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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B66F |
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管理番号 | 1062741 |
異議申立番号 | 異議2001-72701 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-06-02 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-10-03 |
確定日 | 2002-05-22 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3152185号「産業車両の車軸揺動角検出装置及び産業車両」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3152185号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3152185号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成9年11月18日に特許出願され、平成13年1月26日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1ないし4に係る発明の特許について、林秀一より特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成14年2月22日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 (1)訂正事項a 本件特許第3152185号の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の「走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器」との記載を、「走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために前記車体と前記車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパとは前記車軸の揺動中心から見て反対側で前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器」と訂正する。 (2)訂正事項b 特許明細書の段落【0013】の「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため請求項1に記載の発明では、走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、車軸揺動角検出装置は、前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器と、前記車体に対する車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構とを備え、前記機構を、前記車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構により構成した。」との記載を、「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため請求項1に記載の発明では、走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、車軸揺動角検出装置は、前記車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために前記車体と前記車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパとは前記車軸の揺動中心から見て反対側で前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器と、前記車体に対する車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構とを備え、前記機構を、前記車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構により構成した。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項aについて 訂正事項aは、特許明細書の「リアアクスル92とフレーム93との間に油圧式のダンパ95を介装し、コントローラ(図示せず)により電磁弁96のソレノイドを励消磁させて、ダンパ95の伸縮動をロック・アンロックに切替制御する。この構成によれば、ダンパ95を、リアアクスル92のショックアブソーバ機能と、リアアクスル92のロック制御機能の両方の目的のために使用するので、部品の共通化が図られ、装置の構造を簡単にすることができる。」(特許公報第2頁第3欄第24〜32行参照)との記載事項、「図5に示すように、車体フレーム1aとリアアクスル10との間には、1個の油圧式のダンパ(油圧シリンダ)13が両者を連結する状態で配設されている。」(特許公報第3頁第6欄第31〜34行参照)との記載事項、及び図5の記載に基づくものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項bについて 訂正事項bは、上記訂正事項aと整合を図るために発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。したがって、上記訂正事項aと同様に、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議の申立てについての判断 1.本件発明 上記II.で説示したとおり上記訂正が認められるから、本件特許第3152185号の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1ないし4」という。)は、平成14年2月22日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために前記車体と前記車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパとは前記車軸の揺動中心から見て反対側で前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器と、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構とを備え、前記機構を、前記車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構により構成した産業車両の車軸揺動角検出装置。 【請求項2】前記リンク機構は、前記車体または前記車軸に対して一端が固定端として連結された第1リンクと、前記検出器の入力軸に連結された第2リンクとを備え、前記第2リンクの腕の長さに対する、前記車軸の揺動中心から前記第1リンクの固定端までの距離の比が、少なくとも「1」を超えるように設定されている請求項1に記載の産業車両の車軸揺動角検出装置。 【請求項3】前記所定距離は、前記車軸の揺動中心から前記走行輪までの距離の半分以上である請求項1または請求項2に記載の産業車両の車軸揺動角検出装置。 【請求項4】請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の前記車軸揺動角検出装置を備えている産業車両。」 2.刊行物に記載された発明 (1)当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物1(特開昭58-167216号公報)には、以下の事項が記載されている。 a.「技術分野 この発明はフオークリフト等の産業車両における車軸固定装置に関するものである。」(第2頁右下欄第11〜13行) b.「目的 この発明は・・・その目的は荷役作業時における車軸の傾き・・・を検出し、前記車軸傾斜時には車体フレームに対し車軸を揺動可能な状態に保持するとともに、車体フレームと車軸との平行時においてフオークの高揚高時には双方を互いに固定することができ、車体の安全性を向上させることが可能な新規な産業車両における車軸固定装置を提供することにある。」(第3頁左上欄第18行〜同右上欄第9行) c.「第1図はフオークリフトの概略を示すものであり、1はフレーム、・・・3は後車軸・・・である。」(第3頁右上欄第13行〜同左下欄第1行) d.「第3図は後車軸3を後方から見たものであり、その後車軸3の中央にはセンターピン24が回動不能に固設され、このセンターピン24がフレーム1の下面に固定した前後一対の支持ブラケツト25(前方のみ図示)に軸着されることにより、後車軸3がフレーム1に対し摺動可能に支持されている。この後車軸3の上面一側部には下部ブラケツト26により傾き検出手段としての直線型ポテンシヨメータ27のメータ本体28が回動可能に取付けられており、・・・また、車体のフレーム1の下面において前記下部ブラケツト26と対向する上方位置に固定された上部ブラケツト30には、前記ポテンシヨメータ27のロツド31の上端部が回動可能に連結されている。そして、このポテンシヨメータ27はフレーム1の下面と車軸3の上面とが平行な状態において一定電圧を前記判別回路20に出力するとともに、後車軸傾斜時にはフレーム1と後車軸3との間隔の変化にしたがつて異なる電圧値を出力するようになつている。」(第3頁右下欄第14行〜第4頁左上欄第17行) e.