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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04N |
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管理番号 | 1064212 |
異議申立番号 | 異議2001-72893 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-12-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-10-17 |
確定日 | 2002-05-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3160814号「電子ビュ-ファィンダを備えた撮影機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3160814号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3160814号に係る発明は、平成3年5月30日に出願され、平成13年2月23日に設定登録(請求項の数1)がなされ、その後特許異議申立人から異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年3月8日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 特許権者が平成14年3月8日付け訂正請求により求めている訂正の内容は、以下の訂正事項aないしdのとおりである。 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1中の記載である「焦点を整合させるオートフォーカス機能及びマニアルフォーカス機能」を、「共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させるオートフォーカス機能及びマニアルフォーカス機能」とする訂正。 イ.訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1中の記載である「焦点整合用部材の操作に応動し」を、「焦点整合用部材の初期操作に応動し」とする訂正。 ウ.訂正事項c 特許請求の範囲の請求項1中の記載である「拡大画像表示を識別するための拡大表示マークとを確認し得る構成」を、「拡大画像表示を識別するための拡大表示マークとを確認し、初期操作に続く上記の焦点整合用部材の操作により焦点を整合させる構成」とする訂正。 エ.訂正事項d 明細書の段落【0012】を「【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するため、本発明では、撮像手段によって撮像した画像を確認する電子ビューファインダと、共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させるオートフォーカス機能及びマニアルフォーカス機能とを有する撮影機において、電子ビューフアインダの表示を通常画像表示から拡大画像表示に、また、この逆の画像表示に表示変化させる画像表示切換手段と、マニアルフォーカスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードに切換え、上記画像表示切換手段を動作させて通常画像表示から拡大画像表示に表示変化させると共に、拡大表示マークを電子ビューフアインダに表示させる制御手段とを備え、マニアルフォーカスに際して通常画像表示の一部を拡大した画像表示とこの拡大画像表示を識別するための拡大表示マークとを確認し、初期操作に続く上記の焦点整合用部材の操作により焦点を整合させる構成としたことを特徴とする電子ビューフアインダを備えた撮影機を提案する。」とする訂正。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (訂正事項aについて) 上記訂正事項aは、オートフォーカス機能とマニアルフォーカス機能とが共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させることにより行われることを明確にし、構成を限定した訂正であり、明細書の【0025】段落及び図4の記載に基づくものである。したがって、当該訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (訂正事項bについて) 上記訂正事項bは、焦点整合用部材の初期操作によってオートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードへの切換えが行われることを明確にし、構成を限定した訂正であり、明細書の【0017】及び【0033】段落の記載に基づくものである。