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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1063987
審判番号 不服2001-615  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-02-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-17 
確定日 2002-08-28 
事件の表示 平成 9年特許願第209663号「非接触カード」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 2月 9日出願公開、特開平11- 34562]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成9年7月17日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年9月18日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のものである。
「【請求項1】基板上に送受信用コイルを構成する導体パターンが印刷法により互いに交差することなく形成され、前記導体パターンとICモジュールが端子を介して接触し、電気的に接続されてなることを特徴とする非接触カード。」
2.引用例の記載
これに対し、原審で引用した特開平8-44840号公報(以下「引用例」という。)には、下記の事項が記載されている。
「【0010】本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的は容易に生産することのできる非接触式のデータ媒体を提供することにあり、上述した問題は、個々の請求項に記載された特徴により解決される。」
「【0022】コイルは、例えば多層構造のカバー層上、又はインナー層上、又は射出成型で形成されたカード本体部分に配置される。また、コイルはカード本体層上にプリントされてもよいし、例えば、ワイヤラップされた形態、その他、例えば電気伝導性接着剤を用いたスクリーン印刷法による電気伝導層として配置されてもよい。」
「【0030】図1は、コイル7を有するカード本体2を具備したデータ媒体1を示している。コイル7はそのカード本体2の上に配置され、また、モジュール6と電気伝導的に接続されている。
【0031】図2は、図1に示す一点鎖線に沿った拡大(実寸とは異なる)断面図であり、この断面図は、モジュール6、カード本体2の一部及びコイル7を含む要部が示されている。モジュール6は、2本の導線を有する少なくとも1つのIC(Integrated Circuit)4を具備している。この2本の導線は、電気伝導的にモジュールの接触要素5と接続されている。・・・そして、接触要素5は、例えばワイヤボンディングによりIC4の導線に接続されている。
【0032】・・・多層のカード本体2は、上方及び下方カバー層10とともに少なくとも1層のインナーカード層11を具備している。このインナーカード層11は、モジュール6を受入れるための適当な開口3を有している。カバー層10の外表面には、一般的に回路配線(print)が装着されている。カバー層10(本実施例では、上方カバー層10)の内表面上にはコイル7があり、このコイル7は、カード本体層10とで半完成製品(semi-finished product)を形成する。コイル導線8は、モジュール6の接触要素5の向かい側に直接配置されるように位置している。これは、接触要素5とコイル導線8との容易な電気伝導的接続を可能にしている。この電気伝導的接続は、例えば電気伝導性接着剤の助けにより成し遂げることができる。コイル7は、電気伝導性接着剤を用いたスクリーン印刷法によりカード本体層に印刷されている・・・」
これらの記載によれば、引用例には、インナーカード層11上にコイル7を構成する電気伝導層が印刷法により互いに交差することなく形成され、コイル導線8とICモジュール6の接触要素5とを電気伝導的接続している非接触式のデータ媒体が記載されている。
3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「前者」という。)と上記引用例記載の発明(以下「後者」という。)とを比較する。
データ媒体もカードであることは明らかであるから、両者は、いずれも非接触カードであって、後者の「コイル7」、「電気伝導層」、「ICモジュール6」、「コイル導線8とICモジュール6の接触要素5とを電気伝導的接続している」は、それぞれ前者の「送受信用コイル」、「導体パターン」、「ICモジュール」、「前記導体パターンとICモジュールが端子を介して接触し、電気的に接続されてなる」に対応しており、
両者は、基材上に送受信用コイルを構成する導体パターンが印刷法により互いに交差することなく形成され、前記導体パターンとICモジュールが端子を介して接触し、電気的に接続されてなることを特徴とする非接触カードである点で一致し、
上記基材が、前者では、基板であるのに対し、後者では、インナーカード層である点で相違している。
次に、上記相違点について検討する。
本願明細書の段落【0020】には、「基板1の表裏両面にプラスチック製のカバーシートを熱融着し、あるいは接着剤を介し、一体化し、非接触カードとして容易に構成し得る。」と記載されている。
引用例の段落【0032】には、「多層のカード本体2は、上方及び下方カバー層10とともに少なくとも1層のインナーカード層11を具備している。」と記載されている。
そうすると、後者の「上方及び下方カバー層10」と「インナーカード層11」は、それぞれ前者の「カバーシート」と「基板1」に相当しており、後者の「インナーカード層11」と前者の「基板」とは表現上異なるだけで実質的に同じものであり、上記相違点を格別のものとすることはできない。
なお、請求人は、平成13年4月9日付け上申書において、請求項1を「基板上に送受信用コイルを構成する導体パターンが印刷法により互いに交差することなく形成され、前記導体パターンとICモジュールが端子を介して接触し、電気的に接続されてなり、前記ICモジュールは、前記基板に設けられた空隙に配されてなることを特徴とする非接触カード。」と補正する用意がある旨述べている。
しかしながら、引用例の段落【0032】には、「このインナーカード層11は、モジュール6を受入れるための適当な開口3を有している。」ことが記載され、この「開口3」が上記「空隙」に相当しており、仮に上記補正をしたとしても、本願の請求項1に係る発明を特許することはできない。
また、本願発明の効果についてみても、上記事項の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
4.むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-13 
結審通知日 2002-06-18 
審決日 2002-07-04 
出願番号 特願平9-209663
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 大橋 隆夫
堀田 和義
発明の名称 非接触カード  

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