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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1063600
審判番号 不服2001-19050  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-24 
確定日 2002-08-15 
事件の表示 平成10年特許願第542585号「家相評価方法及びその装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年10月15日国際公開、WO98/45795]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成10年4月1日(国内優先権主張 平成9年4月8日)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年7月31日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
なお、平成13年10月26日付けの手続補正は、本審決と同日付けで却下された。
「1.建物のみ、この建物の敷地又は前記建物と前記敷地の両方の俯瞰を利用して家相を知るため、コンピュータによって実現する家相評価方法であって、
大極を基点として前記建物、前記敷地又は前記建物と前記敷地の両方の形状、間取りに関する各方位の領域毎の面積値である基本判定値を計算する数値化ステップと、
形状、間取りに関する各方位における単位面積当たりの評価点を記憶する評価点記憶ステップと、
前記数値化ステップにおいて計算した基本判定値と、前記評価点記憶ステップに記憶した評価点とをかけ算して、地形や建物の張りや欠け、方位に対する間取りなどの吉凶の程度を示す吉凶の方位評価値を演算する演算ステップと、
前記演算ステップにおいて演算した方位評価値を表示する表示ステップとよりなる
ことを特徴とする家相評価方法。」

2.引用例に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された小林祥晃著,「Dr.コパのインテリア風水占い」,株式会社秀和システム,1997年1月17日(以下、「引用例」という。)の第116〜126頁には、「操作者の名前、生年月日等の情報」、「寝室、玄関、キッチン、食堂、浴室、トイレ、洗面所の各方位の情報」、「ドアや窓などの部屋の部品配置の情報」、「家具の配置に関する情報」等の各種情報の入力を受け、「願いごとに対する、部屋の得点」を表示するようにした、コンピュータを利用した風水占いに関する記載がある。
そして、引用例における「願いごとに対する、部屋の得点」は、上に摘示したような各種入力情報に対して所要の演算を施して得られるものと考えられること、「家相」の語は「吉凶に関係があるとされる家の位置・方向・間取りなどのあり方」を表すものとされている(広辞苑第5版参照)ので、上記引用例における「願いごとに対する、部屋の得点」も「家相」を知るためのものといえると考えられること、を勘案すると、引用例には、
「家相を知るため、コンピュータによって実現する家相評価方法であって、願いごとに対する部屋の得点を演算する演算ステップと、該得点を表示する表示ステップとよりなることを特徴とする家相評価方法。」(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、
(a)引用例に記載された発明の「部屋」は、本願発明の「間取り」に相当し、
(b)引用例に記載された発明の「願いごとに対する部屋の得点」は、「家相からみた間取り(部屋)の評価値」であるという意味において、本願発明の「方位評価値」と共通する。
したがって、本願発明と引用例に記載された発明とは、
「家相を知るため、コンピュータによって実現する家相評価方法であって、家相からみた間取りの評価値を演算する演算ステップと、前記演算ステップにおいて演算した家相からみた間取りの評価値を表示する表示ステップとよりなることを特徴とする家相評価方法」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本願発明においては、「家相からみた間取りの評価値」として、「評価対象の間取りに関する各方位の領域毎の面積値(基本判定値)と、該間取りに関する各方位における単位面積当たりの評価点とをかけ算して得られる値(方位評価値)」を採用しており、そのような方位評価値を求めるために、特許請求の範囲の請求項1に規定されたとおりの「数値化ステップ」「評価点記憶ステップ」「演算ステップ」を設け、「建物のみ、この建物の敷地または前記建物と前記敷地の両方の俯瞰」を利用するようにしているのに対し、引用例に記載された発明においては、「家相からみた間取りの評価値」として本願発明の方位評価値のようなものは採用されておらず、それを求めるための具体的構成(ステップ)も本願発明のようなものとはされておらず、それに伴い「建物のみ、この建物の敷地または前記建物と前記敷地の両方の俯瞰」に相当するものも利用されていない点。