「第4図は前記した揚高および傾き両検出手段の検出動作にもとづいて作動される車軸固定機構を示すものである。フレーム1上には固定用シリンダー32のシリンダチューブ33が後車軸3の軸線方向に沿つて固定され、その内部には中央にピストン34を有するロツド35がシリンダチューブ33の左右両端からそれぞれ外側に突出した状態で装備されている。また、フレーム1の左右両側部に固設された一対のブラケツト36には略L字状ロツクレバー37がそれぞれ垂直面上を回動可能に支持され、これら両レバー37の下端はそれぞれ後車軸3の左右両端部上面に接触されているとともに、それらの上端に上下方向に透設した長孔37aにはそれぞれ前記固定用シリンダ32のロツド35の左右両端が連節されている。そして、後車軸3の揺動時には両レバー37が互いに平行な状態で回動されることにより、そのロツド35がシリンダチューブ33に対して左右方向に移動されるようになつている。前記固定用シリンダ32のピストン34によつて区切られた左右のシリンダ室38,39間には管路40が配管され、この管路40の途中にはフレーム1上に設置されたソレノイドバルブ42が接続されている。そして、このソレノイドバルブ42は開路側ポート43と閉路側ポート44とを備え、内蔵されたソレノイド45により開閉動作され、開放時には前記管路40を介して両シリンダ室38,39間の連通が許容されるとともに、閉成時にはしゃ断されるようになつている。・・・ソレノイド45が非励磁の状態に保持されてソレノイドバルブ42が開放される。すると、固定用シリンダ32の左右両シリンダ室38,39との間が連通可能となつて、ロツド35の左右動が許容されるため、両ロツクレバー37が回動可能となり、フレーム1に対して後車軸3が揺動可能な状態に保持される。・・・ソレノイドバルブ42のソレノイド45を励磁させる。すると、ソレノイドバルブ34が閉成されて固定用シリンダ32の左右両シリンダ室38,39間の連通がしゃ断されるため、ロツド35の左右動が禁止される。このため、左右のロツクレバー37が回動不能となり、後車軸3の揺動が規制される。」(第4頁左上欄第18行〜第5頁左上欄第16行) 上記摘記事項a〜e、及び第1、3、4図の記載からみて、刊行物1には、 「走行輪を支持する後車軸3がフレーム1に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記フレーム1に対して前記後車軸3を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持するための車軸固定機構を設け、前記後車軸3の上面一側部に下部ブラケツト26により直線型ポテンシヨメータ27のメータ本体28が回動可能に取付けられ、前記フレーム1の下面において前記下部ブラケツト26と対向する上方位置に固定された上部ブラケツト30に前記直線型ポテンシヨメータ27のロツド31の上端部が回動可能に連結されて構成した産業車両の車軸揺動角検出装置。」の発明(以下、「刊行物1に記載された発明A」という。)及び、 「走行輪を支持する後車軸3がフレーム1に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記フレーム1に対して前記後車軸3を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持するための車軸固定機構を設け、前記後車軸3の上面一側部に下部ブラケツト26により直線型ポテンシヨメータ27のメータ本体28が回動可能に取付けられ、前記フレーム1の下面において前記下部ブラケツト26と対向する上方位置に固定された上部ブラケツト30に前記直線型ポテンシヨメータ27のロツド31の上端部が回動可能に連結されて構成した産業車両の車軸揺動角検出装置を備えている産業車両。」の発明(以下、「刊行物1に記載された発明B」という。)が記載されているものと認められる。 (2)当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物2(特開昭60-252011号公報)には、以下の事項が記載されている。 f.「本発明は車両のロール角検出装置・・・に関するものである。」(第1頁左下欄第13〜15行) g.「本発明は・・・車体ロール角の連続的な変化を容易かつ正確に検出できる車両のロール角検出装置を提供することにある。」(第2頁左上欄第3〜6行) h.「第1図は本発明にかかるロール角検出装置のセンサ部分の一例を示し、1はロアアームやアクスルビームなどのばね下部材、2は車体などのばね上部材、3はタイヤ・・・である。ばね下部材1とばね上部材2とは2本のリンク5,6により結合されており、リンク6の基端部にポテンショメータ7が設けられている。」(第2頁左上欄第15行〜同右上欄第1行) i.「上記の場合には、ばね下部材1とばね上部材2との相対変位をリンク6の回動に変換し、この回動角度からポテンショメータ7が逐次出力信号を出す回転形ポテンショメータを示したが、これに限らず、直線形ポテンショメータであってもよい。」(第2頁右上欄第7〜11行) 上記摘記事項f〜i、及び第1図の記載からみて、刊行物2には、 「タイヤ3を支持するアクスルビーム1と車体2との相対角度変位を検出する検出装置において、前記車体2に回転形ポテンショメータ7を支持させ、前記アクスルビーム1の揺動変位を回転変位に変換して前記回転形ポテンショメータ7の入力軸に出力する機構を設け、当該機構を、前記アクスルビーム1の揺動変位を回転変位に変換するリンク5,6を有するリンク機構により構成するとともに、前記リンク機構は、アクスルビーム1に対して一端が固定端として連結されたリンク5と、回転形ポテンショメータ7の入力軸に連結されたリンク6とを備える検出装置。」という発明が記載されていると認められる。 (3)当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物3(特開昭60-33169号公報)には、以下の事項が記載されている。 j.「リンク比によつては操向量を拡大して検出精度の向上を図ることも容易である。」(第1頁右下欄第17〜18行) k「操向前車輪(4)の操向回動量を検出するポテンシヨメーターであるセンサー(8)の取付構造を第3図によつて詳述すると、・・・OA=OBとすると、OA=CA=CBならば実回動角(θ2-θ1)とセンサーの回動角が等しくなる。また、OA>(CA,CB)ならば、次式の計算によつて・・・実回動角よりも拡大されたものになり、一層検出精度の向上が図れる。」(第2頁左上欄第17行〜同左下欄第3行:なお、刊行物3原文においては、「OA」「OB」「CA」「CB」に上線が付されている。) 3.対比・判断 (1)本件発明1について 本件発明1と刊行物1に記載された発明Aとを対比すると、後者の「走行輪を支持する後車軸3」は、その機能・構造からみて、前者の「走行輪を支持する車軸」に相当し、以下同様に、「フレーム1」は「車体」に、「産業車両」は「産業車両」にそれぞれ相当するものと認められる。 一方、車軸の揺動角度を検出する検出器について、前者の「検出器」と後者の「直線型ポテンシヨメータ27」は、共に車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に配置されているものであるから、両者は共に、「車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に配置された検出器」といえるものである。 また、前者の「ダンパ」と後者の「車軸固定機構」は、共に車体に対して車軸を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持し得るものであるから、両者は共に、「車体に対して車軸を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持する機構」といえるものである。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 【一致点】 走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記車体に対して前記車軸を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持する機構を有し、前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に配置された検出器を備えた産業車両の車軸揺動角検出装置。 【相違点】 イ.「車体に対して車軸を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持する機構」(以下、「事項A」という。)の機能・構造、及び事項Aと検出器との配設位置について、本件発明1は、事項Aを「車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために車体と車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパ」で構成し、事項Aとは車軸の揺動中心から見て反対側の位置に検出器を配設するのに対し、刊行物1に記載された発明Aは、その機能について、事項Aの「車体に対して車軸の揺動を規制した状態に保持する」というロック制御機能については認められるものの、車体に対して車軸を揺動可能に保持した場合の「ショックアブソーバ機能」については明らかでなく、また、その構造について、事項Aは「車体と車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパ」で構成されるものではなく、さらに、その配設位置に関して、検出器は、車軸の揺動中心から見て一方側の位置に配設されるものではあるが、事項Aとの相対位置関係について、事項Aとは車軸の揺動中心から見て反対側の位置といえるものではない点。 