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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1064240 |
異議申立番号 | 異議2001-73027 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-08-03 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-11-08 |
確定日 | 2002-06-12 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3163580号「導波型光部品」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3163580号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3163580号の請求項1に係る発明についての出願は、平成3年3月26日(優先権主張平成2年8月3日)に出願されたものであって、平成13年3月2日にその特許の設定の登録がなされ、その後、折橋澄子により特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成14年3月26日付けで訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正の内容 訂正事項a 特許明細書の請求項1を 「【請求項1】各々が筐体に保持され、かつ、光によって硬化する接着剤層を介して互いに光軸が一致するように接続された光導波路と入出力用石英系光ファイバとを有する導波型光部品において、 前記筐体のうち前記入出力用石英系光ファイバを保持する光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、前記光ファイバ用筐体中に前記入出力用石英系光ファイバが挿通され一端面が成端されて保持され、前記光ファイバ用筐体と前記光導波路を保持する筐体とは前記接着剤層のみで固定されていることを特徴とする導波型光部品。」と訂正する。 訂正事項b 上記訂正事項aの特許請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、それとの整合を図るため、発明の詳細な説明の段落【0023】【課題を解決するための手段】の記載を訂正請求書第2頁22行〜同頁末行のとおりに訂正する。 訂正事項c 特許明細書の段落【0051】【0052】【0053】【0054】【0055】【0056】【0057】【0059】【0061】【0062】【0063】【0064】【0065】【0066】【0067】【0068】【0071】における「実施例」を「参考例」と改めるために、訂正請求書3頁1行ないし6頁8行に記載のとおりに訂正する。 訂正事項d 特許明細書の段落【0073】〜【0075】を 「【0073】 【発明の効果】 以上説明したように、請求項1によれば、入出力用石英系光ファイバを保持する光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、光ファイバ用筐体中に入出力用石英系光ファイバが挿通され一端面が成端されて保持されているので、光導波路と光ファイバとの接合面の接着剤層を均一に、かつ、短時間で硬化させることができる。 【0074】 このため、光部品の作製時の作業性が極めて良く、また光損失が低く、接続部の機械的強度が大きい導波型光部品を提供できる利点がある。 【0075】 また、請求項1によれば、光ファイバ用筐体と光導波路を保持する筐体とは接着剤層のみで固定されているので、温度変化による損失変動が小さく、長期信頼性に優れた導波路型光部品を提供できる利点がある。」と訂正する。 訂正事項e 特許明細書の【図面の簡単な説明】の【図2】を「従来の接着剤接続方法によって作製された導波型光部品の構成図で、同図の(A) は外観図、同図の(B) は(A) のX-X線矢視方向の拡大断面図、同図の(C)は(A) のY-Y線またはZ-Z線矢視方向の拡大断面図である。」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付した明細書の【0021】【0044】【0046】及び図1に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。又、訂正事項b〜dは、明りょうでない記載の釈明に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。さらに、訂正事項eは、図2の記載からみて明らかな誤記の訂正であり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。 2-3.訂正の適否のむすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第2項の規定及び同条第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の同法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件発明 本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2-1.訂正の内容の訂正事項a参照。) 4.刊行物記載の事項 取消理由に引用した刊行物1;特開昭64-50004号公報には、 「光ファイバ素線部を整列するための精密整列溝を有する先端部と、光ファイバ芯線部を保持するための後方ベース部とを結合した複合構造をなし、前記先端部はガラスもしくはセラミックスからなり、また前記後方ベース部はプラスチックからなることを特徴とする光ファイバアレイ用の整列保持部品。」(特許請求の範囲)、 「本発明において先端部32はガラスの他、セラミックスを用いることもできる。これらは熱膨張係数が200×10-7/℃以下の光ファイバとの整合性が良好なものである。特に先端部32を透明なガラスあるいはセラミックスで構成すると、下部ブロックと上部ブロックとを紫外線硬化型の接着剤により固定することが可能となるし、光ファイバアレイ同士の接続や光ファイバアレイと各種導波路等とを接続する際に先端部のファイバ位置が目視できることからアライメントが容易となり極めて好ましい。その場合、それらの端面接着にも紫外線硬化型の接着剤を使用でき、上部から紫外線光源を照射するだけで効果的な接着が行え、組み立て作業性が良好となる利点がある。