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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01C
管理番号 1064264
異議申立番号 異議1999-70596  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1987-05-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-22 
確定日 2002-07-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2788968号「回路保護デバイス」の特許請求の範囲第1乃至4項に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2788968号の特許請求の範囲第1項乃至第2項に記載された発明についての特許を維持する。 
理由
1.手続の経緯
本件特許第2788968号の特許請求の範囲の第1乃至4項に記載された発明についての出願は、昭和61年(1986年)10月14日(パリ条約による優先権主張 1985年10月15日、米国)に特許出願(特願昭61-245157号)され、平成10年6月12日にその発明について特許権の設定登録(発明の数1)がなされ、その後、その特許について、異議申立人東原文和、ボーンズ,インコーポレイテッド、及び花井恭子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成12年2月4日に特許異議意見書が提出されるとともに訂正請求(後日取下げ)がなされた後、上記各異議申立人に特許権者の提出に係る上記訂正請求書を送付して審尋を行ったところ、平成12年7月18日付けで異議申立人東原文和、異議申立人花井恭子より、平成12年8月21付けで異議申立人ボーンズ,インコーポレイテッドより審尋に対する回答書がそれぞれ提出され、再度の(訂正拒絶理由を兼ねる)取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年7月26日に意見書が提出されるとともに訂正請求がなされ、その後、訂正拒絶理由が通知され、平成14年5月2日に手続補正書が提出されたものである。なお、異議申立人東原文和より平成11年12月10日付け、及び平成12年4月12日付けで上申書が提出されている。

2.訂正の適否について
〔2-1〕訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、訂正請求書の「7.(3)訂正事項b、d」における『導電性ポリマーは高密度ポリエチレンまたはポリビニリデンフルオリド系のものである」という事項』(訂正請求書第2頁最下行〜第3頁第1行、及び同書第3頁第15〜16行)とあるを、『導電性ポリマーは高密度ポリエチレンであり」という事項』と補正し、また、訂正請求書の「7.(3)訂正事項e」における『上記訂正事項b』(訂正請求書第3頁第17行)とあるを、『上記訂正事項d』と補正するものであり、当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。

〔2-2〕訂正の内容
特許権者が求めている補正された訂正の内容は、以下のとおりのものである。
(1) 訂正事項a
特許請求の範囲の第1項及び第2項を削除する。
(2) 訂正事項b
訂正前の特許請求の範囲の第3項を訂正後の特許請求の範囲の第1項とし、訂正前の特許請求の範囲の第3項が引用していた訂正前の特許請求の範囲の第1項及び第2項のそれぞれの構成要件であった
「(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状
回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a) 層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、
(b) 0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平行な少なくとも1つの次元を有する凹凸を本質的に有して成り、
(c) 電着により形成される
ミクロラフ表面を有することを特徴とする回路保護デバイス」という事項、及び、「導電性ポリマーは高密度ポリエチレンである」という事項を訂正後の特許請求の範囲の第1項においても明記する。
(3) 訂正事項c
上記訂正事項bにおける明記に際して、訂正前の特許請求の範囲の第1項における構成要件中の「凹凸」という記載を、「瘤状の凹凸」と訂正する。
(4) 訂正事項d
訂正前の特許請求の範囲の第4項を訂正後の特許請求の範囲の第2項とし、訂正前の特許請求の範囲の第4項が引用していた訂正前の特許請求の範囲の第1項及び第2項のそれぞれの構成要件であった
「(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a) 層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、
(b) 0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平 行な少なくとも1つの次元を有する凹凸を本質的に有して成り、
(c) 電着により形成される
ミクロラフ表面を有することを特徴とする回路保護デバイス」という事項.及び、「導電性ポリマーは高密度ポリエチレンである」という事項を訂正後の特許請求の範囲の第2項においても明記する。
(5) 訂正事項e
上記訂正事項dにおける明記に際して、訂正前の特許請求の範囲の第1項における構成要件中の「凹凸」という記載を、「瘤状の凹凸」と訂正する。

