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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1062576
審判番号 不服2000-19869  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-14 
確定日 2002-08-08 
事件の表示 平成10年特許願第333484号「スキャナ装置」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 6月16日出願公開、特開2000-165619]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.[手続の経緯・本願発明]
本願は、平成10年11月25日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、平成11年12月21日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「定型サイズの画像のそれぞれについて読み取り対象となる画像領域の主走査方向の幅と副走査方向の長さを組にして記憶したテーブルと、
このテーブルに記憶された定型サイズの画像のいずれか1つを指定する指定手段と、
原稿の画像の読み取りの開始を指示するスタート指示手段と、
副走査方向に移動自在であって1ラインにつき選択手段によって選択された定型サイズの画像の主走査方向の幅だけ原稿上の画像を読み取る読取手段と、
前記スタート指示手段が原稿の画像の読み取りの開始を指示した箇所から、読取手段が1ラインの画像を読み取るたびに原稿の画像の副走査方向の読み取られた長さを逐次計測し、前記選択手段によって選択された定型サイズの長さだけその原稿の読み取りが行われたかどうかを判別する副走査方向移動量判別手段と、
画像の読み取りの即時停止を指示するストップ指示手段と、
このストップ指示手段が画像の読み取りの即時停止を指示したとき、あるいは前記副走査方向移動量判別手段が前記選択手段によって選択された定型サイズの長さだけその原稿の読み取りが行われたと判別したとき画像の読み取りを停止する読取停止手段と、
この読取停止手段が画像の読み取りを停止させたとき、いずれの手段によって読み取りが停止したかを表示する表示手段
とを具備することを特徴とするスキャナ装置。」

2.[引用刊行物]
これに対し、原査定の平成11年10月26日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由で、引用文献1として引用された特開昭60-180278号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の各記載がある。
(a)「本発明は、手動で原稿上を走査し、相補的に搬送される記録部材へ記録素子で像再生する、いわゆる手動式複写機の制御方法に関する。」(公報第1頁下右欄第2行〜第4行)
(b)「(1) 手動で原稿または記録部材を相対搬送する搬送手段と、前記原稿を読み取る読取手段と、前記読取手段で読み取られた画素情報を前記記録部材へ書き込む記録手段を有する記録装置において、前記装置の移動量を検出する検出手段と、所定値を任意に設定する設定手段と、前記検出手段の出力と前記所定値を比較して前記記録手段または前記記録部材の搬送を制御する制御手段とを有することを特徴とする手動式像再生装置。」(公報第1頁下左欄第4行〜第13行、特許請求の範囲欄)
(c)「コピー可表示LED 1,紙有り表示LED 2,速度バー表示LED 3〜LED 9,距離表示用数値表示器53、」(公報第2頁下右欄第5行〜第7行)
(d)「この後不図示の圧解除スイッチを押すことによりコピー可表示LED 1(第5図)と、紙有り表示LED 2が点灯され、さらに圧接板バネ14とローラ4-2 の圧を加えるソレノイドSOL-1a、SOL-1bをONにする。この時、例えば排紙トレイ12を倒すと各表示及び光源5はOFFされコピー不可の状態となり、又転写部に紙がなくなると紙有り表示LED 2がOFFしコピー可表示、LED 1がOFFとなりコピー不可の状態となる。
さらにCPU 50はこの間常にキー群52の入力を受付けることが可能な状態にあり、従って本発明で示すが如く所定距離間のみ複写したい場合において上記キー群52より所定距離を入力することができ、又この入力された距離データは同時に数値表示器53から表示するものである。」(公報第3頁上左欄第19行〜上右欄第13行)