このように本発明では先端部32が光ファイバ素線部14の熱膨張係数に近いガラスまたはセラミックスにより作製されているため、温度変化が生じても光ファイバ素線部14の端面と先端部32の端面との位置ずれを防止でき、それに基づく損失発生を防止できることになる。」(3頁左上欄14〜右上欄14行)、 「第2図A,Bはこのような構造の光ファイバアレイ30を用いて平面導波路50と接続する導波路型デバイスの構成例を示す・・・ここでは平面導波路50の両側で両方の光ファイバアレイ30の先端部32の間に、平面導波路50と熱膨張係数のほぼ等しい補強板52を架設して固定している。」(3頁右上欄末行〜左下欄8行)と記載されている。 また、第1図には、先端部32と後方ベース部34とを結合した複合構造中に一端面が成端された光ファイバが保持されている複数の光ファイバアレイ30が図示されている。さらに、第2図Aには、一対の光ファイバアレイ30の間に平面導波路50が挟まれた導波路型デバイスの一例の平面図が示され、その正面図である第2図Bには、一対の光ファイバアレイ30の間の補強板52の下方に、これに平行な線が図示され、平面導波路が直方体状のものであることが認められる。 上記よれば、刊行物1には、 「紫外線硬化型の接着剤で端面接着された光ファイバアレイと導波路からなる導波路型デバイスにおいて、前記光ファイバアレイは、光ファイバ素線部の熱膨張係数に近い透明なガラスにより作製された先端部とプラスチックからなる後方ベース部とを結合した複合構造中に一端面が成端された複数の光ファイバが保持されている、導波路型デバイス」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 同じく、刊行物2;特開昭59-178401号公報には、 「第3図において、8は保護体3およびステンレスパイプ9により支持されると共に、光ファイバ5を保持する保持パイプである。この保持パイプ8は第4図に示すように、光ファイバ5の線膨張率と近似の線膨張率を有する絶縁体材料、例えばパイレックスガラスからなるパイプ8a」(2頁右上欄5〜10行)と記載され、第4図には、パイレックスガラスからなるパイプ8a中に光ファイバ5が挿通、保持されていることが認められる。 5.対比・判断 本件発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「紫外線硬化型の接着剤」、「複合構造」、「複数の光ファイバ」及び「導波路型デバイス」は、本件発明の「光によって硬化する接着剤層」、「光ファイバ用筐体」、「入出力用光ファイバ」及び「導波型光部品」にそれぞれ対応し、光ファイバアレイと導波路を光軸が互いに一致するように接続することは技術常識である。 したがって、両者は、 「光によって硬化する接着剤層を介して互いに光軸が一致するように接続された光導波路と入出力用光ファイバとを有する導波型光部品において、 前記入出力用光ファイバを保持する光ファイバ用筐体の少なくとも先端部をガラスで構成し、前記光ファイバ用筐体中に前記入出力用光ファイバが一端面が成端されて保持され、前記光ファイバ用筐体と前記光導波路とは前記接着剤層で固定されていることを特徴とする導波型光部品。」 で一致し、下記の点で相違する。 相違点1;本件発明は、光ファイバが石英系とされているのに対し、引用発明は、光ファイバの材料について特に記載がない点、 相違点2;本件発明は、光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、前記光ファイバ用筐体中に光ファイバが挿通、保持されているのに対し、引用発明の光ファイバ用筐体は、透明なガラスにより作製された先端部とプラスチックからなる後方ベース部とを結合した複合構造とされ、その中に光ファイバが保持されている点、 相違点3;本件発明は、導波路が筐体に保持されているのに対し、引用発明は、この点が明記されていない点、 相違点4;本件発明は、光ファイバ用筐体と光導波路を保持する筐体とが接着剤層のみで固定されているのに対し、引用発明は、接着剤のみで固定されているとの記載はない点。 上記相違点につき検討する。 (1)相違点1について 石英系光ファイバは従来周知であり、引用発明は、「光ファイバ素線部の熱膨張係数に近い透明なガラスにより作製された先端部」を有するものであるから、光ファイバを、透明なガラスと同様の熱膨張係数を有する石英系のものとすることは、引用発明においても当然に想定されているものである。 (2)相違点2について 同一材質で構成された基板とカバーとを組み合わせた光ファイバアレイ(本件発明の「光ファイバ用筐体」に相当する。)をガラスで形成することは、刊行物1の従来例(1頁右下欄3〜19行)にも記載されているように従来周知(必要であれば、実願昭62-66896号(実開昭63-177803号)のマイクロフィルム及び特開昭63-56615号公報参照。)である。また、刊行物2には、光ファイバを挿通、保持する保持パイプを光ファイバの線膨張率と近似の線膨張率を有するパイレックスガラスで形成することが記載されている。したがって、引用発明のガラス製の先端部とプラスチックからなる後方ベース部とを結合した複合構造(光ファイバ筐体)を従来周知のガラス製とするに際し、その材料をパイレックスガラスとし、その中に光ファイバを挿通させることは当業者が容易に想到し得たものである。 なお、複数の光ファイバーを整列保持するのに、上下2枚の板状物で挟むか、穴を開けて挿通保持するかは、設計変更にすぎない。(例えば、特開昭64-44403号公報及び前記特開昭63-56615号公報の第5図参照。) (3)相違点3について 刊行物1の第2図A,Bには、直方体状の平面導波路が記載されており、導波路を筐体で保持したものと格別異なるものではない。 (4)相違点4について 刊行物1には、「平面導波路50の両側で両方の光ファイバアレイ30の先端部32の間に、平面導波路50と熱膨張係数のほぼ等しい補強板52を架設して固定している」ことが記載されているが、これは、温度特性や耐久性に優れた導波路型デバイスの一構成例を示すものであり、補強板を設けないものを排除しているわけではない。そして、引用発明は、光ファイバアレイと平面導波路とが接着剤で端面接着されているのであるから、必要とされる接着強度に応じて、補強部材を設け、あるいは設けないことは、当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。 また、本件発明によってもたらされる効果は、刊行物1,2に記載された事項及び従来周知の技術から予想し得る程度のものであり、格別とはいえない。 よって、本件発明は、刊行物1、2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 6.