〔2-3〕訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 上記訂正事項aは、特許査定時の明細書の特許請求の範囲における第1項及び第2項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
(2) 上記訂正事項bは、特許請求の範囲における訂正前の第1項の構成要件を、訂正前の第3項に記載していた構成要件に減縮することによって訂正後の第1項とする訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
この訂正は、訂正前の第3項は訂正前の第2項を引用していたこと、及び、その訂正前の第2項は訂正前の第1項を引用するものであったことから、訂正後の第1項における構成を明確にすべく、訂正前の第1項及び第2項のそれぞれの構成であった事項を、訂正後の第1項において明確に記載する訂正である。即ち、訂正前の第1項の構成であった
「(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a) 層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、
(b) 0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平行な少なくとも1つの次元を有する凹凸を本質的に有して成り、
(c) 電着により形成される
ミクロラフ表面を有することを特徴とする回路保護デバイス」という事項、及び、訂正前の第2項の構成要件であった
「導電性ポリマーは高密度ポリエチレンである」という事項を訂正後の第1項においても明記する。
したがって、上記訂正事項bは、特許明細書の特許請求の範囲における訂正前の第1項、第2項及び第3項に記載していた事項の範囲内の訂正であるので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当すると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 上記訂正事項cは、訂正後の特許請求の範囲の第1項に明記した、訂正前の第1項における構成中の「凹凸」という記載を、「瘤状の凹凸」と訂正するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、凹凸の具体的形状が「瘤状」であることは、特許掲載公報第3欄第42〜44行の記載に基づくものである。
したがって、上記訂正事項cは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当すると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4) 上記訂正事項dは、特許請求の範囲における訂正前の第1項の構成要件を、訂正前の第4項に記載していた構成に減縮することによって訂正後の第2項とする訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
この訂正は、訂正前の第4項は訂正前の第2項を引用するものであったこと、及び、その訂正前の第2項は訂正前の第1項を引用するものであったことから、訂正後の第2項における構成を明確にすべく、訂正前の第1項及び第2項のそれぞれの構成であった事項を、訂正後の第2項において明確に記載する訂正である。即ち、訂正前の第1項の構成であった
「(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a) 層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、
(b) 0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平 行な少なくとも1つの次元を有する凹凸を本質的に有して成り、
(c) 電着により形成される
ミクロラフ表面を有することを特徴とする回路保護デバイス」という事項、及び訂正前の第2項の構成要件であった
「導電性ポリマーは高密度ポリエチレンである」という事項を訂正後の第2項においても明記する。
したがって、上記訂正事項dは、特許明細書の特許請求の範囲における第1項、第2項及び第4項に記載していた事項の範囲内の訂正であるので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当すると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
(5) 上記訂正事項eは、訂正後の第2項に明記した、訂正前の第1項における構成要件中の「凹凸」という記載を、「瘤状の凹凸」と訂正するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
凹凸の具体的形状が「瘤状」であることは、特許掲載公報第3欄第42〜44行の記載に基づくものである。
したがって、上記訂正事項eは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当すると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

〔2-4〕独立特許要件
(2-4-1)本件発明
訂正後の明細書の特許請求の範囲の第1項及び第2項に記載された発明(以下、「本件発明1」、及び「本件発明2」という。)は、平成14年5月2日付けの手続補正書により補正された訂正明細書の特許請求の範囲の第1項及び第2項に記載された次のとおりのものである。

「1.(i) 25Ω以下の抵抗を有し、(ii) 2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a) 層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し
(b) 0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平行な少なくとも1つの次元を有する瘤状の凹凸を本質的に有して成り、
(c) 電着により形成される
ミクロラフ表面を有しており、
導電性ポリマーは高密度ポリエチレンであり、
各電極が電着ニッケル箔である
ことを特徴とする回路保護デバイス。
2.(i) 25Ω以下の抵抗を有し、(ii) 2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで 成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a) 層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し
(b) 0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平行な少なくとも1つの次元を有する瘤状の凹凸を本質的に有して成り、
(c) 電着により形成される
ミクロラフ表面を有しており、
導電性ポリマーは高密度ポリエチレンであり、
各電極はニッケルの被覆を上に電着させた銅箔である
ことを特徴とする回路保護デバイス。」

(2-4-2) 取消しの理由で引用した刊行物に記載された発明
当審で通知した平成13年1月16日付けの取消しの理由で引用した各刊行物には、それぞれ、次の発明が記載されている。