ロ.検出器及びその付帯機構について、本件発明1は、車体と車軸のいずれか一方に検出器を支持するものであり、さらに、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構を備え、前記機構を、前記車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構により構成しているのに対し、刊行物1に記載された発明Aは、車軸の上面一側部に下部ブラケツト26により直線型ポテンシヨメータ27のメータ本体28が回動可能に取付けられ、車体の下面において前記下部ブラケツト26と対向する上方位置に固定された上部ブラケツト30に前記直線型ポテンシヨメータ27のロツド31の上端部が回動可能に連結されて構成されている点。 上記相違点イ、ロについて検討する。 〈相違点イについて〉 本件発明1及び刊行物1に記載された発明Aと同様に、「走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられるとともに、前記車体に対して前記車軸を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持する機構を有する産業車両」に関する技術分野において、「車体に対して車軸を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持する機構」を、「車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために車体と車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパ」で構成するとともに、当該ダンパを、「車軸の揺動中心からみて片側の位置」に配設する点は、従来周知の技術的事項である{例えば、特開平9-286218号公報(第3頁第4欄第38行〜第4頁第5欄第33行、第2図等に記載される「油圧式ダンパー12」)、実願昭57-67535号(実開昭58-170209号)のマイクロフィルム(明細書第2頁第10〜15行、同第4頁第1行〜同第5頁第15行、第1、2図等に記載される「オイルダンパ4」)等参照}。 そして、上記周知の技術的事項は、前示のとおり刊行物1に記載された発明Aと同様の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載された発明Aに上記周知の技術的事項を適用する点に格別困難性は認められず、さらに、その適用に際して、ダンパとは車軸の揺動中心から見て反対側の位置に検出器が位置するように配設する点は、当業者が設置スペース等を考慮して適宜設定する設計事項であるといわざるを得ない。 してみると、上記相違点イに係る本件発明1を特定する事項は、刊行物1に記載された発明Aに、上記周知の技術的事項を適用して当業者が容易に想到できたものと認められる。 〈相違点ロについて〉 刊行物2には、「タイヤ3を支持するアクスルビーム1と車体2との相対角度変位を検出する検出装置において、前記車体2に回転形ポテンショメータ7を支持させ、前記アクスルビーム1の揺動変位を回転変位に変換して前記回転形ポテンショメータ7の入力軸に出力する機構を設け、当該機構を、前記アクスルビーム1の揺動変位を回転変位に変換するリンク5,6を有するリンク機構により構成するとともに、前記リンク機構は、アクスルビーム1に対して一端が固定端として連結されたリンク5と、回転形ポテンショメータ7の入力軸に連結されたリンク6とを備える検出装置。」という発明が記載されていると認められ(上記III.2.(2)参照)、上記刊行物2に記載された発明の「タイヤ3」は、その機能・構造からみて本件発明1の「走行輪」に相当し、以下同様に、「アクスルビーム1」は「車軸」に、「回転形ポテンショメータ7」は「検出器」に、「アクスルビーム1の揺動変位を回転変位に変換するリンク5,6を有するリンク機構」は「車軸の揺動変位を回転変位に変換するリンク機構」にそれぞれ相当すると認められることから、上記刊行物2に、「走行輪を支持する車軸と車体との相対角度変位を検出する検出装置において、前記車体に検出器を支持させ、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構を設け、当該機構を、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換するリンク機構により構成した検出装置。」という発明が記載されていることは明らかである。 そして、当該発明は、本件発明1及び刊行物1に記載された発明Aと同様に、「車軸と車体との相対角度変位を検出する検出装置」という点において同一の技術分野に属するものであり、加えて、直線形ポテンショメータ及び回転形ポテンショメータは、当業者が適宜選択的に用いることのできる検出器であると認められることから(上記III.2.(2)摘記事項i参照)、刊行物1に記載された発明Aの直線型ポテンシヨメータを用いた検出器に、上記刊行物2に記載された発明を適用する点に格別困難性は認められない。 さらに、回転形ポテンショメータを用いた検出器に係り、回転形ポテンショメータの検出精度を向上させるために、リンク比を調整し、「実際の操向量を拡大された回転変位に変換して回転形ポテンショメータの入力軸に出力する」ことは、刊行物3にも記載されているように従来周知の技術的事項であると認められることから(上記III.2.(3)参照)、刊行物1に記載された発明Aに、刊行物2に記載された発明を適用するに際し、「車軸の揺動変位を回転変位に変換するリンク機構」を「車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構」とする点は、当業者が必要に応じ適宜採用し得るものと認められる。 してみると、上記相違点ロに係る本件発明1を特定する事項は、刊行物1に記載された発明Aに刊行物2に記載された発明を適用する際、上記周知の技術的事項を加味して当業者が容易に想到できたものと認められる。 そして、本件発明1の奏する作用効果は、刊行物1に記載された発明A、刊行物2に記載された発明、及び上記周知の技術的事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって格別なものとはいえない。 したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明A、刊行物2に記載された発明、及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を特定する事項の一部をさらに限定して発明を特定するものであるから、本件発明2と刊行物1に記載された発明Aとを対比すると、両者は、上記III.3.の「(1)本件発明1について」の項に示した一致点で一致し、同「(1)本件発明1について」の項に示した相違点イ、ロと実質的に同じ相違点に加え、次の相違点ハで相違するものである。 【相違点】 ハ.検出器の付帯機構について、本件発明2は、「リンク機構は、車体または車軸に対して一端が固定端として連結された第1リンクと、検出器の入力軸に連結された第2リンクとを備え、前記第2リンクの腕の長さに対する、前記車軸の揺動中心から前記第1リンクの固定端までの距離の比が、少なくとも「1」を超えるように設定されている」のに対し、刊行物1に記載された発明Aはそれを備えていない点。 上記相違点ハについて検討する。 上記III.3.(1)の「〈相違点ロについて〉」の項で説示したとおり、刊行物1に記載された発明Aに、刊行物2に記載された「走行輪を支持する車軸と車体との相対角度変位を検出する検出装置において、前記車体に検出器を支持させ、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構を設け、当該機構を、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換するリンク機構により構成するとともに、 前記リンク機構は、車軸に対して一端が固定端として連結された第1リンクと、前記検出器の入力軸に連結された第2リンクとを備える検出装置。」という発明を適用する点に格別困難性は認められない。 さらに、回転形ポテンショメータを用いた検出器に係り、回転形ポテンショメータの検出精度を向上させるために、「実際の操向量を拡大された回転変位に変換して回転形ポテンショメータの入力軸に出力する」ことは、刊行物3にも記載されているように従来周知の技術的事項であると認められることから(上記III.2.(3)参照)、刊行物1に記載された発明Aに、刊行物2に記載された発明を適用するに際して、拡大された回転変位量が得られるように、「第2リンクの腕の長さに対する、車軸の揺動中心から第1リンクの固定端までの距離の比が、少なくとも「1」を超えるように設定」する点は、当業者であれば必要に応じて適宜実施できる程度のものであるといわざるを得ない。 してみると、上記相違点ハに係る本件発明2を特定する事項は、刊行物1に記載された発明Aに刊行物2に記載された発明を適用する際、上記周知の技術的事項を加味して当業者が容易に想到できたものと認められる。 そして、本件発明2の奏する作用効果は、刊行物1に記載された発明A、刊行物2に記載された発明、及び上記周知の技術的事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって格別なものとはいえない。 