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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
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管理番号 | 1063920 |
審判番号 | 不服2000-12207 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-04 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-08-04 |
確定日 | 2002-08-29 |
事件の表示 | 平成10年特許願第363725号「エンボスキャリアテープ」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-185766]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年12月22日の出願(特願平10-363725号)であって、その請求項1乃至7に係る発明は、平成14年3月13日付けで補正された明細書の記載及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1には以下のとおり記載されている。 「【請求項1】電子部品を装填するための凹部が第1の表面に形成され、前記凹部に対応する凸部が第2の表面に形成され、熱可塑性樹脂からなるエンボスキャリアテープにおいて、前記エンボスキャリアテープの前記凹部の側面から前記凸部の側面までの厚みが、前記凹部の底面部から前記凹部の内側の底面部までの厚さより厚く、前記エンボスキャリアテープの幅方向と直交する方向において、前記第2の表面から最も離れた位置における前記凸部の長さは、前記第1の表面上における前記凹部の長さよりも長く、かつ、前記第1の表面上における前記凹部の長さは、前記凹部の底部の長さよりも短くないことを特徴とするエンボスキャリアテープ。」(以下「本願発明1」という。) 2.引用文献 これに対して、当審が平成14年1月22日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開平9-315488号公報(平成9年12月9日出願公開、以下「刊行物1」という。)には、図面(図1〜9)と共に以下の事項が記載されている。 a.「収納対象の電子部品に対応する大きさの凹部形状でなる収納容器をテープ状のシート又はフイルムに所定間隔をもつて複数形成してなる電子部品搬送体において、上記収納容器の周側面又は上記収納容器の開口部を形成する側辺近傍に形成され、上記テープ状のシート又はフイルムを巻き回した際に上記収納容器同士が嵌合することを防止する嵌合防止手段を具えることを特徴とする電子部品搬送体。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) b.「本発明は電子部品搬送体に関し、例えば半導体チツプを収納する凹部形状でなる収納容器をテープ状のシート又はフイルムに複数形成してなる搬送体に適用して好適なものである。(【0001】【発明の属する技術分野】) c.「さらに図7に示すように、エンボス部2の周側面は所定の角度でなる傾斜を有しており、底面2Aに比して開口部2Bが幅広になつている。電子部品搬送体1は金型を用いた加熱成形により形成されるため、このようにエンボス部2の周側面に傾斜をつけて形成することにより金型から容易に取り外し得る。」(【0004】【従来の技術】について) d.「ところでかかる構成の電子部品搬送体1においては、各エンボス部2が同一形状で形成されており、巻き取つた形状で搬送及びテーピングマシンへの取り付けがなされているため、搬送時等の振動の影響によりエンボス部2が互いに嵌まり込んでしまう場合がある。 すなわち図9に示すように、巻き取つた状態の電子部品搬送体1において、内周部分のエンボス部2に外周部分のエンボス部2が嵌まり込んでしまう。ここでエンボス部2の周側面には傾斜角がつけられており、底面2Aに比して開口部2Bが幅広となつているため(図7)、より一層嵌まり込み易くなつている。このため電子部品搬送体1を巻き取る際及び巻き取られた電子部品搬送体1を解く際にエンボス部2が潰れたり、変形したりしてしまうという問題がある。このように潰れたり変形してしまつた場合、上述したテーピングマシンによつてエンボス部2に部品を挿入することが困難となる。またこのようなエンボス部2に電子部品を挿入してしまつた場合、製造メーカでインサートマシンに取り付けた際にエンボス部2から電子部品を取り出すことが困難となる。 このような問題を回避するために、エンボス部2の周側面につけられている傾斜角を無くす方法が考えられる。ところが、このように傾斜角を無くした場合、金型から電子部品搬送体1を取り外すことが困難になる。また、傾斜角を無くしても完全に嵌まり込まないようにすることは困難であり、嵌まり込む深さを浅くする程度に止まる。この場合、エンボス部2の底面の角部分だけが嵌まり込んだ相手方のエンボス部2の内壁と接触して、この部分だけに力が加わることになる。エンボス部2の底面の角部分は、その構造上、厚みが薄くなつており他の部分に比して強度的に弱くなつているため、この部分だけに力が加わることによつて、より一層潰れ易くなつてしまう。」(【0008】〜【0010】【発明が解決しようとする課題】について) e.図7には、エンボス部2の形状として、電子部品搬送体1の上面に凹部が形成され、それに対応する下面に凸部が形成された態様が示され、その底面及び開口部に2A及び2Bの符号が付されている。 また、同じく引用された特開平10-29662号公報(平成10年2月3日出願公開、以下「刊行物2」という。)には、図面(図1〜5)と共に以下の事項が記載されている。 f.「紙又は板紙に雄型及び雌型からなる型によりエンボスを施しチップ状電子部品を装填可能な複数の凹部を設けたことを特徴とするチップ状電子部品のエンボスキャリアテープ。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) g.「かかるチップ状電子部品の自動装置に利用されるテーピング包装体はチップ状電子部品装填用の凹部を一定の間隔で形成したプラスチック性(「プラスチック製」の誤記と認められる。)のキャリアテープやチップ状電子部品装填用の穿孔を一定の間隔で形成したキャリアテープ紙に、ボトムフィルムを貼り所定のチップ状電子部品を装填した後、その上に表面フィルムで被覆することによって形成されている。」