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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B09B |
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管理番号 | 1063881 |
審判番号 | 不服2000-10698 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-04-04 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-07-13 |
確定日 | 2002-09-17 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第238303号「臨海における廃棄物処分方法及び廃棄物処分場」拒絶査定に対する審判事件〔平成 7年 4月 4日出願公開、特開平 7- 88454、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年9月24日の特許出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、特許法第17条の2の規定によって平成12年8月14日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明1〜3」という)。 「【請求項1】海底から不透水層に達する改良地盤を設けるとともに、該改良地盤の上部に位置する海底にマウンドを設け、このマウンドを貫通しかつ前記改良地盤に貫入する仕切壁を海面上まで立設してなる閉鎖水域を所定海域に画成し、この閉鎖水域の内部に廃棄物を投棄するとともに、該閉鎖水域内の汚水位を当該閉鎖水域外の海水位より低く保つようにしたことを特徴とする臨海における廃棄物の処分方法。 【請求項2】海底から不透水層に達して設けられる改良地盤と、該改良地盤の上部海底に設けられるマウンドと、このマウンドを貫通しかつ前記改良地盤に貫入して海面上まで立設される仕切壁と、この仕切壁によって画成された閉鎖水域に縦横マトリックス状の配列で海底地盤に打設された構造杭と、この構造杭と前記仕切壁とによって支持され前記閉鎖水域の上部開口を覆う床版と、該閉鎖水域内の汚水位を当該閉鎖水域外の海水位より低く保つために該閉鎖水域内の汚水を該閉鎖水域外に浄化して排水する排水手段とを備えたことを特徴とする臨海における廃棄物処分場。 【請求項3】前記閉鎖水域内の汚水位を当該閉鎖水域外の海水位より一定水位だけ低く保つための給排水手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の臨海における廃棄物処分場。」 2.原査定の理由 本願を拒絶すべきものとした原査定の理由の概要は、次のとおりである。 「本願請求項1に係る発明は、引用例1〜5(後述)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また本願請求項2に係る発明は、引用例1〜7(後述)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1、2に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 3.引用刊行物 原査定の拒絶の理由となった拒絶理由通知書に記載した理由に引用された引用例1〜7には下記の事項が記載されている。 (1)引用例1:特開昭60-112908号公報 (a)「埋立場に廃棄物を投棄して埋立てる埋立方法において、有機系廃棄物を含む廃棄物を投棄して埋立場の底部に嫌気性菌の生育する下層を構成し、その下層上に各種の廃棄物を投棄して発生する余水、浸出水等の排出水を下層中を通過させることを特徴とする埋立方法。」(請求項1) (b)「埋立てるべき海岸に陸地1の一部を掘下げ、海底2を底とし、沖に向かって突出する囲壁3を海中にコンクリートで構築し、埋立場とする。囲壁3の海底からの高さは4〜10mで上面は陸地の地表面に連らなり、沖に向かう突出長さは小規模なもので100m、大規模な場合は数100m或いはそれ以上、海岸線に沿う長さは適宜である。」(第2頁右上欄第1〜8行) (2)引用例2:特開平5-31473号公報 (a)「廃棄物埋立護岸の斜面と護岸締切内部の海底地盤表面を、人造長繊維を混入したコンクリートまたはモルタルにより被覆してなる廃棄物処理場の漏出防止壁構造。」(請求項1) (b)「図1は廃棄物処理場の漏出防止工の施工状態を示す説明図であり、海域において埋立て護岸1が概そ完成した時点で、コンクリートプラント船2から護岸1の斜面と護岸締切内部の海底地盤表面に、水中コンクリートまたはモルタルを連続打設する。その際に、コンクリートの打設管3に給水管4を併設し、また、打設管3の先端部近傍に糸供給器5を取付けて、給水管4から高圧水を噴射し、この噴流により糸供給器5から繊維を引き出してコンクリート中に同繊維を混入させる。コンクリートの施工厚は、その上に埋立てられる盛土の高さにもよるが、約300〜1000mm程度必要である。」