むすび 以上のとおり、本件の請求項1に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものであるので、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 導波型光部品 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 各々が筐体に保持され、かつ、光によって硬化する接着剤層を介して互いに光軸が一致するように接続された光導波路と入出力用石英系光ファイバとを有する導波型光部品において、 前記筐体のうち前記入出力用石英系光ファイバを保持する光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、前記光ファイバ用筐体中に前記入出力用石英系光ファイバが挿通され一端面が成端されて保持され、 前記光ファイバ用筐体と前記光導波路を保持する筐体とは前記接着剤層のみで固定されていることを特徴とする導波型光部品。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、光通信分野などで用いられる光導波路と入出力用光ファイバとから構成される導波型光部品に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 光通信技術の進展に伴ない、従来の光源、光ファイバ、受光器に加えて、光分岐素子や光スイッチ、光合分波器などの多様な光部品が要求されている。 【0003】 これらの光部品を実現する形態としては、バルク型、ファイバ型、導波型の三つが提案されているが、小型、安定性、量産性、規模拡張性などの観点から、将来は導波型が重要な役割を果たすものと期待されている。現在、導波型の光部品を実用化する上での最大の問題点は、導波型の光部品を構成する光導波路と入出力用の光ファイバとを、いかに効率よく、しかも安定に接続するかという点にある。 【0004】 これまでにも、光導波路と光ファイバとの接続方法として、融着法や接着剤法などの種々の方法が試みられているが、なかでも接着剤法は、低コスト化の点で有望視されている。この種の接着剤としては、迅速に硬化させるため、通常は紫外線によって硬化する接着剤、いわゆるUV接着剤が用いられている。 【0005】 図2は、従来の接着剤接続方法によって作製された導波型光部品の構成図で、同図の(A)は外観図、同図の(B)は(A)のX-X線矢視方向の拡大断面図、同図の(C)は(A)のY-Y線またはZ-Z線矢視方向の拡大断面図である。 【0006】 図2において、1は光導波路モジュ-ル、2および3は光ファイバモジュ-ル、10は光導波路保持用筐体、11は光導波路保持用筐体10に保持された導波路付き基板、11a,11bは基板11上に形成され両端が光導波路保持用筐体10の端面に対し成端された光導波路、20および30は光ファイバ保持用筐体、21a,21bは光ファイバ保持用筐体20に一端面が成端され、かつ、光導波路11a,11bの一端側と光軸が一致するように接続された入出力用の光ファイバ、31a,31bは光ファイバ保持用筐体30に一端面が成端され、かつ、光導波路11a,11bの他端側と光軸が一致するように接続された入出力用の光ファイバ、41は光導波路11a,11bと光ファイバ21a,21bとの、また、42は光導波路11a,11bと光ファイバ31a,31bとの接合面に介在させた筐体同士を接続するUV接着剤(紫外線硬化性接着剤)からなる接着剤層である。また、光導波路保持用筐体10および光ファイバ保持用匡体20,30は、加工性、線膨張係数、機械強度などの点から、一般には金属が用いられている。 【0007】 図3は、このような従来の導波型光部品を作製するための部品組み立て工程の説明図である。図中、51は光導波路モジュ-ル1を固定する基台、52は光ファイバモジュ-ル2を保持し、光導波路11a,11bの一端に対し光ファイバ21a,21bを光軸合わせするための微動装置ア-ム、53は光ファイバモジュ-ル3を保持し、光導波路11a,11bの他端に対し光ファイバ31a,31bを光軸合わせするための微動装置ア-ム、61a,61bは例えば光ファイバ21a,21bの他端と接続されるモニタ用光源、71a,71bは光ファイバ31a,31bの他端と接続されるモニタ用受光器、80は紫外線照射用プロ-ブである。 【0008】 導波型光部品を組み立てるには、まず、基台51に設置した基板11上の光導波路11a,11bを含む光導波路モジュ-ル10の両端に、微動装置ア-ム52、53を駆動して、これらに保持した光ファイバ21a,21bと光ファイバ31a,31bとを互いに近づける。 【0009】 この際、光ファイバ21a,21bの一端からはモニタ用光源61a,61bからのモニタ光を導入し、このモニタ光が光導波路11a,11b、続いて光ファイバ31a,31bを経由して出射される光強度をモニタ用受光器71a,71bにより検出する。 【0010】 モニタ用受光器71a,71bによる検出光の強度情報は、図示しないフィ-ドバック制御装置にて処理する。この処理結果に基づき、微動装置ア-ム52,53を駆動し、光ファイバ21a,21b並びに31a,31bが、光導波路11a,11bに対し最適位置で光軸が一致するように光軸合わせを行う。 【0011】 また、光ファイバ21a,21b並びに31a,31bの端部と光導波路11a,11bの端部との間には、屈折率整合剤を兼ねてUV接着剤が塗付されており、光軸合わせが完了した時点で、紫外線照射用プロ-ブ80から光軸合わせ部に紫外線を照射して接着剤を固化させ、接着剤層41,42を順次形成することにより、部品の組み立てが完了する。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来の導波型光部品は、光導波路保持用筐体10および光ファイバ保持用筐体20,30は金属性であるため紫外線透過性に劣り、紫外線照射用プロ-ブ80から照射された紫外線は、屈折率整合剤を兼ねる接着剤層41,42のみを透過する。 【0013】 このため、紫外線照射用プロ-ブ80を、主に光軸に対し直交する方向(接合面に対し平行な方向)に配置することを余儀無くされ、紫外線照射時に紫外線照射用プロ-ブ80に近い側の接着剤が先に硬化を開始し、遠い側の接着剤の硬化が遅れるため、組み立て工程において精密に行われた折角の光軸合わせが硬化時に狂ってしまうという問題点があった。 【0014】 このことは、コア寸法の小さい単一モ-ド光導波路と単一モ-ド光ファイバを接続する場合に特に深刻な問題であり、接続損失が最小になるように光軸合わせした段階から、接続損失が1〜5dB程度も増加するという問題点があった。 【0015】 また、この問題の解決法として、接着剤層を厚くし紫外線の透過量を多くする方法も提案されている。 