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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H03H
管理番号 1062763
異議申立番号 異議2001-72125  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-31 
確定日 2002-06-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3132065号「弾性表面波素子及びその製造方法」の請求項1、3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3132065号の請求項1、3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3132065号の請求項1に係る発明についての出願は、平成3年8月8日に特許出願され、平成12年11月24日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、雨山範子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年12月10日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
1)【請求項1】
「圧電体の上に誘電体が形成され、誘電体を形成していない圧電体層上に櫛形電極を形成してなることを特長とする弾性表面波素子。」とあるのを、
「圧電体の上に誘電体が形成され、上記圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成してなることを特長とする弾性表面波素子。」と訂正する。
2)【請求項3】
「圧電体の上に誘電体を形成したのち、誘電体を形成していない圧電体上に櫛形電極を形成、あるいは圧電体層の上に櫛形電極を形成したのち、櫛形電極を形成していない圧電体上に誘電体を形成することを特長とする弾性表面波素子の製造方法。」とあるのを、
「圧電体の上に誘電体を形成したのち、上記圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成、あるいは圧電体層の上に櫛形電極を形成したのち、上記圧電体の櫛形電極を形成していない側の表面に誘電体を形成することを特長とする弾性表面波素子の製造方法。」と訂正する。
3)明細書の発明の詳細な説明のうち【問題を解決するための手段】の欄における段落【0014】の記載を、請求項1の訂正に整合させる。

2-2.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
上記訂正1)は、「誘電体を形成していない圧電体層上に」の内容を明確にするために「上記圧電体の誘電体を形成していない側の表面に」と訂正しようとするものであり、上記訂正2)は、「誘電体を形成していない圧電体上に櫛形電極を形成」の内容を明確にするために「上記圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成」と訂正し、また、「櫛形電極を形成していない圧電体上に誘電体を形成」の内容を明確にするために「上記圧電体の櫛形電極を形成していない側の表面に誘電体を形成」と訂正しようとするものであり、上記訂正3)は、上記訂正1)、2)と整合を図るものであって、いずれも、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、かつ、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項及びそれから自明な範囲の事項であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
3-1.申立ての理由の概要
申立人は、本件請求項1、3に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明と同一もしくは同発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は同条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許を取り消すべき旨主張している。

3-2.本件の請求項1、3に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1、3に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、3に記載されたとおりのものである。

3-3.刊行物等
申立人の提出した甲第1号証刊行物である米国特許第4435441号明細書には、圧電体の上に誘電体が形成され、誘電体を形成していない圧電体層上に櫛形電極を形成してなる弾性表面波素子およびその製造方法について記載されている。

