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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03B
管理番号 1064193
審判番号 審判1996-8963  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1986-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-06-10 
確定日 2000-10-30 
事件の表示 昭和61年特許願第91957号「広範囲電子式発振器」拒絶査定に対する審判事件(昭和61年12月13日出願公開、特開昭61-283202)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願の手続の経緯及び本願発明の要旨
本願は、昭和61年4月21日の出願(優先権主張・米国・1985年6月7日)であって、その発明の要旨は、平成10年5月14日付け手続補正書で補正された明細書と図面の記載からみてその特許請求の範囲の第1番目に記載されたものの内、「発振を支侍するため」は「発振を支持するため」の誤りと認められるので、結局次のとおりのもの(以下本願第1発明という。)と認める。
「1.インダクタンス手段(L1)、発振を生成するために互いに直列に接続された主コンデンサ(C1)及び第2及び第3のコンデンサ(C3、C4)を含む、共振タンク回路と、
入力と出力を有し、電力出力路に信号を供給しそして該出力からのフィードバック信号を与え、前記タンク回路における発振を支持するために損失を克服するための信号増幅器(A)と、前記フィードバック信号は、前記第2と第3のコンデンサのひとつを含む前記タンク回路の部分を経て前記増幅器の入力にフィードバックされ、
前記増幅器のフィードバック出力とグランド間に接続される第1のインピーダンス(R4)と、
前記第2と第3のコンデンサ間から前記出力に接続された第2のインピーダンスとを含む広帯域電子式発振器であって、
前記第2のインピーダンスは前記増幅器の入力及び出力間の前記フィードバック信号の移相を実質上零程度に維持しそして発振周波数に近いノイズ成分を減少するためのリアクタンス(C5)を含み、
前記第2のインピーダンスは、低周波数ノイズ成分が前記第1のインピーダンスで散逸されるように第1のインピーダンスと関係して低周波数で高い値を有し、前記タンク回路の前記第1のインピーダンスの負荷を減少してQを上げ、これにより前記タンク回路における発振の安定性を改良する、
広帯域電子式発振器」
2.引用例
これに対して、当審の拒絶理由で引用された特開昭53-88556号公報(以下、「引用例」という。)の特に第4図とその説明には、
「トランジスタのベースと接地間にコンデンサ8、9の直列回路と並列に、コンデンサ12、インダクタ13、コンデンサ18、及び可変容量ダイオード19の直列回路を接続し(即ち、コンデンサ8、9、コンデンサ12、インダクタ13、コンデンサ18、及び可変容量ダイオード19は直列接続された共振タンク回路を構成している。)、前記コンデンサ8、9の直列回路の接続点と前記トランジスタのエミッタ間にコンデンサCを接続し、前記トランジスタのエミッタを抵抗6を介して接地し、抵抗6と並列にコンデンサ5を接続し、可変容量ダイオード19に並列に、コイル14と直列に接続したコンデンサ20と抵抗21の並列回路を接続した共振周波数の変化範囲が広げられたUHFバンド受信用広帯域局部発振器の等価回路」
が記載されている。
3.対比
そこで、本願第1発明と引用例に記載されたものとを対比すると、引用例に記載されたインダクタ13、可変容量ダイオード19、コンデンサ8、9、コンデンサC、抵抗6、トランジスタ1は、それぞれ本願第1発明のインダクタンス手段L1、主コンデンサC1、第2第3のコンデンサC3、C4、リアクタンスC5を含む第2のインピーダンス、第1のインピーダンス、信号増幅器Aに相当し、引用例に記載されたコンデンサ8、9、インダクタ13、及び可変容量ダイオード19は直列接続された共振タンク回路を構成しているから、両者は、
「インダクタンス手段(L1)、発振を生成するために互いに直列に接続された主コンデンサ(C1)及び第2及び第3のコンデンサ(C3、C4)を含む、共振タンク回路と、
入力と出力を有し、電力出力路に信号を供給しそして該出力からのフィードバック信号を与え、前記タンク回路における発振を支持するために損失を克服するための信号増幅器(A)と、前記フィードバック信号は、前記第2と第3のコンデンサのひとつを含む前記タンク回路の部分を経て前記増幅器の入力にフィードバックされ、