【0016】 しかし、この方法で作製された導波型光部品は、接着剤層41,42の光損失が高いため接続損失が大きくなるという問題点があった。加えて、接着剤層41,42の線膨張係数と光ファイバや光導波路などを構成する石英ガラスや筐体を構成する金属の線膨張係数が1桁以上異なるため、温度変化による光損失の変動が多い問題や、長期信頼性などの点に問題があった。 【0017】 また、別の方法としては、光ファイバと光導波路の接続を、両者の接合面ではなく、光ファイバモジュ-ル2,3の外周と光導波路モジュ-ル1の外周によって行う方法があるが、この方法は逆に厚い接着剤層のため、光ファイバ/光導波路界面には光が届かず、接着されない。このため、上に述べたと同様な問題、すなわち、接着剤層の線膨張係数と光ファイバや光導波路などを構成する石英ガラスや筐体を構成する金属のそれらが1桁以上異なるため、温度変化による光損失の変動が多い問題や、長期信頼性などの点に問題が依然として残されていた。さらに、この方法は接続強度が弱いという欠点を併せ持つ。 【0018】 また、UV接着剤は、一般に樹脂成分と感光剤を主な構成要素としており、感光剤が光を吸収することにより、樹脂成分の反応を引き起こし接着するメカニズムである。この感光剤は光源の波長に合致するように、一般には360nm付近に最大吸収を持つように設計されている。 【0019】 しかるに、感光剤は光が照射されるとごく短時間で分解し、吸収スペクトルの形状が変化する。接着剤層が厚い場合はその表面の吸収スペクトルが変わるため、内部まで紫外線が到達しなくなる。このため、長時間紫外線を照射しても、厚膜の場合には極めて反応が生じにくくなるのがごく一般的なUV接着剤である。 【0020】 このUV接着剤を用いた従来の接続法はいずれも、上記したように光ファイバと光導波路の接合面に対してほぼ平行に紫外線が照射されるため、実質的に厚膜の接着剤を用いるのと同じことになり、深部までは硬化しにくい問題がある。 【0021】 従って、上記したような接合面を有する従来の導波型光部品は、再三述べているように、接続損失が大きいだけでなく、温度変化に伴う損失変動や長期信頼性、さらには機械強度に大きな問題を抱えていた。 【0022】 本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光損失が小さく、機械強度特性に優れ、また、長期信頼性に優れた導波型光部品を提供することにある。 【0023】 【課題を解決するための手段】 上記目的を解決するため、請求項1では、各々が筐体に保持され、かつ、光によって硬化する接着剤層を介して互いに光軸が一致するように接続された光導波路と入出力用石英系光ファイバとを有する導波型光部品において、前記筐体のうち前記入出力用石英系光ファイバを保持する光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、前記光ファイバ用筐体中に前記入出力用石英系光ファイバが挿通され一端面が成端されて保持され、前記光ファイバ用筐体と前記光導波路を保持する筐体とは前記接着剤層のみで固定されている構成とした。 【0024】 【0025】 【作用】 請求項1によれば、例えば、照射用プロ-ブから照射された光は、光透過性の材料からなる筐体中を透過し、接合面の接着剤層に到達する。 【0026】 このとき、接着剤層の光導波路と光ファイバとの接合面に対し、直角に近い角度で光を照射することが可能である。 【0027】 このため、接着剤層に均一に照射される光量が、接合面に対し平行に照射する場合に比べて多く、かつ、接着剤層に均一に照射され、接合面の接着が均一に行われる。 【0028】 【0029】 【0030】 【実施例1】 図1は、本発明に係る導波型光部品の一実施例の全体構成を示す外観図、図4は図1の導波型光部品を作製するための部品組み立て工程の説明図であって、従来例を示す第2図および第3図と同一構成部分は同一符号をもって表す。 【0031】 すなわち、1は光導波路モジュ-ル、2および3は光ファイバモジュ-ル、10aはパイレックスガラス製の光導波路保持用筐体、11は筐体10aに保持された厚さ0.7mmのシリコン製基板、11a,11bは基板11上に形成されたコア寸法50μm×50μmの石英系多モ-ド光導波路で、両端が筐体10aの端面に対し成端されて基板11とともに光導波路保持用筐体10aに保持されている。 【0032】 20aはパイレックスガラス製の光ファイバ保持用筐体、21a,21bはコア直径50μmの入出力用の石英系多モ-ド光ファイバで、光ファイバ保持用筐体20aに一端面が成端され保持されている。また、光ファイバ21a,21bは、その一端側が光導波路11a、11bの一端側と光軸が一致するように接着剤層41を介して接続されている。 【0033】 30aはパイレックスガラス製の光ファイバ保持用筐体、31a,31bはコア直径50μmの入出力用の石英系多モ-ド光ファイバで、光ファイバ保持用筐体30aに一端面が成端され保持されている。また、光ファイバ31a,31bは、その一端側が光導波路11a、11bの他端側と光軸が一致するように接着剤層42を介して接続されている。 【0034】 接着剤層41,42は、UV接着剤、具体的にはフッ素化エポキシアクリラ-ト系の材料からなり、光導波路11a,11bと光ファイバ21a,21bとの接合面並びに光導波路11a,11bと光ファイバ31a,31bとの接合面に介在され、光導波路保持用筐体10aの一端面と光ファイバ保持用筐体20aの一端面同士並びに光導波路保持用筐体10aの他端面と光ファイバ保持用筐体30aの一端面同士をそれぞれ接続している。 【0035】 51は光導波路モジュ-ル1を固定する基台、52は微動装置ア-ムで、光導波路11a,11bの一端に対し光ファイバ21a,21bを光軸合わせするために、図示しないフィ-ドバック制御装置により駆動され、載置された光ファイバモジュ-ル2を微動させる。53は微動装置ア-ムで、光導波路11a,11bの他端に対し光ファイバ31a,31bを光軸合わせするために、図示しないフィ-ドバック制御装置により駆動され、載置された光ファイバモジュ-ル3を微動させる。 【0036】 61a,61bは例えば波長1.3μmの半導体レ-ザからなるモニタ用光源で、例えば光ファイバ21a,21bの他端と接続される。71a,71bは光ファイバ31a,31bの他端と接続されるモニタ用受光器、80は光源として、例えばメタルハライドランプや水銀キセノンランプなどが用いられる紫外線照射用プロ-ブで、光導波路11a,11bと光ファイバ21a,21bとの接合面並びに光導波路11a,11bと光ファイバ31a,31bとの接合面に対し直角に近い角度、例えば約60度の角度をもって配置され、光軸合わせ部に介在されるUV接着剤に対し紫外線を照射する。 