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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1063961
審判番号 不服2000-362  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-01-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-13 
確定日 2002-08-29 
事件の表示 平成 3年特許願第178834号「弾球遊技機」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 1月 8日出願公開、特開平 5- 178]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 〔この出願の経緯及びこの出願の発明〕
この出願は、平成3年6月24日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成14年3月11日付け手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機において、
前記作動口を単一の作動口で構成し、その単一の前記作動口と前記可変表示装置の表示部と前記作動口へ入賞した打玉数を記憶表示する記憶表示器と前記作動口に入賞した打玉を検出するスイッチとを同一の取付基板に設けると共に前記単一の作動口の入口を前記可変表示装置の表示部の上方であって前記取付基板の中央位置に設け且つ前記記憶表示器を前記単一の作動口の入口と前記可変表示装置の表示部との間に設けたことを特徴とする弾球遊技機」
にあるものと認められる。
〔引用例に記載された発明〕
これに対し、当審の拒絶理由において引用された、この出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開平1-303173号公報(以下、引用例1という)には、
特に、
(1)「打込玉が入賞領域3a〜3cのいずれかへ入賞すると」(第7頁右下欄第4,5行)、「入賞玉によって・・・可変表示装置50を可変表示できる条件の定められた入賞領域3aないし3c」(第3頁左下欄第10〜12行)、「入賞領域を通過してきた入賞玉」(第4頁右上欄第18行)、「特定遊技状態は、回転ドラム表示機構50Aの各列のドラムで表示される識別情報の組合わせだけによって決められるようにしてもよい」(第6頁右下欄第8〜10行)及び「各列の回転ドラムの識別情報の組合わせを検出することができる」(第8頁右下欄第10,11行)の記載から、
パチンコ遊技機が、遊技盤上に設けられる入賞領域3a〜3cへの打込玉の通過により回転ドラム表示機構50Aの各列の回転ドラムの識別情報の組合わせを検出することができる可変入賞球・可変表示装置30を備えているものと認められること、
(2)「取付板31には開口部32が穿設されている」(第4頁右下欄第18行)、「開口部32は、玉の入賞容易な入賞領域43となる」(第5頁右上欄第16,17行)、「入賞領域43へ入賞した玉を検出するための入賞玉検出手段の一例の検出スイッチ44bが設けられている」(第5頁左下欄第9〜11行)、「取付板31の最上部には、枠部材34が取付けられている。枠部材34には・・・玉受板341が取付けられている。玉受板341で受けられた玉は、入賞領域3aとなる孔を介して裏面へ導かれる」(第5頁左上欄第4〜10行)、第3図(第13頁)、第4A図(第13頁)及び第4B図(第14頁)の記載から、
パチンコ遊技機が、入賞領域3aと可変入賞球・可変表示装置30の表示窓33a〜33cと入賞領域43となる開口部32と該開口部32に入賞した打込玉を検出するスイッチ44bとを同一の取付板31に、前記入賞領域3aは前記取付板31に取付けられた枠部材34を介して、設けると共に前記入賞領域3aの入口を前記可変入賞球・可変表示装置30の表示窓33a〜33cの上方であって前記取付板31の中央位置に設けているものと認められること、
(3)「入賞領域3a、3b、3cの形成された遊技盤1の裏面側には・・・入賞領域3aまたは3bへの入賞玉を検出するための入賞玉検出器22aが・・・入賞領域3cへの入賞玉を検出するための入賞玉検出器22bが取付けられている」(第4頁右上欄第16行〜左下欄第4行)の記載から、
入賞領域3a〜3cに入賞した打込玉を検出する入賞玉検出器22a、22bが遊技盤の裏面側に設けられているものと認められること、
