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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1062733
異議申立番号 異議2000-71527  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-12 
確定日 2002-05-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2963169号「高周波プラズマ発生用電極」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2963169号の訂正後の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2963169号の発明は、平成2年8月10日に出願され、平成11年8月6日にその設定登録がなされたものである。
これに対し、その後佐藤 正より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年8月28日付けで訂正請求がなされたが、その後新たな取消理由が発見されたので、平成13年1月23日付けで取消理由通知がなされたところ、平成12年8月28日付け訂正請求書が取り下げられ、平成13年3月30日付け訂正請求書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成13年3月30日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の減縮と明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおり訂正するものである。
(1-1)訂正事項a:請求項1を、「半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、前記電極および前記他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されている、ことを特徴とする高周波プラズマ発生用電極。」と訂正する。
(1-2)訂正事項b:請求項2を、「半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、前記電極および前記他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されており、前記電極および前記他の電極の表面にフッ化マグネシウム層を被着させた、ことを特徴とする高周波プラズマ発生用電極。」と訂正する。
(1-3)訂正事項c:特許明細書(第7頁第16行乃至第8頁第5行)の「即ち本発明は減圧処理室内に、対向的に配置された少なくとも一対からなる電極間に高周波電力が印加され、プラズマを発生させるプラズマ発生用電極において、該電極の少なくとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含有するアルミニウム合金で構成されていること、また必要に応じて使用前に電極表面にフッ化マグネシウムの被覆層を形成させることを特徴とする高周波プラズマ発生用電極である。」(特許公報第2頁右欄第39行乃至第46行)を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「即ち、本発明の高周波プラズマ発生用電極は、半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、上記電極対が、被処理材を支持する電極と、この電極に対向的に配置され且つこの電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、上記電極および他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されていることを特徴とする。或いは、本発明の高周波プラズマ発生用電極は、半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、電極対が、被処理材を支持する電極と、この電極に対向的に配置され且つこの電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、上記電極および他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されており、その電極および他の電極の表面にフッ化マグネシウム層を被着させたものである。」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1に「半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる」や「前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、」等の技術的事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