【0037】 次に、上記構成による導波型光部品の組み立て工程について、図4を参照しながら説明する。 【0038】 まず、基台51に設置した基板11上の光導波路11a,11bを含む光導波路モジュ-ル1の両端に、微動装置ア-ム52、53を駆動して、これらに保持した光ファイバ21a,21bと光ファイバ31a,31bとを互いに近づける。 【0039】 この際、光ファイバ21a,21bの一端からはモニタ用光源61a,61bからのモニタ光を導入し、このモニタ光が光導波路11a,11b、続いて光ファイバ31a,31bを経由して出射される光強度をモニタ用受光器71a,71bにより検出する。 【0040】 モニタ用受光器71a,71bによる検出光の強度情報は、図示しないフィ-ドバック制御装置にて処理する。この処理結果に基づき、微動装置ア-ム52,53を駆動し、光ファイバ21a,21b並びに31a,31bが、光導波路11a,11bに対し最適位置で光軸が一致するように光軸合わせを行う。 【0041】 また、光ファイバ21a,21b並びに31a,31bの端部周辺と光導波路11a,11bの端部周辺との間には、屈折率整合剤を兼ねてUV接着剤41,42が塗付されており、光軸合わせが完了した時点で、紫外線照射用プロ-ブ80を光導波路11a,11bと光ファイバ21a,21bとの接合面並びに光導波路11a,11bと光ファイバ31a,31bとの接合面に対し直角に近い角度、例えば約60度の角度をもって配置し、各光軸合わせ部に紫外線を照射して接着剤を固化させ、接着剤層41,42を順次形成する。 【0042】 以上の接続操作の終了後、光ファイバ保持用筐体20aからモニタ用光源61a,61bを、また、光ファイバ保持用筐体30aからモニタ用受光器71a,71bを外し、必要に応じて適当な処理を施して、導波路型光部品の組み立てが完了する。 【0043】 実際に上記工程を経て作製した導波型光部品は、光ファイバ/光導波路の接合面に対して約60゜に設置された紫外線照射用プロ-ブ80から照射された紫外線により、接合面の接着剤を完全に接着することができた。同様に他端の接合面も完全に接続することができた。この際、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また、接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化は認められなかった。 【0044】 また、図5は光導波路モジュ-ル1と光ファイバモジュ-ル2,3とをUV接着剤で接着させたときの紫外線照射時間と出来上がった部品の曲げ強度との関係を示す図である。なお、この曲げ強度は、接着力を反映するパラメ-タである。 【0045】 図中、実線Aで示す曲線が、本実施例のように光導波路保持用筐体10aおよび光ファイバ保持用筐体20a,30a共にパイレックスガラスを用いて構成した場合の特性を示している。なお、この実験においては、光源として水銀キセノンランプを用いている。 【0046】 図5から、本構成の場合、30秒の紫外線照射時間で曲げ強度は飽和し、充分に硬化していることが分かる。 【0047】 さらに、接続した光部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2であった。 【0048】 以上説明したように、本実施例によれば、光導波路保持用筐体10および光ファイバ保持用筐体20,30を紫外線透過性の材料(本実施例の場合、パイレックスガラス)から構成し、かつ、光導波路と光ファイバとの接合面に光によって硬化させた接着剤層41,42を設けたので、光導波路モジュ-ル1と光ファイバモジュ-ル2および3の接合面の接着剤層を均一に、かつ、短時間で硬化させることができる。 【0049】 このため、光部品を作製するにあたって作業性が極めて良く、また、作製された光部品は光損失が低く、かつ、温度変化による損失変動が小さく、長期信頼性に優れていると共に、接続部の機械的強度が大きいという利点がある。 【0050】 なお、本実施例においては、接合面を順次接続したが、複数の紫外線照射用プロ-ブを用い2カ所の接合面を同時に接続したり、あるいは一つの接合面に対し、複数の紫外線照射用プロ-ブを用い、異なった方向から紫外線を照射することによっても接着剤の硬化を確実にすることができ、効果的である。 【0051】 【参考例1】 本参考例が前記実施例1と異なる点は、単一モ-ド光導波路11a,11bとして、シリコン基板11上の厚さ50μmの石英系ガラスクラッド層に埋設された断面寸法8μm×8μmの石英系ガラスコア部からなる石英系ガラス単一モ-ド光導波路を用いるとともに、入出力用の光ファイバ21a,21b、31a,31bとしてコア直径10μmの石英系単一モ-ド光ファイバを用い、これら光導波路11a,11bと光ファイバ21a,21b並びに31a,31bを接続した点、光導波路保持用筐体10aおよび光ファイバ保持用筐体20a,30aを共にシリカガラスとエポキシ樹脂からなる複合材料を用いて構成した点、並びにUV接着剤としてフッ素化ウレタンアクリレ-ト系の材料を用いた点にある。 【0052】 本参考例においても前記実施例1と同様な装置構成および手順にて、光ファイバと光導波路との接続を実施した。その結果、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化も認められなかった。また、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、実施例1の場合と同様に、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。 【0053】 以上のように、本参考例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。 【0054】 【参考例2】 本参考例が前記参考例1と異なる点は、光導波路保持用筐体10aをSUSを用いて構成すると共に、光ファイバ保持用筐体20a,30aをシリカガラスとエポキシ樹脂からなる複合材料を用いて構成した点、並びにUV接着剤としてフッ素化エポキシアクリラ-ト系の材料を用いた点にある。 【0055】 本参考例においても前記実施例1と同様な装置構成および手順にて、光ファイバと光導波路との接続を実施した。その結果、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化も認められなかった。また、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、実施例1、2の場合と同様に、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。 