(e)「従ってエンコーダーE-1 からパルスが出力されている間に1ライン全部記録できなくても記録素子群の所定の配列により均一に記録され、次の1ラインでは前ラインで停止した記録素子群の次の記録素子群から駆動されるので、いつも同じ部分が記録抜けすることがなく、見苦しい画像とならない。
又CPU はこれらの処理後エンコーダーE-1 からのパルス幅を測定し表示用速度データへ変換し速度表示(本例においてはバー表示)LED 3〜LED 9で表示する。このとき、上述した所定移動量の設定がなされている場合には、エンコーダーE-1 からのパルス数を装置2の移動量に変換し設定された所定移動量から減算を行なう。このとき装置2の移動量が設定された所定移動量に等しいか、あるいはそれ以上になった場合は圧接板バネ14とローラ4-2の圧を解除するためのソレノイドSOL-1a、SOL-1bをOFFし、このことにより記録紙は圧解除により搬送が停止され、CPU の処理は待機状態に戻り、それ以外は次の処理へ進む。また、このとき記録紙への書き込みも停止する。」(公報第4頁上左欄第3行〜上右欄第5行)
(f)「コピーの終了は前述所定量の設定値を装置の移動量が等しいかそれ以上となった時か、転写紙を転写部から抜き取るか、あるいは排紙トレイ12を倒すかの何れかの操作を行えばよい。」(公報第4頁下左欄第6行〜第10行)
これらの記載によれば、引用例1には、上記(b)の特許請求の範囲に記載された発明に加えて、副走査方向に移動自在であって原稿上の画像を読み取る読取手段と、原稿の画像の読み取り開始箇所から原稿の画像の副走査方向の読み取られた長さを逐次計測し、キー群によって入力された距離だけその原稿の読み取りが行われたかどうかを判別する手段と、入力された距離だけその原稿の読み取りが行われたと判別したときにCPUの処理を待機状態に戻すすなわち画像の読み取りを停止させる手段とを備えたスキャナ装置も開示されているということができる。
同じく、前記拒絶理由通知書の拒絶の理由で、引用文献3として引用された特開昭63-160461号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに次の各記載がある。
(g)「本発明は、例えばハンディコピー機において、指定幅内の原稿画像データのみ読取りを行なう画像データ読取り装置に関する。」(公報第1頁下左欄第14行〜第16行)
(h)「画像データ読取り手段と、この読取り手段による読取り画像データを記憶する手段と、上記読取り手段の主走査方向に対応する画像データの読取り幅を指定する手段と、この読取り幅指定手段により指定される指定読取り幅内の読取りデータのみ上記画像データ記憶手段に書込む手段とを具備したことを特徴とする画像データ読取り装置。」(公報第1頁下左欄第5行〜第11行、特許請求の範囲欄)
(i)「この光ガイド13の上端部側にレンズ14及び一次元イメージセンサ15が順次所定の間隔を保って配置される。」(公報第3頁上左欄第13行〜第15行)
(j)「この時点で、まず画像データメモリ60には、上記指定読取り幅に対応するイメージセンサ1ライン分の読取り画像データが、その書込みアドレスの先頭位置から書込まれたことになる。この後、さらにコピー機本体1が移動し、エンコーダ30からエンコーダパルスが発せられると、上記ステップR1に戻り、2ライン目の読取り画像データの書込み処理が実行される。」(公報第7頁上左欄第9行〜第16行)

3.[対比]
そこで、本願発明1と引用例1に記載されたもの(以下「引用例1発明」という。)とを対比すると、
引用例1発明の「手動で原稿上を搬送し、原稿を読み取る読取手段」が、本願発明1の「副走査方向に移動自在であって、原稿上の画像を読み取る読取手段」に、
引用例1発明の「装置の移動量を検出する検出手段」が、本願発明1の「読取手段が、原稿の画像の読み取りを開始した箇所から、画像を読み取るたびに原稿の画像の副走査方向の読み取られた長さを逐次計測すること」に、
引用例1発明の「検出手段の出力と所定値を比較すること」が、本願発明1の「所定の長さだけ、原稿の画像の副走査方向の読み取りが行われたかどうかを判別する副走査方向移動量判別手段」に、
それぞれ対応してしているということができる。