また、訂正事項bは、請求項2に「半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる」や「前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、」等の技術的事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
さらに、訂正事項cは、特許請求の範囲の減縮に伴って不明りょうとなった記載を明りょうなものとするものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、これら訂正事項は、いずれも特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、また当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおり、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについての判断
(1)本件訂正発明
上記訂正は、これを認容することができるから、本件訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件訂正発明1及び2」という)は、訂正後の請求項1及び2に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、前記電極および前記他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されている、ことを特徴とする高周波プラズマ発生用電極。
【請求項2】半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、前記電極および前記他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されており、前記電極および前記他の電極の表面にフッ化マグネシウム層を被着させた、ことを特徴とする高周波プラズマ発生用電極。」
(2)取消理由通知の概要
当審が平成13年1月23日付けで通知した取消理由の概要は、本件訂正発明1及び2は、下記引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用例1:特開昭61-56415号公報
引用例2:特開平1-307763号公報(甲第3号証)
引用例3:「第11回 超LSIウルトラクリーンテクノロジーシンポジウム 半導体プロセスを革新する新しいフッ素化学」半導体基盤技術研究会主催、1990年7月5日、第3頁及び第4頁、第181頁乃至第204頁(甲第6号証)
引用例4:「放電ハンドブック」電気学会、昭和57年8月20日、第212頁乃至第221頁(甲第7号証)
(3)引用刊行物の記載内容
上記引用刊行物1乃至4には、それぞれ次の事項が記載されている。
(3-1)引用例1:特開昭61-56415号公報
(a)「半導体素子の絶縁層形成に使用するプラズマ化学気相成長装置において、該装置内に設けられ、放電電極を保持し且つ高周波電流路を構成する導電部材がステンレス基材にアルミニウムをコーティングしてなることを特徴とするプラズマ処理装置。」(第1頁左欄特許請求の範囲の項)
(b)「第1図はプラズマCVD装置の構成を示すもので、ステンレスあるいはアルミニウム・・・からなる反応容器1には反応ガスの導入口2と排出口3があり、装置内にはプラズマ放電を行うアルミ製の上部電極4と下部電極5が設けられており、」(第2頁左上欄第8行乃至第13行)
(c)「反応容器1の導入口2から反応ガスとしてモノシラン・・・として導入し、ウエハ6の温度を300乃至400℃に保っておく。
かかる状態でアルミ製の上部電極4と下部電極5の間でRF放電を行うと、・・・絶縁層を作ることができる。」(第2頁右上欄第3行乃至第14行)
(d)「すなわちフレオン(CF4)ガスを導入口2より反応容器1より導入し、排出口3より先と同様な真空度に排気しながらRF放電を行うとCF3*・・・などのラジカルが発生し、これにより析出していた絶縁物がドライエッチングされクリーニングされる。」(第2頁左下欄第16行乃至右下欄第1行)
(e)「ここで上部電極4は耐蝕性の見地からアルミ製であり、」(第2頁右下欄第8行乃至第9行)
(3-2)引用例2:特開平1-307763号公報
(a)「処理室及び支持体ホルダーの構成材料はClF3ガスにより腐食が起きないものを選択する必要があり、たとえばアルミニウム・・・等が好適である。また、・・・前記材料をコーティングして用いてもよい。」(第4頁左下欄第5行乃至第11行)
(b)第7頁の第1表には、「支持体の材質 JIS5000系アルミ」と明示されている。
(3-3)引用例3:「第11回 超LSIウルトラクリーンテクノロジーシンポジウム 半導体プロセスを革新する新しいフッ素化学」半導体基盤技術研究会主催、1990年7月5日、第3頁及び第4頁、第181頁乃至第204頁
