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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04G
管理番号 1064189
審判番号 審判1995-21882  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1995-10-12 
確定日 2000-11-06 
事件の表示 平成3年特許願第185631号「昇降足場」拒絶査定に対する審判事件(平成7年1月20日出願公開、特開平7-18845)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願請求項1の発明
本願は、平成3年6月28日の出願であって、その請求項1記載の発明(以下、「本願請求項1の発明」という。)は、平成10年11月2日付けで全文補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 建造物の外壁面に沿って昇降する複数の昇降体を水平方向に配設し、各昇降体は建造物の頂上部から延長された吊り材にそれぞれ吊持させ、横方向に隣接する昇降体同志はどちらか一方の上下方向の変位を許容するリンク機構を介して連結され、昇降体はフレーム部材と、各フレーム部材に上下多段に配設された複数の作業床と、各フレーム部材に展設された天蓋部と外壁部とからなるカバー部材と、各フレーム部材に連設された揺れ止め手段と、を備えていることを特徴とする昇降足場。」
2.刊行物記載の発明
これに対して、当審の拒絶の理由に引用され、この出願の日前に頒布された実願昭55ー179577号(実開昭57ー102647号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、
「この考案は……特に塔又は煙突等の円柱構造物の外周面に沿つて養生ネツトを備えた状態で昇降し得るように構成した円柱構造物用作業ゴンドラ装置に関するものである。」(明細書第1頁第14〜18行)、
「1個の作業ゴンドラ装置(2)は、所要の幅をもつ円弧状床板(3)の両側端それぞれに連結板(4)が固着され、またその床板(3)の両側端上面には所定の間隔をおいて支柱(5),(5)′が立設され、該支柱(5),(5)′の中間部および上部にはそれぞれ円弧状の横桟(8),(8)′挿入用の連結孔(6)を有する取付部片(7)が設けられ、そして外縁部に位置する支柱(5)の上部には上端に養生ネツト(9)上縁の連結片(10)を有した養生ネツト取付柱(11)が支柱(5)と連続するように延長されている。」(明細書第2頁第3〜12行及び第1、3図)及び
「複数個…の作業ゴンドラ装置(2)を円柱構造体(30)を包囲するように接近して各ゴンドラ両側端の連結板(4)を隣接する他の作業ゴンドラ装置相互間でボルト・ナツトにより互い止着して床板(3)を環状に連結しこのようにして各ゴンドラによつて形成される内部空所内に円柱構造物(30)を位置させて第1図に示すように、環状作業用ゴンドラ装置(1)を組構し、かつ上縁を養生ネツト取付柱(11)の上端に連結片(10)を介して取付けた養生ネツト(9)は前記環状作業用ゴンドラ装置(1)を包囲するように垂下される。
一方、塔又は煙突のような円柱構造物(30)の上端拡大部の下面から周知の手段により垂下した索条(22)は自走式のワインダ(17)に巻回されたのち索条導管(19)内を通つて床板(3)上に垂下される。
しかしてこの状態でワインダ(17)の駆動により環状作業用ゴンドラ装置(1)が上昇するとそれに伴つて養生ネツト(9)の上端も引上げられるので環状作業用ゴンドラ装置(1)も含めて、そこより下方の円柱構造物は養生ネツト(9)で包囲された状態となる。」(明細書第3頁第15行〜第4頁第14行及び第1、2図)が記載されており、
以上の明細書及び図面の記載からみて、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「円柱構造物(30)の外壁面に沿って昇降する作業ゴンドラ装置(2)を水平方向に複数連結し、各作業ゴンドラ装置(2)は円柱構造物(30)の上端拡大部の下面から垂下された複数の索条(22)にそれぞれ吊持され、横方向に隣接する作業ゴンドラ装置(2)同志は各ゴンドラ両側端の連結板(4)をボルト・ナツトにより互い止着して連結され、支柱(5),(5)′と、該支柱(5),(5)′の中間部及び上部にはそれぞれ円弧状の横桟(8),(8)′を設けてフレームを構成し、各フレームに配設された床板(3)と、養生ネツト取付柱(11)の上端に取付けられ、円柱構造物(30)を包囲するように垂下される養生ネツト(9)と、を備えている環状作業用ゴンドラ装置(1)。」