また、引用例1発明は、「原稿を読み取る読取手段」であるから、本願発明1のような、「原稿の画像の読み取りの開始を指示するスタート指示手段」と、「読み取りを停止する読取停止手段」とを有しているべきことは、当然のことと認められる。そして、引用例1発明の「コピーの終了は前述所定量の設定値を装置の移動量が等しいかそれ以上となった時か、転写紙を転写部から抜き取るか、あるいは排紙トレイ12を倒すかの何れかの操作を行えばよい。」なる記載の「転写紙を転写部から抜き取るか、あるいは排紙トレイ12を倒すかの何れかの操作」をすればそれまでの読み取りは停止した状態となると考えられるから、その「手段」が、本願発明1の「画像の読み取りの即時停止を指示するストップ指示手段」に、相当しているものと認められる。
してみると、両者(本願発明1と引用例1発明)は、
「原稿の画像の読み取りの開始を指示するスタート指示手段と、
副走査方向に移動自在であって原稿上の画像を読み取る読取手段と、
スタート指示手段が原稿の画像の読み取りの開始を指示した箇所から、読取手段が原稿の画像の副走査方向の読み取られた長さを逐次計測し、所定の長さだけ原稿の画像の副走査方向の読み取りが行われたかどうかを判別する副走査方向移動量判別手段と、
画像の読み取りの即時停止を指示するストップ指示手段と、
このストップ指示手段が画像の読み取りの即時停止を指示したとき、あるいは副走査方向移動量判別手段が所定の長さだけその原稿の読み取りが行われたと判別したとき画像の読み取りを停止する読取停止手段と、
を具備するスキャナ装置。」である点で、一致しており、
次の4点で、相違しているものと認められる。
〔相違点1〕
副走査方向に移動自在である読取手段による主走査方向の読み取りが、本願発明1では、「1ラインずつ、指定した所定の幅」であるのに対して、引用例1発明では、「1ライン」なる記載があるだけで、「主走査方向の読み取り幅」に関する記載がない点。
〔相違点2〕
読み取り対象となる画像が、本願発明1では、「定型サイズの画像」であり、「定型サイズの画像のそれぞれについて読み取り対象となる画像領域の主走査方向の幅と副走査方向の長さを組にして記憶したテーブルと、このテーブルに記憶された定型サイズの画像のいずれか1つを指定する指定手段」を有しているのに対して、引用例1発明では、「定型サイズの画像」ではなく、「テーブル」や「指定手段」も有していない点。
〔相違点3〕
原稿の画像の副走査方向の読み取られた長さの計測が、本願発明1では、「1ラインの画像を読み取るたびになされている」のに対して、引用例1発明では、「エンコーダーE-1 からのパルス数を装置2の移動量に変換してなされている」点。
〔相違点4〕
表示手段が、本願発明1では、「読取停止手段が画像の読み取りを停止させたとき、ストップ指示手段、あるいは、副走査方向移動量判別手段のいずれの手段によって、読み取りが停止したかを表示する表示手段」であるのに対して、引用例1発明では、「コピー可表示LED 1,紙有り表示LED 2,速度バー表示LED 3〜LED 9,距離表示用数値表示器53」である点。

4.[当審の判断]
そこで、これらの相違点について検討する。
相違点1について
原稿上の画像を読み取る読取手段として、副走査方向に移動自在であって、主走査方向の読み取り幅が、「1ラインずつ、指定した所定の幅」である読取手段は、引用例3に記載されているので、刊行物1発明において本願発明1のように「主走査方向の読み取りを、1ラインずつ、指定した所定の幅」とすることは、当業者なら適宜なし得る程度のものと認められる。
相違点2について
複写機など、原稿や用紙の縦横のサイズを指定して使用するものにおいて、使用する度に縦と横の長さを指定する繁雑さをなくすなどのために、使用頻度の高い、例えば、”A4”サイズや”B5”サイズを、予め縦横の長さが組の定型サイズとして規格化してテーブルに記憶させておき、このテーブルに記憶された定型サイズのいずれか1つを指定して使用するようにすることは、周知の事柄であるので、副走査方向に移動させて原稿上の画像を読み取る形式のものであって読み取り画像の縦横の長さを指定して読み取るスキャナ装置においても、本願発明1のように、「定型サイズの画像のそれぞれについて読み取り対象となる画像領域の主走査方向の幅と副走査方向の長さを組にして記憶したテーブルと、このテーブルに記憶された定型サイズの画像のいずれか1つを指定する指定手段」を具備するようにすることは、当業者が容易に推考できるものと認められる。
相違点3について