(a)「F2ガスとの直接反応により金属表面をフッ化絶縁膜に変えることが可能になっている。装置、配管系内壁のフッ化不動態処理が可能となっただけでなく、シリコン上の金属配線の表面を直接フッ化により絶縁膜にすることが可能な時が来たのである。」(第4頁)
(b)「Al-3.5Mg合金」のフッ化処理の概要が第182頁に示されている。
(3-4)引用例4:「放電ハンドブック」電気学会、昭和57年8月20日、第212頁乃至第221頁
(a)「電極表面を薄い絶縁フィルムで被覆した場合は、陰極表面を被覆することによって、高電圧まで火花を起こさせずに電圧を保持できる(「1.237図」参照)。」(第215頁)
(b)「1.237図」には、アルミニウム電極にMgF2の薄膜を被覆した場合の放電回数と火花を生じない最高電圧との関係が図示されている。
(4)当審の判断
(4-1)本件訂正発明1について
引用例1には、上記(a)及び(b)から、半導体素子製造用のプラズマ化学気相成長装置の対向する一対の上部電極及び下部電極がアルミ製であることが記載されており、そしてこの両電極は、上記(c)の記載から、300〜400℃の状態でプラズマに曝されるものであると云えるから、引用例1のこれら記載を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、
「半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一のアルミ製の他の電極とからなり、且つ、300〜400℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、前記電極および前記他の電極がアルミ製である高周波プラズマ発生用電極」の発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と引用例1発明とを対比すると、両者は、「半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、300〜400℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものである高周波プラズマ発生用電極」という点で一致し、次の点で相違しているだけであると云える。
相違点:本件訂正発明1は、その電極の少なくとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されているのに対し、引用例1発明は、その電極がアルミ製である点。
次に、この相違点について検討すると、上記引用例2の(a)及び(b)の記載によれば、ClF3ガスを流しながらプラズマを発生させて乾式エッチング処理等を行う場合に、Mgが2重量%以上含有するアルミニウム合金(JIS5000系アルミ)がフッ素ラジカルに対する好適な材料であること、すなわちClF3ガスにより腐食が起きない材料であることは既に公知の事実であるから、マグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金を「アルミ製」の材料に替えて使用することは当業者であれば容易に想到することができたと云える。
してみると、本件訂正発明1は、上記引用例1及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとするのが相当であると云える。
(4-2)本件訂正発明2について
引用例1には、上記(d)の記載から、処理室にフッ化物を供給し、フッ素ラジカルを発生させて処理室内をクリーニングすることも記載されているから、上記引用例1発明を本件訂正発明2の記載ぶりに則ってさらに整理すると、引用例1には、
「半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一のアルミ製の他の電極とからなり、且つ、300〜400℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、前記電極および前記他の電極がアルミ製である高周波プラズマ発生用電極」の発明(以下、「引用例1発明の2」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明2と引用例1発明の2とを対比すると、両者は、「半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、300〜400℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものである高周波プラズマ発生用電極」という点で一致し、次の(イ)及び(ロ)点で相違しているだけであると云える。
(イ)本件訂正発明2は、その電極の少なくとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されているのに対し、引用例1発明の2は、その電極がアルミ製である点
(ロ)本件訂正発明2は、電極の表面にフッ化マグネシウム層が被着されているのに対し、引用例1発明の2は、電極の表面にフッ化マグネシウム層が被着されていない点
次に、これら相違点について検討すると、上記(イ)の点については、上記「(4-1)本件訂正発明1について」の項で述べたとおりである。