なお、本願特許請求の範囲の請求項1に記載された「間取り」の語は、一般には「部屋の配置のしかた」を意味する(広辞苑第5版参照)ものと解されるが、そのように解釈すると同請求項1の「…間取りに関する各方位の領域毎の面積値」の意味を理解できないこと、本願明細書の発明の詳細な説明の「発明を実施するための最良の形態」の項には各部屋について各方位の領域毎の面積値を求める例が記載されていること、等を勘案して、該請求項1における「間取り」は「部屋」自体を意味しているものと解釈した。
また、同請求項1でいう「形状、間取り」は、その文言のみからは、「形状及び間取り」の趣旨なのか「形状又は間取り」の趣旨なのかが定かでないが、本願明細書の発明の詳細な説明の「発明を実施するための最良の形態」の項に「間取り」に相当するもののみの例が示されていること等を勘案し、後者(「形状又は間取り」)の趣旨に解釈した。

4.当審の判断

(1)「家相からみた間取りの評価値」の相違について
「家相」は、中国から伝来した俗信であり(広辞苑第5版の、上で摘示した箇所に引き続く記載参照)、自然法則に基づいたものではないこと、審判請求人も本願明細書の「背景技術」の項において「現代に伝わる方位とそれに基づく地相、家相は多数の著書の記載には共通しない部分も存在する」と認めているように、その内容について万人に共通の理解は存在しないと考えられること、を勘案すると、「家相からみた部位の評価値」をどのようなものとするかは、家相を評価値によって評価しようと考える者が任意に決定し得る事項であり、その優劣を決める客観的判断基準は存在しないというべきである。
してみれば、該「家相からみた間取りの評価値」をどのようなものと定めようとも、その点に進歩性を認めることはできないというべきである。
したがって、引用例に記載された発明の「家相からみた間取りの評価値」を本願発明のようなものとした点に進歩性を認めることはできない。

(2)「家相からみた間取りの評価値」を求めるための具体的構成(ステップ)の相違、及び「建物のみ、この建物の敷地または前記建物と前記敷地の両方の俯瞰」の利用について
a.「評価点記憶ステップ」について
「家相からみた間取りの評価値」を本願発明のような方位評価値とする場合には、当然に「評価対象の間取りに関する各方位における単位面積当たりの評価点」の情報が必要となるが、これは、評価対象にはよらない一定値であるから、これを予め記憶しておくようにすることは、当業者が当然に考えることである。したがって、本願の特許請求の範囲の請求項1に規定されるような「評価点記憶ステップ 」を設けることは、当業者が容易になし得たことである。
b.「演算ステップ」について
「家相からみた間取りの評価値」を本願発明のような評価点数とする場合に、本願の特許請求の範囲の請求項1に規定されるような「演算ステップ」が必要となることは自明のことである。
c.「数値化ステップ」及び「建物のみ、この建物の敷地または前記建物と前記敷地の両方の俯瞰の利用」について
「家相からみた間取りの評価値」を本願発明のようなものとする場合に「評価対象の間取りに関する各方位の領域毎の面積値(基本判定値)」が必要となることは当然のことである。
一方、所望の領域の面積値を、該所望の領域が記載された俯瞰図を利用して、コンピュータが備える数値化手段により求めることは、周知である(必要なら、特開昭58-132608号公報、特開昭63-205505号公報参照)。
してみれば、本願の特許請求の範囲の請求項1に規定されるような「数値化ステップ」を設け、上記所望の領域としての評価対象の間取りを含む「建物のみ、この建物の敷地または前記建物と前記敷地の両方の俯瞰」を利用するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用例に記載された発明から予測できる範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29
条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-17 
結審通知日 2002-06-18 
審決日 2002-07-01 
出願番号 特願平10-542585
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康松田 直也  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 小曳 満昭
岡 千代子
発明の名称 家相評価方法及びその装置  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 蔦田 正人  

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