したがって、当該訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (訂正事項cについて) 上記訂正事項cは、焦点整合用部材の初期操作に続く操作により焦点を整合させる点を明確にし、構成を限定した訂正であり、明細書の【0026】段落及び図6の記載に基づくものである。したがって、当該訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (訂正事項dについて) 上記訂正事項dは、特許請求の範囲の記載との整合をとるための訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (3)むすび 以上、上記訂正は特許法第120条の4第3項で準用する第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するものであるから、上記訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)本件発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次に掲げるとおりのものである。 「撮像手段によって撮像した画像を確認する電子ビューファインダと、共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させるオートフォーカス機能及びマニアルフォーカス機能とを有する撮影機において、電子ビューフアインダの表示を通常画像表示から拡大画像表示に、また、この逆の画像表示に表示変化させる画像表示切換手段と、マニアルフォーカスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードに切換え、上記画像表示切換手段を動作させて通常画像表示から拡大画像表示に表示変化させると共に、拡大表示マークを電子ビューフアインダに表示させる制御手段とを備え、マニアルフォーカスに際して通常画像表示の一部を拡大した画像表示とこの拡大画像表示を識別するための拡大表示マークとを確認し、初期操作に続く上記の焦点整合用部材の操作により焦点を整合させる構成としたことを特徴とする電子ビューフアインダを備えた撮影機。」 (2)刊行物に記載された発明 当審が通知した取消理由で引用した刊行物である特開平3-34778号公報(以下「刊行物1」という。)には、「電子カメラ」(以下「刊行物1の発明」という。)に関し、本件発明との対比において、図面とともに以下(a)ないし(d)の事項が記載されている。 (a)「本発明は、画像情報を電気信号に変換して出力する電子カメラに関するものである」(1頁左下欄15行ないし16行) (b)「同図において、撮像レンズ1の被写体に対して後方にCCD撮像素子4が配されており、CCD撮像素子4は露出制御装置9、信号処理装置6とに接続されており、信号処理装置6の出力は記録回路7へと供給されるとともに画像を拡大する画像拡大回路11へと供給される。そして画像拡大回路11の出力は画像表示装置すなわち電子ビューファインダ10へと供給されている。また記録装置7、露出制御回路9、画像拡大手段11等はすべて制御用CPU8より出力される制御指令信号によってそれぞれ制御されるように構成されている。また、Sは画像拡大スイッチで、スイッチSを操作することにより、CPU8を介して画像拡大回路11へと画像を拡大する指令が供給される。」(2頁右下欄8行ないし3頁左上欄2行) (c)「撮影時にスイッチSを操作し、画像拡大回路を動作して画像表示装置としての電子ビューファインダ上の画像の一部を拡大して表示することにより、ビューファインダ上では識別できないような細部の画像情報に対しても拡大画像として部分的に表示できるため、焦点調節を行う際、被写体像のビューファインダ上に再生し得ないような細部の情報についてもきわめて高精度に焦点合わせを行うことができるものである。」(3頁右下欄11行ないし20行) (d)「尚、拡大画像が表示されている状態では、CPU8より信号Bを画像表示部10すなわちビューファインダ内に表示し、拡大画像モードになっていることを文字、マークをスーパーインポーズすることによって表示する。このように拡大画像は実際に撮影される画角と異なるため、使用者に画像のモードを認知させるために行われるものである。」(4頁左上欄13行ないし20行) 当審が通知した取消理由で引用した刊行物である実願昭61-110210号(実開昭63-19830号公報)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、本件発明との対比において、図面とともに以下の(e)及び(f)事項が記載されている。 (e)「本考案は各種のビデオカメラにおけるフォーカス装置に関し・・・」(2頁4行ないし5行) (f)「フォーカスレンズ1を自動的にジャストピント位置に移動させるための駆動信号P1を出力するオートフォーカス回路2と 上記フォーカスレンズ1を光軸方向(矢印A方向)に対して前後方向に移動させるための駆動信号P2をスイッチ3,4の押圧操作により出力するマニュアルフォーカス回路5と、 上記スイッチ3,4の押圧操作により上記オートフォーカス回路からの駆動信号P1を上記マニュアルフォーカス回路5からの駆動信号P2に切り換えて、上記フォーカスレンズ1を移動させるフォーカスレンズ移動手段6に供給する選択回路7と」(4頁6行ないし18行) (3)本件発明と刊行物1の発明との対比 ア.本件発明における事項と刊行物1の発明における事項との対比 刊行物1の発明は「電子カメラ」(発明の名称)に係るものであるが、刊行物1には、電子ビューファインダを備え、かつ映像を撮影する撮影機について記載されているともいえるから、この「電子カメラ」は本件発明に係る「電子ビューファインダを備えた撮影機」に対応する。 したがって、刊行物1の発明における事項と本件発明における事項を対比すると、次に掲げる(a)ないし(c)の事項がそれぞれ対応ないしは相当する。 (a)刊行物1の発明における「電子ビューファインダ10」は本件発明における「電子ビューファインダ」に相当する。 (b)刊行物1の発明における「画像拡大回路11」は、「電子ビューファインダ上の画像の一部を拡大して表示する」(上記(2)(c))という動作をスイッチSの操作に基づき行うものであるから、上記スイッチSを操作することにより、本件発明における電子ビューフアインダの表示を通常画像表示から拡大画像表示に、また、この逆の画像表示に表示変化させることができ、本件発明の「画像表示切換手段」に相当する。 (c)刊行物1の発明における「CPU8」は、本件発明の「マニアルフォーカスの焦点整合用部材の操作に応動し、オートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードに切換え、上記画像表示切換手段を動作させて通常画像表示から拡大画像表示に表示変化させる」という制御に相当する動作を行う点について刊行物1には記載がないものの、拡大表示となっていることを使用者に認知させるための文字やマークを表示させる制御は行っているから、本件発明における「制御装置」に対応する。 イ.一致点と相違点の検討 上記対比から刊行物1の発明と本願発明とは、次に掲げる(一致点)で一致し、(相違点a)及び(相違点b)で相違する。 (一致点) 「撮像手段によって撮像した画像を確認する電子ビューファインダを有する撮影機において、電子ビューフアインダの表示を通常画像表示から拡大画像表示に、また、この逆の画像表示に表示変化させる画像表示切換手段と、拡大画像表示時に拡大表示マークを電子ビューフアインダに表示させる制御手段とを備え、通常画像表示の一部を拡大した画像表示とこの拡大画像表示を識別するための拡大表示マークとを確認する構成としたことを特徴とする電子ビューフアインダを備えた撮影機」である点 (相違点a) 刊行物1の発明は、本件発明における、「共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させるオートフォーカス機能とマニアルフォーカス機能の両方を有し、マニアルフォーカスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードへの切換えと、画像表示切換手段を動作させることによる通常画像表示から拡大画像表示への表示変化と、拡大表示マークの電子ビューフアインダへの表示とを制御する制御手段を備える」という構成に相当する構成を具備していない点 (相違点b) 刊行物1の発明には、マニアルフォーカスに際して通常画像表示の一部を拡大した画像表示とこの拡大画像表示を識別するための拡大表示マークとを確認し、初期操作に続く上記の焦点整合用部材の操作により焦点を整合させる点について記載されていない点 ウ.相違点についての検討 (相違点aについての検討) 上記刊行物2には、「フォーカスレンズ移動手段6」(本件発明の「レンズ駆動アクチュエータ」に相当)によりオートフォーカス機構とマニアルフォーカス機構のフォーカスレンズ1を移動させるものにおいて、マニュアルフォーカス時にフォーカスレンズ1の移動を操作するスイッチ3,4(本件発明の「マニアルフォーカスの焦点整合用部材」に相当)の押圧操作によりマニュアルフォーカスに切換える技術について記載されている(上記(2)(f)参照)。 