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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01C |
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管理番号 | 1063755 |
審判番号 | 不服2000-16379 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-10-12 |
確定日 | 2002-08-21 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第131901号「基板内蔵抵抗体及び積層セラミック電子部品」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年12月22日出願公開、特開平 7-335403]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成6年6月14日の特許出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 純度95重量%以上のCuNi合金よりなり、Cu含有率が30モル%以上、80モル%以下である、薄膜形成法を利用して得られたCuNi合金膜により構成されていることを特徴とする、基板内蔵抵抗体。」 2.当審の拒絶理由通知の理由に引用された刊行物記載の発明 2.1 刊行物1:特開平1-120802号公報 刊行物1には、第1〜3図と共に次の事項が記載されている。 「(1)セラミックグリーンシート上に薄膜形成方法によって金属抵抗体を形成した後、その上に他のセラミックグリーンシートを重ね、そして両セラミックグリーンシートと金属抵抗体を同時焼成することを特徴とする抵抗体内蔵電子部品の製造方法。」(特許請求の範囲) 「例えばNi-Cr等の金属抵抗体4を蒸着、スパッタリング、CVD等の薄膜形成方法によって形成する。」(第2頁左上欄第18行〜同頁右上欄第1行) すなわち、刊行物1には、グリーンシート上に薄膜形成方法によってNi-Cr等の金属抵抗体を形成した抵抗体内蔵電子部品が記載されている。 2.2 刊行物2:西野 勇 他,「Cu-Ni系合金薄膜の零抵抗温度係数の出現とその考察(CPM83-32)」,電子通信学会技術研究報告 信学技報Vol.83 No.102,P31-37,1983年8月3日発行 刊行物2には、第33頁の図6と共に次の事項が記載されている。 「重要な電子部品の一つとして小型薄膜抵抗素子がある。特に、電子機器の高性能、高信頼化のために要求される小型薄膜抵抗素子は、高抵抗で、かつ温度変化の小さな材料を必要とする。たとえば、高性能電子機器に用いられる薄膜抵抗素子には、抵抗温度係数が数ppm/℃のものが要求される。」(第31頁左欄2行〜8行) 「Cu-Ni系薄膜の作製には日本真空技術製RF二極スパッタ装置・・・を用いた。本装置は基板側が上部、ターゲット側が下部のアップスパッタ方式であり、対向電極の直径は100mmφ、電極間距離は41mmである。薄膜の作製条件は表2に示す。膜組成の選択は、図3(A)に示すような複合ターゲットの面積比を変えることにより行なった。試料形状は、ステンレス製ハードマスクにより図3(B)に示すようなものとした。」(第32頁左欄下から10行〜末行) 「図には、その時の室温におけるρ及び400℃1時間の真空熱処理後の結果も示してある。ρは膜中のCu量とともに増大し、・・・一方、αは・・・Cu40at%〜60at%の範囲で僅かに負値を示した後、それ以上では再び正となり増加する。また、これらは熱処理によっても若干特性を変えることがわかった。」(第33頁左欄下から12行〜下から4行) 「図6に示したように、Cu-Ni系合金薄膜において、そのαはある組成において極めて小さな値となり、また、アニールにより、それが負値から正値へと変化し、場合によっては零抵抗温度係数も出現し得ることが見出された。」(第34頁左欄下から9行〜下から5行) 「温度変化の小さな薄膜抵抗素子に有用な材料として、Cu-Ni系合金の薄膜を作製し、その抵抗温度係数が組成によりどのように変化するかを調べた。その結果、CuxNi1-x合金でX=0.4〜0.6において抵抗温度係数が極めて小さくなり、零抵抗温度係数も現われる。」(第37頁右欄2行〜7行) すなわち、刊行物2には、温度変化の小さな薄膜抵抗素子に有用な材料であるCuxNi1-x(X=0.4〜0.6)合金が記載されている。 3.本願発明と刊行物記載の発明との対比・判断 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「薄膜形成方法によって形成されたNi-Cr等の金属抵抗体」,「抵抗体内蔵電子部品」は、それぞれ本願発明の「薄膜形成法を利用して得られた合金膜」,「基板内蔵抵抗体」に相当するから、両者は、 「薄膜形成法を利用して得られた合金膜により構成されていることを特徴とする、基板内蔵抵抗体。」 である点で一致し、 相違点:本願発明が、「純度95重量%以上のCuNi合金よりなり、Cu含有率が30モル%以上、80モル%以下である、薄膜形成法を利用して得られたCuNi合金膜」を用いているのに対して、刊行物1記載の発明では、薄膜形成方法によって形成されたNi-Cr等である点、 において、両者は相違する。 そこで、上記相違点について検討する 刊行物1記載の発明では、「Ni-Cr等の金属抵抗体」と記載され、Ni-Cr以外の他の材料を用いることも示唆している。さらに、刊行物2に記載された温度変化の小さな薄膜抵抗素子に有用な材料であるCuxNi1-x(X=0.4〜0.6)合金を刊行物1記載の発明の抵抗体として用いることに対して、格別の阻害要因は認められないので、刊行物1記載の発明の抵抗体として刊行物2に記載された材料を用いた点に格別の困難性はない。 さらに、通常純度の高いものを用いるのが当然であるから、CuNi合金の純度を95重量%以上とした点にも格別の困難性はない。 さらに、本願発明の効果についても格別のものは認められない。 4.結び なお、当審では、平成14年1月16日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。 ゆえに、本願発明は、本願出願前に国内で頒布された刊行物1,2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができず、本願は拒絶されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-05-16 |
結審通知日 | 2002-06-04 |
審決日 | 2002-06-17 |
出願番号 | 特願平6-131901 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平塚 義三 |
特許庁審判長 |
松本 邦夫 |
特許庁審判官 |
橋本 武 浅野 清 |
発明の名称 | 基板内蔵抵抗体及び積層セラミック電子部品 |