からみて、
「遊技盤1上に設けられる入賞領域3a〜3cへの打込玉の通過により回転ドラム表示機構50Aの各列の回転ドラムの識別情報の組合わせを検出することができる可変入賞球・可変表示装置30を備えたパチンコ遊技機において、
前記入賞領域3aと前記可変入賞球・可変表示装置30の表示窓33a〜33cと入賞領域43となる開口部32と該開口部32に入賞した打込玉を検出するスイッチ44bとを同一の取付板31に、前記入賞領域3aは前記取付板31に取付けられた枠部材34を介して、設けると共に前記入賞領域3aの入口を前記可変入賞球・可変表示装置30の表示窓33a〜33cの上方であって前記取付板31の中央位置に設け、入賞領域3a〜3cに入賞した打込玉を検出する入賞玉検出器22a、22bを遊技盤の裏面側に設けたパチンコ遊技機」を構成とする発明が、
同じくこの出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開昭56-80281号公報(以下、引用例2という)には、
特に、
(1)「打込玉が前記セーフ孔2へ入賞すると・・・特賞玉検出出力を導出して回転ドラム駆動回路・・・に駆動指令信号を与える」(第7頁左上欄第16〜20行)、「回転ドラム表示機構50で表示される各列の絵模様または識別情報の組合せ状態」(第5頁右上欄第19行〜左下欄第1行)及び「飾り枠41の窓に表示されているドラムの識別情報の組合せが検出できる」(第8頁左上欄第7〜9行)の記載から、
パチンコ遊技機が、遊技盤1上に設けられるセーフ孔2への打込玉の入賞により回転ドラム表示機構50で表示される各列の識別情報の組合わせが検出できる可変表示手段40を備えているものと認められること、
(2)第1図(第11頁)及び第2図(第11頁)の記載から、
パチンコ遊技機が、セーフ孔2を単一のセーフ孔2で構成し、該単一のセーフ孔2の入口を可変表示手段40の飾り枠41の窓の上方であって遊技盤1の中央位置に設けているものと認められること、
からみて、
「遊技盤1上に設けられるセーフ孔2への打込玉の入賞により回転ドラム表示機構50で表示される各列の識別情報の組合わせが検出できる可変表示手段40を備えたパチンコ遊技機において、
前記セーフ孔2を単一のセーフ孔2で構成し、該単一のセーフ孔2の入口を前記可変表示手段40の飾り枠41の窓の上方であって前記遊技盤1の中央位置に設けたパチンコ遊技機」を構成とする発明が、
同じくこの出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開平2-309985号公報(以下、引用例3という)には、
「遊技領域2に設けられる始動入賞口6,8への打球の入賞により表示の変化を開始し順に停止させる可変表示装置20を備えたパチンコ遊技機において、
単一の天入賞口213と前記可変表示装置20の開口部211と前記始動入賞口6,8へ入賞した打球数を記憶表示する入賞未処理個数記憶表示ランプ232とを同一の前枠210に設けると共に前記単一の天入賞口213の入口を前記可変表示装置20の開口部211の上方であって前記前枠210の中央位置に設け且つ前記入賞未処理個数記憶表示ランプ232を前記単一の天入賞口213の入口と前記可変表示装置20の開口部211との間に設けたパチンコ遊技機」を構成とする発明が、
同じくこの出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開昭59-64079号公報(以下、引用例4という)には、
「遊技盤12上に設けられる特賞領域の一例のセーフ孔13a〜13cへの打込玉の通過により複数桁の数字を順次的に変化させ停止させる可変入賞球装置30を備えたパチンコ遊技機において、
入賞孔31a〜31cと前記可変入賞球装置30の窓31dとを同一の取付基板31に設けると共に前記入賞孔31a〜31cの入口を前記可変入賞球装置30の窓31dの上方であって前記取付基板31の中央位置に設けたパチンコ遊技機」を構成とする発明が、
同じくこの出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開昭62-233182号公報(以下、引用例5という)には、
「遊技部21に設けられる始動入賞口26〜28への打込球の入賞により複数の識別情報を切換え表示させると共に停止させるセンター役物14を備えたパチンコ機において、