よって、上記刊行物2には「共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させるオートフォーカス機能とマニアルフォーカス機能の両方を有し、マニアルフォーカスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードへの切換え」を行う技術について記載されているといえる。 そして、上記刊行物2に記載されたものは、ビデオカメラのフォーカス装置に係るものであり(上記(2)(e)参照)、ここでビデオカメラとは動画を撮影する電子カメラともいえるものであることから、電子カメラに係る刊行物1の発明に上記刊行物2に記載された技術を適用することは格別困難なことではない。 してみると、「共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させるオートフォーカス機能とマニアルフォーカス機能の両方を有し、マニアルフォーカスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードへの切換え」を「制御する制御手段」は、上記刊行物2記載の技術を上記刊行物1の発明に適用することにより、当業者が容易に設計できた構成にすぎない。 また、上記制御手段が、マニアルフォーカスの焦点整合用部材の初期操作に応動して拡大表示に表示変化させ、拡大表示マークを表示する制御を行う点についても、そもそも刊行物1の発明において、拡大表示は焦点調節を高精度に行うためのものであり(上記(2)(c)参照)、オートフォーカスに比してマニアルフォーカスの焦点整合を行う場合に特に有効であることは当業者にとって技術常識であることを勘案すれば、上記刊行物2記載の技術を上記刊行物1の発明に適用するに際し、当業者が適宜設計し得る技術的事項にすぎない。 (相違点bについての検討) 上記(相違点aについての検討)において検討したように、相違点aとして挙げた構成は、上記刊行物2に記載された技術を上記刊行物1の発明に適用することにより当業者が容易に設計できた事項にすぎないが、相違点bは当該相違点aの構成を有することにより自ずと実現される機能にすぎず、格別のものではない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、上記刊行物1の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電子ビュ-ファィンダを備えた撮影機 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 撮像手段によって撮像した画像を確認する電子ビュ-ファィンダと、共にレンズ駆動アクチュエ-タを動作させて焦点を整合させるオ-トフォ-カス機能及びマニアルフォ-カス機能とを有する撮影機において、電子ビュ-ファィンダの表示を通常画像表示から拡大画像表示に、また、この逆の画像表示に表示変化させる画像表示切換手段と、マニアルフォ-カスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドに切換え、上記画像表示切換手段を動作させて通常画像表示から拡大画像表示に表示変化させると共に、拡大表示マ-クを電子ビュ-ファィンダに表示させる制御手段とを備え、マニアルフォ-カスに際して通常画像表示の一部を拡大した画像表示とこの拡大画像表示を識別するための拡大表示マ-クとを確認し、初期操作に続く上記の焦点整合用部材の操作により焦点を整合させる構成としたことを特徴とする電子ビュ-ファインダを備えた撮影機。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、電子ビュ-ファインダを備えた電子スチルカメラまたはビデオカメラなどの撮影機に関する。 【0002】 【従来の技術】 カメラの焦点合せにはマニアルフォ-カスとオ-トフォ-カスの2方式がある。現在はオ-トフォ-カス方式が発達し、位相差検知方式や赤外線測距方式、コントラスト検出方式等様々なものが実用化されている。 【0003】 このような焦点合せ方式はいずれも一長一短があるため、簡単なフルオ-トカメラを除いて、本格的な撮影を目的とするカメラにはオ-トフォ-カス機構とマニアルフォ-カス機構とが二者択一で使用できるように備えられている。 【0004】 マニアルフォ-カス機構は撮影者が目視で焦点調節を行なうものであるが、人間の目視だけでは正確な測距ができないので、測距や焦点面検出を行なうための補助手段がカメラに組み込まれている。 この補助手段としては、二重像合致式の連動距離計を使用したもの、また、焦点面と等価な位置に代理焦点面を配置し、この焦点面にマット面やスプリットイメ-ジ、マイクロプリズム等を設けて結像状態を観察するものがある。 