また、上記(ロ)の点については、上記引用例3の記載によれば、Mgを3.5%含有するアルミニウム合金をフッ素で処理すればその表面にMgF2の不動態膜が形成され、そしてこの不動態膜がClF3ガスなどに対する良好な耐蝕性を示すことは既に公知の事実であり、引用例4には、アルミニウム電極にMgF2を被覆した例も示されている。
そうすると、Mgを3.5%含有するアルミニウム合金やそのフッ素による不動態膜が共にClF3ガスなどの耐食性などに好適であることが公知であり、またその表面にMgF2を被覆したアルミニウム電極の例も公知であるから、マグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金を「アルミ製」の材料に替えて使用する場合にその表面に上記公知のフッ化マグネシウム層を形成させることも当業者であれば容易に想到することができたと云うべきである。
してみると、本件訂正発明2も、上記引用例1乃至引用例4に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。
したがって、本件訂正発明1及び2は、上記引用例1乃至引用例4に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
4.むすび
以上のとおり、本件訂正後の請求項1及び2に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高周波プラズマ発生用電極
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、
前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、
前記電極および前記他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されている、
ことを特徴とする高周波プラズマ発生用電極。
【請求項2】 半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、
前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、
前記電極および前記他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されており、
前記電極および前記他の電極の表面にフッ化マグネシウム層を被着させた、
ことを特徴とする高周波プラズマ発生用電極。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、材料表面にプラズマCVD法により成膜したり、また材料表面をプラズマクリーニングするなどの目的に適用される高周波プラズマ処理装置において使用されるプラズマ発生用電極に関するものである。
〔従来の技術〕
高周波プラズマ処理は、減圧下の乾式表面処理として、例えばプラズマCVD法による材料表面上への成膜処理あるいはプラズマエッチング法、プラズマクリーニング法による材料の表面処理等に用いられている。
この種の高周波プラズマ処理装置は、減圧処理室内に少くとも一対のプラズマ発生用電極を具え、その電極間に被処理材を配置して、処理に応じた反応ガスを導入しつつ、高周波プラズマを発生させて所定の処理を行なうものである。
この場合電極としては、平行平板型電極装置が多用されており、更にそれには1枚ずつ処理を行なう枚葉型のもの、および同時に複数枚処理を行なうバッチ型のものとがあって処理目的に応じて適宜使い分けられている。なお、枚葉型の場合には上部電極と被処理材を支持する下部電極とが対向して配置され、電極間に高周波電力が印加されて被処理材が1枚ずつ処理されるのであり、バッチ型のものは処理枚数に応じた電極を複数枚対向的に配置して各対向電極間に被処理材を配置するか、または被処理材が導電材であるときには、被処理材自体を一方の電極として複数枚の被処理材を同時に行なうものである。
現在、高周波プラズマ処理装置は、半導体素子などの高付加価値部材の製造用装置として多用されている。例えば、プラズマCVD法によってシリコン単結晶基板(以下シリコンウェハという)上に二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si3N4)等の絶縁皮膜を形成したり、適当な基板の上にアモルファスシリコン膜を形成することなどが行なわれている。この場合において、SiO2膜を得るときには、TEOS(テトラエチルオルトシリケート、またはエチルエトキシシラン)ガスと酸素(O2)を、またSi3N4膜を得るときには、モノシラン(SiH4)ガスとアンモニア(NH3)ガスをそれぞれ1〜20Torrの真空処理室に導入し、例えば13/56MHzの高周波電流を印加してプラズマを発生させることにより、気相反応により300〜400℃に加熱された被処理材のシリコンウェハ上に反応生成物を堆積させて、これらの絶縁皮膜の形成を行なっている。