原稿の画像の副走査方向の読み取られた長さの計測が、本願発明1では「1ラインの画像を読み取るたびになされている」点については、主走査方向に延びるラインの幅は一定であることを前提に、ラインの数が副走査方向に読み取られた原稿の長さに比例することから、ラインの数を計測することにより副走査方向に読み取られた原稿の長さを知ることができるようにしたものと考えられるところ、引用例3に「この時点で、まず画像データメモリ60には、上記指定読取り幅に対応するイメージセンサ1ライン分の読取り画像データが、その書込みアドレスの先頭位置から書込まれたことになる。この後、さらにコピー機本体1が移動し、エンコーダ30からエンコーダパルスが発せられると、上記ステップR1に戻り、2ライン目の読取り画像データの書込み処理が実行される。」と記載されていることから、刊行物1発明において、本願発明1のように、「原稿の画像の副走査方向の読み取られた長さの計測を、1ラインの画像を読み取るたびになすこと」は、当業者が容易に推考できる程度のものと認められる。
相違点4について
例えば、複写機において、装置の状態を、「コピーできます」、「トナーなし」、「紙づまり」などと種々表示して、利用者に必要な情報を与えることは、周知の事項であって、このような装置の状態の情報を種々表示するようにすることは、普通に行われることであると認められ、また、引用例1発明においても、「コピー可表示LED 1,紙有り表示LED 2,速度バー表示LED 3〜LED 9,距離表示用数値表示器53」と記載され、装置の状態を種々表示する表示手段が記載されているので、本願発明1における装置の状態である、「ストップ指示手段による読み取りの停止」、あるいは、「副走査方向移動量判別手段による読み取りの停止」、を表示する表示手段、すなわち、「いずれの手段によって、読み取りが停止したかを表示する表示手段」を具備するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
審判請求人は審判請求書において、「本願発明1は、副走査方向の読み取られる長さの判断を自動化した一方でストップ指示手段を設け、画像の読み取りの即時停止を指示できるようにした発明でありますが、仮にこの表示手段がないとすると、実際は画像の読み取りが正常終了しているのにも関わらず、不安にかられた操作者がもう一度画像の読み取りを行うという事態、又は、誤操作により画像の読み取りが終了しているのにも関わらず、正常終了したと信じた操作者が、その読み込み作業を終了後、CRT等に表示し又はプリントアウトしたことにより初めて読み込みが失敗であったことに気がつき、再び、画像の読み取りを行うという事態が起き、作業効率が著しく低下するという問題が生じます。この点、本願発明1では、上記表示手段を備えているため、画像の読み取りが停止したとき、操作者は、その停止が、間違ってストップ指示手段を操作したからなのか、それとも、画像の読み取りが正常終了したからなのかを、直ちに知ることができ、これにより、操作者は無駄な作業又は重複した作業を回避することができます。誤操作というヒューマンエラーは一般的に起こり易いものでありますが、本願発明1により、かかるヒューマンエラーに対する対策は万全となります。」と主張している。
そこで、この点について検討するに、明細書をみると【0029】に「・・・この“ストップ”指示は、上述したように何らかの原因で画像の読み取りを急きょ中止する必要が生じた場合の画像読み取り操作自体の中止を指示するものである。ステップS48で、この“ストップ”指示が入力されないとき(ステップS48)は、CPU31は走行距離検出装置36にスタート入力後の原稿の副走査方向の走行距離を検出させ、その結果を内部バス30を介して得る(ステップS49)。この結果は、ステップS42で既に格納されているサイズ情報の副走査方向の走行すべき距離との比較結果が判別される(ステップS50)。すなわち、ステップS49で検出した副走査方向の走行距離が、ステップS41で算出されステップS42で格納された走行すべき距離を超えていないと判別されたとき(ステップS50:N)は、そのまま次の所定ラインの画像読み取りを行うべく、再びステップS47に戻る。これに対して、ステップS49で検出した走行距離が、ステップS42で格納された走行すべき距離以上であると判別されたとき(ステップS50:Y)と、ステップS48で“ストップ”指示が入力されたとき(ステップS48:Y)には、表示装置33には内部バス35を介して画像読取装置35に対して画像読み取りの停止を指示する(ステップS51)。そして、その停止した旨を表示装置33に表示する(ステップS52)。この表示装置33に停止した旨を表示する際には、“ストップ”指示により停止したのか、あるいは予め設定した走行距離以上に走行したため画像読取が完了したことにより停止したのかが判別できるように表示させる。」との記載がある。