【0005】 さらに、電子ビュ-ファィンダを備えた電子スチルカメラやビデオカメラでは、撮像素子から出力された画像信号自体をCRT(陰極線管)や液晶表示素子に表示させて焦点整合の確認をするようになっている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 画像信号自体を電子ビュ-ファィンダに表示させて焦点整合状態を確認するカメラでは、距離計等の精密な機構を必要とせず、また、パララックスのない撮影状態を観察することができるという有利さがあるが、次のような欠点も持ち合わせている。 【0007】 解像度が低く精密な焦点合せが困難となる。現在の高品位方式の家庭用ビデオカメラは、水平解像度四百本程度であるが、一般的なフルカラ-の液晶表示素子の水平解像度は4インチ程度のものでも二百数十本である。 このため、電子ビュ-ファィンダの画像表示器としてカメラ本体に液晶表示装置を備えると、液晶表示素子がなお小さくなり、さらに解像度が低下することになる。 【0008】 このように、実際に撮像している画像と、焦点合せのために表示させた画像との解像度に差があるために、撮影時には厳密に焦点合せしたつもりでも、実際に撮影した画像を高解像度のモニタで表示してみるとピントが甘い等の問題が生ずる。 【0009】 画像を光学系(レンズ)を通さずに直視するファィンダ構成のカメラは、光学系を介して画像を見るファィンダ構成のカメラに比較して視野倍率が極端に低い。 このため、高解像度の表示器を使用したとしても、撮影者が表示画像の細部まで確認することが難しく、結果として厳密に焦点合せすることができない。 【0010】 特に電子スチルカメラの場合はビデオカメラに比較して一段と厳密な焦点合せが要求されるため、上記したところの問題が重要な課題となっている。 【0011】 本発明は上記した実情にかんがみ、電子ビュ-ファィンダを備えた撮影機において、マニアルフォ-カス時の焦点整合制度を高めることと、その焦点整合のための構成と操作とを簡単化することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】 上記した目的を達成するため、本発明では、撮像手段によって撮像した画像を確認する電子ビュ-ファィンダと、共にレンズ駆動アクチュエ-タを動作させて焦点を整合させるオ-トフォ-カス機能及びマニアルフォ-カス機能とを有する撮影機において、電子ビュ-ファインダの表示を通常画像表示から拡大画像表示に、また、この逆の画像表示に表示変化させる画像表示切換手段と、マニアルフォ-カスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドに切換え、上記画像表示切換手段を動作させて通常画像表示から拡大画像表示に表示変化させると共に、拡大表示マ-クを電子ビュ-ファィンダに表示させる制御手段とを備え、マニアルフォ-カスに際して通常画像表示の一部を拡大した画像表示とこの拡大画像表示を識別するための拡大表示マ-クとを確認し、初期操作に続く上記の焦点整合用部材の操作により焦点を整合させる構成としたことを特徴とする電子ビュ-ファインダを備えた撮影機を提案する。 【0013】 【作用】 本発明の撮影機は、マニアルフォ-カスの焦点整合用部材を操作することにより、オ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドに切換わると共に、被写体画像の一部が拡大されて電子ビュ-ファィンダに表示される。 この結果、画像の隅々まで細かく目視しながら焦点整合用部材を操作してフォ-カシングすることができるため、焦点整合精度が極めて高い撮影機となる。 また、マニアルフォ-カスモ-ドに切換えることで、電子ビュ-ファィンダには拡大画像と共に拡大表示マ-クが表示されるので、拡大画像表示であることを一見して確認することができる。 なお、電子ビュ-ファインダを通常画像表示に切換えれば、被写体画像の全体的な構図を定めることができる。 この切換えは、焦点を整合させた後操作するレリ-ズ釦の半押し操作に応動させて行なう構成とすることができ、焦点整合操作がさらに簡単化される。 【0014】 【実施例】 次に、本発明の実施例について図面に沿って説明する。 図1の(A)は本発明を実施した電子スチルカメラ(以下、単にカメラという)10の外観斜視図、図1の(B)は同カメラ10を撮影者11がホ-ルドして撮影姿勢をとった状態を示す図、図2は同カメラ10の背面図である。 【0015】 カメラ10はレンズ鏡胴12を備える起伏体13がカメラ本体14に軸着された構成となっている。 カメラ10を使用しないときには起伏体13をカメラ本体14の前側に折畳むことによって保管や携帯などに便利となる。 