入賞口26と前記センター役物14の窓枠部55と前記始動入賞口26〜28へ入賞した打込球数を記憶表示する始動入賞記憶表示灯72とを同一の板部54に設けると共に前記入賞口26の天穴56を前記センター役物14の窓枠部55の上方であって前記板部54の中央位置に設け且つ前記始動入賞記憶表示灯72を前記センター役物14の窓枠部55の下方に設けたパチンコ機」を構成とする発明が、
同じくこの出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開平2-142580号公報(以下、引用例6という)には、
「遊技部3に設けられる特定入賞口6a〜6cへの打球の入賞により左、中、右のデジタルが回転を始め次に停止する可変表示装置4を備えたパチンコ機において、
単一の天入賞口7と前記可変表示装置4の開口部40と前記特定入賞口6a〜6cへ入賞した打球数を記憶表示する記憶個数表示部46とを同一の主基板33に設けると共に前記単一の天入賞口7の入口を前記可変表示装置4の開口部40の上方であって前記主基板33の中央位置に設け且つ前記記憶個数表示部46を前記可変表示装置4の開口部40に設けたパチンコ機」を構成とする発明が、
同じくこの出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開平2-189175号公報(以下、引用例7という)には、
「遊技領域16に設けられる始動入賞口22a、22bへの打玉の入賞により回転ドラム18a〜18cの回転が許容され組み合わせられる可変表示装置17を備えた弾球遊技機において、
単一の2倍入賞口21と前記可変表示装置17の回転ドラム18a〜18cと前記始動入賞口22a、22bへ入賞した打玉数を記憶表示する入賞個数表示LED19とを可変表示装置17に設けると共に前記単一の2倍入賞口21の入口を前記可変表示装置17の回転ドラム18a〜18cの上方であって前記可変表示装置17の中央位置に設け且つ前記入賞個数表示LED19を前記単一の2倍入賞口21の入口と前記可変表示装置17の回転ドラム18a〜18cとの間に設けた弾球遊技機」を構成とする発明が、
同じくこの出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開平2-195977号公報(以下、引用例8という)には、
「遊技盤面100上に設けられる始動口8〜10への遊技球の入賞により左中右下図柄の変動処理と変動停止処理が行われるドットマトリクス型表示器15を備えたパチンコ遊技機において、
天、天下左右入賞口1〜3を前記遊技盤面100中央上部に設け、前記ドットマトリクス型表示器15と前記始動口8〜10へ入賞した遊技球数を記憶表示する記憶数表示LED14とを同一の基板21に設けると共に前記天、天下左右入賞口1〜3の入口を前記ドットマトリクス型表示器15の上方であって前記遊技盤面100の中央位置に設け且つ前記記憶数表示LED14を前記天、天下左右入賞口1〜3の入口と前記ドットマトリクス型表示器15との間に設けたパチンコ遊技機」を構成とする発明が、
それぞれ記載されているものと認められる。
〔この出願の請求項1に係る発明と引用例に記載された発明との対比〕
この出願の請求項1に係る発明(前者)と引用例1に記載された発明(後者)とを対比すると、
後者の
「遊技盤1上」、「入賞領域3a〜3c」、「打込玉」、「回転ドラム表示機構50Aの各列の回転ドラムの識別情報の組合わせを検出することができる」、「可変入賞球・可変表示装置30」、「パチンコ遊技機」、「表示窓33a〜33c」、「取付板31」及び「入賞領域3a〜3cに入賞した打込玉を検出する入賞玉検出器22a、22b」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「遊技領域」、「作動口」、「打玉」、「複数の表示結果を導出することが可能な」、「可変表示装置」、「弾球遊技機」、「表示部」、「取付基板」及び「作動口に入賞した打玉を検出するスイッチ」
に相当するものと認められるから、
両者は、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機において、
前記作動口と前記可変表示装置の表示部と入賞した打玉を検出するスイッチとを同一の取付基板に、直接又は間接に、設けると共に前記作動口の入口を前記可変表示装置の表示部の上方であって前記取付基板の中央位置に設けた弾球遊技機」である
点において一致し、
(1)前者においては、作動口が単一の作動口で構成され、該作動口が直接取付基板に設けられている、
のに対し、
後者においては、作動口が複数の作動口で構成され、複数の作動口の1つが枠部材34を介して、すなわち間接に、取付基板に設けられている、