(第2頁第2欄第17〜28行) (3)引用例3:特開昭49-114244号公報 (a)「造成しようとする人工島の周辺水域をコンクリートセルブロック又は矢板で囲繞し、その囲繞された水域内に、見掛け比重が1.0より大きくなるように圧縮された廃棄物塊及び土砂又は廃棄物を堆積することを特徴とする廃棄物による人工島を水中に造成する方法。」(特許請求の範囲第1項) (b)「海岸から6Km〜7Km離れた、海深1.0m程度の広さ5×2.5Kmの海底を選び、周辺から汚物が流出しないように、コンクリートセルブロック7を例えば、周辺13,000mに沈没する。この時、地盤改良及び支持杭3の施工を全部或いは一部に行なう。セルラー壁7は、平均水位より6〜7m高いものを設置する。次いで、この中に廃棄物圧縮塊4を投入する。この塊は比重が1.4程度になるように圧縮されたものが望ましい。これを平均潮位以上10m程度迄堆積する。最後に、有機質廃棄物及び砂、粘土、ヘドロを交互或いは全部堆積させて、人工廃棄物島を完成する。」(第2頁右上欄第15行〜左下欄第11行) (4)引用例4:特開平4-27002号公報 (a)「陸域から離れた海上に埋め立て海域を設定して当該埋め立て海域を浚渫して周囲の海域よりも海底を深くし、浚渫により生じる浚渫土砂を利用して、前記埋め立て海域を囲む形で陸地部を形成してコアアイランドとすると共に、前記陸域の海岸線に沿ってロングアイランドを造成し、それら造成されたロングアイランド及びコアアイランドにより前記陸域との間に静穏海域を形成し、前記埋め立て海域を利用して廃棄物の埋め立てを行なうようにして構成した廃棄物の処理及び静穏海域の造成工法。」(請求項1) (5)引用例5:特開平4-34120号公報 (a)「地表から所定深度まで収容部を形成するとともに、収容部の周囲に遮断壁を設けて、前記収容部内に入れられた廃棄物中の浸出水が前記遮断壁外側へ流出し難くした廃棄物等の封じ込め処理方法において、前記収容部側と前記遮断壁外側に水位計をそれぞれ設けるとともに、前記収容部側に外側から浸透した地下水あるいは浸出水を吸い上げる排水手段を設けて、前記水位計により各水位をそれぞれ検出し、前記収容部側の地下水位が遮断壁外側に対して相対的に低くなるよう前記排水手段を駆動して調整することを特徴とする廃棄物等の封じ込み処理方法。」(請求項1) (b)「収容部2は、地盤aの相当面積を窪み状部7に掘削形成したもので、窪み状部7の底部7aの下に難浸透性の粘土層bが位置している。・・・遮断壁3は、単位遮断板同士を順次に建込んだものであり、下端部が粘土層b内まで達している。」(第2頁左下欄第8〜15行) (6)引用例6:特開平3-68485号公報 (a)「周囲を不透水層に達する地中連続壁で囲んだ地中筒形の廃棄物投棄空間を有し、該空間は地中連続壁外側の地下水位より僅かに水位が低い水を湛えてなることを特徴とする廃棄物処分場。」(請求項1) (7)引用例7:特開平3-137979号公報 (a)「周囲を不透水層に達する地中連続壁で囲んだ廃棄物を投棄する筒型空間を有する深型の廃棄物最終処分場において、前記筒型空間の上面を覆う吊屋根を設けてなることを特徴とする廃棄物最終処分場。」(請求項1) 4.当審の判断 (1)本願発明1について 引用例1には、上記3.(1)(b)から、「埋立てるべき海岸に陸地1の一部を掘下げ、海底2を底とし、沖に向かって突出する囲壁3を海中にコンクリートで構築し、埋立場とする」ことが記載されている。そしてこの場合、上記3.(1)(a)から廃棄物を投棄して埋め立てるのである。 これら事項を本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には「埋立てるべき海岸に陸地の一部を掘下げ、海底を底とし、沖に向かって突出する囲壁を海中にコンクリートで構築し、廃棄物を投棄し埋立場とする廃棄物の処分方法。」という発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると云える。 本願発明1と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「囲壁」は、本願発明1の「仕切壁」に相当し、引用例1発明においても囲壁で閉鎖水域が形成されており、また、囲壁が陸地から沖に向かっているので臨海において設置されていると云えるから、両者は「仕切壁を海面上まで立設してなる閉鎖水域を所定海域に画成し、この閉鎖水域の内部に廃棄物を投棄する臨海における廃棄物の処分方法。」で一致し、次の点で相違している。 相違点(イ):本願発明1では、仕切壁を、海底から不透水層に達する改良地盤を設けるとともに、該改良地盤の上部に位置する海底にマウンドを設け、このマウンドを貫通しかつ前記改良地盤に貫入するよう設けているのに対して、引用例1発明では、海底を底にして設けている点 相違点(ロ):本願発明1では、閉鎖水域内の汚水位を当該閉鎖水域外の海水位より低く保つようにしているのに対して、引用例1発明では、その点が不明である点 そこで、相違点(イ)について検討すると、引用例2には、海底地盤表面を被覆する漏出防止壁構造について記載されているものの、不透水層や改良地盤やマウンドについて何も示唆されていない。 また、引用例3には、矢板で囲繞することは記載されているものの、不透水層や改良地盤について何も示唆されていない。 