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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1063789
審判番号 不服2001-17317  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-09-27 
確定日 2002-09-10 
事件の表示 平成 5年特許願第165466号「光記録媒体の再生方法及び再生装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 7年 1月24日出願公開、特開平 7- 21565、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1、手続の経緯、本願発明の認定
本願は、平成5年7月5日の出願であって、その発明は、補正された明細書及び図面の記載によれば特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりの
「【請求項1】 反射層、記録層および保護層をこの順序で積層して形成された光記録媒体に対して、フォーカスサーボまたはトラッキングサーボ用の第1ビームを対物レンズ系を用いて前記反射層表面に集光するとともに、再生用の第2ビームを前記対物レンズ系を用いて前記第1ビームのスポットに対して前記記録層の深さ方向に対して相異なるポイントに集光し、この集光点での前記光記録媒体からの反射光をピンホールを通過するように集光し、前記ピンホールを通過した反射光を光検出器により検出することにより多重記録された情報の再生を行う光記録媒体の再生方法であって、前記第2ビームが集光するポイントの前記記録層の深さ方向の位置を層選択信号により変化させ、その変化した位置に応じて前記ピンホールを変位させることを特徴とする光記録媒体の再生方法。
【請求項2】 光記録媒体と、フォーカスサーボまたはトラッキングサーボ用のビームを放射する第1光源と、該第1光源からの第1ビームを前記媒体上に集光させるための対物レンズ系と、前記媒体からの前記第1ビームの反射光を検出することによりフォーカスサーボまたはトラッキングサーボを行う手段と、前記媒体に記録された情報を再生するための第2ビームを放射する第2光源と、前記第1および第2光源からの第1、第2ビームを合成する手段と、前記第1および第2ビームを夫々前記媒体の深さ方向に対して相異なるポイントに集光させるための第1集光手段と、前記媒体からの前記第2ビームの反射光を集光させるための第2集光手段と、前記第2集光手段による前記第2ビームの反射光の集光点に配置されるピンホールと、前記ピンホールを通過した光を検出する光検出器と、前記第2ビームが前記光記録媒体で集光するポイントの前記媒体の深さ方向の位置を層選択信号により変化させる手段と、前記層選択信号により変化した前記第2ビームの集光ポイントの位置に応じて、前記ピンホールを変位させる手段とよりなる光記録媒体の再生装置。
」(以下、本願発明1および2という)
であると認められる。

2、刊行物記載発明の認定
原審が拒絶の理由に引用した各刊行物は、以下の通りである。
(1)特開平3ー157816号公報(以下、刊行物1という)
記録層が多層構造の記録媒体の光学情報記録再生装置であって、
(イ)第3図:多層構造の光ディスクにおいて、厚みの異なる平行平板13b,13cを光路中に挿脱して焦点を変える。
(ロ)第4図:単独の発光波長の異なる3つの光源26a,26b,26cを設け、対物レンズ12の色収差を利用して焦点位置が各層に位置するようにする。
(ハ)第5図:光源28a,28b,28cとコリメートレンズ14間の距離を段階的に変え、対物レンズ12を通過した後の光の焦点位置を変化させる。
という(イ)〜(ハ)の多層の各層毎に焦点を決める複数の発明が開示されている。
(2)特開平4-301226号公報(以下、刊行物2という)
記録層が多層構造の記録媒体に対する光学式情報書込、読取及び/又は消去する方法並びにその装置に関する発明であって、図4には
(a)厚みが段階的に異なる補正素子プレートC5を光軸と直角に挿脱させる。【0058】
(b)放射源18をピエゾ電気結晶体53上に配置し、結晶体に印加する電圧を変化させることで放射源は、光軸方向に沿って微小距離の変位をする。【0058】
(c)回動制御可能な光路折り曲ミラー54を走査ビームの光路中に配置し、ミラーの回動でビーム方向が変化し、この変化は走査焦点のトラッキング方向偏移に変換される。【0059】
(d)上記方向変換をミラー54でなく音響光学変調器55で構成する。この音響光学変調器の出射ビームは印加される電圧で変化する。【0059】
という(a)〜(d)の多層の各層毎に焦点を決める複数の発明が開示されている。
又、査定時に参考文献として新たに引用された
(3)特開平1-188816号公報(以下、刊行物3という)
分光型走査顕微鏡において、試料500と光検査器400の距離を固定したまま光軸中に置かれたピンホール300を光軸方向に微移動させることで多波長レーザ光を分光して分光検査をできるようにした発明が記載されている。
(4)特開平3-200915号公報(以下、刊行物4という)
共焦点走査型顕微鏡において、光軸中に置かれたピンホールを光軸と直角方向に微移動させることで、結像位置が光軸と一致していない場合に、非点収差法の原理でフォーカスエラーを補正できるようにしたものであり、その為、ピンホールの移動量はホーカスエラー検出回路の出力すなわち非点収差法により制御する発明が記載されている。
(5)特開昭61-140914号公報(以下、刊行物5という)
共焦点顕微鏡であって、像面にピンホールを設け、ピンホールの光軸からの位置ずれをピンホールによる回折光により検知し、2軸からなる電歪振動子を動作させて位置補正する発明が記載されている。
(6) 橋口住久「高感度光メモリ- その2」写真工業 平成4年PP.100-101(以下、刊行物6という)
共焦点光学系(点光源及び点検出器)を用いて多層記録のデータを各層毎に再生するために、共焦点型顕微鏡の光学系を例に、試料(記録層に相当)を光軸に垂直に移動させて焦点合わせを行う発明が記載されている。

3、対 比
以下に、本願発明と上記各刊行物記載発明とを対比する。
本願発明は、デ-タが多層に記録された記録媒体の再生方法もしくは装置の発明であって、
(1)トラッキングサーボ用の第1ビームと再生用の第2ビームの2つのビームを用いること、
(2)第2ビームの光路中にピンホールを設け、このピンホールを層選択信号で記録層の深さ方向の位置に応じて変位させる
という構成を有する。
これに対して、上記「2、刊行物記載発明の認定」で記載した原審引用の各刊行物には、
上記(1)について
各刊行物のいずれにも、トラッキングサーボ用の第1ビームの構成の記載がない。
上記(2)のピンホールについて
刊行物1及び2にはピンホールの構成の記載がない。
そのため、原査定では査定時に参考文献1〜4(上記刊行物6・5・3・4に相当)を新たに引用したが、刊行物6にはピンホールの構成の記載がない。
刊行物3は、ピンホールを採用し、このピンホールを本願発明のように光軸方向に移動させた構成が記載されているが、この目的は、分光で、そのため試料と光検査器との距離は固定であり、本願発明のように層選択を行わせるためではない。
同様に刊行物4と刊行物5もピンホールを光軸と直角方向に移動させる構成であって本願発明のように光軸方向に移動させるものではなく、かつこの光軸に直角に移動させる目的は、結像位置が光軸と一致していない場合に、非点収差法もしくは回折光でずれ量を検出してピンホールを光軸と直角に移動させることで位置ずれについて補正するためのものであり、本願発明のように層選択を行わせるためにピンホールを光軸方向に移動させるものではない。

5、むすび
本願発明は、原審が示した刊行物1乃至6に記載された各発明の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められず、かつ、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-08-27 
出願番号 特願平5-165466
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 殿川 雅也  
特許庁審判長 内藤 二郎
特許庁審判官 張谷 雅人
田良島 潔
発明の名称 光記録媒体の再生方法及び再生装置  
代理人 芝野 正雅  

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