カメラ10を使用する場合には、図示する如くカメラ本体14と起伏体13とが略くの字形を形成するように、起伏体13を引き起こし、カメラ本体14の背面に設けた表示器15に映し出される被写体画像を観察しながら撮影する。 【0016】 表示器15は電子ビュ-ファィンダを構成するもので、液晶表示装置によって構成してある。 また、この電子ビュ-ファィンダは、図3の(A)、(B)に示したように、表示器15の表示を通常画像表示と拡大画像表示とに切換える画像表示切換機構を有する。 そして、この画像表示切換機構がオ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドヘの切換えに伴って通常画像表示から拡大画像表示に切換わる。 なお、拡大画像表示の場合には、表示器15の隅部に拡大表示マ-ク16を映し出すようにして、通常画像表示と識別できるようにすることが好ましい。 【0017】 上記したカメラ10はオ-トフォ-カス機構とマニアルフォ-カス機構とを備え、後述するところより分かるようにフォ-カスリング17の初期操作によって、オ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドに切換わる。また、フォ-カスリング17はマニアルフォ-カスモ-ドにおいて回転操作してフォ-カシングするものである。 なお、このカメラ10は電源スイッチを投入させた初期状態ではオ-トフォ-カスモ-ドとなる構成としある。 【0018】 また、カメラ10には挿入口18より差し入れた磁気ディスク或いはICカ-ドなどからなる記録媒体が収納してあり、レリ-ズ釦19の押下操作によって撮像された画像デ-タがこの記録媒体に記録される。 【0019】 図4はカメラ10の内部回路構成を示したブロック図である。 光学系22及び絞り23を通った被写体光24が撮像素子25によって画像信号に変換される。 この画像信号はプリアンプ26を介してA/D変換器27に送られ、このA/D変換器27がデジタル変換して信号処理回路29に送る。 【0020】 信号処理回路29によって便宜処理(露出調整、色調整等)された画像信号は画像デ-タとしてRAM30に記録される。 また、RAM30に記録された画像デ-タはメモリコントロ-ラ31によりアドレス制御される記録媒体32に書き込まれる。 なお、カメラ10に収納された記録媒体32はコネクタ33によってカメラ内回路に接続される。 【0021】 また、RAM30に記録された画像デ-タは、D/A変換器34、ドライバ35、表示器15からなる電子ビュ-ファィンダによって画像表示される。 この電子ビュ-ファィンダは、RAM30と共にメモリコントロ-ラ31によって制御され、システムコントロ-ラ28の実行指令にしたがって、通常画像表示または拡大画像表示となる。 【0022】 システムコントロ-ラ28は、CPU、ROMなどからなり、A/D変換器27やメモリコントロ-ラ31などをコントロ-ルする他、入力した画像信号にしたがってドライバ36の駆動信号を出力する。 このドライバ36はアクチュエ-タ37を動作させてフォ-カシングさせる。 【0023】 現在のカメラ用の撮影レンズは、全体を小形化させるためにインナ-フォ-カス式のものが主流となっている。これは前玉回転式フォ-カシング方式のようにレンズ系の前群となっている大きい部分を移動させるものと異なり、レンズ系の中程の小さな部分を移動させてフォ-カシングする構造となっている。 【0024】 このようにインナ-フォ-カス式の撮影レンズはレンズ系の全長が変化しないので、カメラに組込み易く、また、質量の小さい部分を駆動すればよくオ-トフォ-カス機構として有利であるが、反面、移動レンズ系が中程となるので、マニアルフォ-カスが行ない難いという欠点がある。 【0025】 このことから、この種のカメラ10は、マニアルフォ-カスのために電子ダイヤルを焦点整合用操作部材として備えている。 本実施例ではこの電子ダイヤルが既に述べたところのフォ-カスリング17として構成してあり、このリング17の回転操作により発生する電気信号をシステムコントロ-ラ28に入力させることにより、オ-トフォ-カス用のレンズ駆動アクチュエ-タ37を動作させてマニアルフォ-カスを行なうようにしてある。 【0026】 つまり、フォ-カスリング17の回転操作によって図5に示すところの電気信号P1、P2を発生させ、この電気信号P1、P2を入力装置38よりシステムコントロ-ラ28に入力させる。 なお、入力装置38は上記した電気信号P1、P2の他に、レリ-ズ釦19の半押し操作時に発生するスイッチ信号と、この全押し操作時に発生するスイッチ信号とをシステムコントロ-ラ28に入力させるようになっている。 【0027】 電気信号P1、P2は図5に示した如く、フォ-カスリング17の回転角度に対し一定のパルスとなる基本信号(P1)と、この基本信号(P1)に対して一定の位相差をもった電気信号P2として発生させる。 