したがって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明A、刊行物2に記載された発明、及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1または本件発明2を特定する事項の一部をさらに限定して発明を特定するものであるから、本件発明3が本件発明2を特定する事項の一部をさらに限定して発明を特定する場合、本件発明3と刊行物1に記載された発明Aとを対比すると、両者は、上記III.3.の「(1)本件発明1について」の項に示した一致点で一致し、同「(1)本件発明1について」の項に示した相違点イ、ロと実質的に同じ相違点、及び同「(2)本件発明2について」の項に示した相違点ハと実質的に同じ相違点に加え、次の相違点ニで相違するものである。 【相違点】 ニ.検出器の支持位置について、本件発明3は、車体と車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に検出器を支持するもので、「前記所定距離は、前記車軸の揺動中心から前記走行輪までの距離の半分以上である」のに対し、刊行物1に記載された発明Aはそれについて明らかでない点。 上記相違点ハについて検討する。 上記III.3.(1)の「〈相違点ロについて〉」の項で説示したとおり、刊行物1に記載された発明Aに、刊行物2に記載された「走行輪を支持する車軸と車体との相対角度変位を検出する検出装置において、前記車体に検出器を支持させ、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構を設け、当該機構を、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換するリンク機構により構成するとともに、 前記リンク機構は、車軸に対して一端が固定端として連結された第1リンクと、前記検出器の入力軸に連結された第2リンクとを備える検出装置。」という発明を適用する点に格別困難性は認められない。 さらに、回転形ポテンショメータを用いた検出器に係り、回転形ポテンショメータの検出精度を向上させるために、「実際の操向量を拡大された回転変位に変換して回転形ポテンショメータの入力軸に出力する」ことは、刊行物3にも記載されているように従来周知の技術的事項であると認められることから(上記III.2.(3)参照)、刊行物1に記載された発明Aに、刊行物2に記載された発明を適用するに際して、拡大された回転変位量が得られるように、車体に車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に検出器を支持するに際して、前記所定距離を、前記車軸の揺動中心から走行輪までの距離の半分以上に設定する点は、当業者であれば必要に応じて適宜実施できる程度のものであるといわざるを得ない。 してみると、上記相違点ニに係る本件発明3を特定する事項は、刊行物1に記載された発明Aに刊行物2に記載された発明を適用する際、上記周知の技術的事項を加味して当業者が容易に想到できたものと認められる。 そして、本件発明3の奏する作用効果は、刊行物1に記載された発明A、刊行物2に記載された発明、及び上記周知の技術的事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって格別なものとはいえない。 したがって、本件発明3は、刊行物1に記載された発明A、刊行物2に記載された発明、及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (4)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1ないし3のいずれか一つの発明を特定する事項に、さらに新たな事項を付加して発明を特定するものであるから、本願発明4と刊行物1に記載された発明Bとを対比すると、両者は、「走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記車体に対して前記車軸を揺動可能に保持、又は揺動を規制した状態に保持する機構を有し、前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に配置された検出器を有する産業車両の車軸揺動角検出装置を備えている産業車両。」の点で一致し、上記III.3.の「(1)本件発明1について」の項に示した相違点イ、ロと実質的に同じ相違点、同「(2)本件発明2について」の項に示した相違点ハと実質的に同じ相違点、及び同「(3)本件発明3について」の項に示した相違点ニと実質的に同じ相違点で相違するものである。 そして、上記相違点イないしニは、既に判断済みである。 してみると、本件発明4は、本件発明1ないし3と同様の理由により、刊行物1に記載された発明B、刊行物2に記載された発明、及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1ないし4についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 産業車両の車軸揺動角検出装置及び産業車両 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、 前記車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために前記車体と前記車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパとは前記車軸の揺動中心から見て反対側で前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器と、前記車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構とを備え、前記機構を、前記車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構により構成した産業車両の車軸揺動角検出装置。 【請求項2】 前記リンク機構は、前記車体または前記車軸に対して一端が固定端として連結された第1リンクと、前記検出器の入力軸に連結された第2リンクとを備え、前記第2リンクの腕の長さに対する、前記車軸の揺動中心から前記第1リンクの固定端までの距離の比が、少なくとも「1」を超えるように設定されている請求項1に記載の産業車両の車軸揺動角検出装置。 【請求項3】 前記所定距離は、前記車軸の揺動中心から前記走行輪までの距離の半分以上である請求項1または請求項2に記載の産業車両の車軸揺動角検出装置。 【請求項4】 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の前記車軸揺動角検出装置を備えている産業車両。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、車軸の揺動角を検出する産業車両の車軸揺動角検出装置及び産業車両に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、フォークリフト等の産業車両では、走行時における車体姿勢の安定を図るため、後輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に取付けられている。しかし、フォークリフトの旋回時には、遠心力による横向きの力が働くため、車軸が揺動すると却って車体を横方向に傾かせることになり、その走行安定性が低下する。 【0003】 そこで、特開昭58-211903号公報には、フォークリフトに遠心力を検出する旋回検出手段を設け、車両に働く遠心力の検出値が所定値以上になると、車軸を車軸固定機構にて固定する技術が開示されている。このフォークリフトでは、車軸が旋同時に固定されて車体の左右の傾きが小さく抑えられるため、安定な車体姿勢で旋回することができる。 【0004】 また、特開昭58-167215号公報には、フォークに積載された荷の荷重とフォークの揚高を検出し、車両重心が高くなった高揚高・高荷重のときに、車軸固定機構を作動させて車軸を固定する技術が開示されている。 【0005】 ところで、本願出願人は、車軸の揺動規制装置を図12に示すような簡単な構成にすることを提案している。同図に示すように、左右の後輪91を支持する車軸としてのリアアクスルビーム(以下、単にリアアクスルという))92はフレーム93に対してセンタピン94を中心に回動可能に支持されている。リアアクスル92とフレーム93との間に油圧式のダンパ95を介装し、コントローラ(図示せず)により電磁弁96のソレノイドを励消磁させて、ダンパ95の伸縮動をロック・アンロックに切替制御する。この構成によれば、ダンパ95を、リアアクスル92のショックアブソーバ機能と、リアアクスル92のロック制御機能の両方の目的のために使用するので、部品の共通化が図られ、装置の構造を簡単にすることができる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、後輪91の片方が段差や突起などに乗り上げた状態で、例えばフォークを上昇させて高揚高・高荷重の荷役ロック条件が成立すると、リアアクスル92はフレーム93に対して傾斜した状態でロックされる。その後、段差や突起がなくなるところまで移動したとき、リアアクスル92が傾斜してロックされているため、後輪91の片方が路面から浮き上がった状態になる。つまり、荷の積載時は車両の前後方向における重心が前輪寄りにあるため、乗り上げていた後輪91がそのまま浮き上がった状態となり、前側2輪と後側1輪の3点で車体は支持される。このような後輪91の片方が浮き上がった状態では、車体が不安定で走行安定性が得られ難い。 【0007】 また、後輪91の片方が浮き上がった状態からリアアクスル92のロックが解除されると、浮き上がった後輪91が路面に落下することになるため、大きな衝撃が伴なうという問題があった。このような大きな衝撃は荷崩れの原因にもなる。 