また、引用例4には、コアアイランドやロングアイランドで静穏海域を形成することは記載されているものの、不透水層や改良地盤やマウンドについて何も示唆されていない。 また、引用例5には、本願発明1の「不透水層」に相当する「粘土層」が記載されているが、本願発明1の「仕切壁」に相当する「遮断壁」は、粘土層まで達しており(上記3.(4)(b))、改良地盤やマウンドについて何も示唆されていない。 引用例6、7にも「不透水層」については記載されているものの、本願発明1の「仕切壁」に相当する「地中連続壁」は不透水層に達しており、改良地盤やマウンドについて何も示唆されていない。 以上のことから、海中に仕切壁を設ける場合、海底から不透水層に達する改良地盤を設けるとともに、該改良地盤の上部に位置する海底にマウンドを設け、このマウンドを貫通しかつ前記改良地盤に貫入するよう設けることは、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。 そして、本願発明1は、「閉鎖水域の内外における水位差による地盤の崩壊および水の浸透を最少限に抑え、仕切壁の構造を簡単にし、周辺土層は将来的に細かい土粒子により目詰まりを起こし、周囲がより完全な不透水層になり、遮蔽が完全に行われることも期待できる」という効果を奏する(本願公開公報第3頁第3欄第34〜38行、第4欄第40〜44行参照)。 したがって、相違点(ロ)を検討するまでもなく、本願発明1は、引用例1〜7に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (2)本願発明2について 引用例1の記載事項を本願発明2の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には「埋立てるべき海岸に陸地の一部を掘下げ、海底を底とし、沖に向かって突出する囲壁を海中にコンクリートで構築し、廃棄物を投棄した埋立場」という発明(以下、「引用例1’発明」という)が記載されていると云える。 本願発明2と引用例1’発明とを対比すると、引用例1’発明の「囲壁」、「埋立場」は、本願発明2の「仕切壁」、「廃棄物処分場」にそれぞれ相当し、引用例1’発明においても囲壁で閉鎖水域が形成されており、また、囲壁が陸地から沖に向かっているので臨海において設置されていると云えるから、両者は「海面上まで立設される仕切壁と、この仕切壁によって画成された閉鎖水域からなる臨海における廃棄物処分場。」で一致し、次の点で相違している。 相違点(イ):本願発明2では、仕切壁を、改良地盤の上部海底に設けられるマウンドを貫通し、かつ海底から不透水層に達して設けられる改良地盤に貫入して設けているのに対して、引用例1’発明では、海底を底にして設けている点 相違点(ロ):本願発明2では、閉鎖水域の上部開口に、縦横マトリックス状の配列で海底地盤に打設された構造杭と仕切壁とによって支持された上部開口を覆う床版を設けているのに対し、引用例1’発明では、その点が不明である点 相違点(ハ):本願発明2では、閉鎖水域内の汚水位を当該閉鎖水域外の海水位より低く保つために閉鎖水域内の汚水を閉鎖水域外に浄化して排水する排水手段を備えているのに対して、引用例1’発明では、その点が不明である点 そこで相違点(イ)について検討すると、上記(1)で述べたとおり、海中に仕切壁を設ける場合、海底から不透水層に達する改良地盤を設けるとともに、該改良地盤の上部に位置する海底にマウンドを設け、このマウンドを貫通しかつ前記改良地盤に貫入するよう設けることは、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。 そして、本願発明2は、上記(1)に述べた効果を奏する。 したがって、上記相違点(ロ)、(ハ)を検討するまでもなく、本願発明2は、上記引用例1〜7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものすることはできない。 (2)本願発明3について 本願発明3は、少なくとも本願発明2を引用しさらに限定した発明であるから、上記(2)と同じ理由で、上記引用例1〜7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によって本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-09-02 |
出願番号 | 特願平5-238303 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B09B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 奥井 正樹、種村 慈樹、冨士 良宏 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
野田 直人 唐戸 光雄 |
発明の名称 | 臨海における廃棄物処分方法及び廃棄物処分場 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 鈴木 知 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |
代理人 | 原島 典孝 |
代理人 | 一色 健輔 |