この電気信号P1、P2を入力したシステムコントロ-ラ28は、電気信号P1の第1パルスのエッジを検出し、その時の電気信号P2の信号レベルに関係なくマニアルフォ-カスモ-ドに切換える。 【0028】 マニアルフォ-カスモ-ドに切換わった後のフォ-カスリング17の回転操作によって撮影レンズを移動させる電気信号P1、P2が発生する。 すなわち、システムコントロ-ラ28は、電気信号P1のパルスエッジにおける電気信号P1の信号レベルを検出してフォ-カスリング17の回転方向を判断し、その回転方向に応じて撮影レンズを移動させてマニアルフォ-カスを行なうようにドライバ36、アクチュエ-タ27を制御する。 【0029】 また、システムコントロ-ラ28が、電気信号P1の第1パルスのエッジを検出した時、オ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドに切換える他に、表示器15の表示を通常画像表示から拡大画像表示に切換えるように電子ビュ-ファィンダを制御する。 【0030】 一方、システムコントロ-ラ28は、マニアルフォ-カスモ-ドにおいてレリ-ズ釦19の半押し操作に伴なうスイッチ信号を入力したとき、表示器15の表示が拡大画像表示から通常画像表示に切換わるように電子ビュ-ファィンダを制御する。 そして、レリ-ズ釦19の全押し操作に伴なうスイッチ信号を入力して撮影動作の制御に移る。 【0031】 次に、図6のフロ-チャ-トを参照しながら上記したカメラ10の撮影動作を説明する。 カメラ10は起伏体13を図1の如く引き起こし電源スイッチ(図示省略)を投入すると、オ-トフォ-カスモ-ドとなり、システムコントロ-ラ28がステップST100〜ST109のプログラムにしたがって進行する。 この場合、レバ-鏡胴12を被写体に向ければ撮像素子25によって撮像された画像が図2、図3に示すように表示器15に通常画像表示で映し出される。 なお、電源スイッチについては、起伏体13の引き起こしに連動してスイッチONする構成としてもよい。 【0032】 表示器15の画像を目視して構図を決めた後、レリ-ズ釦19を押圧操作すると、その半押し操作段階のスイッチ信号入力でフォ-カシングが行なわれる。(ST103、ST104) 焦点が整合した後、引き続いてレリ-ズ釦19を全押し操作することによって撮影動作が行なわれ、画像デ-タが記録媒体32に記録される。(ST105〜ST108) なお、合焦不能となるときは、ステップST105からリセット直後の状態に戻り、焦点整合後にレリ-ズ釦21の半押し操作を解放させた時も同様にステップST106からリセット直後の状態に戻る。 【0033】 マニアルフォ-カスする場合には、フォ-カシング17を回転操作させる。 この回転操作の初段階で、システムコントロ-ラ28が電気信号P1の第1パルスエッジを検出し、オ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドに切換え、また、表示器15を通常画像表示から拡大画像表示に切換える。 システムコントロ-ラ28はステップST200〜ST207のプログラムで進行する。 つまり、オ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドヘの切換えに伴って表示器15が拡大画像表示に自動的に変化する。 【0034】 表示器15の拡大画像表示を目視しながらフォ-カスリング17を回転操作してフォ-カシングを行なう。(ST201) このフォ-カシングでは拡大された画像によって被写体画像の隅々まで厳密に観察することができるため、焦点整合が極めて正確なものとなる。 【0035】 焦点を整合させた後レリ-ズ釦19を半押し操作して表示器15を通常画像表示に変える。(ST203、ST204) 表示器15の通常画像表示より構図を決めた後、レリ-ズ釦19を全押し操作すれば撮影動作が行なわれ、画像デ-タが記録媒体32に記録され、システムコントロ-ラ28が初期状態に戻る。(ST206、ST207) なお、通常画像表示に変えた後にマニアルフォ-カスを再度行なうときには、レリ-ズ釦19の半押し操作を解放させることによって表示器15が拡大画像表示に切換わる。(ST205、ST200) 【0036】 以上は電子スチルカメラの実施例について説明したが、ビデオカメラについても同様に実施することができ、また、表示器15は液晶表示装置に換えてCRTを使用することができる。 【0037】 【発明の効果】 上記した通り、本発明に係る撮影機では、拡大表示された被写体画像を電子ビュ-ファィンダで目視しながらマニアルフォ-カス操作することができるため、被写体画像の隅々まで焦点整合の状態を観察して合焦点を決定することができる。