【0008】 特開昭58-167215号公報に開示された装置では、車体(フレーム)と車軸との隙間に左右2つのブロックを挿入させて車軸を固定する機構であった。このため、電磁弁がロック状態に作動されても、車軸が車体に傾斜した状態ではブロックが挿入できず、車軸が機械的に固定されないようになっていた。よって、上記の問題が起こることはない。 【0009】 しかしながら、本願出願人が提案しているダンパ95を制御してリアアクスル92のロック制御を行う構成では、例えば高揚高・高荷重の荷役状態となって電磁弁96がロック状態に作動されれば、リアアクスル92がフレーム93に対して傾斜する状態でもリアアクスル92がロックされる。このため、上記の問題が発生することになる。 【0010】 そこで、本願出願人は、車軸の揺動角を検出し、高揚高・高荷重のときは車軸が傾斜していないときにだけリアアクスル92をロックすることを提案している。車軸の揺動角の検出方法としては、例えばセンタピン94にポテンショメータを設けるなどしてリアアクスル95の中心での回転を検出する構成が考えられる。ところが、リアアクスルがフレームに対して揺動できる角度範囲は非常に小さい(例えば5°以下)ため、このような検出方法では高い検出精度を得ることができない。 【0011】 また、フレーム93に対するリアアクスル92の組付け位置には機台間でばらつきがある。このため、リアアクスル92の揺動角の検出精度を高めるには、検出精度の高いセンサを使用したり、センサの組付精度を高くする必要が生じる。このことは、検出精度の高い高価なセンサを使用することを意味し、部品コストの上昇を招くとともに、センサの組付精度を高める必要から組付作業を面倒なものにする。このため、比較的安価なセンサを使用し、しかもリアアクスル92の組付けのばらつきも考慮せずにセンサなどの組付作業を簡単に済ませられてリアアクスル92の揺動角の検出精度を向上できる揺動角検出装置が要望される。 【0012】 本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、産業車両において、走行輪を支持する車軸の揺動角を精度よく検出することができる産業車両の車軸揺動角検出装置及び産業車両を提供することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため請求項1に記載の発明では、走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、車軸揺動角検出装置は、前記車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために前記車体と前記車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパとは前記車軸の揺動中心から見て反対側で前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器と、前記車体に対する車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構とを備え、前記機構を、前記車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構により構成した。 【0014】 請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記リンク機構は、前記車体または前記車軸に対して一端が固定端として連結された第1リンクと、前記検出器の入力軸に連結された第2リンクとを備え、前記第2リンクの腕の長さに対する、前記車軸の揺動中心から前記第1リンクの固定端までの距離の比が、少なくとも「1」を超えるように設定されている。 【0015】 請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記所定距離は、前記車軸の揺動中心から前記走行輪までの距離の半分以上である。 【0016】 請求項4に記載の発明では、産業車両には、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の前記車軸揺動角検出装置が備えらている。 【0017】 (作用) 従って、請求項1に記載の発明によれば、走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動することで、産業車両の車体姿勢が安定する。車体と車軸とのいずれか一方に支持された検出器の入力軸には、車軸の揺動変位が機構により変換された回転変位が入力される。揺動時の車軸の揺動変位は、その揺動中心から離れる部位ほど大きい。従って、車軸の揺動中心における回動角が小さくても、車軸の揺動中心から所定距離だけ離れた検出器には、車軸の揺動端寄りの揺動変位が変換された、車軸の揺動中心での回動角に比べて大きな回転変位が入力される。また、リンク機構により車軸の揺動変位が回転変位に変換され、その回転変位に変換された回動量だけ検出器の入力軸は回動する。入力軸の回動量(回動角)は、車軸の揺動中心における回動角が拡大された値となる。よって、検出器の位置を単に車軸の揺動中心から所定距離を離しただけの構成に比べ、その拡大倍率を高くすることが可能になる。また、検出器としてポテンショメータ等の構造の簡単な回転検出器を用いることが可能になる。 【0018】 請求項2に記載の発明によれば、検出器の入力軸に連結された第2リンクの腕の長さに対する、車軸の揺動中心から第1リンクの固定端までの距離の比が、少なくとも「1」を超えるため、車軸の揺動中心における回動角がリンク機構を介して拡大され、その拡大された回転量だけ入力軸が回動する。 【0019】 請求項3に記載の発明によれば、検出器は、車軸の揺動中心と走行輪までの距離の半分以上は揺動中心から離れているので、検出器の入力軸に入力される変位を、車軸の揺動中心における回動角あるいは変位に比べて大きくすることが可能になる。 【0020】 請求項4に記載の発明によれば、産業車両には、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車軸揺動角検出装置が備えらているため、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明と同様の作用が得られる。 【0021】 【0022】 【発明の実施の形態】 (第1実施形態) 以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。 【0023】 本実施形態における産業車両としてのフォークリフト1は、前輪駆動・後輪操舵の四輪車である。図6に示すように、左右一対のアウタマスト2間に昇降可能に設けられたインナマスト3には、その上部のスプロケットに掛装されたチェーン(いずれも図示せず)を介してフォーク4が昇降可能に吊下されている。アウタマスト2は車体としての車体フレーム1aに対してティルトシリンダ5を介して傾動可能に連結されている。インナマスト3の上端部にピストンロッド6aを連結するリフトシリンダ6が駆動されることにより、フォーク4が昇降する。 【0024】 左右の前輪7はデフリングギア8(図4に示す)及び変速機(図示せず)を介してエンジン9と作動連結され、エンジン9の動力によって駆動される。図4,図5に示すように、車体フレーム1aの後下部には、車軸としてのリアアクスル10が車幅方向へ延びた状態でセンタピン10aを中心に上下方向に揺動(回動)可能に支持されている。走行輪としての左右の後輪11は、リアアクスル10に配設されたステアリングシリンダ(図示せず)の左右一対のピストンロッドに操向可能に作動連結され、ハンドル12の操作に基づいてステアリングシリンダが駆動されることにより操舵される。 【0025】 図5に示すように、車体フレーム1aとリアアクスル10との間には、1個の油圧式のダンパ(油圧シリンダ)13が両者を連結する状態で配設されている。ダンパ13は、シリンダ13aを車体フレーム1aに連結するとともに、ピストン13bから延びるピストンロッド13cをリアアクスル10に連結する状態にある。 【0026】 ダンパ13は、第1管路P1および第2管路P2を介して電磁切換弁14と接続されている。各管路P1,P2は、シリンダ13a内においてピストン13bにより区画された第1室R1と第2室R2のそれぞれに連通している。電磁切換弁14は、ノーマルクローズタイプの2ポート2位置切換弁であって、そのスプールには止弁部15と流弁部16が形成されている。第2管路P2から分岐した第3管路P3の末端には、作動油が貯溜されたアキュムレータ17がチェック弁18を介して接続されている。ダンパ13内で漏れ等のために不足した作動油は、アキュムレータ17から補給される。また、第2管路P2上には絞り弁19が設けられている。 【0027】 電磁切換弁14のスプールが図5に示す遮断位置に配置されると、ダンパ13の両室R1,R2間での作動油の流出・流入が不能になって、リアアクスル10がロックされる。一方、電磁切換弁14のスプールが連通位置(図5の状態からスプールが反対位置に切換えられた位置)に配置されると、ダンパ13の両室R1,R2間での作動油の流出・流入が可能になって、リアアクスル10が自由に揺動できるフリー状態になる。リアアクスル10は車体フレーム1aの下部に形成された一対のストッパ1bに当接することで、その揺動範囲が最大±4°に規制されるようになっている。電磁切換弁14は図6に示すように車体前部に組付けられたコントローラ20により切換制御される。 【0028】 図4に示すように、フォークリフト1には、ヨーレートセンサ21、車速センサ22、揚高センサ23,24、圧力センサ25および検出器としての揺動角センサ(ポテンショメータ)26が設けられている。