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関連判例 | 平成12年(行ケ)95号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01S 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01S |
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管理番号 | 1064211 |
審判番号 | 審判1998-29 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1986-11-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-01-05 |
確定日 | 2001-08-09 |
事件の表示 | 昭和61年特許願第98411号「Nd-YAGレ-ザ」拒絶査定に対する審判事件(平成7年3月29日出願公告、特公平7-28072)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
本願は昭和61年4月30日の出願(優先権主張:1985年5月1日、米国)であって、その発明の要旨は、公告された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1、請求項23及び請求項30に記載された次のとおりのものと認める。(本願について公告後になされた平成10年1月8日付及び平11年7月12日付手続補正は却下された。) 「【請求項1】高効率でダイオードポンプするコンパクトなネオジムーYAGレーザであって、 a)前端部と後端部を有するネオジムーYAGレーザロッド、 b)ハウジング内の前端部前方の固定した位置にネオジムーYAGロッドを保持する手段を有するハウジングと、 c)Nd:YAGロッドをポンプするためのレーザダイオードで、ロッドをポンプするための実質的にロッドに適合する出力周波数を有し、ハウジング内でロッドの後ろでロッド心合わせされて固定されているレーザダイオード、 d)レーザ空洞の前端部を形成する反射面を有する出力カップラー、 e)Nd:YAGロッドを内部に有するレーザ空洞の後端部を形成する後方ミラー手段、 f)レーザ空洞の周波数二倍器であって、レーザロッドの出力ビームを受け、その波長を二等分し、周波数を二倍にするために配置された周波数二倍器。 g)レーザビームを偏光し、効率的な周波数二倍化をするための、レーザ内にある偏光手段とから成る装置。(以下「本願第1発明」という。) 【請求項23】高効率を有するネオジムーYAGダイオードポンプレーザであって、 a)ハウジング b)ハウジング内に固着されたレーザダイオードであり、少なくとも約20%の効率を有して、約0.8ミクロンの波長の出力ビームを有し、該ダイオードを冷却するための冷却手段を備えるレーザダイオード、 c)レーザダイオードの前にあり、ハウジング内でダイオードのビームの光路内に維持されたNd:YAGのレーザロッドで、ダイオードがレーザロッドをポンプするダイオードの出力に十分に適合するレーザロッド、 d)レーザロッドを内包するレーザ空洞を形成する前部及び後部ミラー手段、 とから成る装置。(以下「本願第2発明」という。) 【請求項30】高効率で可視光スペクトルのレーザビームを作る方法であって、 a)ネオジムーYAGレーザロッドを有するレーザ空洞を形成する工程と、 b)近赤外線出力ビームを生成するべく、ロッドをポンプするためにロッドと十分に一致する出力周波数を有するレーザダイオードでレーザロッドをポンプする工程、 c)空洞中の周波数二倍器を使用して、近赤外線出力ビームの周波数を二倍化する工程、 d)周波数二倍化の効率を促進するためにレーザ空洞内でレーザビームを偏光する工程、とから成る方法。(以下「本願第3発明」という。)」 これに対して、当審における平成10年12月11日付拒絶理由通知書で引用した、Walter Koechner「Solid-State Laser Engineering」,Springer- Verlag New York Inc.1976,p.277&516-521 (原審甲第3号証、以下「第1引用例」という。)の、特にFigure10.10を中心として説明されている記載中には、出力用の前方凹面鏡と後方凹面鏡とからなる共振器中に、1.06μmを発振するNd:YAGレーザロッドと、1.06μmを二倍周波数の0.53μmに変換する非線形結晶体と、非線形結晶体に供給するレーザ光に偏光を与えるブリュースター板とを配置した空洞構造が示されている。同引用例中の別のp.277〜278には、このようなNd:YAGレーザロッドのポンピング光源として、単一またはアレイ状のGaAsレーザダイオードを、一般的な直接結合またはエンドポンピングの方法で用いることが記載され、更に、ポンピングレーザダイオードのピーク発光波長は、Nd:YAGレーザロッドの吸収波長帯に適合させるようにし、かつ、この波長の維持はポンピングレーザダイオード、或いはNd:YAGレーザロッドの冷却によって行ことが記載されている。ポンプ波長帯は、0.807と0.867μmであることも記載されている。 更に、同引用例のp.521頁には、共振空洞は、TEM00モードのレーザ光のモードボリュームが、レーザロッド中において最適の大きさとなり、かつ、非線形結晶体中においては小さくなるように設計される、ということが記載されている。 同じく引用した「OPTICS LETTERS,Vol.10,No.2,February 1985,p.62-64」(原審甲第1号証、以下「第2引用例」という。)には、GaAs/GaAlAs系のレーザダイオードのポンピング光の大きさを20倍にしてNd:YAGレーザロッドのTEM00モードの大きさにマッチさせる旨が記載されている。 同じく引用した特開昭50-45595号公報 (原審甲第5号証、以下「第3引用例」という。)には、Nd:YAGレーザロッドの光軸の後方位置に複数のポンピング用GaAlAsLEDのアレイの中心を配置させるようにした、Nd:YAGレーザロッドとそのポンピング光源の配置構造が記載されている。 