呼出番号は、その表示初期(例えば、表示後約8秒間)には点滅表示され、依頼者にスピーカー89による警報音と共に注意を喚起している。」と記載され、 (C)同公報の同第4欄33行〜41行目にかけて、「この呼出中に、他の窓口操作盤20から呼出キースイッチ22が押されることで呼出番号の要求があったときは、現在表示中のものが優先表示されると共に、呼出番号を要求した他の窓口操作盤20は保留状態となる。この保留状態の窓口業務者への報知は、制御盤40によって保留された呼出番号をモニター表示部 25の呼出番号表示部27に表示すると共に待人数表示器26に待人数を点滅表示することで行う。」と記載され、 (D)同公報の同第4欄42行乃至第5欄の2行目にかけて、「窓口操作盤20はチャイムキースイッチ23を押すことで制御盤40により、再度呼出が行われる。即ち、表示盤30の呼出番号表示器32の呼出番号を再度点滅表示すると共にチャイム等の警報音を発するものである。」と記載されている。 これら(A)〜(D)の各ステップは、制御のフローチャートを示した第3図の記載に照らすと、制御盤40の「更新型ソフトウエア」で順次処理されることが当業者に明解である。同上公報の4頁7欄の41行〜43行目には、「第3図は制御のフローチャートを示したものであり、図中〔 〕書きは第4図に示すRAM55内の記憶領域を示すのである。」と記載されていることから、RAM55には表示器に表示すべき表示内容が記憶されていることは明かである。(平成12年7月26日付審判事件意見書1、2頁6行乃至3頁10行) (ロ)第3図において、電源を投入後は直ちに、窓口操作盤の各キースイッチの入力の有無が「入力あり?」のステップで監視される。それは同上公報の第3頁第6欄の33行〜38行目にかけて、「入力キースイッチ22〜24のうちいずれかがONした際にエンコーダラッチ70はストローブ信号を発生し、通信線100のうちのストローブラインKに信号を送出するため、CPU51はこのストローブラインKを監視している。」と記載されていることからも明かであり、このストローブ信号によって「入力あり?」の有無(入力のチェック)を行っていることになる。 また、第3図において、電源を投入後の窓口操作盤の各キースイッチの入力の有無の監視は、ステップ「呼出し」において呼出キースイッチの入力を、ステップ「クローズ」においてクローズキースイッチの入力を、ステップ「チャイム」においてチャイムキースイッチの入力の有無を、それぞれ順次サイクリックに監視していることがわかる。(平成12年7月26日付審判事件意見書1、3頁11行乃至23行) (ハ)そして、第3図のステップ「呼出し」がYesの場合には、まず呼出番号に「+1」だけインクリメントする処理、表示盤に呼出番号を入れる処理(換言すれば呼出番号を表示するための処理)、呼び出した操作盤のモニター表示部に呼出番号を入れる処理、呼び出した操作盤の窓口番号を表示盤に入れる処理、待人数を「-1」だけデクリメントする処理、及びチャイム音を発生する処理が順次一連に遂行され、その後当初のステップへ遷移することが明かで、その間に他の窓口操作盤の呼出キースイッチが入力された場合、上記(D)に記載の通り「保留状態」となって待たされることがわかる。前記の「保留状態」は、上記(B)に記載のように、表示盤30に表示された表示初期の例えば表示後約8秒間の「点滅表示」の間を無条件に待たされることになる。(平成12年7月26日付審判事件意見書1、3頁24行乃至4頁7行) (ニ)そして、上記第1順位の「呼出し入力」について、上述したYesの各処理が全て終了すると、第2順位以下の「呼出し入力」があるときは、各々について上述したYesの各処理が全く同様に次々遂行される。(平成12年7月26日付審判事件意見書1、4頁8行乃至10行) (ホ)同様に、ステップ「チャイム」の入力がYesの場合には、前記「呼出し」のステップと機能的には全く並列の関係で、つまり「呼出し入力」と共に順列を作って「チャイム音発生」の処理が行われる。例えば呼出キースイッチとチャイムキースイッチの入力の時間的先後の順序にしたがい、呼出→呼出→チャイム→呼出のような順序で処理が行われることがわかる。(平成12年7月26日付審判事件意見書1、4頁11行乃至15行) (ヘ)従って、請求人が主張する「次の呼出のために現在の呼出番号を消去すること」などをいちいち制御盤へ報知するステップは一切無用であり、いわゆる「更新型ソフトウエア」によって何の不都合もなく、依頼者を受付窓口へ案内して窓口業務の遂行を順序よく円滑に行えるのである。 よって、本件特許の明細書及び図面の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を十分に満たしている。(平成12年7月26日付審判事件意見書1、4頁16行乃至22行参照。) (2)理由2について 窓口操作盤のチャイムキースイッチ及びクローズキースイッチと、制御盤との関連性が不明であるとの請求人の主張には、次のように反論する。 