各センサ21〜26は、リアアクスル10の揺動を規制(ロック)するスウィング制御に使用されるものである。各センサ21〜26は、いずれもコントローラ20に接続されている。 【0029】 ヨーレートセンサ21は例えばジャイロスコープからなり、車体のヨーレート(角速度)Y(rad/sec)を検出可能な所定の向きに保持され、コントローラ20と共に車体前部に組付けられている。ジャイロスコープは圧電式ジャイロスコープ、ガスレート式ジャイロスコープ、光学式ジャイロスコープ等のどの方式のものを使用してもよい。 【0030】 車速センサ22は、デフリングギヤ8の回転速度を検出してフォークリフト1の車速Vを間接的に検出する。車速センサ22の検出値はコントローラ20に出力される。 【0031】 2個の揚高センサ23,24は、アウタマスト2の所定高さにそれぞれ取付けられている。揚高センサ23,24は例えばリミットスイッチからなる。フォーク4の最大揚高Hmaxは5mまたは6mである。揚高センサ23はフォーク4の揚高が2m未満でオフ、2m以上でオンし、揚高センサ24はフォーク4の揚高が4m未満でオフ、4m以上でオンする。よって、2個の揚高センサ23,24のオン・オフの組合わせをみることで、コントローラ20はフォーク4の揚高が、低揚高(0〜2m)、中揚高(2〜4m)、高揚高(4m以上)の3つの高さ範囲のうちどの範囲に属するのかを検出する。 【0032】 圧力センサ25は、リフトシリンダ6の底部に取付けられ、そのシリンダ内の油圧を検出する。リフトシリンダ6の油圧とフォーク4に積載された荷の荷重wが比例関係にあることから、圧力センサ25により荷重wを間接的に検出している。圧力センサ25の検出値はコントローラ20に出力される。コントローラ20は、圧力センサ25の検出値に基づいて低荷重(w≦wO)と高荷重(w>wO)を判別する。 【0033】 揺動角センサ(ポテンショメータ)26は、図4,図5に示すように車体フレーム1aの側面に支持され、リアアクスル10の揺動角θを検出するためのものである。ポテンショメータ26は、リアアクスル10の揺動変位が機構としてのリンク機構27を介して回転変位に変換された回転量を検出する。ポテンショメータ26の検出値はコントローラ20に出力される。ここで、揺動角θは、車体フレーム1aの水平線を基準の0°としたときのリアアクスル10の基準に対する傾斜角で表わされ、-4°≦θ≦4°の範囲の値をとる。なお、揺動角θを検出するためのポテンショメータ26およびリンク機構27などによって揺動角検出装置28が構成されている。 【0034】 この揺動角検出装置28の詳しい構造について、図1〜図3に基づいて以下に説明する。 図1,図2に示すように、車体フレーム1aの右側面には、ブラケット29がリアアクスル10の上面に対向するように下方に斜めに延出する状態でボルト30により固定されている。ブラケット29には、コ字状のカバー31が後輪11からの泥や飛び石等から保護できる向きでボルト32により固定されている。ポテンショメータ26は、カバー31に外側から貫通させた状態で支持板33を介してネジ34により固定されている。ポテンショメータ26の入力軸26aは、カバー31のコ字状内側に配置されている。 【0035】 リアアクスル10の上面にはカバー31のほぼ真下の位置に、ブラケット35がボルト36により固定されている。ブラケット35は上方に延出する延出部35aを有する。リンク機構27は、長さの異なる2本のリンク37,38を備える。短い方の第1リンク37の一端はジョイント38を介して延出部35aに回動可能に連結されている。第1リンク37の他端はジョイント39を介して長い方の第2リンク38の一端と回動可能に連結されている。第2リンク38の他端はポテンショメータ26の入力軸26aに固定されている。リアアクスル10の揺動変位はリンク機構27を介してポテンショメータ26の入力軸26aの回転変位に変換される。 【0036】 つまり、センタピン10aにおけるリアアクスル10の中心の回転を検出するのではなく、リアアクスル10の揺動変位が相対的に大きくなるセンタピン10aから所定距離だけ離れた位置での揺動変位を検出することで、検出変位を大きくとれるようにしている。但し、ポテンショメータ26を後輪11に近づけ過ぎると、後輪11が巻き込んだ異物によりポテンショメータ26が損傷する恐れがあるため、ポテンショメータ26を後輪11より少し内側に控えて配置させている。また、カバー31によりポテンショメータ26を保護したのもそのような理由があるためである。 【0037】 ここで、図1に示すように、センタピン10aの中心Oから第1リンク37の固定端(ジョイント39の軸心点)までの距離をA、第2リンク38の腕の長さ(入力軸26aとジョイント40との各軸心点間距離)をBとする。リアアクスル10が回動するときの変位角Δθが入力軸26aの回転角(回転量)に変換される際の倍率Kは、比A/Bで示される(K=A/B)。そして、本実施形態では、倍率K(=A/B)を大きくできるように第1リンク37の固定端の位置をセンタピン10aの中心から十分距離がとれるように、前述したようにできる限り後輪11に近づけるとともに、第2リンク38をなるべく短くしている。つまり、図3に示すように、リアアクスル10の変位角Δθが倍率K(=A/B)に拡大された回転角K・Δθ(但しK>1)だけ入力軸26aが回転する。本実施形態では、A/B≒4に設定され、リアアクスル10の変位角Δθが約4倍(K≒4)の角度の回転量に変換されて入力軸26aに入力されるようになっている。なお、比A/Bは「1」を超えれば、Δθを拡大することはできる。 【0038】 次に、コントローラ20によるスウィング制御について説明する。 コントローラ20内のマイクロコンピュータは、予めROM(いずれも図示せず)に記憶したスウィング制御処理のプログラムデータを例えば数10ミリ秒毎に実行する。ここで、スウィング制御とは、走行状態や荷役状態を逐次検出し、その検出値が予め定められた条件を満たした時にリアアクスル10をロックする制御である。センサ21,22は走行状態を検出するために用いられ、センサ23,23,25は荷役状態を検出するために用いられる。 【0039】 本実施形態では、走行状態を判定するための物理量として、車両に働く横G(旋回時に機台横方向に働く遠心加速度)GSと、ヨーレートYの時間変化率であるヨーレート変化率ΔY/ΔTとを採用している。横Gの値GSは、ヨーレートYと車速Vを用いて、式 GS=V・Y より算出される。また、ヨーレート変化率ΔY/ΔTは、前回と今回のヨーレートYの差分から求められる。GS値とΔY/ΔT値のいずれか一方が各々の設定値(しきい値)gO,yO以上になるとリアアクスル10をロックさせるように制御する。 【0040】 また、荷役状態については、車両重心が高くなる高揚高・高荷重のときを、リアアクスル10をロックする荷役ロック条件とする。荷役ロック条件の成立時は基本的には常時ロックさせるようにしている。但し、ポテンショメータ26により検出された揺動角θが、リアアクスル10の車体フレーム1aに対する傾斜角が2°を超える角度範囲(θ>2°またはθ<-2°)(図8におけるフリー領域)にあるときには、荷役ロック条件が成立しても、リアアクスル10をロックさせないようにしている。これは、高揚高・高荷重のとき、後輪11の片方が段差や突起に乗り上げた状態でリアアクスル10をロックすることを防ぐためである。 【0041】 荷役ロック条件が成立か否かの判定と、設定値(しきい位置)gOの選定は、図7に示すマップMを参照して、荷重wと揚高Hの各検出値に基づいて行われる。高揚高(H>4m)かつ高荷重(w>wO)のときに荷役ロックの判定がなされる。横Gのしきい値gOには、2通りの値が設定されている。すなわち、低揚高(0〜2m)のときは例えば0.18(N)が設定され、中揚高(2〜4m)のときと、高揚高(4m以上)かつ低荷重(w≦wO)のときは、例えば0.08(N)が設定されている。各設定値gO,yOは、走行安定性を図るべく走行実験もしくは理論計算から求められており、その具体的な数値は機種や車両の使用条件等によって適宜変更できる。 【0042】 フォークリフト1の運転中、コントローラ20内のマイクロコンピュータはスウィング制御処理を実行し、ヨーレートY、車速V、揚高H、荷重w、揺動角θを読み込み、走行状態と荷役状態を調べる。走行状態については検出値Y,Vを用いて、ヨーレート変化率ΔY/ΔTと、横GをGS=V・Yを演算する。 【0043】 ヨーレート変化率ΔY/ΔTが設定値yO以上か、横Gの値GSがその時の荷役状態から決まるしきい値gO(=0.08または0.18)以上であるときに、リアアクスル10はロックされる。 【0044】 フォークリフト1が直進走行から旋回し始めたとき、ΔY/ΔT≧yOになった時点でリアアクスル10はロックされる。このため、横Gがしきい値gOに達する前に早めにリアアクスル10は水平状態でロックされる。また、旋回方向を切換えるとき、その切返し途中で横Gの値が「0」を通るが、ハンドル12の回転中のこのときにはΔY/ΔT≧yOに保たれるので、旋回方向を切換える間はリアアクスル10のロックが継続される。このため、車体の姿勢が安定する。 【0045】 また、荷役作業時には高揚高・高荷重のときは、揺動角θが-2°≦θ≦2°の範囲にあれば、リアアクスル10はロックされる。このため、リアアクスル10の車体フレーム1aに対する傾斜角θが2°以下である大抵の場合は、高揚高・高荷重になると、常にリアアクスル10がロックされる。このため、このように車体重心が高いときでも、車体が左右に傾き難く、安定な車体姿勢で荷役作業が行われる。 【0046】 そして、荷役作業のとき、左右の後輪11の片方が段差や突起に乗り上げるなどして、リアアクスル10が車体フレーム1aに対して2°を超えて傾いているとき(つまり、θ>2°またはθ<-2°のとき)は、高揚高・高荷重になっても、リアアクスル10はロックされない。