3-4.対比・判断
本件請求項1に係る発明と、甲第1号証刊行物に記載された事項とを対比すると、甲第1号証刊行物には、本件請求項1に係る発明の構成要件である「圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成してなる」点について開示がなく、またこれを示唆する記載もない。
本件請求項3に係る発明と、甲第1号証刊行物に記載された事項とを対比すると、甲第1号証刊行物には、本件請求項3に係る発明の構成要件である「圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成あるいは圧電体層の上に櫛形電極を形成したのち、櫛形電極を形成していない圧電体上に誘電体を形成する」点について開示がなく、またこれを示唆する記載もない。
そして、本発明は、上記構成要件により、「圧電体を基板として電極あるいは、ダイヤモンド等の、音速が圧電体のそれより大きい誘電体薄膜を形成することにより、研磨が困難な高い音速を持つ誘電体を研磨せず、また誘電体薄膜を成膜するための成膜用基材を使用することなしに、数100MHzから数GHz帯の高周波領域で動作する弾性表面波素子を供給することが出来る。」という、特許明細書の【発明の効果】の項に記載されたとおりの効果を奏するものである
したがって、本件請求項1、3に係る発明が甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると認めことはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1、3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
弾性表面波素子及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧電体の上に誘電体が形成され、上記圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成してなることを特長とする弾性表面波素子。
【請求項2】 圧電体の上に表面短絡用電極が形成され、その上に誘電体層が形成され、表面短絡用電極を形成していない圧電体面上に櫛形電極を形成してなることを特長とする弾性表面波素子。
【請求項3】 圧電体の上に誘電体を形成したのち、上記圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成、あるいは圧電体層の上に櫛形電極を形成したのち、上記圧電体の櫛形電極を形成していない側の表面に誘電体を形成することを特長とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項4】 圧電体の上に表面短格用電極を形成し、その上に誘電体を形成した素子に於て、表面短絡用電極を形成していない圧電体上に櫛形電極を形成、あるいは圧電体の上に櫛形電極を形成し、櫛形電極を形成していない圧電体上に表面短絡用電極を形成した後、その上に誘電体を積層、あるいは圧電体上に表面短絡用電極を形成し、表面短絡用電極を形成していない圧電体上に櫛形電極を形成した後、表面短絡用電極の上に誘電体を積層することを特長とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項5】 基板上に圧電体薄膜を形成した後、上記請求項3または請求項4記載の工程により形成される弾性表面波素子において、工程の最初あるいは途中あるいは最後に基板を除去することを特長とする弾性表面波素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、圧電体を用いた弾性表面波素子の製造方法に関し、特に圧電体上に伝搬速度の大きい誘電体を形成した弾性表面波素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体表面にエネルギーが集中して伝搬する弾性表面波を利用した弾性表面波素子は、小型で作製しやすく温度特性等が安定である為、TV受信用フィルター等として利用されている。一般に弾性表面波素子は、圧電体の表面に櫛形の電極を形成して構成されている。圧電体材料には、LiNbO3、LiTaO3、水晶等のバルク単結晶の他、ガラスの上にZnO薄膜を形成したものやサファイア基板上にZnO薄膜を形成したもの等が実用化されている。その1例を図6に示す。
【0003】
一般に弾性表面波素子の動作周波数は表面弾性波の伝搬速度及び波長で決定され、波長は図5に示すような櫛形電極の周期長で決定される。近年、伝送情報量が増大し、伝送信号がマイクロ波領域に拡大しつつあり、GHz帯で使用できる素子の需要が高まっている。同じ電極を用いた場合、即ち同じ波長で弾性表面波素子を使用する場合、弾性表面波素子の伝搬速度が大きい方が、高い周波数まで扱える。しかし、櫛形の電極は、半導体におけるパターン形成技術と同様にフォトリソグラフィー法により形成されるが、微細加工技術に限界があり、現在サブミクロンまで加工可能であるが、歩留まりが悪く大量生産は難しい。従って伝搬速度が大きい弾性表面波素子が必要となる。
