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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K
管理番号 1063621
審判番号 不服2000-15844  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-11-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-10-05 
確定日 2002-08-15 
事件の表示 平成 4年特許願第107361号「水切り換え装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年11月16日出願公開、特開平 5-302679]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年4月27日の出願であって、本願の請求項1に係る発明は、平成12年10月5日付けと平成14年5月16日付けの手続補正書によって補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「【請求項1】流入口と、前記流入口と常に接続されている第一の吐水口と、前記流入口との接続が開閉される第二の吐水口と第三の吐水口を備えた本体と、前記本体内にスライド自在に保持された弁棒と、前記弁棒とともに移動し前記流入口と前記第二の吐水口との接続または該流入口と前記第三の吐水口との接続を開閉する球状の弁と、前記弁棒をスライドさせるレバーを備えた開閉手段とを備え、前記第二の吐水口と前記第三の吐水口が前記開閉手段により開閉され、前記第一の吐水口と前記第二の吐水口の両方または前記第一の吐水口と前記第三の吐水口の両方から同時に水を放出させることを特徴とする水切り換え装置。」

2.引用刊行物及びその記載事項
これに対して、当審における平成14年3月14日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開平2-261510号公報(以下、「第1引用例」という。)には、切換弁に関して、次のような記載がある。
A)「第1図は本発明の実施例における濾過器を示すものである。第1図において、1は水路切換部、2は濾材収容部である。なお3は水栓の吐出管である。4は濾過用カートリッジである。」(第2頁右下欄11〜15行)
B)「10は水路切換部の主要部材となる弁部材である。弁部材10には、ケーシング部12、原水導入口13、濾材側供給水路14が形成されている。」(第3頁左上欄12〜15行)
C)「17は弁座部材であり、ケーシング部材18に形成された開口に埋め込まれている。弁座部材17には原水をストレートに吐出させる為の原水ストレート出口15および原水をシャワー側から吐出させる為のシャワー出口16が形成されている。」(第3頁右上欄1〜6行)
D)「ケーシング部材18と弁部材10のケーシング部12によって筒状弁ケーシングが形成されており、この筒状弁ケーシングに棒状部材20がスライド可能に収容されている。・・・(途中省略)・・・22は弁球、23は棒状部材20に形成された弁球収容部であり、弁球22は弁球収容部23に収容されている。そして、弁球22によって原水ストレート出口15またはシャワー出口16を塞ぐように構成されている。」(第3頁右上欄14行〜左下欄4行)
E)「30は弁部材10に回転可能に取り付けられたねじ部材であり、その中央孔には2条雌ねじが形成されている。31aおよび31bはそれぞれ棒状部材20に設けられた突起であり、突起31a,31bが上記2条雌ねじに螺合しており、ねじ部材30を回転させると棒状部材20は直線的に移動するようになっている。」(第3頁左下欄19行〜右下欄6行)
F)「第1図に示す濾過状態では、棒状部材20は図面上にて最も右側に位置している。すなわちこの状態では、原水導入口13から濾材側供給水路14への水路が開かれる事となり、またパッキン21a,21bによってケーシング部材18内への水の流入が阻止され、原水導入口13から弁ケーシング内へ流入した水は濾材側供給水路14に流れ込み、そのまま注入管4を通って濾過用カートリッジ4に流れ込む。・・・(途中省略)・・・
第2図は原水ストレート吐出状態を、また第3図はシャワー状態をそれぞれ示す。第2図の原水ストレート吐出状態では、弁球22はシャワー出口14を塞ぐ。・・・(途中省略)・・・第3図のシャワー状態では、弁球22は原水ストレート出口13塞ぐ。」(第3頁右下欄18行〜第4頁左上欄20行)
G)第2図、第3図には、原水ストレート吐出状態、シャワー状態においては、パッキン21a,21bによって濾材側供給水路14への水の流入が阻止されていることが記載されている。

上記A)〜G)の記載から、上記第1引用例の切換弁は、原水導入口13を水栓の吐出管3に連結して用いられ、外部への直接の吐水を行う原水ストレート出口15とシャワー出口16、並びに水栓の吐出管3から分岐する濾過器に吐水を行う濾材側供給水路14を備えたものであって、その筒状弁ケーシングに原水導入口13、原水導入口13と接続されている濾材側供給水路14、原水ストレート出口15とシャワー出口16が備えられ、棒状部材20が筒状弁ケーシング内にスライド自在に保持され、棒状部材20とともに移動して原水導入口13と原水ストレート出口15との接続または原水導入口13とシャワー出口16との接続を開閉する弁球22と、棒状部材20をスライドさせるねじ部材30を備えた開閉手段を有しているものと認める。
したがって、上記第1引用例には、
「原水導入口13と、前記原水導入口13と接続されている濾材側供給水路14と、前記原水導入口13との接続が開閉される原水ストレート出口15とシャワー出口16を備えた筒状弁ケーシングと、前記筒状弁ケーシング内にスライド自在に保持された棒状部材20と、前記棒状部材20とともに移動し前記原水導入口13と前記原水ストレート出口15との接続または該原水導入口13と前記シャワー出口16との接続を開閉する弁球22と、前記棒状部材20をスライドさせるねじ部材30を備えた開閉手段とを備え、前記原水ストレート出口15と前記シャワー出口16が前記開閉手段により開閉される切換弁。」
の発明が記載されているものと認める。