(2)前者が、作動口へ入賞した打玉数を記憶表示する記憶表示器を、取付基板の作動口の入口と可変表示装置の表示部との間に設けている、
のに対し、
後者が、かかる構成を備えていない、
(3)前者においては、スイッチが作動口に入賞した打玉を検出する、
のに対し、
後者においては、スイッチが開口部32に入賞した打玉を検出し、作動口に入賞した打玉を検出するスイッチが遊技盤の裏面側に設けられている、
点において相違するものと認められる。
〔相違点についての検討〕
そこで、前記相違点(1)についてみるに、
引用例2に記載された発明の
「遊技盤1上」、「セーフ孔2」、「打込玉」、「入賞」、「回転ドラム表示機構50で表示される各列の識別情報の組合わせが検出できる」、「可変表示手段40」、「パチンコ遊技機」及び「飾り枠41の窓」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「遊技領域」、「作動口」、「打玉」、「通過」、「複数の表示結果を導出することが可能な」、「可変表示装置」、「弾球遊技機」及び「表示部」
に相当するものと認められるから、
引用例2に記載された発明には、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機において、
前記作動口を単一の作動口で構成し、該単一の作動口の入口を前記可変表示装置の表示部の上方であって弾球遊技機の中央位置に設けた弾球遊技機」という構成、
すなわち、
前記相違点(1)の前者の構成の一部である、「作動口が単一の作動口で構成され」る、という構成、
が備わっているものと認められる。
ところで、前記相違点(1)の前者の構成の残部である、「作動口が直接取付基板に設けられ」る、という構成についてみるに、
そもそも後者には、入賞口である開口部32が直接取付基板に設けられるという構成が、
又、
引用例3に記載された発明の
「始動入賞口6,8」、「打球」、「入賞」、「表示の変化を開始し順に停止させる」、「パチンコ遊技機」、「開口部211」、「入賞未処理個数記憶表示ランプ232」及び「前枠210」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「作動口」、「打玉」、「通過」、「複数の表示結果を導出することが可能な」、「弾球遊技機」、「表示部」、「記憶表示器」及び「取付基板」
に相当するものと認められるから、
引用例3に記載された発明には、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機おいて、
単一の天入賞口213と前記可変表示装置の表示部と前記作動口へ入賞した打玉数を記憶表示する記憶表示器とを同一の取付基板に設けると共に前記単一の天入賞口213の入口を前記可変表示装置の表示部の上方であって前記取付基板の中央位置に設け且つ前記記憶表示器を前記単一の天入賞口213の入口と前記可変表示装置20の表示部との間に設けた弾球遊技機」という構成が、
又、
引用例4に記載された発明の
「遊技盤12上」、「特賞領域の一例のセーフ孔13a〜13c」、「打込玉」、「複数桁の数字を順次的に変化させ停止させる」、「可変入賞球装置30」、「パチンコ遊技機」及び「窓31d」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「遊技領域」、「作動口」、「打玉」、「複数の表示結果を導出することが可能な」、「可変表示装置」、「弾球遊技機」及び「表示部」
に相当するものと認められるから、
引用例4に記載された発明には、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機において、
入賞孔31a〜31cと前記可変表示装置の表示部とを同一の取付基板に設けると共に前記入賞孔31a〜31cの入口を前記可変表示装置の表示部の上方であって前記取付基板の中央位置に設けた弾球遊技機」という構成が、
又、
引用例5に記載された発明の
「遊技部21」、「始動入賞口26〜28」、「打込球」、「入賞」、「識別情報を切換え表示させると共に停止させ」、「センター役物14」、「パチンコ機」、「窓枠部55」、「始動入賞記憶表示灯72」、「板部54」及び「天穴56」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「遊技領域」、「作動口」、「打玉」、「通過」、「表示結果を導出することが可能な」、「可変表示装置」、「弾球遊技機」、「表示部」、「記憶表示器」、「取付基板」及び「入口」
に相当するものと認められるから、
