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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1064001
審判番号 不服2000-18843  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-04-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-11-28 
確定日 2002-09-24 
事件の表示 平成 4年特許願第 95773号「トリーセレクションソート・エンジン」拒絶査定に対する審判事件〔平成 6年 4月 8日出願公開、特開平 6- 95846、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成4年4月16日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年5月24日付け及び平成12年11月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。
「トリーセレクション・プロセッサと、ローカルメモリと、ランダムアクセスメモリで構成される変換テーブルとを備え、前記ローカルメモリにアドレスを送出し、前記変換テーブルから出力される2進データのソートを実施する前記トリーセレクション・プロセッサと、ソートされる文字データを格納し、前記トリーセレクション・プロセッサからのアドレスに対応した文字データを前記変換テーブルに送出する前記ローカルメモリと、前記ローカルメモリ内の文字データをアドレスとする位置にその文字データに対応する2進データを格納し、前記ローカルメモリからの文字データに対応する2進データを前記トリーセレクション・プロセッサに出力する前記変換テーブルと、I/Oデバイスから2進データを直接前記変換テーブルに書き込むDMA制御回路とを有することを特徴とするトリーセレクション・ソートエンジン。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、引用例1ないし引用例6には、それぞれ以下の点が記載されている。
引用例1(土肥康孝「大容量ファイルを整列するシストリック・ソータ」、電子通信学会論文誌、Vol.J67-D No.3(1984年3月)第281〜288頁)
・ここで提案するソータは、シストリック・システム用特殊プロセッサをlogN個1次元に並べ、N次整列併合をパイプライン化して行なうこと、基本的にトリー・セレクション・ソートを用いており、入力をパイプライン的に行なうことにより大容量ファイルの整列にも1つのソータを効率よく利用できること、比較の結果をヒストリとして利用することにより、ハードウエアの構成を簡単にできること、17個のプロセッサと16MバイトのRAMを用いると1000Gバイトのファイルを3.8回読む時間で整列できること、ディスクのシーク時間が整列に要する時間に与える影響を調べ、実効的な整列時間を評価し、大きなファイルを少ないパス数で整列できることを示すこと、(第281頁第6〜12行、「あらまし」)
・試合の勝ち抜きで優勝を決めるトーナメントと同じ原理のトリー・セレクション・ソートを変形しハードウエア化の容易な形に導くこと、図1の各々整列された3つのデータからなる8つのデータ列は、各交点でそれぞれ2つのデータが比較され、小さい方のデータがウイナーとして1つ上のレベルに進み、さらに比較されてそのウイナーがさらに上に進むこと、図2は最小のデータが出力端に現れたことを示し、図3のようにウイナー-ルーザー対表現で表わすこともできること、小さい方のデータはウイナー、大きい方のデータはルーザー、ウイナーが右の枝から来たか左の枝から来たかの情報はヒストリーとして表わすこと、(第282頁左欄第5〜右欄第2行)
・ディスクソートでは、ディスクのシーク時間が大きいためデータの入力が一時的に不可能になる。これを解決するには、非常に大きい入力バッファを用意できればよいが、N次整列併合ではN個の入力バッファが必要となり、Nが大きいとそのRAMの総量は巨大になること、(第285頁左欄第39〜44行)
引用例2(特開昭63-316231号公報)
・「多言語アルファベットからの文字に基づくワードのコンピューターによるアルファベット・ソーテイングを容易にする方法において、関連文字に割り当てられた数値を考慮中の言語の文字のソーテイング順序を反映する数値に変換する段階を特徴とする方法。」(特許請求の範囲第1項)
・「本発明のソーティング方法は、前記の14の言語の任意のものをサポートするために、同一アルゴリズム(ソフトウエア)を許容する。・・・言語依存ソート順序をデータ・ファイルとして記憶することにより、ソーティング・ソフトウエアは、使用者の言語に影響されず、そしてこのため高度に移植性があり、そしてソフトウエアの唯一のセットが保守されなければならないために、費用効果を有する。サポートされる言語数は、利用されるデータ・ファイル数に正比例する。これは、新言語がサポートされるとき、ソフトウエア変更が必要とされないことを意味する。代わりに、新データ・ファイルが、規定されかつ設置されなければならない。」(第4頁左上欄第6行〜同頁右上欄第4行)
・「言語依存ソート順序は、実行時にデータ・ファイルからロードされる。ソート順序は、コード化ソフトウエア(付録A)によって使用される3つのコード化テーブル・・・に対してデータを作成するユーティリティ・プログラムによって作成される。」(第5頁右上欄第6〜13行)
引用例3(特開昭63-104131号公報)
・「中国語文字の文字コードと前記文字コードに対応した中国語文字の属性とを記憶するための記憶手段と、前記中国語文字の属性を入力して生成した中国語文字順表と、前記中国語文字順表の生成を制御するための中国語文字順表生成制御手段と、前記中国語文字をソートキイとして前記中国語文字を含むファイルを文字順表に従って並び換えるためのファイル制御手段とを具備して構成したことを特徴とする中文ソート方式。」(特許請求の範囲)
