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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04C
管理番号 1062569
審判番号 審判1999-15571  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-09-27 
確定日 2002-08-07 
事件の表示 平成10年特許願第164145号「建築用板」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 5月18日出願公開、特開平11-131682]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成10年5月28日(優先権主張平成9年8月27日)の出願であって、従来、木質系板材を使用した建築用板は様々な用途に使用されるものの、水分の吸収放出に伴い板材に収縮膨張を起し、得られた建築用板を用いた壁、床、建具などにおいて、反りや曲がりなどの狂いを生じさせる要因となっており、また、住宅内において風呂場、台所などの水回り付近の壁内、床下において、空気の流れが生じず局所的に湿度が高いまま滞留する場所では、断熱材や木質系板材などの建築用材に腐食が生じ易く、乾燥した状態が長く続く場所では、木質系部材に収縮が生じ接合部に隙間が発生し、予定しない部分から空気の移動(すきま風)が盛んに行われることにより、冷暖房の効率が低下するなどの問題が生じていたという問題があり、このような問題点を解決するため、工業的生産に適し優れた防湿性能を有する建築用板を提供することを目的として発明された(明細書の段落番号0002、0003、0009参照)ものであって、本願発明は、明細書及び図面の記載からみて平成13年11月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4により特定される建築用板にあると認められる。
「【請求項1】木質基板の少なくとも片面に、アルミニウム層と合成樹脂フィルムの積層体が配されてなり、当該積層体は紙層を含まないことを特徴とする建築用板。
【請求項2】アルミニウム層と合成樹脂フィルムの積層体の、アルミニウム層が木質基板と接するように配されたことを特徴とする請求項1記載の建築用板。
【請求項3】アルミニウム層と合成樹脂フィルムの積層体の、合成樹脂フィルムが木質基板と接するように配されたことを特徴とする請求項1記載の建築用板。
【請求項4】アルミニウム層と合成樹脂フィルムの積層体の、合成樹脂フィルムが木質基板と接するように配され、さらにアルミニウム層の表面に保護フィルムが配されたことを特徴とする請求項1記載の建築用板。」
(以下、請求項1ないし4に係る発明を本願発明1ないし4という。)
なお、平成11年10月21日付けの手続補正は、別途補正却下されている。

