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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C09D |
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管理番号 | 1062849 |
異議申立番号 | 異議2000-74367 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-08-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-12-05 |
確定日 | 2002-07-22 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3048692号「修飾顔料粒子を含有するインク組成物」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3048692号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
I 本件発明 特許第3048692号(平成3年8月26日出願、優先権主張1990年8月31日米国、平成12年3月24日設定登録。)の請求項1ないし2係る発明(以下「本件発明1ないし2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】水及びヒューメクタントを含む水性液体ビヒクルと、表面に重合ビニル芳香族塩を化学的にグラフトした顔料粒子とを含むインクジェットインク組成物であって、10センチポイズ以下の粘度を有する事を特徴とするインク組成物。 【請求項2】ビニル芳香族塩が、下記の式: 【化1】 (式中、Rは、芳香族成分であり、Xは、酸塩官能基であり、R1、R2及びR3は、個々に、水素、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、複素環基、及び置換複素環基から成る群から選ばれる)を有する、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。」 II 特許異議の申立ての理由の概要 異議申立人は、甲第1号証(特開昭63-191864号公報)、甲第2号証(特開平1-284565号公報)、甲第3号証(特開平1-284564号公報)、甲第4号証(特開昭56-147868号公報)及び参考文献(色材協会誌、Vol.41、No.4、Apr.1968、p.182-190)を提出して、本件発明1ないし2は甲第1ないし4号証及び参考文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし2に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、取り消すべきものである旨主張している。 III 引用刊行物等に記載された発明 当審で通知した取消理由に引用した刊行物1(特開昭63-191864号公報、甲第1号証)には「ラジカル発生サイトを有する水溶性高分子の溶液中に顔料粒子を分散させて、顔料粒子表面にラジカル発生サイトを有する水溶性高分子を吸着させる第一工程、及び吸着処理された顔料粒子の水性分散液に、ビニル単量体を加え、所望により重合開始剤の存在下、重合を行って、顔料粒子表面に重合体層を形成させる第二工程よりなることを特徴とする表面処理顔料の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)、「使用されるビニル単量体としては、ビニル芳香族化合物・・・などをあげることができる」(3頁右下欄11〜14行)、「得られた表面処理顔料は、・・・インクジェット用インク等の画像形成材料として・・・広い適用範囲を有する。」(6頁左上欄7〜11行)と記載されている。 同刊行物2(特開平1-284565号公報、甲第2号証)には「カーボンブラックの表面が該カーボンブラックに親和性の基を有する重合体(A)によって処理されてなる表面処理されたカーボンブラックを、重合し得る単量体成分(I)に分散し、ついで該重合し得る単量体成分(I)を重合して得られる着色球状微粒子。」(特許請求の範囲請求項1)、「本発明においてカーボンブラックに親和性の基とはカーボンブラック表面の極性基と反応することなく、しかも該極性基と強い親和力を有するものである。」(4頁右上欄4〜7行)、「重合性単量体の例として前記のごとくカーボンブラックと親和性を有する重合体の製造時に、親和性基を分子内に有する重合性単量体とともに必要により用いられる他の重合性単量体がある。」(6頁左下欄下から2行〜右下欄2行)と記載されている。 同刊行物3(特開昭56-147868号公報、甲第4号証)には「少なくとも顔料、高分子分散剤、陰イオン性界面活性剤を含有する水性媒体からなることを特徴とする記録液。」(特許請求の範囲)と記載され、実施例2には、水及びエチレングリコールを含む水性液体ビヒクルと、カーボンブラック顔料を含み、約5センチポイズの粘度を有するインクジェット用の記録液が記載されている。 また、甲第3号証には「カーボンブラックの表面が、カーボンブラックに親和性の基を有する重合体(A)によって処理されてなる事を特徴とする表面処理されたカーボンブラック。」(特許請求の範囲請求項1)、「本発明においてカーボンブラックに親和性の基とは、カーボンブラック表面の極性基と反応することなく、しかも該極性基と強い親和力を有するものである。」(3頁右上欄16〜19行)と記載されている。 参考文献には、カーボンブラック表面にポリマーをグラフト化することが記載されている(187頁右欄下から6行〜188頁左欄5行)。 IV 対比・判断 本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。 刊行物1には、顔料粒子の表面に吸着された水溶性高分子のラジカル発生サイトを起点にビニル単量体を重合させた表面処理顔料が記載され、該表面処理顔料はインクジェット用インクとして使用できることが記載されている。 してみると、両者は、顔料粒子を含むインクジェットインク組成物である点で一致し、本件発明1が表面に重合ビニル芳香族塩を化学的にグラフトした顔料粒子を使用するのに対し、刊行物1に記載の発明は顔料粒子表面にラジカル発生サイトを有する水溶性高分子を吸着させ、これにビニル単量体を加え重合させた表面処理顔料を使用する点(以下「相違点1」という。)、本件発明1が水及びヒューメクタントを含む水性液体ビヒクルを含み、10センチポイズ以下の粘度を有するインクジェットインク組成物であるのに対し、刊行物1に記載の発明はこれについて明記されていない点で相違している。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点1について 刊行物2には、カーボンブラックに親和性の基を有する重合体によって表面処理されたカーボンブラックが記載されているが、ここでいう表面処理とは、「カーボンブラックに親和性の基とはカーボンブラック表面の極性基と反応することなく、しかも該極性基と強い親和力を有するものである。」(4頁右上欄4〜7行)と定義され、重合体はカーボンブラック表面の極性基と直接反応するものではない、すなわちグラフト化するものではないから、本件発明1の「表面に重合ビニル芳香族塩を化学的にグラフトした顔料粒子」について記載されていないと解するのが相当である。 また、刊行物3には、水及びヒューメクタントを含む水性液体ビヒクルと、顔料粒子とを含むインクジェットインク組成物であって、5センチポイズの粘度を有することが記載されているのみで、本件発明1のグラフト化された顔料粒子について何ら開示するものではない。 そうすると、刊行物1に記載の発明に、刊行物2、3に記載の発明を併せ考えても、上記相違点1に係る構成は当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記構成を具備することにより、明細書記載の顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、その余の相違点を検討するまでもなく、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明2は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記と同様な理由により、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 さらに、甲第3号証には刊行物2(甲第2号証)と同趣旨のことが記載され、また、参考文献にはグラフト化されたカーボンブラックが開示されているのみであるから、これらの証拠をみても上記判断が左右されるものではない。 V むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-07-01 |
出願番号 | 特願平3-213772 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(C09D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 井上 千弥子 |
特許庁審判長 |
花田 吉秋 |
特許庁審判官 |
鈴木 紀子 井上 彌一 |
登録日 | 2000-03-24 |
登録番号 | 特許第3048692号(P3048692) |
権利者 | ゼロックス コーポレイション |
発明の名称 | 修飾顔料粒子を含有するインク組成物 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 串岡 八郎 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 竹内 英人 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 大塚 文昭 |