電極材料としては、かつては主としてステンレス鋼が用いられていたが、プラズマアタックによる重金属汚染や侵食性が大きい等の問題から現在では軽量で、重金属汚染のないアルミニウム材に主流が移りつつある。このような、アルミニウム材の使用例は、例えば特開昭61-56415号公報に見られる。また、発生プラズマの安定性をはかるために、特開平1-312088号公報に見られる如く、その表面に硫酸陽極酸化皮膜を形成しアルミニウム電極も使用されている。
ところで、このようなプラズマCVD法による絶縁膜の形成に際しては、反応生成物の堆積は勿論被処理材のシリコンウェハ上に優先的に行なわれるが、このほか処理室内にある全ての物体上、例えばプラズマ電極や処理室壁等の表面へも堆積する。このため、後処理としてプラズマ電極のクリーニングを行ない、堆積物を除去することは操業の安定性確保のために欠くべからざる必要条件となっている。このクリーニング処理法にはフッ化物ガス、例えばCF4,C2F6,NF3ガスと酸素もしくはN2Oガスとの混合ガスを添加したガスを用いて高周波プラズマ放電を行なうドライクリーニング処理法が同一装置内で行ない得るという簡便性故に実用的な方法として多用されている。
即ち、ドライクリーニング処理は、処理室内にエッチングガスを導入しつつ高周波プラズマ放電を行ない、プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによる化学作用によって、処理室内の各部位に堆積した先のプラズマ処理による反応生成物を低沸点のフッ化物に転換し、気化させることによってその表面から除去するものである。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、このクリーニング処理に際して電極の一部もフッ化物との反応により、アルミニウム-フッ素化合物を生じて消耗する。特に、近年になってフッ化物ガスにクリーニング性能の高いものが使用されるようになり、また使用温度も高くなるにつれて、このクリーニング処理によるアルミニウム電極の消耗は無視できない大きな問題になってきている。
例えばアルミニウム材として6061合金(Mg1重量%)を使用した場合において、この合金に10μmの硫酸陽極酸化皮膜を形成させた電極においても、処理可能なウェハ枚数は5000枚が限度であった。
特にクリーニング処理を施すに際してCF4,C2F6とともにN2Oを使用する場合には電極の消耗は極めて急速である。
本発明はプラズマ電極のかかえる上記したような問題点を解決し、フッ素雰囲気下において150〜450℃付近の温度で使用しても消耗が少なく安定的な操業を確保出来るようなプラズマ電極を提供することを目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は上記目的を達成するためにフッ素雰囲気下において使用されるプラズマ発生用電極材料について鋭意検討を重ねた結果、マグネシウムおよびマグネシウム合金、アルミニウム材を用いる場合にはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金材を電極材料として使用するか、或いはこれらの材料を電極表面に被覆した場合においては、100〜450℃の温度範囲でプラズマ励起されたフッ素に繰返し曝されるような環境下においても電極に著しく耐食性を付与することができることを見出した。
また、電極使用前に電極表面、或いは前記被覆層表面に予めフッ化マグネシウムからなる化合物層をイオンプレーティングその他の乾式処理法によって被着させておいてから使用に供するときは、プラズマ処理初期から所望のプラズマ処理を安定して行うことができる。
即ち、本発明の高周波プラズマ発生用電極は、半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、上記電極対が、被処理材を支持する電極と、この電極に対向的に配置され且つこの電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、上記電極および他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されていることを特徴とする。
或いは、本発明の高周波プラズマ発生用電極は、半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、電極対が、被処理材を支持する電極と、この電極に対向的に配置され且つこの電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、上記電極および他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されており、その電極および他の電極の表面にフッ化マグネシウム層を被着させたものである。
〔作 用〕
本発明の電極の少なくとも表面の主要構成成分であるマグネシウムとアルミニウムは、前述のクリーニングプロセスにおいて、C2F6またはCF4等から高周波の印加によって生じたフッ素ラジカルと反応してその表面にAlF3およびMgF2を生成する。AlF3の粒子は緻密ではないので、さらに表面からのフッ素ラジカルまたはフッ素イオンの侵入を抑制することは困難であるが、一方のMgF2粒子は緻密であるので、電極中のマグネシウム量が或る程度あれば、フッ素ラジカルの侵入を抑制するに充分な厚さの層を形成することが期待できる。
