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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1063978
審判番号 不服2000-10878  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-14 
確定日 2002-08-26 
事件の表示 平成 8年特許願第325780号「クッション材」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 6月23日出願公開、特開平10-165260]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続きの経緯・本願発明
本願は、平成8年12月6日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年12月10日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次のとおりのものである。

「ポリオール成分とイソシアネート成分を混合する際同時に粒径が50〜500μmの木炭粉末を添加して発泡率を50〜90%として連続気泡構造を有する発泡体であって、木炭粉末がこの発泡体中に分散されて含有されて、木炭粉末がこの発泡体の外面や連続気泡の部分に出現したことを特徴とするクッション材」

[2]刊行物記載の発明
1.これに対し、当審が平成13年9月28日付けで通知した拒絶理由において引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である特開平8-183905号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
1)「本発明は活性炭を含有し浄水性及び消臭性に優れたポリウレタンフォームに関する。」(【0001】欄)
2)「木炭系活性炭(A)と果実系活性炭(B)の添加量は、両者の総量(A+B)がポリオール100重量部に対し6〜30重量部となるように添加する。活性炭の総量が上記範囲内では、安定した浄水・消臭効果が発揮できしかもフォーム形成時に亀裂や収縮の発生の虞れがなく成形性に優れる。更に好ましい活性炭の添加量は、総量がポリオール100重量部に対し10〜25重量部の範囲であり、この範囲であれば最も良好な浄水、消臭効果を有したポリウレタンフォームを安定的に製造することができる。」(【0009】欄)
3)「本発明において用いられる活性炭の中で木炭系活性炭とは、木材、鋸屑、木材乾留物、木炭等を原料として得られるものであり、果実系活性炭とは、ヤシ殻やクルミ殻を主体とする果実殻や桃の種子主体とする果実種子およびこれらの廃棄物等から得られるものである。果実系活性炭としてはヤシ殻活性炭が汎用性があるため好ましい。上記の活性炭は粉末状活性炭と粒状活性炭(破砕状活性炭)があるが、ポリオールとの分散性が良好であることから粉末状活性炭が好ましく、活性炭の大きさは粒径1〜100ミクロン程度であり、好ましくは5〜50ミクロンである。」(【0011】欄)
4)「本発明において活性炭を含有させるポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、触媒、発泡剤等からなるポリウレタンフォーム原料を混合し反応させて得られる、公知の各種ポリウレタンフォームの配合組成を用いることができる。」(【0012】欄)
5)「本発明のポリウレタンフォームは、水の浄化機能(浄水性)又は消臭性のいずれか、或いは浄水性と消臭性の両者を必要とする用途に最適に利用できる。このような用途として例えば、(a)魚類水槽の浄化用フィルター、(b)軟質ポリウレタンフォームとして形成して靴のクッション材、(c)軟質ソリッド材に形成して靴のインソール、(d)その他、等がある。・・・(b)及び(c)は靴を脱いだときに不快な臭気を取り除くため主に靴の内部に取りつけるものであり、本発明のポリウレタンフォームはインソール材やクッション材として最適に用いられるものである。」(【0021】欄)
6)「・・・ポリウレタンフォームが上記の靴のインソール材やクッション材等のようなクッション性と通気性が共に要求される用途に使用される場合、本発明のポリウレタンフォームは上記配合法(活性炭を組成物中に配合しフォーム形成と同時に活性炭を分散させる方法)により製造するのが好ましい。これは、含浸法や塗布法等で製造したものと比較して配合法により製造したものは、活性炭が気泡のセル壁の内部に分散、或いはセルのコーナー部分に付着してフォーム全体に均一に分散するためである。このような配合法により得られたポリウレタンフォームはクッション性や通気性を低下させず良好である・・・」(【0022】欄)
7)「表1に示す配合割合でポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤、及び活性炭・・・からなる原料を用い、予め、ポリオール、触媒、水、整泡剤及び活性炭を加え混合した後、トリレンジイソシアネート(TDI)を添加混合して発泡させて、浄水、消臭性ポリウレタンフォームを得た。」(【0023】欄)
さらに、段落【0021】における、「配合法により製造したものは、活性炭が気泡のセル壁の内部に分散、或いはセルのコーナー部分に付着してフォーム全体に均一に分散する」との記載からみて、添加剤(活性炭)は、「気泡の部分に出現」しているものと認められる。

したがって、これらの記載事項及び図面の図示内容によれば、上記刊行物1には、
「ポリオールとイソシアネートに粒径が50〜100μmの粉末状活性炭を加えて発泡させた発泡体であって、粉末状活性炭がこの発泡体中に分散されて含有され、粉末状活性炭がこの発泡体の気泡の部分に出現したクッション材」(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