引用例5に記載された発明には、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機において、
入賞口26と前記可変表示装置の表示部と前記作動口へ入賞した打玉数を記憶表示する記憶表示器とを同一の取付基板に設けると共に前記入賞口26の入口を前記可変表示装置の表示部の上方であって前記取付基板の中央位置に設け且つ前記記憶表示器を前記可変表示装置の表示部の下方に設けた弾球遊技機」という構成が、
又、
引用例6に記載された発明の
「遊技部3」、「特定入賞口6a〜6c」、「打球」、「入賞」、「左、中、右のデジタルが回転を始め次に停止する」、「パチンコ機」、「開口部40」、「記憶個数表示部46」及び「主基板33」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「遊技領域」、「作動口」、「打玉」、「通過」、「複数の表示結果を導出することが可能な」、「弾球遊技機」、「表示部」、「記憶表示器」及び「取付基板」
に相当するものと認められるから、
引用例6に記載された発明には、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機において、
単一の天入賞口7と前記可変表示装置の表示部と前記作動口へ入賞した打玉数を記憶表示する記憶表示器とを同一の取付基板に設けると共に前記単一の天入賞口7の入口を前記可変表示装置の表示部の上方であって前記取付基板の中央位置に設け且つ前記記憶表示器を前記可変表示装置の表示部に設けた弾球遊技機」という構成が、
それぞれ備わっているものと認められ、
したがって、
「入賞口乃至入賞孔が直接取付基板に設けられ」る、という構成は、
例えば、後者及び引用例3乃至6に記載された各発明にも備わっているように、従来周知の技術であるものと認められる。
そうすると、後者に、引用例2に記載された発明を適用し、引用例2に記載された発明の作動口が遊技盤の中央位置に設けられたものだけである、すなわち、単一のものである、ことに鑑み、後者の作動口を、やはり、遊技盤の中央位置にある間接に取付基板に設けられたものだけとする、すなわち、単一のものとする、ことは、当業者が格別創意工夫を要することではないというべきであり、
且つ、作動口も入賞口乃至入賞孔の一種であることを考慮すると、入賞口乃至入賞孔が直接取付基板に設けられるという、例えば、後者及び引用例3乃至6に記載された各発明にも備わっている従来周知の技術、を適用して、後者の作動口を直接取付基板に設けることは、当業者が格別創意工夫を要することではないというべきである。
又、前記相違点(1)の前者の効果が、後者、引用例2に記載された発明並びに例えば後者及び引用例3乃至6に記載された各発明にも備わっている従来周知の技術の各効果の総和以上の格別なものとも認められない。
前記相違点(2)についてみるに、
引用例7に記載された発明の
「始動入賞口22a、22b」、「入賞」、「回転ドラム18a〜18cの回転が許容され組み合わせられる」及び「入賞個数表示LED19」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「作動口」、「通過」、「複数の表示結果を導出することが可能な」及び「記憶表示器」
に相当するものと認められるから、
引用例7に記載された発明には、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機において、
単一の2倍入賞口21と前記可変表示装置の回転ドラム18a〜18cと前記作動口へ入賞した打玉数を記憶表示する記憶表示器とを可変表示装置に設けると共に前記単一の2倍入賞口21の入口を前記可変表示装置の回転ドラム18a〜18cの上方であって前記可変表示装置の中央位置に設け且つ前記記憶表示器を前記単一の2倍入賞口21の入口と前記可変表示装置の回転ドラム18a〜18cとの間に設けた弾球遊技機」という構成が、
又、
引用例8に記載された発明の
「遊技盤面100上」、「始動口8〜9」、「遊技球」、「入賞」、「左中右下図柄の変動処理と変動停止処理が行われる」、「ドットマトリクス型表示器15」、「パチンコ遊技機」、「記憶数表示LED14」及び「基板21」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「遊技領域」、「作動口」、「打玉」、「通過」、「複数の表示結果を導出することが可能な」、「可変表示装置」、「弾球遊技機」、「記憶表示器」及び「取付基板」
に相当するものと認められるから、