ここで「少なくとも」とは電極自体が上述の金属または合金で構成されている場合と電極の表面が上述の金属で被覆されている場合を言う。
電極材料又は被覆材料が純マグネシウムによって構成されるときはALF3とMgF2の競合生成の問題は起らない。しかし電極又は被覆層に6061アルミニウム合金の如き、マグネシウム含有量2重量%未満のアルミニウム合金を使用するときは合金中のマグネシウム量が不十分であるためにフッ素ラジカルの侵入を抑制するに足るフッ化マグネシウムの生成は期待出来ない。
本発明は目的に沿うようなアルミニウム合金は例えば、市販合金であれば5000系合金のようにマグネシウムを2重量%以上含有する合金である。また、電極にアルミニウム合金を使用する場合にアルミニウム合金表面に陽極酸化皮膜を施すことは電極の寿命の延長に若干の効果はあるが、これは必ずしも決定的なものではない。特にプラズマの発生に際してアーキング等の非定状電圧状態により陽極皮膜が破壊される場合には、侵食は速いスピードで進行してしまう。
マグネシウム以外に含有される元素としては、鉄、珪素、亜鉛、マンガン、銅、クロム、チタン等があるが、これらの元素はプラズマ処理初期においてフッ化物として散し、電極表面には残存せず、したがって電極の寿命には特に悪影響を及ぼさないから含有していても不都合ではないが、上記の元素が多量に含有されるプラズマ処理初期において散したフッ化物が生成した膜中に混入して膜の性能等を悪化させることがあるので、このような観点からは上記の元素は可及的少量とすることが好ましい。
なお、溶製にあたってベリリウムを0.005〜0.1重量%程度含有させてマグネシウムの酸化消耗を防止することができるが、プラズマ処理初期においてベリリウムがフッ化物として散し、生成した膜中に混入して膜の性能を悪化させることがあるので、このような観点からはベリリウムは可及的少量とすることが好ましい。
またアルミニウムの酸化皮膜はフッ素ラジカルと反応して徐々にAlF3に変化するので、いずれにしても、その防御作用は満足し得るものではない。
使用前の電極にイオンプレーティング、CVD等の乾式表面処理によって予めフッ化マグネシウム(MgF2)層を形成させておけば、形成されるMgF2層の厚さが安定するまでのプラズマ処理の処理枚数を減少できるので、被処理材の歩留を向上させることができ、その厚さを3〜4μmとしておくことによりプラズマ処理初期から所望のプラズマ処理を安定して行うことができる。しかしながら、これも6061合金の如きマグネシウム含有量の少ない電極では長期的な効果は望めない。
何れにしても高周波プラズマ発生用電極は純マグネシウムまたはマグネシウムを多量に含むマグネシウム合金、またはアルミニウムをベースとする合金であれば合金中にマグネシウム2重量%以上を含むアルミニウム合金を使用することが必須の要件であり、また他組成からなる電極表面に純マグネシウムまたはマグネシウム合金、または2重量%以上のマグネシウムを含むアルミニウム合金を被覆した電極を用いても同じ効果が得られる。
〔実施例〕
次に本発明の実施例について述べる。
実施例1
マグネシウムを2.3重量%含むアルミニウム合金(JIS5052)を用い、円盤状プラズマ電極を作成して下部電極とした。前記下部電極と対向して同一アルミニウム合金からなる上部電極を設けて、両極間にシリコンウェハを置いてTEOSと酸素の混合気体を用いて数Torrとし、且つRFパワーを4ワット/cm2としてシリコンウェハ上にSiO2膜を生成させた。このときの下部電極の温度は400℃であり生成時間は1分間であった。
シリコンウェハを取り出した後、下部電極の周辺及び上部電極に析出したSiO2を除去するためにCF4,C2F6および酸素の混合気体を用いて、RFパワー4ワット/cm2で90秒間クリーニングを実施することによって1サイクルの処理を終了した。
この一連の処理を繰返し5000回実施したところ、SiO2膜の生成速度および膜の物理的性質は所定の範囲内にあって、極めて良好な特性のものを安定して得ることができた。
下部電極はなお使用可能な状態であったが、検査のためこれを取り出したところ表面に褐色の膜が生成しているのが観察された。この部分の電極を切り出し膜断面の顕微鏡観察による膜厚測定とEPMAによる膜組成の測定を行なったところ、褐色膜の組成はMgF2であり、またその膜圧は7〜8μmであった。
実施例2
マグネシウムを5.0重量%含み且つ溶体化温度から水冷してマグネシウムを十分に固溶させたアルミニウム合金(JIS5056に0.01重量%のBeを添加)を用いて、実施例1と同様の一対のプラズマ電極を作成した。
これら一対の電極を用いて実施例1と同様に下部電極上にシリコンウェハを設置し、SiH4とNH3との混合気体を数Torrの真空度において両極間に導入しRFパワーを3.5ワット/cm2で90秒間印加して、Si3N4を下部電極上に設置したシリコンウェハ上に析出させた。
装置からシリコンウェハを取り出しC2F6とN2Oの混合気体を数Torrの真空度で導入して、RFパワー4ワット/cm2で90秒間両極間に印加して実施例1と同様電極のクリーニングを実施して、1サイクルの処理を完了した。この間の下部電極の加熱温度は400℃であった。