つまり、リアアクスル10はフリー状態に保持される。このため、その後、段差や突起がなくなるところまで移動すると、リアアクスル10が揺動することで乗り上げていた後輪11が路面に接地する。従って、後輪11の片方が浮き上がった状態で走行することがなくなる。つまり、左右の後輪11が共に路面に接地し、前側二輪と後側二輪の四点で車体が支持されるため、車体の安定性が確保される。また、乗り上げていた後輪11は路面に接地する際、徐々に路面に接地することになるので、衝撃はさほど伴なわない。 【0047】 揺動角|θ|が2°を超えているときにリアアクスル10がフリー状態となるものの、リアアクスル10がストッパ1bに当たって車体の左右の傾きが最大4°で止まるので特に問題はない。なお、高揚高・高荷重のときで揺動角|θ|が2°を超えたときでも、GS≧gOとΔY/ΔT≧yOのうちいずれか一方が成立すれば、走行状態のロック条件の方が優先されてリアアクスル10はロックされる。 そして、ポテンショメータ26の入力軸26aは、リアアクスル10の変位角Δθがリンク機構27を介して約4倍に拡大された回転角(回転量)4Δθだけ回転することになるので、揺動角θは高い精度で検出される。このため、揺動角θに基づいて行われるスウィング制御は、精度の高い信頼性のよいものとなる。以上詳述したように本実施形態によれば、以下の効果が得られる。 【0048】 (a)ポテンショメータ26をセンタピン10aから所定距離だけ離れた位置で車体フレーム1aに支持するとともに、リンク機構27を介してリアアクスル10の変位角Δθを拡大することで入力軸26aの回転量を大きくしたので、揺動角θの検出精度を高めることができる。リアアクスル10の揺動角θが小さく、リアアクスル10の組付位置のばらつきが無視できないほどであっても、そのばらつきによる検出誤差が小さなものとなる。よって、ポテンショメータ26のような決して高精度とはいえないごく普通の検出器を使用することができる。そして、ポテンショメータ26を組付けるときもその組付精度を特に気にしなくても、所望の高い検出精度を得ることができる。従って、揺動角θに応じたリアアクスル10のロック制御の精度を高めることができる。また、ポテンショメータ26の使用によりセンサの部品コストを低く抑えられる。 【0049】 (b)第2リンク38の腕の長さBに対する、センタピン10aの中心Oから第1リンク37の固定端まで距離Aの比A/Bを「1」を超える値とし、本実施形態では特にA/B≒4としたので、揺動角θの検出倍率を約4倍にでき、揺動角θの検出精度を十分高くすることができる。 【0050】 (c)揺動角検出装置28を後輪11の少しセンタピン10a寄りに控えた位置に配置したので、揺動角検出装置28の構成部品が後輪11の巻き込み物と干渉して損傷する不具合を防ぐことができる。また、入力軸26aおよびリンク機構27をカバー31で覆ったので、泥や飛び石からこれらを保護することができる。このため、例えばポテンショメータ26が故障し難くなる。 【0051】 (d)ポテンショメータ26をコントローラ20と同じ車体フレーム1a側に支持したので、リアアクスル10が揺動することを考慮せずポテンショメータ26への配線を行うことができる。 【0052】 (e)高揚高・高荷重のときでも、リアアクスル10の揺動角|θ|が2°を超えているときにはリアアクスル10をフリー状態に保持するので、後輪11の片方が段差や突起に乗り上げた状態で、リアアクスル10がロックされることを回避できる。このため、その後、段差や突起がなくなるところまで移動した際、フリー状態にあるリアアクスル10が揺動して乗り上げていた後輪11が路面に接地することになるため、車体が安定した状態で荷役作業をすることができる。 【0053】 (f)高揚高・高荷重のときは、車体に対するリアアクスル10の傾きが2°以下となる大抵の場合は、リアアクスル10がロックされるので、高揚高・高荷重の車両重心の高いときには、車体が左右に傾き難く、荷役作業を安定に行うことができる。 【0054】 (第2実施形態) 次に、本発明を具体化した第2実施形態を図9に従って説明する。なお、揺動角検出装置の構成が異なるだけなので、前記第1実施形態と共通の部分については同じ符号を付してその説明は省略する。 【0055】 図9に示すように、リアアクスル10の上面に、ブラケット51はセンタピン10aから所定距離だけ離れた位置において上方に延びる状態でボルト52により固定されている。ブラケット51の上端部には検出器としてのストロークセンサ53が、リアアクスル10と平行な姿勢でその入力軸53aを内側に向けた状態で支持されている。車体フレーム1aの側面には、ストロークセンサ53の入力軸53aと対面する位置に被検出プレート54がボルト55により固定されている。入力軸53aは突出方向に付勢され、その先端に設けられた接触部53bが被検出プレート54に当接している。ストロークセンサ53のセンタピン10aからの距離は、センタピン10aの中心から後輪11の連結部までの距離の半分以上に設定されている。但し、ストロークセンサ53の配置位置は、後輪11の巻き込み物と干渉しない程度には内側に控えている。 【0056】 この揺動角検出装置56では、ストロークセンサ53をセンタピン10aから所定距離だけ離れたリアアクスル10の揺動端側にて支持しているので、リアアクスル10の揺動時におけるストロークセンサ53の変位量を大きく確保できる。このため、リアアクスル10の変位角Δθの割りに、入力軸53aの変位を長く確保できる。よって、揺動角θを高い検出精度で検出することができる。なお、ストロークセンサ53が変位する際に描く円弧に対してその接線方向と平行になるように入力軸53aの向きを定めれば、リアアクスル10の変位角Δθの割りに、入力軸53aの変位をより長く確保することができる。その他、第1実施形態で述べた(a),(e),(f)と同様の効果が得られる。 【0057】 (第3実施形態) 次に、本発明を具体化した第3実施形態を図10,図11に従って説明する。なお、揺動角検出装置の構成が異なるだけなので、前記第1実施形態と共通の部分については同じ符号を付してその説明は省略する。 【0058】 図10に示すように、リアアクスル10の上面にはセンタピン10aから所定距離だけ離れた位置に、支持部材61がボルト62により固定されている。支持部材61は四角状の箱の一部を切欠いた形状のカバー部61aを有する。検出器としてのポテンショメータ63はカバー部61aの側部に外側から貫通され、支持板64を介してボルト65により固定されている。 【0059】 入力軸63aの先端部には略L字状のレバー66が一体回転可能に固定され、レバー66の基部は支持部61bに支持された円筒67に挿通されている。円筒67内には、レバー66の基部に形成された鍔部66aと、円筒67の一端側部とのそれぞれに両端が係止された状態でコイルバネ68が挿着されている。レバー66はコイルバネ68によって一方向に回動付勢されている。揺動角検出装置69がリアアクスル10に組付けられた状態では、図10に示すようにレバー66は車体フレーム1aの側面に当接するように付勢される。 【0060】 ポテンショメータ63のセンタピン10aからの距離は、センタピン10aの中心から後輪11の連結部までの距離の半分以上に設定されている。但し、ポテンショメータ63の配置位置は、後輪11の巻き込み物と干渉しない程度には内側に控えている。また、カバー部61aは右側の後輪11からの泥や飛び石からポテンショメータ63の入力軸63aの周辺部分を保護している。 【0061】 この構成においても、ポテンショメータ63がセンタピン10aから所定距離だけ離れたリアアクスル10の揺動端部に配置されているため、リアアクスル10の揺動時におけるポテンショメータ63の変位が大きく確保される。このため、リアアクスル10の変位角Δθの割りに、レバー66の回動角(回動量)を大きく確保できる。よって、揺動角θの検出精度を高めることができる。その他、第1実施形態で述べた(a),(e),(f)と同様の効果が得られる。 【0062】 尚、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更し、例えば次のように実施することもできる。 ○ 車体と車軸との相対変位を検出できる構成であれば、検出器を車軸と車体のどちらに取付けても構わない。例えば第1実施形態において、揺動角センサ26をリアアクスル10に支持させてもよい。また、第2実施形態において、車体フレーム1aにストロークセンサ53を取付け、リアアクスル10に被検出プレートを取付けてもよい。さらに、第3実施形態において、揺動角検出装置69を車体フレーム1a側に取付け、レバー66をリアアクスル10の上面に当接させた状態で構成としてもよい。これらの第2および第3実施形態の変更例によれば、センサ53,63がコントローラ20と同じ車体フレーム1a側に支持されるので、センサ53,63への配線をリアアクスル10の揺動を考慮せず行うことができ、配線構造を面倒にしない。 【0063】 ○ また、検出器は変位の連続変化を検出できるものに限定されない。例えば複数のリミットスイッチを支持し、リアアクスルの揺動角に応じてリミットスイッチのオンする個数が異なるようにドグ等の被検出部を設定して、リミットスイッチのオン・オフの組合わせからリアアクスルの揺動角を検出する構成であっても構わない。 【0064】 ○ 走行状態を検出するためのセンサは、ヨーレートセンサと車速センサに限定されない。横Gとヨーレート変化率ΔY/ΔTを算出するのに必要な検出値を得ることができるセンサであればよい。例えばヨーレートセンサに替えて後輪11の操舵角(タイヤ角)を検出するタイヤ角検出器を採用し、タイヤ角と車速Vの2つの検出値を使って、横Gの値GS(=V2/r)やヨーレート変化率ΔY/ΔT(=V・Δ(1/r)/ΔT)を計算するようにしてもよい。