原査定において引用された「APPLIED OPTICS.」,Vol.18,No.23,/1 DECEMBER 1979,pp.3882-3883(原審甲第2号証)には、前方出力ミラーと後方ミラーとの間に固体レーザロッドを配置し、かつ、後方ミラーの更に後方のレーザロッドの中心軸位置にレーザダイオードからなるポンピング光源を配置し、それらの各ミラー、固体レーザロッド及びポンピングレーザダイオードを、6cm直径と10cm長さのボディーに固定配置収納したことが記載されている。同号証には、またフォーカシング効率が84%、レーザロッドのポンピング吸収係数が115-1、ポンピング光のレーザロッドへの吸収効率が85%であるというようなことが記載されている。 本願第1発明と上記第1引用例記載の発明とを比較すると、両者は「ダイオードポンプするネオジムーYAGレーザであって a)前端部と後端部を有するネオジムーYAGレーザロッド、 b)ネオジムーYAGロッドと、 c)Nd:YAGロッドをポンプするためのレーザダイオードで、ロッドをポンプするための実質的にロッドに適合する出力周波数を有するレーザダイオード、 d)レーザ空洞の前端部を形成する反射面を有する出力カップラー、 e)Nd:YAGロッドを内部に有するレーザ空洞の後端部を形成する後方ミラー手段、 f)レーザ空洞の周波数二倍器であって、レーザロッドの出力ビームを受け、その波長を二等分し、周波数を二倍にするために配置された周波数二倍器。」という点で一致するが、しかしながら、(1)本願第1発明が、「高効率でコンパクトな構造」というものであるのに対して、第1引用例記載の発明には、その点が記載されていない(相違点イ)、(2)本願第1発明が、「ハウジング内の前端部前方の固定した位置にレーザロッドを保持する手段を有するハウジング」を構成するのに対して、第1引用例記載の発明は、ハウジング構造について特に記載がない(相違点ロ)、(3)本願第1発明におけるレーザダイオードが、ハウジング内でロッドの後ろでロッド心合わせされて固定されているのに対して、第1引用例には、レーザダイオードの配置について記載がない(相違点ハ)、の各点で相違する。よって、これらの各相違点について、以下検討する。 イ、相違点イについて 固体レーザ構造を、効率が高くかつコンパクトなものとすることは、固体レーザについてよく知られている一般的な一つの方向であって、上記原審甲第2号証にも、そのことが示唆されている。 ロ、相違点ロについて 固体レーザがハウジング構造を有することは当然なことであって、上記原審甲第2号証にも、ハウジング内にレーザロッドその他を収納することが示唆されている。そして、ハウジング内の前端部前方の固定した位置にレーザロッドを保持するようにすることは、当業者が必要に応じてなし得ることである。 ハ、相違点ハについて 上記第3引用例には、Nd:YAGレーザロッドの光軸の後方位置に複数のGaAlAsLEDのアレイの中心を配置させるようにした構造が示されており、また、原審甲第2号証にも、後方のレーザロッドの中心軸位置にレーザダイオードからなるポンピング光源を配置した構成が示されているように、LED、或いはレーザダイオード等のポンピング用発光素子を、ハウジング内でロッドの後ろでロッド心合わして固定することは周知慣用されていることである。 従って、本願第1発明は、第1引用例及び第3引用例記載の技術内容の基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。 次に、本願第2発明と上記第1引用例記載の発明とを比較すると、両者は「高効率を有するネオジムーYAGダイオードポンプレーザであって、約0.8ミクロンの波長の出力ビームを有し、該ダイオードを冷却するための冷却手段を備えるレーザダイオード、レーザダイオードの前にあり、ハウジング内でダイオードのビームの光路内に維持されたNd:YAGのレーザロッドで、ダイオードがレーザロッドをポンプするダイオードの出力に十分に適合するレーザロッド、レーザロッドを内包するレーザ空洞を形成する前部及び後部ミラー手段、とから成る装置。」という点で一致するものの、本願第2発明において、ポンピング用レーザダイオードが、ハウジング内に固着され、少なくとも約20%の効率を有するものであるのに対して、第1引用例記載の発明は、それらの点について記載がない、という点で両者は相違する。しかしながら、ポンピングレーザダイオードが固体レーザロッドなどと共にハウジング内に固着されることは、上記原審甲第2号証にも示されているように、よく知られていることであり、また、レーザダイオードのポンピング光が固体レーザ発振に変換される効率が少なくとも20%であることも、同じく原審甲第2号証に示唆されているように、よく知られていることである。 従って、本願第2発明は、第1引用例記載の技術内容の基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。 次に、本願第3発明と上記第1引用例記載の発明とを比較すると、両者は「高効率で可視光スペクトルのレーザビームを作る方法であって、 a)ネオジムーYAGレーザロッドを有するレーザ空洞を形成する工程と、 b)近赤外線出力ビームを生成するべく、ロッドをポンプするためにロッドと十分に一致する出力周波数を有するレーザダイオードでレーザロッドをポンプする工程、 c)空洞中の周波数二倍器を使用して、近赤外線出力ビームの周波数を二倍化する工程、 d)周波数二倍化の効率を促進するためにレーザ空洞内でレーザビームを偏光する工程、とから成る方法。」という全ての点で一致する。 従って、本願第3発明は、第1引用例記載の発明と実質的に同一であると認められる。 以上のとおりであるから、本願第1〜2発明は、上記第1〜3引用例引用例記載の技術内容に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、また、本願第3発明は上記第1引用例記載の技術内容と同一であるから、同法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-07-30 |
結審通知日 | 1999-08-20 |
審決日 | 1999-09-22 |
出願番号 | 特願昭61-98411 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(H01S)
P 1 8・ 121- WZ (H01S) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 津田 俊明、恩田 春香、河原 正 |
特許庁審判長 |
小林 邦雄 |
特許庁審判官 |
左村 義弘 東森 秀朋 |
発明の名称 | Nd-YAGレーザ |
代理人 | 堀 明▲ひこ▼ |
代理人 | 竹内 澄夫 |