【0004】
単結晶圧電体であるLiNbO3を用いた場合、伝搬速度は3500〜4000[m/s]、LiTaO3では3300〜3500[m/s]程度である。また誘電体基板上に圧電体薄膜を作製した弾性表面波素子の例として、ガラス基板上にZnO圧電膜を成膜したものでは最大3000[m/s]である。これらを弾性表面波素子として使用すると、周波数帯域が900MHzまでしか使用できない。
【0005】
一般に、誘電体基板上に成長させた圧電体薄膜を弾性表面波素子に使用する場合、誘電体基板材料の音速が圧電体の音速より大きいときには、伝搬速度の異なる複数の弾性表面波が生じる。弾性表面波の伝搬速度は、圧電体、及び誘電体の膜厚により異なり、これらの膜厚を制御することにより、動作周波数を特定できる。
【0006】
上記理由により、音速の大きい単結晶サファイア(横波の速度:6000m/s、縦波の速度:12000m/s)を基板とし、圧電体薄膜をそれらの上に形成した弾性表面波素子が試作されている。また例えば特公昭64-62911号公報に示されるように、物質中最高の音速を持つダイヤモンド(横波の速度:13000m/s、縦波の速度:16000m/s)を基材として用いる方法が考案されている。
【0007】
しかし、誘電体上に圧電体を形成する場合、誘電体及び圧電体の膜厚により弾性表面波の伝搬速度が異なる。誘電体の膜厚を固定すると、圧電体の膜厚は薄い方が伝搬速度は大きい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ダイヤモンド、Al2O3等の誘電体基板基材は高温で作製される。また基材作製が容易な多結晶を用いる場合が多く、表面の荒れや凹凸が問題である。このような基材上に直接圧電体薄膜を形成すると、弾性表面波の散乱の原因や、圧電体の膜厚変化、電極の形状変化等、弾性表面波素子作製上、悪影響を与える。従って、圧電体薄膜を形成する前に誘電体基板表面を研磨しなければならなかった。
【0009】
しかしながら高い音速を持つ材料は非常に硬いため鏡面研磨が困難である。例えばダイヤモンドを基板として使用する場合、高温水素ガス中でダイヤモンド表面を研磨する方法等があるが、Si単結晶と同程度に研磨するのは非常に困難であり、また多くの時間を要し実用的でない。またダイヤモンド、Al2O3等を成膜する為に、Si等の成膜用基材上に形成する必要があった。
【0010】
【発明の構成】
【問題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決し、数百MHzから数GHzでの高周波領域で使用可能な弾性表面波素子を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を達成したものである。
【0011】
本発明に従うと、音速の速い誘電体薄膜を成膜用基材を用いることなしに、圧電体上に形成でき、誘電体表面の研磨を必要としない弾性表面波素子が供給される。本願の最大の特徴は、圧電体と櫛形電極と誘電体とからなる弾性表面波素子であって、誘電体薄膜の成長完了面が弾性表面波素子の外面を形成してなるものである。さらに、これに表面短絡用電極を適宜設けることができる。本願で用いる圧電体基板や誘電体薄膜は、単結晶または多結晶いずれでも適用できる。誘電体薄膜としては、ダイヤモンド,Al2O3,BN等の材料を使用することができる。なかでもダイヤモンドは伝播速度が速いことから、本願に適した材料ということができる。
【0012】
本発明による弾性表面波素子は圧電体、音速が圧電体より速い誘電体、及び櫛形電極と表面短絡用電極を有する構造の弾性表面波素子を提供する。以下に4種類の異なる構造について説明する。図2および図3に本発明の弾性表面波素子の断面図を、また図1および図4に参考例の断面図を、それぞれ示す。
【0013】
図1は、圧電体1の表面に櫛形電極3を形成し、その上に圧電体の音速より速い音速を持つ誘電体2を形成した弾性表面波素子である。
【0014】
図2は、圧電体1を誘電体薄膜用の基材とし、圧電体1の表面に誘電体2を形成し、圧電体基板1において誘電体を形成しない側の表面に櫛形電極3を形成した弾性表面波素子である。
【0015】
図3は、圧電体1の表面に表面短絡用電極4を形成し、表面短絡用電極4を形成していない圧電体1の表面に、櫛形電極3を形成し、表面短絡用電極4の上に誘電体2を形成した弾性表面波素子である。
【0016】
図4は、圧電体1の表面に櫛形電極3を形成し、櫛形電極3を形成していない圧電体1の表面に、表面短絡用電極4を形成し、櫛形電極3の上に誘電体2を形成した弾性表面波素子である。
【0017】