先ず「羅列する」記載に過ぎない、旨の主張に対しては、先の口頭審理でも答弁した通り、本件特許の請求項1には「これら受付券発行機、表示盤、窓口操作盤を連繋して制御するマイクロコンピューターで成る制御盤とを備えており、」と記載されているとおり、各構成要件相互間の共働関係はきっちり記載されている。具体的に説明すると、チャイムキースイッチの操作によってチャイム音が発生することが第3図に明示されている。チャイム音の発生は制御盤との連繋なくしては達成し得ないからである。クローズキースイッチと制御盤との連繋もまたしかりである。通例、「マイクロコンピューターで成る」と云えば、所謂ハードウエアのみならず、所要のソフトウエアを内蔵したものと理解するのは、当業者の常識といって差し支えなく、要するに第3図のようなソフトウエアが制御盤に内蔵されていることは当業者の理解に難くないのである。 その上、上記「連繋して制御する」の意味内容として、請求項1には、 「制御盤は前記窓口操作盤の呼出キースイッチの呼出信号により、その呼出信号を発した窓口操作盤野窓口番号と受付券発行順に従った呼出番号とを順次対応させて表示盤に警報音と共に表示すると共に、呼出番号を発した窓口操作盤のモニター表示部には表示盤に表示した呼出番号を表示するようにした」と記載して、所謂各構成要件相互間の共働関係を「呼出キースイッチ」の働きに関する内容できっちり明記しているから、まとまりのある一つの技術的思想を認定、把握できる記載になっており、本件特許の明細書及び図面の記載は、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしている。(平成12年7月26日付審判事件意見書1、5頁14行乃至6頁9行参照。) (3)理由3について 請求人の甲第2号証を主引例とし甲第1号証を第2引例とした「容易性の主張」は、技術的思想の相違点及び技術的本質についての誤認、誤解に基づくものであり、成り立たない。 甲第2号証記載の発明「取引システム」は、人の介在を否定する無人銀行の取引装置の利用順序を自動的に整理するものであるが、甲第2号証記載の発明「窓口番号表示装置」は、人による窓口業務を前提として、窓口呼出業務の不都合、欠点を解決するものであるから、双方の技術的思想、技術的本質に共通性がなく組合わせ又は置換の可能性がないから、請求人の主張に合理性がない。(平成12年8月28日付審判事件意見書2、7頁1行乃至13行参照) 4.当審の判断 (1)理由1について 本件特許発明は、即時処理型の窓口業務の受付は複数の窓口が併設されている場合、個々の処理時間は一定でないため各列によって処理速度は相違し、従って待ち時間に不平等が生じる場合もあることから、依頼者の待ち時間の不平等をなくし、受付券を受取った順序で開いている窓口に案内できるようにすることを主たる目的とするものであり(本件特許公報、特公昭61-22339号公報第2欄1行乃至12行参照)、そのために、「呼出信号を発した窓口操作盤の窓口番号と受付券発行順に従った呼出番号とを順次対応させて表示盤に警報音と共に表示する」ものであって、「呼出中に、他の窓口操作盤20から呼出キースイッチ22が押されることで呼出番号の要求があったときは、現在表示中のものが優先表示されると共に、呼出番号を要求した他の窓口操作盤20は保留状態となる」ものであるから、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」及び「呼出信号の保留状態の解除手段」が明細書又は図面の記載から明確でなければならないことは明らかである。 そこで、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」及び「呼出信号の保留状態の解除手段」が本件特許明細書又は図面の記載から明確であるか否か検討する。 呼出番号の表示に関して、本件特許明細書には、「制御盤40は…窓口操作盤20の呼出キースイッチ22の呼出信号により、その呼出番号を発した窓口操作盤20の窓口番号と受付券発行順に従った呼出番号とを順次対応させて表示盤30の各表示器31、32に警報音と共に表示する」(本件特許公報、特公昭61-22339号公報第4欄15行乃至27行参照)、「このときの表示盤30に表示される呼出番号は、その表示初期(例えば、表示後約8秒間)には点滅表示され、依頼者にスピーカー89による警報音と共に注意を喚起している。」(本件特許公報、特公昭61-22339号公報第4欄23行乃至27行参照)、及び「窓口操作盤20はチャイムキースイッチ23を押すことで制御盤40により、再度呼出が行われる。即ち、表示盤30の呼出番号表示器32の呼出番号を再度点滅表示すると共にチャイム等の警報音を発するものである。」