2.同じく引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である実願平3-44207号(実開平4-128656号)のマイクロフィルム には、図面と共に次の事項が記載されている。
1)「この考案はクッション、シーツなどの弾縮性袋体に係り、さらに詳しくは袋体内に収容する主弾性体内に木炭顆粒を充填し体熱の吸収と放射による体温の保持と温熱性発汗の防止が可能な弾縮性袋体に関する。」(刊行物【0001】欄)
2)「この考案の弾縮性袋体は主弾性体に形成した孔または穴内に熱、汗および臭気吸収効果の大きい木炭顆粒物を充填して袋体内に収容するため、熱の吸収、汗の吸収、臭の吸収と合せ、主弾性体の特定部位が異なる弾性となるため適当なマッサージ効果を与えることができる。」(刊行物【0006】欄)

[3]対比・判断
本願発明と上記刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比すると、引用発明1の「ポリオール成分」、「イソシアネート成分」は、本願発明の「ポリオール」、「イソシアネート」に相当する。さらに、引用発明1の「粉末状活性炭」も、本願発明の「木炭粉末」も「消臭用等添加材」である。
したがって、両者は「ポリオール成分とイソシアネート成分に粒径が50〜100μmの消臭用等添加剤を加えて発泡させた発泡体であって、消臭用等添加剤がこの発泡体中に分散されて含有され、消臭用等添加剤がこの発泡体の気泡の部分に出現したクッション材」である点で一致し、以下の点で相違する。

ア)発泡体の構造として、本願発明では、連続気泡構造を有し、発泡率を50〜90%としたのに対し、引用発明1では、この点が明らかではない点、
イ)消臭用添加材として、本願発明では、「木炭粉末」を用いているの対し、引用発明1では、「粉末状活性炭」を用いている点、

なお、付言すると、審判請求人は、平成13年12月10日付けの意見書において、発泡体を製造する際に、本願発明では、ポリオール成分とイソシアネート成分を混合する際同時に添加剤(粒径が50〜500μmの木炭粉末)を添加しているのに対し、引用発明1では、段落【0023】(上記7)参照)の記載のとおり、ポリオールと添加剤(活性炭)を混合した後に、イソシアネートを添加して発泡させている点で相違している旨を主張している。しかしながら、本願発明は、「物」の発明であるから、本願発明と引用発明1とは、生成された発泡体の構造の異同について比較すべきであるところ、生成手順の相違により発泡体の構造に差異が生じているわけではないから相違点と認めることはできない。また、上記段落【0023】の記載は、1実施例における混合の態様を示しているにすぎず、段落【0022】(上記6)参照)には、「配合法(活性炭を組成物中に配合しフォーム形成と同時に活性炭を分散させる方法)」と記載されているとおり、引用発明1が段落【0023】記載の配合手順を必須としているとは認められない。よって、出願人の主張は採用できない。

1.相違点ア)について
引用発明1の発泡体が、連続気泡構造を有することは刊行物1に明記されていないが、この発泡体が浄水性をもつことから(段落【0001】及び【0021】参照)、内部に水(蒸気)の流路が形成されていることは明らかである。そうであれば、複数の連続気泡体により流路が形成されていることも明らかである。したがって、連続気泡構造自体は実質的に相違点たり得ない。
さらに、ポリウレタンフォームにおいて発泡率と「弾性」とが密接に関連することは明らかであるから、このフォームを「クッション材」に適用するのであれば、その用途に合った発泡率とすることは、当業者であれば当然配慮することである。しかも、本願発明において「50〜90%」の数値に、臨界的な意義を見いだせないから、ポリウレタンフォームを用いたクッション材の発泡率を前記数値とすることは、当業者が適宜設計変更し得たことである。

2.相違点イ)について
クッション用弾性体において、熱、汗、臭の吸収作用をもつ物質として、木炭粉末を添加することは、刊行物2に示されている。してみると、この「木炭粉末」と刊行物1に記載された「粉末状活性炭」とは機能を同じくするものであり、かつ引用発明1も刊行物2に記載された発明も「クッション材」をその技術分野とするものであるから、引用発明1におけるクッションにおいて、添加剤として、刊行物2で示された「木炭粉末」を採用することは、当業者が適宜容易になし得たことである。

なお、審判請求人は、上記意見書において、ポリオール成分・イソシアネート成分による発泡との関係から、所定粒径の「木炭粉末」を採用することの有意性を主張しているが、この有意性については、出願当初の明細書には記載されていなかったものであるし、上述したとおり本願発明における粒径範囲が引用発明1に記載された活性炭の粒径範囲と重複するのであるから、「木炭粉末」を所定粒径とした点により、当業者の予測し難い効果が奏されているとの審判請求人の主張は採用できない。

よって、引用発明1のクッション材において、弾性体への添加剤として、引用発明2に示された木炭粉末を採用して、本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得たことである。また、本願発明によってもたらされる作用及び効果も、刊行物1及び2に記載された発明から、当業者であれば容易に予測しうる程度のものであって、格別のものとはいえない。

[4]むすび
したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-19 
結審通知日 2002-06-25 
審決日 2002-07-08 
出願番号 特願平8-325780
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 正義  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 岩崎 晋
和泉 等
発明の名称 クッション材  
代理人 清原 義博  

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