前記増幅器のフィードバック出力とグランド間に接続される第1のインピーダンスと、
前記第2と第3のコンデンサ間から前記出力に接続された第2のインピーダンスとを含む広帯域電子式発振器であって、
前記第2のインピーダンスはリアクタンス(C5)を含むこと」
の点で一致し、
(1)引用例には第1のインピーダンスである抵抗6と並列にコンデンサ5が接続されているが、本願第1発明は、そのようなコンデンサを用いない点、
(2)引用例には可変容量ダイオード19に並列に、コイル14と直列に接続したコンデンサ20と抵抗21の並列回路が接続されているが、本願第1発明は、引用例の可変容量ダイオード19と同じ働きをする主コンデンサに並列にそのような回路を接続しない点、
で相違している。
4.当審の判断
しかしながら、相違点(1)ついて、
引用例には第1のインピーダンスである抵抗6と並列にコンデンサ5が接続されているが、引用例に記載されたコンデンサ5は、本願の第5図に記載されているように、トランジスタの利得調整の作用をするものであり、このコンデンサは当業者が必要に応じて配設し得るものであり、該コンデンサを備えるか備えないかは単なる設計的事項に属する程度のものであるから、本願第1発明が第1のインピーダンスに並列にコンデンサを用いないことを格別のものとはできない。
相違点(2)について、
引用例には可変容量ダイオード19に並列に、コイル14と直列に接続したコンデンサ20と抵抗21の並列回路が接続されているが、タンク回路の共振周波数の変化範囲をより広くする必要がある場合にはコイル14を設け、希望する共振周波数の1/2の周波数の位置に寄生の共振が起こることのある周波数帯域で、共振回路のQを小さくする必要がある場合には、コンデンサ20と抵抗21の並列回路を設ければよい旨引用例に記載されているから、そのような必要性がなければ、本願第1発明のようにこれらのコイルやコンデンサや抵抗を用いなくても良いことは引用例に示されたものから明白であり、この相違点も格別のものでない。
また、引用例に記載された主要部の回路構成は、本願第1発明の回路構成と同じであり、引用例に記載された上記発振器の発振を有効に行わせるために、本願第1発明と同様に、コンデンサCである第2のインピーダンスが、増幅器の入力及び出力間のフィードバック信号の移相を実質上零程度に維持しそして発振周波数に近いノイズ成分を減少する作用があることは容易に推測しうることであり、さらに、コンデンサCである上記第2のインピーダンスが、低周波数ノイズ成分が第1のインピーダンスの抵抗で散逸されるように第1のインピーダンスと関係して低周波数で高い値を有し、タンク回路の前記第1のインピーダンスの負荷を減少してQを上げ、これにより前記タンク回路における発振の安定性を改良する作用があることも容易に推測しうることである。
即ち、本願第1発明の「第2のインピーダンスが増幅器の入力及び出力間のフィードバック信号の移相を実質上零程度に維持しそして発振周波数に近いノイズ成分を減少する」作用があること、及び「第2のインピーダンスが、低周波数ノイズ成分が第1のインピーダンスで散逸されるように第1のインピーダンスと関係して低周波数で高い値を有し、タンク回路の前記第1のインピーダンスの負荷を減少してQを上げ、これにより前記タンク回路における発振の安定性を改良する」作用があることは、引用例に明記されていないが、引用例に記載されたものから、当業者の予測しうる程度のものであって格別のものとは認められない。
5.むすび
したがって、本願第1発明は、引用例に記載されたものから当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、上記のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の第28番目に記載された本願第2発明を検討するまでもない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1998-10-07 
結審通知日 1998-10-27 
審決日 1998-11-09 
出願番号 特願昭61-91957
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 聡史石井 研一飯田 清司  
特許庁審判長 木南 仁
特許庁審判官 鈴木 朗
磯崎 洋子
発明の名称 広範囲電子式発振器  
代理人 野口 良三  
代理人 小林 泰  
代理人 津田 淳  
代理人 社本 一夫  

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