また第6図に従来の弾性表面波素子の一例について示す。従来の誘電体薄膜を用いた弾性表面波素子は、Si等5の上にダイヤモンド等の誘電体2を形成した後、誘電体を表面研磨し、誘電体表面に櫛形電極3を形成、さらにその上に、圧電体1を形成していた。
【0018】
本発明による弾性表面波素子は圧電体上に誘電体を形成するため、圧電体と誘電体の境界面は平滑であり研磨する必要がなくなり、Si等の基材を必要としない利点がある。圧電体としてはLiNbO3、LiTaO3、SiO2等の酸化物圧電体、あるいはAlN等の窒化物圧電体、PLZT等のセラミックス圧電体、そのほか、ZnS、ZnSe、CdS等の単結晶、及び多結晶基材を使用できる。
【0019】
櫛形電極及び表面短絡用電極用材料としてはエッチングによる電極の作製が可能で、抵抗率が小さい金属であり、特に、Au、Ag、Al等の低温で蒸着可能な金属Ti、W、Mo等の高融点金属、また例えば、Tiの上にAlを形成するように2種類以上組み合わせた金属等を使用することが出来る。
【0020】
特に、電極の作製の容易さよりAl、Tiが、またダイヤモンド薄膜を誘電体とするときの密着性より、W、Moが好ましい。櫛形電極の作製方法は、電極用金属成膜後、レジストを電極用金属表面に均一に塗布し、ガラス等の透明平板に櫛形電極パターンを有するマスクをのせた後、水銀ランプ等を用いて露光、あるいは電子ビームにより電極を直接形成することも可能である。その後現像してレジストによる櫛形電極を形成する。
【0021】
電極のエッチング方法は、例えば、Al等の低融点金属としては水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性溶液、硝酸等の酸性溶液によるウェットエッチング法でエッチング可能である。高融点金属もフッ酸と硝酸の混合溶液を用いてエッチング可能である。またBCl3等のガスを用いて、反応性イオンエッチング法により電極を作製することも可能である。
【0022】
誘電体材料の一つでダイヤモンド薄膜の形成方法はCVD法、プラズマCVD法、PVD法、熱フィラメント法等、公知の方法で行うことができる。反応室内のガスをプラズマ化するための方法としては、高周波、低周波等による、グロー放電法、アーク放電法等の各種放電法等を用いることができる。
【0023】
本発明においては圧電体上あるいは電極上に誘電体を形成するため、低温、及び高温で形成可能でなければならない。Al電極表面等、低温でダイヤモンドを形成する方法としては、ハロゲン原子を供給し得るガスと水素原子を含む化合物を用いたダイヤモンドの成膜がある。また高融点金属については、水素原子を含む化合物を用いてダイヤモンドを成膜出来る。
【0024】
ハロゲン原子を供給し得るガスとは、ハロゲン分子はもちろん、ハロゲン化有機化合物、ハロゲン化無機化合物等のハロゲン原子を分子内に含む化合物を全て含有する。例えば、フッ化メタン、フッ化エタン、トリフッ化メタン、フッ化エチレン等のパラフィン系、オレフィン系、脂環式、芳香族等の有機化合物、ハロゲン化シランの様な無機化合物等である。
【0025】
ハロゲンガスを成膜室内に導入することにより基板温度を下げることができ、200℃〜900℃でダイヤモンドが成膜できる。ハロゲンガスは水素元素との結合力が大きく原子半径の小さい方が好ましい。特に低圧で安定な膜を成膜するためには、フッ素化合物が好ましい。
【0026】
また水素原子を含む化合物としては、例えばメタン、エタン、プロパン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素の他、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素、アンモニア、ビドラジン等のヘテロ原子を有する有機化合物などである。Al2O3、Siについてはたとえば電子ビーム蒸着により形成できる。
【0027】
またエピタキシャル法による単結晶誘電体薄膜基材も使用できる。圧電体としては単結晶をウェハー状に加工したものやあるいは他の基板上に薄膜を気相成長させたものが利用できる。後者の場合には圧電体薄膜成長後あるいはさらに電極層やダイヤモンド層等を形成後に基板を除去する場合もある。気相合成する圧電体層は単結晶膜の場合と多結晶膜の場合がある。
【0028】
【実施例】
(実施例1) 10mm×10mm×0.3mmのLiNbO3表面上に、抵抗加熱法によりAlを500A蒸着し、フォトリソグラフィー法を用いて電極幅及び電極間幅が2μmの櫛形電極を作製した。電極の作製はウェットエッチング法を用いた。つづいて櫛形電極を形成していないLiNbO3上に誘電体としてダイヤモンド薄膜を成膜した。条件は以下のようである。反応室にSiF4とCH4が約8:1の混合ガスを、SiF4とCH4の全流量を約20sccm(Standard CubicCentimeter per Minute)として導入し、反応室内の圧力を約150ミリTorrに維持し、電力密度0.8W/cm2で放電してプラズマ状態とし、基材温度は約300℃であった。
【0029】