(本件特許公報、特公昭61-22339号公報第4欄42行乃至第5欄2行参照)とは記載されているものの、本件特許明細書又は図面には、呼出番号表示自体をいつまで続けるとは記載されておらず、また先の呼出が表示されているときには次の呼出要求は保留されるが、その解除については何も記載されていないので、本件特許明細書及び図面には、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」及び「呼出信号の保留状態の解除手段」に関する実施例は一つも記載されていない。 そして、本件特許出願時に、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」及び「呼出信号の保留状態の解除手段」を実現するための具体的手段が周知であったとも、慣用されていたとも認めることはできない。 また、本件特許発明において、必要に応じて呼出信号の保留状態を解除し、呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を順次表示盤30に表示させるという課題が与えられたときに、その課題を解決することが、本件特許出願時に当業者が容易になし得たとも認めることはできない。 一方、被請求人は、「保留状態」に関して、理由1に対する反論の(ハ)において、「上記(B)に記載のように、表示盤30に表示された表示初期の例えば表示後約8秒間の「点滅表示」の間を無条件に待たされることになる。」と述べ、あたかも、保留状態となるのは、先の呼出が「点滅表示」されている期間だけであるかのように主張しているが、「保留状態」についての本件特許明細書の記載は、被請求人が理由1に対する反論の(イ)において(C)として引用している部分であって、(B)として引用している部分には、「表示盤30に表示される呼出番号は、その表示初期(例えば、表示後約8秒間)には点滅表示される」旨記載されているのみであるから、被請求人の主張によって呼出信号の保留状態の解除手段が明確になったと認めることはできない。 また、呼出番号の表示についても、先に述べたように、本件特許明細書には、被請求人が理由1に対する反論の(イ)において(B)及び(D)として引用している部分に、「その表示初期には点滅表示される」及び「チャイムキースイッチ23を押すことで表示盤30の呼出番号表示器32の呼出番号を再度点滅表示する」旨記載されてはいるものの、呼出番号表示自体をいつまで続けるとは記載されていないこと、及び先の呼出が表示されているときには次の呼出要求は保留されると記載されていることを勘案すると、被請求人の理由1に対する反論の(ニ)及び(ホ)における「第1順位の「呼出し入力」について、上述したYesの各処理が全て終了すると、第2順位以下の「呼出し入力」があるときは、各々について上述したYesの各処理が全く同様に次々遂行される」旨及び「呼出キースイッチとチャイムキースイッチの入力の時間的先後の順序にしたがい、呼出→呼出→チャイム→呼出のような順序で処理が行われる」旨の主張が本件明細書又は図面の記載から明らかであるとは認めることができない。 したがって、上記被請求人の主張によって、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」及び「呼出信号の保留状態の解除手段」が本件特許明細書又は図面の記載から明確である、とすることはできない。 以上のとおりであるので、請求人の、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項の規定に違反している旨の主張は、その理由がある。 (2)理由2について まず、理由2の2について検討すると、本件特許発明の、受付券を受取った順序で開いている窓口に依頼者を案内できるようにするという目的、作用効果に照らして、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」に相当するものが、本件特許発明の構成に欠くことのできない事項であると認められる。 請求人は、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」を実現するためには、窓口操作盤20の何らかのスイッチの信号により、現在表示中の受付券を有する依頼者が窓口に来たことを制御盤に通知する必要があるとして、「制御盤40は窓口操作盤20のスイッチの信号により、表示盤30の現在表示中の呼出番号を消去し、表示盤30が次の呼出番号を表示しうる状態にする」構成は、発明の構成に欠くことのできない事項である旨主張していると認められ、実質的には、複数の依頼者を利用可能な受付窓口に順次案内するという受付整理装置の作用効果を果たすための構成、すなわち、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」は、発明の構成に欠くことのできない事項である旨主張していると認められるところ、被請求人は、先の理由1についての反論において、「次の呼出のために現在の呼出番号を消去すること」などをいちいち制御盤へ報知するステップは一切無用である。」