同じく、米国特許第2916102号明細書(以下、「刊行物2」という。)には、
「建築物の屋上部に巻上手段を配設し、ブリッジを巻上手段からのワイヤロープに吊持し、昇降させること。」(第6欄第36〜58行及びFig.1)が記載され、
同じく、特開平3-137358号公報(以下、「刊行物3」という。)には、
「作業台の本体1に支柱2によって防音框体3を設ける。又防音框体3の壁面に接する部分に溝5を有する弾性ゴムシール4を設ける。本体は建物上部より下げたワイヤー7により吊り下げられる吊り杆6によって吊り下げられている。又本体1には防水箱8を設け、中に高圧水噴射ノズル19を上下、左右移動自在に設ける。一方本体1にはシリンダー10によって駆動され壁面に吸着する吸着パット9を設ける。……作業者22は建物上方よりワイヤー7により、本体1を降下させつつ、所定位置まで降下し、シリンダー10を駆動して吸着パット9を壁面に吸着させて、弾性ゴムシール4により防音框体を密閉し、」(第1頁右下欄第14行〜第2頁左上欄第12行)及び
「防音框体3は、天井面部と外側面部から構成され、壁面21と防音框体3とで密閉空間を形成し得るようにされた構造。」(第1図)と記載され、
同じく、実願昭60ー23339号(実開昭61-140037号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物4」という。)には、
「ゴンドラの前面開口部の両側縁及び下縁には建築物の壁面に当接する緩衝部材が設けられ、かつ前記開口部の両側縁に設けられた緩衝部材と隣接する位置には作業ゴンドラが昇降を停止したとき壁面に吸着する複数個の吸着部材が設けられていることを特徴とする建築物壁面の工事装置。」(明細書第1頁第11〜17行)及び
「巻上機によってワイヤロープ22を巻上げると、……作業用ゴンドラ2は建築物の壁面に沿って上昇し、補修すべき壁面位置に到達したところで巻上げを止め……エア供給源より吸着パツド17,19、及びエアマツト15にエアを供給すると、吸着パツド17,19はエア圧により壁面に吸着する。……これによつて作業用ゴンドラ2は壁面に不動の状態に保持される。……このような状態でゴンドラ2内の作業者は作業を行なうのであるが、作業中に壁面にかかる力の反力がゴンドラ2に作用しても、ゴンドラ2が吸着パツド17,19によつて壁面に強力に吸着されているため、移動することがない。」(明細書第6頁第13行〜第7頁第10行及び第1、3図)と記載され、
同じく、特公昭51-12932号公報(以下、「刊行物5」という。)には、
「本発明は、超高層鉄骨建築の仮足場枠に係るもので……所要の個所に施設して上下…に摺動可能とし……たものである。」(第1頁第1欄第24〜28行)及び
「足場枠には足場板を数段にして折畳リンクにより折畳み自在に取設するものとし、」(第1頁第2欄第16〜17行)と記載され、
同じく、特公昭50-25737号公報(以下、「刊行物6」という。)には、
「両連結片を第6図及び第7図に示す如く連結時相互に重合させることなく突設して、連結片29,29をUボルト29′或いは鎖等にて可撓的に連結するようなす。」(第2頁第3欄第8〜12行及び第6、7図)及び
「長尺足場に形成する際その連結部分を例えばUボルト29等で可動的に連結すれば各吊索操作ウインチ部分での吊索操作速度に多少の差が生じても全く無理なく昇降出来るようなし得る。」(第2頁第4欄第15〜19行及び第6、7図)と記載されている。
3.対比
そこで、本願請求項1の発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「円柱構造物」、「作業ゴンドラ装置」、「索条」、「床板」、「養生ネツト」及び「環状作業用ゴンドラ装置」は、夫々本願請求項1の発明の「建造物」、「昇降体」、「吊り材」、「作業床」、「カバー部材」及び「昇降足場」に相当しているから、
本願請求項1の発明と刊行物1記載の発明とは、