ダイヤモンドの膜厚は15μmである。結果はLiNbO3の膜厚が大きいため伝搬速度は4200[m/S]であり大きな改善はない。ダイヤモンド膜を成膜していないLiNbO3表面をコロイド状SiO2研磨液を用いて研磨し、5μmの膜厚にすると、高い伝搬速度を持つ複数のモードが現れ、最高9000[m/s]の伝搬速度が得られた。その結果、動作周波数1.2GHzが得られた。
【0030】
(実施例2) 単結晶LiTaO3基板上にMoを電子ビーム蒸着で300A形成し、フォトリソグラフィーを用いて電極幅4μm、電極間幅4μmの櫛形電極のパターンを作製したのち、エッチング液として硝酸を用いて櫛形電極を作製した。その後LiTaO3基板の櫛形電極を形成していない側の面上にダイヤモンドを平行平板型のプラズマCVD法によりCH4ガスを原料として作製した。結果、5μmの膜厚にすると、8700[m/s]の伝搬速度が得られた。
【0031】
(実施例3) Fe基板上にSiO2圧電体を2μm成膜後、SiO2圧電体上にMoにより櫛形電極を形成し、続いて希塩酸によりFe基板を溶解した後、SiO2、圧電体の櫛形電極を形成していない側の面上に実施例1と同じ条件でダイヤモンド薄膜を形成した。結果、9200[m/s]の伝搬速度が得られた。
【0032】
【発明の効果】
以上説明の通り、本発明に従い圧電体を基板として電極あるいは、ダイヤモンド等の、音速が圧電体のそれより大きい誘電体薄膜を形成することにより、研磨が困難な高い音速を持つ誘電体を研磨せず、また誘電体薄膜を成膜するための成膜用基材を使用することなしに、数100MHzから数GHz帯の高周波領域で動作する弾性表面波素子を供給することが出来る。弾性表面波素子の例としては帯域通過フィルター、共振器、発振器、コンボルバー等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】弾性表面波素子の参考例を示す断面図である。
【図2】本発明の弾性表面波素子の1例を示す断面図である。
【図3】本発明の弾性表面波素子で表面短絡用電極を有する1例を示す断面図である。
【図4】表面短絡用電極を有する弾性表面波素子の参考例を示す断面図である。
【図5】1つの電極片が交互に並ぶ様にした櫛形電極の例を示す平面図。
【図6】従来作製あるいは考案されている圧電体薄膜及ぴ誘電体薄膜を用いた弾性表面波素子の例を示す断面図である。
 
訂正の要旨 訂正事項
(1)【請求項1】について、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「圧電体の上に誘電体が形成され、誘電体を形成していない圧電体層上に櫛形電極を形成してなることを特長とする弾性表面波素子。」とあるのを、
「圧電体の上に誘電体が形成され、上記圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成してなることを特長とする弾性表面波素子。」と訂正する。
(2)【請求項3】について、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「圧電体の上に誘電体を形成したのち、誘電体を形成していない圧電体上に櫛形電極を形成、あるいは圧電体層の上に櫛形電極を形成したのち、櫛形電極を形成していない圧電体上に誘電体を形成することを特長とする弾性表面波素子の製造方法。」とあるのを、
「圧電体の上に誘電体を形成したのち、上記圧電体の誘電体を形成していない側の表面に櫛形電極を形成、あるいは圧電体層の上に櫛形電極を形成したのち、上記圧電体の櫛形電極を形成していない側の表面に誘電体を形成することを特長とする弾性表面波素子の製造方法。」と訂正する。
(3)明りょうでない記載の釈明を目的として、段落【0014】)中の「圧電体基板1において誘電体を形成しない側に櫛形電極3を形成した弾性表面波素子である。」との記載を「圧電体基板1において誘電体を形成しない側の表面に櫛形電極3を形成した弾性表面波素子である。」と訂正する。
異議決定日 2002-05-17 
出願番号 特願平3-199052
審決分類 P 1 652・ 121- YA (H03H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 清水 稔  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 治田 義孝
今井 義男
登録日 2000-11-24 
登録番号 特許第3132065号(P3132065)
権利者 住友電気工業株式会社
発明の名称 弾性表面波素子及びその製造方法  
代理人 二島 英明  
代理人 上代 哲司  
代理人 二島 英明  
代理人 上代 哲司  
代理人 服部 保次  
代理人 服部 保次  
代理人 山口 幹雄  
代理人 山口 幹雄  
代理人 中野 稔  
代理人 中野 稔  

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