・「利用者は、操作指示部12により、例えば人名読み順等のようなソート方式と実行開始とを指示する。実行開始により、中国語文字順表生成制御部13が起動され、指定されたソート方式に従って中文属性ファイル1を参照し、メモリの内部に人名読み順に中国語文字順表を生成する。次に、中文ソート制御部5は中文データファイル10からレコードを読出し、中国語文字順表4を参照してソートキイ部分の中国文字コードから新しいソートキイを生成し、元のレコードに付加する。このように変換したレコードは、一時的にソート用作業ファイル8に格納される。中文データファイル10の全レコードに対して新しいソートキイを付加した後、そのキイにもとずいてソートを行なう。ソートの完了した後、レコードの内部の新しいソートキイを削除しながらソート済み中文データファイル11に書出す。」(第2頁左下欄第2〜20行)
引用例4(特開平3-210627号公報)
・「データ入力装置と、データ出力装置と、データ記憶装置と、前記入力データを同一文字種毎に分類する手段と、前記データをキー用新コードに変換する手段と、前記キー用新コードの記憶装置と、前記キー用新コードを基にソートを実行する手段とを備えたことを特徴とする電子計算機。」(特許請求の範囲)
・「第1図は、本発明のブロック図であり、データ記憶装置13と、ソートのために作成されたキーの記憶装置14と、データを入力する装置11と、ソートされたデータを出力する装置12から構成され、さらに、入力されたデータを同一文字種毎に分類する手段15と、同一文字種のデータをソートキーのための新コードに変換する手段16と、ソートを実行する手段17とを備えている。」(第2頁右下欄第4〜11行)
引用例5(特開平2-271425号公報)
・「特定パターンの高速データ演算処理が行われる情報処理装置の高速データ演算処理方式であって、前記高速データ演算処理の被演算処理データに対応して、該被演算処理データの演算結果を予め格納する演算メモリを設け、前記被演算処理データをアドレスとして前記演算メモリをアクセスすることにより前記演算結果を出力するようにしたことを特徴とする高速データ演算処理方式。」(特許請求の範囲)
・「特定パターンの演算処理が行われる場合、DMAコントローラ1はその演算処理の種類に応じてROM2に格納されている演算処理の結果群のうち一つを選択し、該演算処理の結果群をRAM4に書込む。その後に、セレクタ5においてアドレスバス100から演算用バス102への切換えが行われ、演算対象のデータが演算用バス102を介して演算RAM4に供給される。すなわち、演算対象のデータをアドレスとして演算RAM4へのアクセスが行われる。これにより、演算RAM4に予め格納された演算処理の結果が読出され、その演算処理の結果がデータバス101を介してシステムRAM3に格納される。」(第2頁右上欄第13行〜同頁左下欄第7行)
引用例6(特開平3-149657号公報)
・「多項演算及びベクトル演算を含む複雑な算術演算あるいは特殊なコード変換を実行するため記憶装置内に予め演算結果あるいはコード変換の解を設定した一覧表を用意しこの一覧表を参照することで前記算術演算あるいはコード変換を実行する演算装置において、外部に設けられた外部メモリから外部メモリバスを介して前記演算結果あるいはコード変換の解を設定した一覧表とこの一覧表を参照し実行する手順を示す一覧表参照手順とを読出し内蔵メモリに転送するよう制御するダイレクトメモリアクセスコントローラと、装置内の各部の制御を行う主制御部とを備え、前記外部メモリ内に複数の演算結果あるいはコード変換の解を設定した一覧表とこの一覧表を参照し実行する手順を示す一覧表参照手順とを記憶し、初期設定時に任意の演算結果あるいはコード変換の解を設定した一覧表とこの一覧表を参照し実行する手順を示す一覧表参照手順とを内蔵メモリに転送することにより、任意の複雑な算術演算あるいは特殊なコード変換の実行を可能とすることを特徴とする演算装置。」(特許請求の範囲第1項)

3.対比・判断
本願請求項1に係る発明(以下、本願発明という)と上記各引用例に記載された事項とを対比すると、引用例1ないし6には、いずれも本願発明の「ローカルメモリ内の文字データをアドレスとする位置にその文字データに対応する2進データを格納し、前記ローカルメモリからの文字データに対応する2進データを前記トリーセレクション・プロセッサに出力する変換テーブル」について記載がなく、またこれを示唆する記載もない。すなわち、引用例1にはトリーセレクション・プロセッサが記載されているが、ソート対象は文字データではなく、変換テーブルを備えていない。引用例2ないし4は、文字データのソートに関するものであり、変換テーブルに対応するものとして、引用例2では、関連文字に割り当てられた数値を考慮中の文字のソーテイング順序を反映する数値に変換するためのデータファイル、引用例3では、中国語文字順表、引用例4では、同一文字種のデータをソートキーのための新コードに変換する手段、がそれぞれ記載されているが、いずれも前記摘記した本願発明における変換テーブルの構成について記載も示唆もない。引用例5及び引用例6は、DMA制御回路を備えているが、いずれも文字データのソートに関するものでなく、前記摘記した本願発明における変換テーブルの構成について記載も示唆もない。
そして、本願発明は、前記摘記した本願発明における変換テーブルの構成に加えて、I/Oデバイスから2進データを直接前記変換テーブルに書き込むDMA制御回路とを備えることにより、高速に文字列のソートが処理できるという引用例1ないし引用例6には記載のない効果を奏するものと認められる。
したがって、本願発明が引用例1ないし引用例6に記載された発明に基いて当業者の容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-09-10 
出願番号 特願平4-95773
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 千葉 輝久
治田 義孝
発明の名称 トリーセレクションソート・エンジン  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  

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