旨主張して、理由2の2には直接明示的には反論せず、本件特許明細書の特許請求の範囲には、「これら受付券発行機、表示盤、窓口操作盤を連繋して制御するマイクロコンピューターで成る制御盤とを備えており、」と記載され、さらに「連繋して制御する」の意味内容として、「制御盤は前記窓口操作盤の呼出キースイッチの呼出信号により、その呼出信号を発した窓口操作盤野窓口番号と受付券発行順に従った呼出番号とを順次対応させて表示盤に警報音と共に表示すると共に、呼出番号を発した窓口操作盤のモニター表示部には表示盤に表示した呼出番号を表示するようにした」と記載していることから、本件特許の明細書及び図面の記載は、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしている旨主張している。 そこで、上記「連繋して制御する」の意味内容が、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」に相当するか検討すると、文言上は、「連繋して制御する」が「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させる」を含むとはいえるものの、先の理由1についての判断で検討したように、本件特許明細書には、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」に関する実施例は一つも記載されていない。 したがって、「連携して制御する」という記載はあるものの、これをもって、「呼出中の依頼者が受付窓口に来たとき次の呼出番号及びそれに対応する窓口番号を表示盤30に表示させるための構成」に相当するものが、本件特許明細書の特許請求の範囲に記載されていると認めることはできない。 よって、請求人の、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第5項の規定に違反している旨の主張は、理由2の1について検討するまでもなく、理由がある。 (3)理由3について 甲第1号証(特開昭57-31076号公報)には、窓口に顧客がきて所定の手続を依頼した後、所定の手続が終了したときに、顧客を呼び出すための窓口番号表示装置が記載されている。また、甲第2号証(特開昭52-10648号公報)には、それぞれ1台ずつよりなる支払機、預金機及び両替機よりなる取引システムにおいて、利用者が立ったまま並んで待つ必要をなくすために、各取引装置毎に順次予約番号を表示して待機している利用者に報知するものが記載されている。 そして、甲第1号証及び甲第2号証のいずれも、複数の窓口が併設されている場合に、依頼者を受付券を受取った順序で開いている窓口に案内できるようにするという技術思想が記載されているものではなく、本件特許発明を示唆するものではない。 請求人は、甲第2号証に開示された取引システムにおいて、利用状況に応じて取引装置(1)〜(3)を同じ機能の3台の取引装置とし、各取引装置の番号に予約番号を順次対応させて予約番号表示装置7に案内表示することは、当業者が必要に応じて行う設計的事項である旨主張しているが、甲第2号証に開示された取引システムは、仮に取引装置(1)〜(3)を同じ機能の3台の取引装置としたとしても、待ち時間に不平等が生じることを防ごうとするものでなく、単に利用者が立ったまま並んで待つ必要をなくすためのものであるから、各取引装置毎に順次予約番号を表示して各取引装置毎に待機している利用者に報知するものにすぎないと考えるのが相当であり、3台の取引装置に共通に予約券を発行し、開いている取引装置に順次利用者を案内することが示唆されているとは認めることができない。 したがって、理由3に関する請求人の主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件発明に係る特許は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、特許法第123条第1項第3号に該当するので、無効にすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-10-06 |
結審通知日 | 2000-10-20 |
審決日 | 2000-10-31 |
出願番号 | 特願昭57-39123 |
審決分類 |
P
1
112・
532-
Z
(G06F)
P 1 112・ 121- Z (G06F) P 1 112・ 531- Z (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 河端 紘爾、鶴谷 裕二 |
特許庁審判長 |
徳永 民雄 |
特許庁審判官 |
斎藤 操 飯田 清司 |
登録日 | 1987-01-30 |
登録番号 | 特許第1360590号(P1360590) |
発明の名称 | 受付整理装置 |
代理人 | 小林 脩 |
代理人 | 山名 正彦 |
代理人 | 長谷 照一 |