2.引用例に記載された技術的事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開平9-104087号公報(以下、「引用例」という。)には、木質化粧板発明に関して以下の記載が認められる。
(ア)特許請求の範囲において、
「【請求項1】木質基材の少なくとも一方の面に、接着剤を介して金属箔と合成樹脂シートと紙とからなる複合シートを積層してなる木質化粧板。
【請求項2】以下省略 」
(イ)段落番号0001において、
「【発明の属する技術分野】
この発明は、合板や木質中密度繊維板(以下MDFという)等の木質ボードを基材として金属箔と合成樹脂シートと紙とからなる複合シートを被覆した化粧板に関する。さらに詳しくは特定の複合シートを被覆することにより、複合シート層からの透湿を完全に止め、寸法安定性を大幅に向上した上、他の木材と接着する場合に、接着の所用時間を著しく短くするために使用する酸性・アルカリ性の接着剤をも使用可能にした木質化粧板に関するものである。」
(ウ)段落番号0014ないし0018において、
「【0014】【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透湿を完全に防止し、木工加工の切削工程において、従来とおりの作業ができ、酸性・アルカリ性の接着剤を用いることにより他の木材との接着に要する時間を著しく短くできる上、極めて高い寸法安定性を付与することができる木質化粧板を提供することを目的とする。
【0015】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、木質化粧板の少なくとも一面を金属箔と合成樹脂シートと紙とからなる複合シートで防湿処理を施すことにより、課題が解決されることを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0016】すなわち本発明は、木質基材の少なくとも一方の面に、接着剤を介して金属箔と合成樹脂シートと紙とからなる複合シートを積層してなる木質化粧板を提供するものであり、好ましくは木質基材の両面に該複合シートを積層してなる化粧板であるか、または木質基材の片面に複合シートを積層しもう一方の面に前記以外の合成樹脂シートを積層してなる木質化粧板を提供するものである。
【0017】また好ましくは複合シートが金属箔と合成樹脂シートと紙とをこの順に積層してなる複合シートである木質化粧板であり、好ましくは金属箔と合成樹脂シートとの間にさらにプライマー層を設けた木質化粧板であり、より好ましくは複合シートの金属箔の厚さが10μ以下である木質化粧板を提供するものである。
【0018】さらに好ましくは接着剤が水性ビニルウレタン樹脂系接着剤であり、紙が強化紙であり、木質基材がMDFである木質化粧板を提供するものである。」
(エ)段落番号0025、0026において、
「【0025】本発明の複合シートを構成する3層の順序は、特に限定するものではないが、本発明の木質化粧板をさらに他の木材と接着させ、加工品を製造するという観点から、木質基材に近い方から、金属箔、合成樹脂シート、紙の順序に積層してなるものが好ましい。
【0026】 この順序が、金属箔、紙、合成樹脂シートの場合、紙、金属箔、合成樹脂シートの場合、合成樹脂シート、紙、金属箔の場合、紙、合成樹脂シート、金属箔の場合では、他の基材と接着する際に一般の水性の接着剤の使用が困難になり、合成樹脂シート、金属箔、紙の場合は、酸性、アルカリ性の接着剤により、金属箔の腐食が生じてしまい、接着力の著しい低下が起きてしまうので好ましくない。」
(オ)段落番号0034において、
「【0034】(前略)3層構造の複合シートの1層である紙層は、他の木材との接着時にこの業界で主に使用されている水性の接着剤が従来とおり使用するためのものであり、その後の接着強度から強化紙であることが望ましい。(後略)」
と記載されている。
上記の記載から、引用例には、透湿を完全に防止し、極めて高い寸法安定性を付与するために、木質ボードを基材として金属箔と合成樹脂シートと紙とからなる複合シートを被覆した化粧板において、当該複合シートは、木質基材の片面、又は両面に設けられ、木質基材に近い方から、金属箔、合成樹脂シート、紙の順序に積層したものが好ましく、当該紙は、他の木材との接着時にこの業界で主に使用されている水性の接着剤を従来とおり使用するためのものである複合シートを被覆した化粧板の発明が記載されていると認められる。

3.本願発明1と引用例に記載された発明との対比、判断
本願発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「木質基材」は、本願発明1の「木質基板」に相当するから、両発明は、
「木質基板の少なくとも片面に、アルミニウム層と合成樹脂フィルムの積層体が配されてなることを特徴とする建築用板」
の点で一致しており、本願発明1では、当該積層体は紙層を含まないのに対して、引用例記載の発明では、積層体に紙を含む点で相違する。
しかしながら、引用例に記載の発明において、複合シートの一部である紙は、透湿を防止するためよりは、むしろ他の木材との接着時に水性の接着剤を従来どおり使用できるようにするために用いられているといえ、引用例記載の発明の複合シートにおいて透湿を防止するために主に機能しているのは金属箔や合成樹脂シートということができ、他の木材との接着を考慮しない場合においては、当該複合シートの紙を省略しても透湿を防止する機能が著しく低下するとは考えられないから、透湿を防止するために、引用例記載の発明において紙を含まないようにすることは、当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
また、本願発明1が奏する作用効果は、引用例記載の発明において紙を含まないことにしたことによって生じる作用効果にすぎない。
したがって、本願発明1は引用例記載の発明から当業者が容易に発明できたものである。

4.本願発明2と引用例に記載されたものとの対比、判断
本願発明2は本願発明1を限定したものであるが、当該限定に係る事項は引用例に記載されている。また、本願発明1と引用例記載の発明との相違点については上記3で検討したとおりである。
したがって、本願発明2は引用例記載の発明から当業者が容易に発明できたものである。

5.むすび
以上のように、少なくとも本願発明1、2は、引用例記載の発明から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-05-23 
結審通知日 2002-06-04 
審決日 2002-06-26 
出願番号 特願平10-164145
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 忠夫鈴野 幹夫住田 秀弘  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 公子
蔵野 いづみ
発明の名称 建築用板  

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