【0056】 以上のように、本参考例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。 【0057】 【参考例3】 本参考例が前記実施例1と異なる点は、光ファイバ保持用筐体20a,30aをパイレックスガラスで構成する代わりに、光非透過性のプラスチック材料であるガラス繊維入り液晶ポリエステルを用いて構成したことにある。 【0058】 この構成において、光導波路保持用筐体10aと各光ファイバ保持用筐体20a,30aとをそれぞれ接続するため、実施例1と同様、UV接着剤としてフッ素化エポキシアクリラ-ト系の材料を用い、紫外線をそれぞれの接続部に30秒間照射した。この場合の紫外線照射時間と出来上がった部品の曲げ強度との関係を、図5中において曲線Bで示している。 【0059】 図5から分かるように、本参考例のように光ファイバ保持用筐体20a,30aの材料として光非透過性のプラスチック材料を用いても、実施例1のように光ファイバ保持用筐体20a,30aの両者に光透過性のガラス材料を用いた場合と比べて、光部品の組立時間および接合面の接着強度は同等となっている。 【0060】 また、接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化は認められなかった。さらに、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。 【0061】 本参考例によれば、ガラス製の光ファイバ保持用筐体に代えてプラスチック製の光ファイバ保持用筐体を用いるので、実施例1と同様の効果を得られると共に、光部品の入出力端面において他の固形物と接触した際にガラス製のものでは発生するおそれのある割れやクラックを防止でき、光部品の取扱が容易となるばかりでなく、機械的強度、長期的信頼性のより一層の向上を図ることができる。 【0062】 【参考例4】 本参考例が前記参考例1と異なる点は、光ファイバ保持用筐体20a,30aをパイレックスガラスで構成する代わりに、光非透過性のプラスチック材料であるガラス/エポキシを用いて構成したことにある。 【0063】 本参考例においても前記参考例3と同様な装置構成および手順にて、光ファイバと光導波路との接続を実施した。その結果、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化も認められなかった。また、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、参考例3の場合と同様に、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。 【0064】 以上のように、本参考例においても、参考例3と同様の効果を得ることができる。 【0065】 【参考例5】 本参考例が前記参考例2と異なる点は、光導波路保持用筐体10aおよび光ファイバ保持用筐体20a,30aをシリカガラスとエポキシ樹脂からなる複合材料で構成する代わりに、光導波路保持用筐体10aを石英ガラスにより構成すると共に、光ファイバ保持用筐体20a,30aを光非透過性のプラスチック材料であるガラス/ポリイミドを用いて構成し、さらにUV接着剤としてフッ素化ウレタンアクリラ-ト系の材料の代わりにフッ素化エポキシアクリラ-ト系の材料用いたことにある。 【0066】 本参考例においても前記参考例3と同様な装置構成および手順にて、光ファイバと光導波路との接続を実施した。その結果、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化も認められなかった。また、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、参考例3の場合と同様に、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。 【0067】 以上のように、本参考例においても、参考例3と同様の効果を得ることができる。 【0068】 なお、上記実施例1および参考例1乃至5においては、光導波路11a,11bの両端に2本ずつ光ファイバ21a,21b並びに31a,31bを接続する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、8心の光ファイバモジュ-ルを8列の光導波路モジュ-ルに一括して接続する場合にも適用できることは言うまでもない。 【0069】 また、光導波路11a,11bとしてシリコン基板上に形成した石英系光導波路を使用した例について説明したが、これは石英系光導波路が、石英系光ファイバとの屈折率整合性に優れ、実用的な導波型光部品を実現できるためであり、本発明が、このような石英光導波路のみに限定されるものでないことは言うまでもない。 【0070】 さらに、光導波路保持用筐体10aおよび光ファイバ保持用筐体20a,30aを光透過性材料により構成する場合、紫外線透過性の材料であれば特に限定するものではないが、例えば、石英ガラス、パイレックスガラスなどのガラス、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレンなどのプラスチック、あるいはガラス粉末とプラスチックなどの複合材料やガラスとセラミックの複合材料が適用可能である。 【0071】 また、参考例3乃至5のように、光ファイバ保持用筐体20a,30aをプラスチック材料により構成する場合、そのプラスチック材料は特に限定するものではないが、成形可能な熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が適している。具体的には、エポキシ樹脂、フェノ-ル樹脂、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレ-ト、ポリエ-テルイミド、ポリブチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエ-テルスルホン、ポリアリレ-ト、ポリカーボネート、アクリル樹脂,シリコ-ン樹脂、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂、ポリエステルなどの液晶高分子、あるいは、これらのプラスチックにガラスやセラミックなどの充填剤を充填した複合材料などが適用可能である。 【0072】 また、接着剤としては、光によって硬化する接着剤であれば特に限定するものではないが、エポキシ系、ウレタン系、エポキシアクリラ-ト系、ウレタンアクリラ-ト系などの接着剤が適用可能である。 