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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1064057
審判番号 審判1999-19329  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-08 
確定日 2002-08-02 
事件の表示 平成6年特許願第97016号「軸受用予圧装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年10月27日出願公開、特開平7-279955]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年4月12日に特許出願されたものであって、その請求項1〜4に係る発明は、平成11年8月6日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものであるところ、請求項1には次のとおり記載されている。

「【請求項1】 ベッドと、ベッドに設けたコラムと、ベッドに設けられていてワークを取りつけるテーブルと、コラムに沿って移動する主軸頭と、主軸頭に垂直方向に設けられた主軸を備える工作機械において、主軸が垂直方向に軸受を介して主軸頭のフレームに回転可能に支持されており、軸受が、垂直方向に少なくとも1つの皿ばねによって予圧されており、皿ばねの一部又は全部が形状記憶合金で形成されており、皿ばねの温度によって予圧力を段階的に調整する構成にしたことを特徴とする工作機械。」

2.引用刊行物記載の内容
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された3件の刊行物のうち、次の刊行物には以下の内容が記載されている。
引用刊行物1:特開平2-256922号公報
(a)(特許請求の範囲)
「複数のばねを用いて軸受を予圧し、ばねの一部又は全部を形状記憶合金で構成し、ばねの温度によって予圧力を段階的に調整することを特徴とする軸受用予圧装置。」
(b)(明細書第1頁左欄第10行〜第2頁左上欄第3行)
「産業上の利用分野
本発明はマシニングセンサのスピンドルなどにおける軸受の予圧装置に関するものである。
従来の技術
近年、工作機械における高速切削の需要が高まっている。主軸が15,000rpm、あるいは20,000rpm以上の高速で回転する超高速切削の場合には、軸受が相当の高温になる。軸受が高温になると焼付が起り易くなる。また高温では軸受やその周辺部材が膨張して予圧が過度に大きくなる傾向があり、軸受破損が頻発していた。
一方、低速で行う切削においては重切削が要求され、大きな予圧が必要となる。
そこで、低速重切削と高速軽切削とで予圧を多段階的に調整する予圧装置が考案されている。これらの予圧装置においては例えば、圧電センサー、油圧系を用いて予圧を制御している。
発明が解決しようとする問題点
油圧系や圧電センサーを用いて予圧を制御する予圧装置は、構造が複雑で大型になりがちである。また、製造コスト、メンテナンスの点でも問題があった。
発明の目的
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明は構造が簡単で比較的低コストで製作でき、しかもメンテナンスが容易な軸受の予圧装置を提供することを目的としている。」

(c)(明細書第2頁左上欄第17行〜第2頁右上欄第9行)
「作用効果
本発明の軸受予圧装置においては、軸受の温度が上昇しばねに伝わり、ばねが所定温度以上になるとばねが形状記憶効果によって変形し、予圧力が減少する。
特性の異なるばねを数種類用いた場合には、温度の上昇に伴い予圧力が多段階的に減少する。
このように本発明の軸受予圧装置は、安価で簡単な構成であり、しかも予圧の調節を確実に行うことができる。