同じく、当審における平成14年3月14日付けで通知した拒絶の理由に引用した実願平2-41430号(実開平4-1266号)のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。)には、給水分岐具に関して、次のような記載がある。
H)「実施例の給水分岐具は、蛇口11のまわりにビス12により固定される接続リング13と、その接続リング13にナット14を介して着脱自在に連結された分岐具本体15とから成る。
分岐具本体15は上端に流入口16を有する。流入口16は本体15の内部に設けられた弁室17と通じている。弁室17の一端は上下方向の隔壁18により流出口19と区画され、弁室17と流出口19とは隔壁18に設けた弁孔20を介して連通される。
上記の弁孔20と対向した弁室17の他端の部分は、本体15が側方に突き出しており、その先端に弁孔20と中心線が一致する取水口21が設けられる。
・・・(途中省略)・・・
また、一方の摺動部24の内端には弁板25が固着され、この弁板25により弁孔20を閉塞する。弁体23の中央部分の外径面には、上下にリブ26、26が設けられ(第3図参照)、弁室17の内壁面に設けた平行2本のガイドリブ27、27の間にリブ26、26を嵌めることにより、弁体23を左右方向に案内する。また弁体23の中央部分に断面矩形の貫通孔28が径方向に形成され、外部から挿入されたハンドル29の偏心ピン30がその貫通孔28に挿入される。・・・(途中省略)・・・図中36は器具の一例としての食器洗浄機、33は給水ホース、34はその継手である。・・・(途中省略)・・・
いま、ハンドル29を閉の位置(第1図のB参照)に向けたまま蛇口11の栓を開放すると、水は流入口16から弁室17に入り、矢印aで示すように取水口21を経て給水ホース33に流出する。弁孔20は弁板25により閉塞されているので流出口19へは流出しない。
ハンドル29をAの位置に回すと、偏心ピン30が第2図の一点鎖線で示すように貫通孔28の右内壁に接触するように移動し、同時に弁体23を右方へ移動させる。これにより弁板25が弁孔20から離れ、流出口19から水が流出する。この状態においても取水口21は閉塞されないので、水は引き続き給水ホース33に流出する。(第3頁19行〜第6頁18行)」

上記H)の記載から、上記第2引用例には、分岐具本体15は、流入口16を蛇口に連結して用いられ、外部への直接の吐水を行う流出口19と、蛇口から分岐する器具に吐水を行う取水口21とを備えるとともに、流入口16と流出口19との接続を開閉する弁体23と、弁体23をスライドさせるハンドル29を備えた開閉手段を有し、蛇口から分岐する器具に吐水を行う取水口21を流入口16と常に接続させることによって、取水口21と流出口19の両方から同時に水を放出できるようにした給水分岐具。
の発明が記載されているものと認める。

3.本願発明と第1引用例に記載された発明との対比
本願発明と第1引用例に記載された発明とを対比すれば、第1引用例に記載された発明の「原水導入口13」、「濾材側供給水路14」、「原水ストレート出口15」、「シャワー出口16」、「筒状弁ケーシング」、「棒状部材20」、「弁球22」、「ねじ部材30」は、それぞれ本願発明の「流入口」、「第一の吐水口」、「第二の吐水口」、「第三の吐水口」、「本体」、「弁棒」、「球状の弁」、「レバー」に相当し、さらに、「切換弁」は「水切り換え装置」である。
したがって、本願発明は第1引用例に記載された発明と、
「流入口と、前記流入口と接続されている第一の吐水口と、前記流入口との接続が開閉される第二の吐水口と第三の吐水口を備えた本体と、前記本体内にスライド自在に保持された弁棒と、前記弁棒とともに移動し前記流入口と前記第二の吐水口との接続または該流入口と前記第三の吐水口との接続を開閉する球状の弁と、前記弁棒をスライドさせるレバーを備えた開閉手段とを備え、前記第二の吐水口と前記第三の吐水口が前記開閉手段により開閉される水切り換え装置。」
である点で一致し、以下の相違点で相違している。
<相違点>
本願発明の第一の吐水口は流入口と常に接続され、第一の吐水口と第二の吐水口の両方または第一の吐水口と第三の吐水口の両方から同時に水を放出させているのに対し、第1引用例に記載された発明の第一の吐水口(濾材側供給水路14)は、流入口(原水導入口13)と接続されているものの、常に接続されるものではなく、それゆえ、第二の吐水口(原水ストレート出口15)または第三の吐水口(シャワー出口16)から水を放出させるときに、第一の吐水口(材側供給水路14)から同時に水を放出させるものではない点。

4.相違点の検討
第1引用例で示される水切り換え装置は、飲料水を濾過する浄水器に接続して使用されているが、浄水器に接続する吐水口を、水道の蛇口と接続する流入口と常に接続可能な状態にしておくことも必要に応じて行われている(例えば、特開昭53-124672号公報参照)。そして、上記のとおり、第2引用例には、第1引用例に開示された水切り換え装置と同様に、弁体をスライドさせることによって水路の切り換えを行う給水分岐具において、当該分岐具に接続した器具に吐水を行う吐水口(取水口21)を流入口16と常に接続させておく構成が示されているから、第1引用例記載の水切り換え装置において、第2引用例記載の技術を適用して、蛇口から分岐する濾過器に接続される濾材側供給水路14を、蛇口に連結した原水導入口13と常に接続させることによって、外部への直接の吐水を行う原水ストレート出口15またはシャワー出口16からの水の放出と、濾材側供給水路14からの水の放出を同時に行えるようにすることは当業者が容易に行うことができたものである。
そして、本願発明による作用効果は、上記第1引用例に記載された発明に、第2引用例に記載された発明を適用することにより得られる作用効果を越えるものでもない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に記載された発明は、上記引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-10 
結審通知日 2002-06-11 
審決日 2002-06-28 
出願番号 特願平4-107361
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 ぬで島 慎二
鈴木 久雄
発明の名称 水切り換え装置  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

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