【0073】 【発明の効果】 以上説明したように、請求項1によれば、入出力用石英系光ファイバを保持する光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、光ファイバ用筐体中に入出力用石英系光ファイバが挿通され一端面が成端されて保持されているので、光導波路と光ファイバとの接合面の接着剤層を均一に、かつ、短時間で硬化させることができる。 【0074】 このため、光部品の作製時の作業性が極めて良く、また光損失が低く、接続部の機械的強度が大きい導波型光部品を提供できる利点がある。 【0075】 また、請求項1によれば、光ファイバ用筐体と光導波路を保持する筐体とは接着剤層のみで固定されているので、温度変化による損失変動が小さく、長期信頼性に優れた導波型光部品を提供できる利点がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る導波型光部品の一実施例の全体構成を示す外観図である。 【図2】 従来の接着剤接続方法によって作製された導波型光部品の構成図で、同図の(A)は外観図、同図の(B)は(A)のX-X線矢視方向の拡大断面図、同図の(C)は(A)のY-Y線またはZ-Z線矢視方向の拡大断面図である。 【図3】 図2の導波型光部品を作製するための部品組み立て工程の説明図である。 【図4】 図1の導波型光部品を作製するための部品組み立て工程の説明図である。 【図5】 光導波路モジュ-ルと光ファイバモジュ-ルとをUV接着剤で接着させたときの紫外線照射時間と出来上がった部品の曲げ強度との関係を示す図である。 【符号の説明】 1…光導波路モジュ-ル 2,3…光ファイバモジュ-ル 10a…光導波路保持用筐体 11…シリコン製基板 11a,11b…光導波路 20a、30a…光ファイバ保持用筐体 21a,21b,31a,31b…光ファイバ 41,42…接着剤層 51…基台 52,53…微動装置ア-ム 61a,61b…モニタ用光源 71a,71b…モニタ用受光器 80…紫外線照射用プロ-ブ |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 a.請求項1を「各々が筐体に保持され、かつ、光によって硬化する接着剤層を介して互いに光軸が一致するように接続された光導波路と入出力用石英系光ファイバとを有する導波型光部品において、 前記筐体のうち前記入出力用石英系光ファイバを保持する光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、前記光ファイバ用筐体中に前記入出力用石英系光ファイバが挿通され一端面が成端されて保持され、 前記光ファイバ用筐体と前記光導波路を保持する筐体とは前記接着剤層のみで固定されていることを特徴とする導波型光部品。」と訂正する。 b.特許明細書の段落【0023】を「【課題を解決するための手段】上記目的を解決するため、請求項1では、各々が筐体に保持され、かつ、光によって硬化する接着剤層を介して互いに光軸が一致するように接続された光導波路と入出力用石英系光ファイバとを有する導波型光部品において、前記筐体のうち前記入出力用石英系光ファイバを保持する光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、前記光ファイバ用筐体中に前記入出力用石英系光ファイバが挿通され一端面が成端されて保持され、前記光ファイバ用筐体と前記光導波路を保持する筐体とは前記接着剤層のみで固定されている構成とした。」と訂正する。 c.特許明細書の段落【0051】を「【参考例1】本参考例が前記実施例1と異なる点は、単一モ-ド光導波路11a,11bとして、シリコン基板11上の厚さ50μmの石英系ガラスクラッド層に埋設された断面寸法8μm×8μmの石英系ガラスコア部からなる石英系ガラス単一モ-ド光導波路を用いるとともに、入出力用の光ファイバ21a,21b、31a,31bとしてコア直径10μmの石英系単一モ-ド光ファイバを用い、これら光導波路11a,11bと光ファイバ21a,21b並びに31a,31bを接続した点、光導波路保持用筐体10aおよび光ファイバ保持用筐体20a,30aを共にシリカガラスとエポキシ樹脂からなる複合材料を用いて構成した点、並びにUV接着剤としてフッ素化ウレタンアクリレ-ト系の材料を用いた点にある。」と訂正する。 d.特許明細書の段落【0052】を「本参考例においても前記実施例1と同様な装置構成および手順にて、光ファイバと光導波路との接続を実施した。その結果、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化も認められなかった。また、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、実施例1の場合と同様に、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。」と訂正する。 e.特許明細書の段落【0053】を「以上のように、本参考例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。」と訂正する。 f.特許明細書の段落【0054】を「【参考例2】本参考例が前記参考例1と異なる点は、光導波路保持用筐体10aをSUSを用いて構成すると共に、光ファイバ保持用筐体20a,30aをシリカガラスとエポキシ樹脂からなる複合材料を用いて構成した点、並びにUV接着剤としてフッ素化エポキシアクリラ-ト系の材料を用いた点にある。」と訂正する。 g.特許明細書の段落【0055】を「本参考例においても前記実施例1と同様な装置構成および手順にて、光ファイバと光導波路との接続を実施した。その結果、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化も認められなかった。また、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、実施例1、2の場合と同様に、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。」と訂正する。 h.特許明細書の段落【0056】を「以上のように、本参考例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。」と訂正する。 i.特許明細書の段落【0057】を「【参考例3】本参考例が前記実施例1と異なる点は、光ファイバ保持用筐体20a,30aをパイレックスガラスで構成する代わりに、光非透過性のプラスチック材料であるガラス繊維入り液晶ポリエステルを用いて構成したことにある。」と訂正する。 j.