引用例8に記載された発明には、
「遊技領域に設けられる作動口への打玉の通過により複数の表示結果を導出することが可能な可変表示装置を備えた弾球遊技機において、
天、天下左右入賞口1〜3を前記遊技領域中央上部に設け、前記可変表示装置と前記作動口へ入賞した打玉数を記憶表示する記憶数表示器とを同一の取付基板に設けると共に前記天、天下左右入賞口1〜3の入口を前記可変表示装置の上方であって前記遊技領域の中央位置に設け且つ前記記憶数表示器を前記天、天下左右入賞口1〜3の入口と前記可変表示装置との間に設けた弾球遊技機」という構成が、
それぞれ備わっているものと認められ、
したがって、
可変表示装置を備える弾球遊技機において、記憶表示器を設けることは、例えば、既述した引用例3,5及び6に記載された各発明にも、又、引用例7及び8に記載された各発明にも、備わっているように、従来周知の技術であるものと認められる。
又、可変表示装置を備える弾球遊技機において、記憶表示器を設ける個所として、入賞口と可変表示装置との間を選ぶことも、例えば、既述した引用例3に記載された発明にも、又、引用例7及び8に記載された各発明にも、備わっているように、従来周知の技術であるものと認められる。
そうすると、可変表示装置を備える弾球遊技機において、記憶表示器を設けること、及び、記憶表示器を設ける個所として入賞口と可変表示装置との間を選ぶこと、が何れも従来周知の技術であることに鑑み、後者にこれら従来周知の技術を適用し、後者において、記憶表示器を設け、且つ、作動口も入賞口の一種であることを考慮すると、その設置個所として、入賞口の一種である作動口の入口と可変表示装置の表示部との間を選ぶことは、当業者が格別創意工夫を要することではないというべきである。
又、前記相違点(2)の前者の効果が、後者、例えば引用例3,5乃至8に記載された各発明にも備わっている従来周知の技術、並びに、例えば引用例3,7及び8に記載された各発明にも備わっている従来周知の技術の各効果の総和以上の格別なものとも認められない。
前記相違点(3)についてみるに、
後者においては、「作動口に入賞した打玉を検出するスイッチ」が遊技盤の裏面側に設けられていて「取付基板」に設けられていない。しかし、遊技盤の裏面側に設けられている「作動口に入賞した打玉を検出するスイッチ」を「取付基板」に設けることができない技術的理由は特に認められない。審判請求人は、平成14年3月11日付け意見書において、「既に複数の電気的部品が取り付けられている取付基板に新たな電気的部品であるスイッチを取り付けようとすることは、当業者にとって容易に行うことができる事項ではない」旨主張する。しかし、スイッチを容易に取り付けられない事情があって、スイッチを設けるにつき、格別の工夫をしたという構成が認められればともかく、そのような構成は特に認められないから、かかる主張を採用することはできない。しかも、「作動口に入賞した打玉を検出するスイッチ」ではないが、「入賞した打玉を検出するスイッチ」を「取付基板」に設けるという技術は後者自体にそもそも備わっているのである。
そうすると、後者に、後者自体にそもそも備わっている技術を適用し、遊技盤の裏面側に設けられている後者の「作動口に入賞した打玉を検出するスイッチ」を「取付基板」に設けること、すなわち、後者において、相違点(3)の前者の構成を採用すること、は、当業者が格別創意工夫を要することではないというべきである。
又、前記相違点(3)の前者の効果が、後者及び後者自体にそもそも備わっている技術の各効果の総和以上の格別なものとも認められない。
〔まとめ〕
したがって、前者は、後者に、引用例2に記載された発明、引用例3乃至6にも記載されている従来周知の技術、引用例3,5乃至8に記載された各発明にも備わっている従来周知の技術、例えば引用例3,7及び8に記載された各発明にも備わっている従来周知の技術並びに後者自体にそもそも備わっている技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-13 
結審通知日 2002-06-18 
審決日 2002-07-17 
出願番号 特願平3-178834
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 松川 直樹
鈴木 寛治
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 今崎 一司  

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