(d)(明細書第2頁右上欄第10行〜第2頁左下欄第7行)
「実施例
以下、図面を参照して本発明の軸受予圧装置を説明する。第3図は主軸に軸受予圧装置を有する工作機械を示している。
工作機械はベッド1、テーブル2、コラム3、主軸頭4、モータ5,6,7,11を有している。
テーブル2にワークWが取付けてあり、テーブル2はモータ5によりX方向に移動可能である。コラム3はモータ6によりY1,Y2方向に移動可能である。主軸頭4はモータ7によりZ1,Z2方向に移動可能である。
(e)(明細書第2頁左下欄第8行〜第3頁右上欄第10行)
次に第1図を参照する。第1図は主軸頭4の一部を示している。主軸12は、軸受16,17,18,19を介してフレーム15に回転可能に支持されている。
・・・
フレーム15の中間部にあるフランジ部15aの内側には部材25が位置している。部材25の上側には部材24がボルト27で固定してある。部材24にはばねを設置するための凹部4bが多数設けてある。この凹部4bに対応してフランジ部15aにも多数の穴15bが設けてある。
凹部4bと15bの間にばね26a〜26dが配置してある(第2図参照)。ばね26a〜26cは形状記憶合金から成り、一定温度以上で収縮する構成になっている。ばね26dは通常のばねである。
・・・
部材25と主軸12の間には軸受16,17が配置してあり、主軸12を回転自在に支持している。軸受内輪の上方には管状の部材28が設けてある。さらに部材28の上方には、ネジ付きの押え部材29が主軸12にネジ込んである。
ばね26a〜26dは部材24及び25を上方に加圧することにより、ベアリング16,17に予圧を与えている。
ばね26a〜26dの特性はそれぞれ異なっており、例えば以下のようになっている。すなわち、ばね26a,26b,26cはそれぞれ25℃(常温)、30℃、40℃以上の温度で縮む形状記憶特性を有する。
軸受16,17の温度が上昇し、熱伝導によりばねの温度も上昇していった場合に、形状記憶合金製ばね26a〜26cを有する予圧機構は以下のように作用する。25℃未満の温度では全部のばね26a〜26dが働き最大の予圧、例えば132kgが得られる。25℃以上30℃未満ではばね26aが遊び、ばね26b〜26dが働き中間の予圧、例えば84kgが得られる。30℃以上40℃未満ではばね26aと26bが遊び、ばね26cと26dによって中間の予圧、例えば84kgが与えられる。40℃以上では26a〜26cが遊び、ばね26dのみによって最小の予圧、例えば20kgを与える。」

(f)(第1図及び第2図)
これらの図には、前記「ばね26a〜26d」が「コイルばね」として記載されていると認められる。

以上の記載によれば、引用刊行物1には、「ベッド1の上に、ワークWを取付けるテーブル2がX方向に移動可能に、コラム3がY1,Y2方向に移動可能にそれぞれ設けられ、主軸頭4がコラムに沿ってZ1,Z2方向に移動可能に設けられ、主軸12が主軸頭4に垂直方向に設けられた工作機械において、主軸12が垂直方向に軸受16〜19を介して主軸頭4のフレーム15に回転可能に支持されており、軸受16,17が、垂直方向に複数のコイルばね26a〜26dによって予圧され、該複数のばねの一部が形状記憶合金で形成され、ばねの温度によって予圧力を段階的に調整する工作機械」が、記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と、引用刊行物1に記載された発明とを対比すると、引用刊行物1に記載の「ベッド」は本願発明の「ベッド」に相当し、以下同様に、「コラム」は「コラム」に、「テーブル」は「テーブル」に、「主軸頭」は「主軸頭」に、「主軸」は「主軸」に、「軸受」は「軸受」に、「フレーム」は「フレーム」に、それぞれ相当する。
そして、「コイルばね」と「皿ばね」は「ばね」として共通し、また、ばねの数に関する、引用刊行物1に記載の発明における「複数」と、本願発明における「少なくとも1つ」は、「複数」の点で共通する。

したがって、本願発明と引用刊行物1に記載の発明とは、「ベッドと、ベッドに設けたコラムと、ベッドに設けられていてワークを取りつけるテーブルと、コラムに沿って移動する主軸頭と、主軸頭に垂直方向に設けられた主軸を備える工作機械において、主軸が垂直方向に軸受を介して主軸頭のフレームに回転可能に支持されており、軸受が、垂直方向に複数のばねによって予圧されており、ばねの一部又は全部が形状記憶合金で形成されており、ばねの温度によって予圧力を段階的に調整する構成にした工作機械」の点で一致しており、当該ばねを、本願発明においては「皿ばね」としたものであるのに対し、引用刊行物1に記載の発明においては「コイルばね」としている点で、両者は相違する。

上記相違点について検討すると、ばねの使用状況に応じて、ばねの形状を「皿状」や「コイル状」など適宜選択することは慣用されており、皿ばね自体を形状記憶合金製とすることも周知であるから(例えば、実願平3-52966号(実開平5-6250号)のCD-ROM参照)、引用刊行物1に記載の発明における形状記憶合金製のコイルばねを、その形状を変えて皿ばねとし、本願発明のようにすることは当業者が容易に想到し得たことと認められる。また、本願発明において皿ばねの形状としたことに基づく効果についてみても、通常の皿ばねの有する効果の域を出ず、格別のものを見出すことはできない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-05-23 
結審通知日 2002-06-04 
審決日 2002-06-17 
出願番号 特願平6-97016
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 均  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 前田 幸雄
町田 隆志
発明の名称 軸受用予圧装置  
代理人 田辺 徹  

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