この一連の処理の繰り返しを5000回実施したが、Si3N4膜の生成速度および膜の物理的性質はいずれも所定の範囲内にあって、極めて良好な性質のものを安定して得ることが出来た。
5000回の処理が終了した後、電極の検査を実施したところ、電極表面には褐色の膜が生成していることが観察された。
実施例1と同様にして褐色膜を検査したところその組成はMgF2であり、また膜厚は7〜8μmであった。
処理期間中、上部婉曲の温度は250℃以下に保たれており電極表面の変色は下部電極に比べて軽度であった。上記と同様な検査を行なったところ3〜4μmのMgF2の生成が確認された。
実施例3
マグネシウムを4重量%含むアルミニウム合金を用いて実施例1と同様の一致のプラズマ電極を作成し、これらを20℃、18重量%の硫酸中において1A/dm2の電流密度で直流電流によって32分間の陽極酸化処理を施し、約9μmの酸化皮膜をその表面に生成させた。
このようにして得られた電極を使用して実施例1と同様、一連のシリコンウェハのSiO2処理とクリーニング処理を繰り返し行なった。繰り返し数が5000回に達してもウェハに対するSiO2の生成速度は低下せずまた、生成した膜の物理的性質に変化は認められなかった。
5000回の処理を終了した後、操業を中止して電極の検査を実施した。
電極表面は黒褐色に変化しており、この部分を切り出して実施例1と同様にして皮膜断面顕微鏡観察とEPMA観察による検査を行なったところ膜厚8〜9μmのMgF2膜が生成しているのが確認された。
実施例4
アルミニウム9重量%、亜鉛約1重量%を含み残部マグネシウムからなるマグネシウム合金を用いて実施例1と同様にして一対のプラズマ電極を作成し、この電極を使用して実施例1と同様、シリコンウェハに対するSiO2処理及び電極のクリーニング処理の一連の処理を繰り返し行なった。
繰り返し数が5000回に達してもシリコンウェハに対するSiO2の生成速度は低下せず、また生成した膜の物理的性質の変化は認められなかった。
5000回で操業を中止して、電極の検査を実施した。
電極表面は黒褐色に変化しており、この部分を切り出して実施例1と同様にして断面顕微鏡観察とEPMA観察による検査を行なったところ、膜厚6〜8μmのMgF2膜の生成が確認された。
実施例5
99.85重量%のマグネシウムを用いて実施例1と同様にして一対のプラズマ電極を作成し、この電極を使用して実施例1と同様、シリコンウエハに対するSiO2処理及び電極のクリーニング処理の一連の処理を繰り返し行った。
繰り返し数が5000回に達してもシリコンウェハに対するSiO2の生成速度は低下せず、また生成した膜の物理的性質の変化は認められなかった。
5000回で操業を中止して、電極の検査を実施した。
電極表面は黒褐色に変化しており、この部分を切り出して実施例1と同様にして断面顕微鏡観察とEPMA観察による検査を行なったところ、膜厚6〜8μmのMgF2膜の生成が確認された。
比較例1
マグネシウムを1重量%含むJIS6061アルミニウム合金を用いて、実施例1と同様にして一対のプラズマ電極を作成し、この電極を使用して実施例1と同様シリコンウェハに対するSiO2の成膜処理および電極のクリーニング処理の一連の処理を繰り返し行なった。
繰り返し数が2000回に達したところで、成膜速度が所定の範囲に入らなくなった。
操業を中止して電極を検査したところ、電極表面は黒色に変色しており、且つ粟状の突起が生成していた。
電極から突起を含む部分を切り出し、突起部の断面顕微鏡観察を行なったところ、突起部下部ではアルミニウムが侵食されており、その侵食深さは最も深いところで300μmに達していることが分かった。
次に、EPMAで組成分析を実施したところ、侵食部はAlF3とMgF2の混合物からなっていることが判明した。
比較例2
マグネシウムを1重量%含むJIS6061アルミニウム合金を用いて、実施例1と同様にして一対のプラズマ電極を作成し、これを20℃、18重量%の硫酸中で1A/dm2の電流密度で直流電流によって32分間の陽極酸化処理を施し、その表面に約9μmの酸化皮膜を生成させた。
この電極を使用して実施例1と同様のシリコンウェハに対するSiO2の成膜処理と電極のクリーニング処理の一連の処理を繰り返し行なったところ、繰り返し数が約3000回に達したところで、成膜速度を所定範囲内に維持することが困難になり操業を停止した。
電極を取り出して観察したところ、特に下部電極の表面は激しく腐食されていて、所々腐食生成物の脱落も見られた。
実施例1と同様な検査によって腐食生成物の調査をしたところ、AlF3とMgF2との混合物からなるものであることが判明した。また腐食層の深さは300μmに達することも分かった。
比較例3
マグネシウムを1重量%含むJIS6061アルミニウム合金を用い、実施例1と同様にして一対のプラズマ電極を作成した。さらにこの電極の表面にイオンプレーティングと蒸着とを併用してMgF2を6μm形成した。
この電極を使用して実施例2と同様、シリコンウェハに対してSi3N4の成膜処理と電極のクリーニング処理の一連の処理を繰り返した。繰り返し数が2500回に達したところで、成膜速度が所定の範囲に入らなくなり操業を中止した。