なお、ここで「r」はタイヤ角から決まる旋回半径である。また、加速センサとヨーレートセンサの組合わせで、横Gの検出値GSやヨーレート変化率ΔY/ΔTを計算してもよい。 【0065】 ○ 走行状態を検出するための物理量は、横Gだけとしてもよい。ヨーレート変化率は必ずしも必要ではない。また、ヨーレート変化率ΔY/ΔTを使用する代わりに、横G変化率ΔG/ΔTを使用してもよい。 【0066】 ○ 荷役状態だけをみてスウィング制御をするようにしてもよい。すなわち、走行状態によるロック条件を無くし、荷役状態だけからリアアクスルをロックする装置において、車軸揺動角検出装置を採用してもよい。 【0067】 ○ スウィング制御のような車軸を揺動規制制御以外の制御を目的とした装置において、検出値として揺動角を検出するために車軸揺動角検出装置を使用してもよい。 【0068】 明細書中に記載した技術用語を以下のように定義する。 「車軸の揺動の規制:車軸の揺動範囲を少なくとも小さく制限すること。車軸を完全に固定することに限定されない。」 「産業車両:オペレータが操作する作業用移動体を装備する産業用の車両である。その作業は荷役作業に限定されない。フォークリフト以外に、パワーショベル,高所作業車等の建機を含む概念をいう。」 上記各実施形態から把握され、特許請求の範囲に記載していない技術思想(発明)を、その効果とともに以下に記載する。 【0069】 (イ)請求項1〜請求項5のいずれか一項において、前記揺動角検出装置は、車軸の揺動規制制御を行う装置を備える産業車両において、車軸の揺動規制制御をするうえで検出値の一つとして使用される車軸の揺動角を検出するために設けられたものである。この構成によれば、車軸の揺動規制制御において、車軸の揺動角の検出精度が高まり、その制御の信頼性を高めることができる。 【0070】 (ロ)請求項3において、前記比は「2」以上である。この構成によれば、車軸の揺動角を2倍以上に拡大でき、検出器による車軸の揺動角の検出精度を高めることができる。 【0071】 (ハ)請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、前記検出器はその入力軸が、少なくとも近い方の走行輪に対面する側においてカバーにより覆われている。この構成によれば、検出器の比較的弱い部分である入力軸を、カバーにより走行輪の巻き上げ物等から保護できる。 【0072】 (ニ)請求項1において、前記検出器はストロークセンサであり、前記機構は、前記車体と前記車軸のうち前記ストロークセンサが設けられた側でない方に支持された被検出部に当接した前記入力軸に、前記車軸の揺動変位が変換された直線変位が入力されるように設定されている。この構成によれば、車軸の変位角の割りにストロークセンサの入力軸の直線変位を大きくでき、ストロークセンサによる検出精度を高くすることができる。 【0073】 (ホ)請求項1において、前記検出器は回転変位を検出するものであって、前記機構は、前記車体または前記車軸に当接した状態で前記車軸の揺動変位に伴なって回動するレバーが、前記入力軸に連結されている。この構成によれば、車軸の揺動端部における揺動変位に応じて回転するレバーの回転を検出器は検出する。この構成の場合も、検出器の入力軸の回転角(回転量)を車軸の揺動中心での回動角に比べて大きくでき、検出器の検出精度を向上させることができる。 【0074】 【発明の効果】 以上詳述したように請求項1及び請求項4に記載の発明によれば、車体と車軸のいずれか一方に車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に検出器を支持し、車軸の揺動端での揺動変位が変換された、車軸の中心での回動角に比べて大きな回転変位が検出器の入力軸に入力されるようにしたので、車軸の揺動角がいかに小さくても、その検出精度を高めることができる。また、機構は、車軸の揺動中心での回動角を拡大した回転に変換するリンク機構であるので、単に検出器を車軸の揺動中心から所定距離だけ離して支持しただけの構成に比べ、その検出倍率を高くすることができる。 【0075】 請求項2及び請求項4に記載の発明によれば、検出器の入力軸に連結された第2リンクの腕の長さに対する、車軸の揺動中心から第1リンクの固定端までの距離の比を、「1」を超えるように設定したので、検出器の入力軸の回転量を車軸の回動角が拡大されたものとすることができる。 【0076】 請求項3及び請求項4に記載の発明によれば、検出器を車軸の揺動中心から走行輪までの距離の半分以上は揺動中心から離したので、入力軸に入力される変位量を、車軸の揺動中心における回動角や変位が拡大されたものとすることができる。 【0077】 【図面の簡単な説明】 【図1】第1実施形態における車軸揺動角検出装置の背面図。 【図2】同じく平面図。 【図3】同じく背面図。 【図4】フォークリフトにおける車軸揺動規制装置の摸式図。 【図5】フォークリフトの摸式背面図。 【図6】フォークリフトの側面図。 【図7】スウィング制御に使用するマップ図。 【図8】リアアクスルの揺動角に基づくロック条件を説明する線図。 【図9】第2実施形態の車軸揺動角検出装置の背面図。 【図10】第3実施形態の車軸揺動角検出装置の背面図。 【図11】同じく側断面図。 【図12】従来の車軸揺動機構を備える産業車両の部分背面図。 【符号の説明】 1…産業車両としてのフォークリフト、1a…車体としての車体フレーム、10…車軸としてのリアアクスル、11…走行輪としての後輪、13…車軸規制機構を構成するダンパ、14…電磁切換弁、20…コントローラ、26…検出器としてのポテンショメータ(揺動角センサ)、26a…入力軸、27…機構としてのリンク機構、28…車軸揺動角検出装置としての揺動角検出装置、37…第1リンク、38…第2リンク、53…検出器としてのストロークセンサ、53a…入力軸、54…機構を構成する被検出プレート、56…車軸揺動角検出装置としての揺動角検出装置、63…検出器としてのポテンショメータ、63a…入力軸、69…車軸揺動角検出装置としての揺動角検出装置。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 1.本件特許第3152185号発明の明細書中、特許請求の範囲の請求項1の「走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器」との記載を、「走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、前記車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために前記車体と前記車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパとは前記車軸の揺動中心から見て反対側で前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器」と訂正する。 2.本件特許第3152185号発明の明細書中、発明の詳細な説明の段落【0013】の「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため請求項1に記載の発明では、走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、車軸揺動角検出装置は、前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器と、前記車体に対する車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構とを備え、前記機構を、前記車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構により構成した。」との記載を、「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため請求項1に記載の発明では、走行輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に設けられた産業車両において、車軸揺動角検出装置は、前記車軸のショックアブソーバ機能とロック制御機能の両方の目的に使用するために前記車体と前記車軸との間に両者を連結する状態で配設した1個の油圧式のダンパとは前記車軸の揺動中心から見て反対側で前記車体と前記車軸のいずれか一方に前記車軸の揺動中心から所定距離を離した位置に支持した検出器と、前記車体に対する車軸の揺動変位を回転変位に変換して前記検出器の入力軸に出力する機構とを備え、前記機構を、前記車軸の揺動変位をその揺動中心における回動角が拡大された回転変位に変換するリンク機構により構成した。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2002-04-03 |
出願番号 | 特願平9-317103 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(B66F)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔 |
特許庁審判長 |
舟木 進 |
特許庁審判官 |
氏原 康宏 清田 栄章 |
登録日 | 2001-01-26 |
登録番号 | 特許第3152185号(P3152185) |
権利者 | 株式会社豊田自動織機 |
発明の名称 | 産業車両の車軸揺動角検出装置及び産業車両 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 林 孝吉 |
代理人 | 恩田 博宣 |