「建造物の外壁面に沿って昇降する複数の昇降体を水平方向に配設し、各昇降体は吊り材にそれぞれ吊持させ、横方向に隣接する昇降体同志は連結され、昇降体はフレーム部材と、各フレーム部材に配設された作業床と、各フレーム部材に展設されたカバー部材と、を備えていることを特徴とする昇降足場。」
である点で一致しているが、
本願請求項1の発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点で相違している。
(相違点)
(1)本願請求項1の発明の吊り材は、建築物の頂上部から延長されているのに対して、刊行物1記載の発明の吊り材は、建造物の上端拡大部の下面から垂下されている点。
(2)本願請求項1の発明の昇降体同志をどちらか一方の上下方向の変位を許容するリンク機構を介して連結することは、刊行物1に記載されていない点。
(3)本願請求項1の発明の作業床が上下多段に配設された複数の作業床であることは、刊行物1に記載されていない点。
(4)本願請求項1の発明のカバー部材が天蓋部と外壁部とからなっているのに対して、刊行物1記載の発明ではそのようになっていない点。
(5)本願請求項1の発明は、各フレーム部材に連接された揺れ止め手段を備えているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのような構成を備えていない点
4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討すると、
相違点(1)について
建築物の頂上部、例えば本願に添付した図面の図1に示すように建築物の屋上に巻上手段を配設し、昇降足場を巻上手段から延長される吊り材に吊持し、建造物の外壁面に沿って昇降させることは、刊行物2に記載されており、本願の出願前、公知の手段にすぎず、相違点(1)において、本願請求項1の発明のようにすることは、当業者が必要に応じて容易に設計変更できることにすぎない。
相違点(2)について
刊行物6に、足場を形成するに、昇降体に固設した連結片の連結部分を例えばUボルト等で可動的に連結した構造が記載されており、本願請求項1の発明の相違点(2)における事項と刊行物6記載の発明の上記事項とは、共に同一の課題を達成するものであり、また、刊行物6記載の発明のUボルトを介して連結したのに代え本願請求項1の発明のリンク機構を採用したことによる格別の効果も認められないから、かくすることは、当業者が容易に設計変更できることにすぎないということができる。
相違点(3)について
刊行物5には、作業床が上下方向に多段に配設され、上段の作業床は折り畳み可能に形成することが記載されており、相違点(3)における本願請求項1の発明の事項は、当業者であれば、必要に応じて容易に付加できることにすぎないものである。
相違点(4)について
刊行物3には、本願請求項1の発明のカバー部材に相当する防音框体を天井面部と外側面部で形成することが記載されており、相違点(4)において、刊行物1記載の発明に代え本願請求項1の発明のように天蓋部を有するようものにすることは、当業者が適宜容易に設計変更できることにすぎない。
相違点(5)について
刊行物4には、本願請求項1の発明の揺れ止めと同様の課題である作業用ゴンドラを壁面に不動の状態に保持し、移動しないように、壁面に吸着する複数個の吸着部材を設けることが記載されており、該吸着部材は揺れ止め手段とも言い換えることができるから、相違点(5)における本願請求項1の発明の事項は、刊行物4記載の発明より当業者が容易に想到できることにすぎない。
そして、本願請求項1に係る発明の相違点(1)〜(5)の事項によって奏される効果も、刊行物1〜6記載の発明により奏される効果の総和以上のものとは認められない。
5.むすび
したがって、本願請求項1の発明は、上記刊行物1〜6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-09-14 
結審通知日 1999-09-24 
審決日 1999-10-05 
出願番号 特願平3-185631
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊波 猛渋谷 知子  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 白樫 泰子
阿部 綽勝
発明の名称 昇降足場  
代理人 天野 泉  

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