電極を取り出して検査をしたところ最初に被着させたMgF2皮膜は殆ど剥離し、電極は黒褐色に変化していた。
実施例1と同様な検査を行なったところ、黒褐色の膜はAlF3とMgF2の混合物であって、その膜厚は250〜350μmの範囲にあることが分かった。
〔発明の効果〕
以上述べたように本発明の電極によるときは高周波プラズマ発生による、フッ素含有ガス雰囲気下のプラズマ処理に際して450℃付近の比較的高温処理においても電極寿命を大幅に延長することができるし、またその処理安定性も優れているので工業的に卓越した発明であるといえる。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正の要旨は、本件特許第2963169号発明の特許明細書を平成13年3月30日付け訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、次の訂正事項a乃至cのとおりに訂正するものである。
(1)訂正事項a:請求項1を、「半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、前記電極および前記他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されている、ことを特徴とする高周波プラズマ発生用電極。」と訂正する。
(2)訂正事項b:請求項2を、「半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、前記電極対が、前記被処理材を支持する電極と、該電極に対向的に配置され且つ該電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、前記電極および前記他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されており、前記電極および前記他の電極の表面にフッ化マグネシウム層を被着させた、ことを特徴とする高周波プラズマ発生用電極。」と訂正する。
(3)訂正事項c:特許明細書(第7頁第16行乃至第8頁第5行)の「即ち本発明は減圧処理室内に、対向的に配置された少なくとも一対からなる電極間に高周波電力が印加され、プラズマを発生させるプラズマ発生用電極において、該電極の少なくとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含有するアルミニウム合金で構成されていること、また必要に応じて使用前に電極表面にフッ化マグネシウムの被覆層を形成させることを特徴とする高周波プラズマ発生用電極である。」(特許公報第2頁右欄第39行乃至第46行)を、
明りょうでない記載の釈明を目的として、「即ち、本発明の高周波プラズマ発生用電極は、半導体素子の製造に用いられ且つ被処理材の高周波プラズマ処理が行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、上記電極対が、被処理材を支持する電極と、この電極に対向的に配置され且つこの電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、上記電極および他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されていることを特徴とする。或いは、本発明の高周波プラズマ発生用電極は、半導体素子の製造に用いられ、被処理材の高周波プラズマ処理が行われ、フッ化物ガスが供給され、且つ、高周波プラズマ中に発生したフッ素ラジカルによるクリーニングが行われる減圧処理室内に配置された少くとも一対からなる電極間に高周波電力を印加して、プラズマを発生させるように構成したプラズマ発生用電極において、電極対が、被処理材を支持する電極と、この電極に対向的に配置され且つこの電極と同一の材料で形成された他の電極とからなり、且つ、100〜450℃の範囲内の温度条件下で前記プラズマに曝されるものであり、上記電極および他の電極の少くとも表面がマグネシウム、マグネシウム合金またはマグネシウムを2重量%以上含むアルミニウム合金から構成されており、その電極および他の電極の表面にフッ化マグネシウム層を被着させたものである。」と訂正する。
異議決定日 2002-03-18 
出願番号 特願平2-211819
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C23C)
最終処分 取消  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 野田 直人
唐戸 光雄
登録日 1999-08-06 
登録番号 特許第2963169号(P2963169)
権利者 アプライド・マテリアルズ・ジャパン株式会社
発明の名称 高周波プラズマ発生用電極  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 山田 行一  
代理人 山田 行一  

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