特許明細書の段落【0059】を「図5から分かるように、本参考例のように光ファイバ保持用筐体20a,30aの材料として光非透過性のプラスチック材料を用いても、実施例1のように光ファイバ保持用筐体20a,30aの両者に光透過性のガラス材料を用いた場合と比べて、光部品の組立時間および接合面の接着強度は同等となっている。」と訂正する。 k.特許明細書の段落【0061】を「本参考例によれば、ガラス製の光ファイバ保持用筐体に代えてプラスチック製の光ファイバ保持用筐体を用いるので、実施例1と同様の効果を得られると共に、光部品の入出力端面において他の固形物と接触した際にガラス製のものでは発生するおそれのある割れやクラックを防止でき、光部品の取扱が容易となるばかりでなく、機械的強度、長期的信頼性のより一層の向上を図ることができる。」と訂正する。 l.特許明細書の段落【0062】を「【参考例4】本参考例が前記参考例1と異なる点は、光ファイバ保持用筐体20a,30aをパイレックスガラスで構成する代わりに、光非透過性のプラスチック材料であるガラス/エポキシを用いて構成したことにある。」と訂正する。 m,特許明細書の段落【0063】を「本参考例においても前記参考例3と同様な装置構成および手順にて、光ファイバと光導波路との接続を実施した。その結果、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化も認められなかった。また、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、参考例3の場合と同様に、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。」と訂正する。 n.特許明細書の段落【0064】を「以上のように、本参考例においても、参考例3と同様の効果を得ることができる。」と訂正する。 o.特許明細書の段落【0065】を「【参考例5】本参考例が前記参考例2と異なる点は、光導波路保持用筐体10aおよび光ファイバ保持用筐体20a,30aをシリカガラスとエポキシ樹脂からなる複合材料で構成する代わりに、光導波路保持用筐体10aを石英ガラスにより構成すると共に、光ファイバ保持用筐体20a,30aを光非透過性のプラスチック材料であるガラス/ポリイミドを用いて構成し、さらにUV接着剤としてフッ素化ウレタンアクリラ-ト系の材料の代わりにフッ素化エポキシアクリラ-ト系の材料用いたことにある。」と訂正する。 p.特許明細書の段落【0066】を「本参考例においても前記参考例3と同様な装置構成および手順にて、光ファイバと光導波路との接続を実施した。その結果、従来の組み立て時にみられた接着剤硬化時の軸ずれは皆無であり、また接着剤の硬化に伴う接続時の損失変化も認められなかった。また、接続した部品のヒ-トサイクル試験を行ったところ、参考例3の場合と同様に、-20〜70℃の温度範囲における損失変動は0.1dB以下であった。また、引っ張り試験の結果、接続部の破断強度は200kgf/cm2以上であった。」と訂正する。 q.特許明細書の段落【0067】を「以上のように、本参考例においても、参考例3と同様の効果を得ることができる。」と訂正する。 r.特許明細書の段落【0068】を「なお、上記実施例1および参考例1乃至5においては、光導波路11a,11bの両端に2本ずつ光ファイバ21a,21b並びに31a,31bを接続する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、8心の光ファイバモジュ-ルを8列の光導波路モジュ-ルに一括して接続する場合にも適用できることは言うまでもない。」と訂正する。 s.特許明細書の段落【0071】を「また、参考例3乃至5のように、光ファイバ保持用筐体20a,30aをプラスチック材料により構成する場合、そのプラスチック材料は特に限定するものではないが、成形可能な熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が適している。具体的には、エポキシ樹脂、フェノ-ル樹脂、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレ-ト、ポリエ-テルイミド、ポリブチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエ-テルスルホン、ポリアリレ-ト、ポリカーボネート、アクリル樹脂,シリコ-ン樹脂、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂、ポリエステルなどの液晶高分子、あるいは、これらのプラスチックにガラスやセラミックなどの充填剤を充填した複合材料などが適用可能である。」と訂正する。 t.特許明細書の段落【0073】を「【発明の効果】以上説明したように、請求項1によれば、入出力用石英系光ファイバを保持する光ファイバ用筐体をパイレックスガラスで構成し、光ファイバ用筐体中に入出力用石英系光ファイバが挿通され一端面が成端されて保持されているので、光導波路と光ファイバとの接合面の接着剤層を均一に、かつ、短時間で硬化させることができる。」と訂正する。 u.特許明細書の段落【0074】を「このため、光部品の作製時の作業性が極めて良く、また光損失が低く、接続部の機械的強度が大きい導波型光部品を提供できる利点がある。」と訂正する。 v.特許明細書の段落【0075】を「また、請求項1によれば、光ファイバ用筐体と光導波路を保持する筐体とは接着剤層のみで固定されているので、温度変化による損失変動が小さく、長期信頼性に優れた導波型光部品を提供できる利点がある。」と訂正する。 w.特許明細書の【図面の簡単な説明】の【図2】を「従来の接着剤接続方法によって作製された導波型光部品の構成図で、同図の(A)は外観図、同図の(B)は(A)のX-X線矢視方向の拡大断面図、同図の(C)は(A)のY-Y線またはZ-Z線矢視方向の拡大断面図である。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2002-04-16 |
出願番号 | 特願平3-61819 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(G02B)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 吉田 英一 |
特許庁審判長 |
青山 待子 |
特許庁審判官 |
吉田 禎治 町田 光信 |
登録日 | 2001-03-02 |
登録番号 | 特許第3163580号(P3163580) |
権利者 | 日本電信電話株式会社 |
発明の名称 | 導波型光部品 |
代理人 | 澤井 敬史 |
代理人 | 澤井 敬史 |