(【0003】【従来の技術】について) h.「一方プラスチック製のキャリアテープの場合には、前記のような静電気の発生の問題や、廃棄処理の問題のほかに、チップ状電子部品装填用の凹部の深さを1mm以上にするとエンボス底部の肉厚が薄くなり巻き取り状態にしたときに、凹部が潰れることがあるという問題があった。」(【0007】【従来の技術】について) i.図2には、チップ状電子部品を装填可能な凹部が、テーパ状をなさず、上面開口部の長さと底部の長さが同じものが示されている。 3.対比・判断 本願発明と刊行物1に記載された事項とを対比する。 刊行物1に記載された「電子部品搬送体」は、テープ状のシートに凹部形状の収納容器を形成したものを含み(記載a、b)、その場合、図7を参照すれば、エンボス部2としてテープ状のシートの第1の表面である上面に電子部品を装填する凹部が形成され、該凹部に対応する凸部が、テープ状のシートの第2の表面である下面に形成されていることになるので、刊行物1には、「電子部品を装填するための凹部が第1の表面に形成され、前記凹部に対応する凸部が第2の表面に形成されたエンボスキャリアテープ」についての発明が記載されているということができる。 さらに、刊行物1の従来技術についての記載を検討すると、従来の電子部品搬送体においてエンボス部の底面2Aに比して開口部2Bが幅広になっている場合は、エンボス部が重なり合ったときに上方のエンボス部が下方のエンボス部に嵌まり込んでしまう問題があったこと(記載c、d)と共に、そのような嵌まり込みの問題を回避するために、エンボス部2の周壁面につけられている傾斜角をなくす方法が考えられたこと(記載d)が記載されている。 そして、上記の従来技術の「エンボス部2の周壁面につけられている傾斜角をなくす」ということは、凹部の上面における開口部2Bの長さ、すなわち第1の表面上における凹部の長さが、該凹部の底部の長さに等しい、すなわち、該底部の長さよりも短くないものとするということになる。 さらに、その(傾斜角をなくす)従来技術の場合には、図7に2Aで示される底面すなわちテープ状のシートの第2の表面である下面から最も離れた位置における凸部の長さは、上記第1の表面上における凹部の長さに対して、テープの幅方向ないしはそれと直交する方向において、少なくとも両周壁の厚さの和に相当する長さだけ長いものとなることは明らかである(なお、この点については、刊行物2の図2を参照すればより明らかである。)。 以上の点から、刊行物1には、従来公知の技術的事項として、「電子部品を装填するための凹部が第1の表面に形成され、前記凹部に対応する凸部が第2の表面に形成されたエンボスキャリアテープにおいて、前記エンボスキャリアテープの幅方向と直交する方向において、前記第2の表面から最も離れた位置における前記凸部の長さは、前記第1の表面上における前記凹部の長さよりも長く、かつ、前記第1の表面上における前記凹部の長さは、前記凹部の底部の長さよりも短くないことを特徴とするエンボスキャリアテープ。」が記載されているということができる。 してみると、本願発明1と、刊行物1に記載された(従来技術としての)発明は、上記の点で一致しているものであり、以下の2点で相違があるものと認められる。 [相違点1]本願発明1のエンボスキャリアテープが「熱可塑性樹脂からなる」とされるのに対し、刊行物1には、電子部品搬送体を形成するテープ状のシート又はフィルムが熱可塑性樹脂からなるものであることは明記されていない点。 [相違点2]本願発明1において、「エンボスキャリアテープの前記凹部の側面から前記凸部の側面までの厚みが、前記凹部の底面部から前記凹部の内側の底面部までの厚さより厚く」とされるのに対し、刊行物1には、エンボス部の底部の厚みと周側壁の厚みとの大小関係について記載されていない点。 そこで上記の相違点について検討する。 [相違点1]について 刊行物2には、チップ状電子部品装填用の凹部を形成したプラスチック製のキャリアテープが従来の技術であったこと(記載g)が記載され、「エンボス底部」の記載(記載h)から上記キャリアテープの凹部がエンボスによって形成されることが示されているものと認められ、また、エンボス加工して用いるプラスチックスとして「熱可塑性樹脂」は、本願出願前から普通に用いられるものであることは、引例を示すまでもなく明らかな技術的事項であるので、刊行物1に記載されたテープ状のシートを「熱可塑性樹脂からなる」ものとすることは、刊行物2に記載された従来技術に鑑みて当業者が容易になし得る事項であり、そのことにより、刊行物1及び2に記載された事項から予測し得ない格別の作用効果を生ずるものとも認められない。 [相違点2]について エンボスキャリアテープの凹部の底面部及び周側壁の厚みは、それぞれ、その凹部に求められる強度、加工時の操作性或いは経済性等により当業者が適宜決定しうる事項と認められ、本願発明1において、凹部の周側壁の厚みを大きくすることで、刊行物1に従来技術の問題点として示された凹部の嵌まり込みをより確実に回避できることは当業者が容易に予測しうるところであるが、そのために必ずしも該周側壁の厚みが底面部の厚みより大きくなければならないというものではなく、この点で、当該相違点に係る本願発明の構成の技術的意義は認められない。 請求人は、平成14年3月13日付け意見書において、「凹部の側面を厚くしたいために、凹部底面部を側面に押し広げるようにエンボスを形成することになったのです。」と記載しているが、凹部の側壁面および底面の厚みがエンボス加工に用いる金型の形状等によって任意に設定しうることは当業者にとって自明の事項であり、エンボスにより形成される凹部の周側壁の厚さを確保するために必然的に底面の厚みが小さくなる場合もあることは理解できるとしても、そのような大小関係により本願発明1の「エンボスキャリアテープ」に格別の作用効果がもたらされるものとは認められない。 4.まとめ 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-06-25 |
結審通知日 | 2002-07-02 |
審決日 | 2002-07-16 |
出願番号 | 特願平10-363725 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 溝渕 良一 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
杉原 進 渡邊 真 |
発明の名称 | エンボスキャリアテープ |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 福田 修一 |