この記載中で、“ストップ”指示が「何らかの原因で画像の読み取りを急きょ中止する必要が生じた場合の画像読み取り操作自体の中止を指示する」ことという点は、何らかの原因で画像の読み取りを急きょ中止する必要が生じた場合に操作者がスキャナ装置の副走査方向の走行を中止してストップ指示手段を操作することを想定していると考えられる(ちなみに、操作者がスキャナ装置を原稿の副走査方向に走行を開始させてから、原稿の副走査方向の長さと同じ長さに到達する前にストップ指示手段を操作し、その後もスキャナ装置を原稿の副走査方向の長さと同じ長さに到達するまで走行を続行することも考えられないではないが、そのような使い方では利用しにくいだけでなくストップ指示のタイミングの正確を期しがたいものと考えられる。)。そして、上記摘示した明細書の記載によれば本願発明1においては、ストップ指示手段の操作が行われた場合と、ストップ指示手段の操作が行われずに操作者がスキャナ装置を原稿の副走査方向の長さと同じ距離走行させた場合に、そのいずれが行われたかが分かるように表示手段に表示させるようにしたものであると解することができる。
ところが、いずれの場合でも、読み取られた画像信号が正常なものかどうかは判断していないから、結局、操作者が表示装置の表示から確実に分かることは、操作者が走行を開始した後にストップ指示手段を操作したときにその操作が行われたことをスキャナ装置が検知したということと、操作者がスキャナ装置をストップ指示手段を操作すること無しに原稿の副走査方向の長さと同じ距離走行させた、ということと考えられる。
このように、画像の読み取りの開始と停止の間に画像の読み取りが正常に行われているかどうか(正常な画像信号が得られているかどうか)のみならず読み取り動作が現在行われているかどうかについても本願発明のスキャナ装置はチェックしてそれを表示するようにしてはいないのであり、本願発明1は、審判請求人の主張中の「画像の読み取りが停止したとき」という条件に合う状態に装置が現在なっていることを操作者に分からせような手段を本願発明1の表示手段以外に具備していないのであるから、「画像の読み取りが停止したとき、操作者は、その停止が、間違ってストップ指示手段を操作したからなのか、それとも、画像の読み取りが正常終了したからなのかを、直ちに知ることができ」るという主張中の「画像の読み取りが停止したとき」という条件は意味のないものといわざるを得ない。そして、ストップ指示手段の操作に応じてその状態を表示する表示手段は、その操作が間違って行われたものであろうと意図して行われたものであろうと操作が行われればそれを表示するだけのものであり、また、ストップ指示手段の操作が行われた場合とストップ指示手段の操作が行われずに操作者がスキャナ装置を原稿の副走査方向の長さと同じ距離走行させた場合とが分かる表示手段の表示からは、単に操作部材が操作されたときにそれまでと異なる表示をする表示手段と装置に設定されている作業が終了したときに終了を知らせる表示手段という周知慣用の表示手段を設けたものから分かるもの以上のものが分かる(情報が得られる)とは認められず、その効果は予測できる効果の域を出ないから、表示に格別の意義があることを前提とする審判請求人の上記主張は採用できない。

5.[むすび]
以上のとおりであるので、本願発明1は、引用例1、及び、引用例3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-06 
結審通知日 2002-06-11 
審決日 2002-06-24 
出願番号 特願平10-333484
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮島 潤  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 江頭 信彦
佐藤 聡史
発明の名称 スキャナ装置  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  

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