この結果、焦点整合が極めて正確に定まる撮影機となる。 また、電子ビュ-ファィンダには拡大画像と共に拡大表示マ-クが表示されるので、撮影画像を確認する通常画像表示と合焦のための拡大画像表示とを誤って確認してしまうことがない。 【0038】 マニアルフォ-カスの焦点整合用部材の操作によってオ-トフォ-カスモ-ドからマニアルフォ-カスモ-ドに切換わり、さらに、このモ-ド切換に伴って電子ビュ-ファィンダ通常画像表示から拡大画像表示に表示変化する構成としたことから、電子ビュ-ファィンダの画像表示切換釦、オ-トフォ-カスとマニアルフォ-カスとの切換釦やそれらのスイッチ部材などを必要としない撮影機となる。 この結果、操作の煩わしさがなく、その上構成の簡単なロ-コスト化に適する撮影機となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 図1の(A)は本発明の一実施例を示すカメラ外観斜視図、図1の(B)は同カメラの撮影状態を示す図である。 【図2】 上記カメラの背面図である。 【図3】 図3の(A)は上記カメラに備えた表示器の通常画像表示を、図3の(B)はその表示器の拡大画像表示を各々示した簡略図である。 【図4】 上記カメラ内構成の電気回路を示すブロック図である。 【図5】 上記カメラのフォ-カスリングの回転操作によって発生する電気信号を示す図である。 【図6】 上記カメラの動作を説明するためのフロ-チャ-トである。 【符号の説明】 10 カメラ 12 レンズ鏡胴 15 表示器 17 フォ-カスリング 19 レリ-ズ釦 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を 「撮像手段によって撮像した画像を確認する電子ビューファインダと、共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させるオートフォーカス機能及びマニアルフォーカス機能とを有する撮影機において、電子ビューフアインダの表示を通常画像表示から拡大画像表示に、また、この逆の画像表示に表示変化させる画像表示切換手段と、マニアルフォーカスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードに切換え、上記画像表示切換手段を動作させて通常画像表示から拡大画像表示に表示変化させると共に、拡大表示マークを電子ビューフアインダに表示させる制御手段とを備え、マニアルフォーカスに際して通常画像表示の一部を拡大した画像表示とこの拡大画像表示を識別するための拡大表示マークとを確認し、初期操作に続く上記の焦点整合用部材の操作により焦点を整合させる構成としたことを特徴とする電子ビューフアインダを備えた撮影機。」とする。 イ.訂正事項b 明細書の段落【0012】を 「【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するため、本発明では、撮像手段によって撮像した画像を確認する電子ビューファインダと、共にレンズ駆動アクチュエータを動作させて焦点を整合させるオートフォーカス機能及びマニアルフォーカス機能とを有する撮影機において、電子ビューフアインダの表示を通常画像表示から拡大画像表示に、また、この逆の画像表示に表示変化させる画像表示切換手段と、マニアルフォーカスの焦点整合用部材の初期操作に応動し、オートフォーカスモードからマニアルフォーカスモードに切換え、上記画像表示切換手段を動作させて通常画像表示から拡大画像表示に表示変化させると共に、拡大表示マークを電子ビューフアインダに表示させる制御手段とを備え、マニアルフォーカスに際して通常画像表示の一部を拡大した画像表示とこの拡大画像表示を識別するための拡大表示マークとを確認し、初期操作に続く上記の焦点整合用部材の操作により焦点を整合させる構成としたことを特徴とする電子ビューフアインダを備えた撮影機を提案する。」とする。 |
異議決定日 | 2002-04-10 |
出願番号 | 特願平3-153826 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(H04N)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 坂東 博司 |
特許庁審判長 |
谷川 洋 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 石川 伸一 |
登録日 | 2001-02-23 |
登録番号 | 特許第3160814号(P3160814) |
権利者 | 京セラ株式会社 |
発明の名称 | 電子ビュ-ファィンダを備えた撮影機 |
代理人 | 小池 寛治 |
代理人 | 小池 寛治 |