刊行物1は、有機質正特性サーミスタ(PTC)に関するもので、重合体と電極箔との接着強度を高めることを目的として、次の発明が記載されている。
「(i) 25Ω以下の抵抗を有し、(ii) 2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつ重合体に導電性粉末を分散させたものから成るPTC要素を含んで成る層状正特性サーミスタであって、
各金属箔電極が、
(a) 層状の重合体に導電性粉末を分散させたものから成るPTC要素と直接物理的に接触し
(b) 表面から突出した凹凸を有し、
(c) 片面を電解質により
粗面化した表面を有しており、
重合体が結晶ポリエチレンであり、
各電極が電解質で粗面化したニッケル箔又は銅箔である
層状正特性サーミスタ。」

刊行物2は、プリント回路における銅箔と基板との接着に関するもので、次の発明が記載されている。
「銅箔に直接物理的に接触する基板を含むプリント回路であって、銅箔表面が、電着により直径0.20〜2.0μmの瘤状突起が形成された粗面を有するプリント回路。」

プリント回路に関するもので、銅箔と基板との接着性を向上させることを目的として、次の発明が記載されている。
「銅箔に直接物理的に接触する基板を含むプリント回路であって、銅箔表面が、亜塩素酸ソーダとカ性ソーダの混合溶液で処理することにより、3分間処理で3.5ミクロン、20分間処理で11ミクロンの厚さの酸化銅の樹枝状結晶からなる粗面を有し、その酸化面は極めて多孔質な構造を有するプリント回路。」

刊行物4、5には、プリント回路に関し、銅箔と樹脂基板との接着性を高めることを目的として、次の発明が記載されている。
「銅箔に直接物理的に接触する基板を含むプリント回路であって、銅箔表面が、電着により瘤状の突起が形成された粗面を有するプリント回路。」

(2-4-3)対 比
本件発明1、2と上記刊行物1に記載された発明とを対比する。刊行物1に記載された発明における「層状正特性サーミスタ」は、本件発明1、2における「回路保護デバイス」に相当することは明らかである。刊行物1に記載された発明における「重合体に導電性粉末を分散させたもの」は、導電性ポリマーのことであるから、刊行物1に記載された発明における「金属箔電極に直接物理的に接触し、かつ重合体に導電性粉末を分散させたものから成るPTC要素」は、本件発明1、2における「金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素」に相当する。また、刊行物1に記載された発明における「粗面」とは、文意上ミクロにみて粗面をなすものであると解される以上、本件発明1、2における「ミクロラフ表面」と変わるところがない。そうすると、本件発明1、2と上記刊行物1に記載された発明とは、次の各点で相違し、その余の点では一致する。

(1) 金属箔の表面に形成される凹凸に関し、本件発明1、2においては、「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する瘤状の」ものであるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、このような限定がなされていない点。(以下、「相違点1」という。)
(2) ミクロラフ表面の形成に関し、本件発明1、2においては、「電着により形成される」ものであるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、電解質により粗面化するものである点。(以下、「相違点2」という。)
(3) 導電性ポリマーの材料に関し、本件発明1、2においては「高密度ポリエチレン」であるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、結晶ポリエチレンを用いている点。(以下、「相違点3」という。)
(4) 各電極材に関し、本件発明1、2においては、「電着ニッケル箔」(本件発明1)、もしくは「ニッケルの被覆を上に電着させた銅箔」(本件発明2)とするものであるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、「電解質で粗面化したニッケル箔又は銅箔」とするものである点。(以下、「相違点4」という。)

(2-4-4)判 断
そこで、上記相違点について検討する。
相違点1に関し、上記刊行物2、3に記載された発明は、プリント回路における銅箔と基板との接着に関するものであり、基体に積層される銅箔(金属箔)の接着強度を高めるという点で、基体となるPTC導電性ポリマーに積層される金属箔の接着強度を問題とする正特性サーミスタと共通するものであるが、刊行物3に記載された発明は、電解銅箔の接着性が不十分であることから亜塩酸ソーダ処理法によって該銅箔の表面を処理して形成された多孔質構造の酸化銅の層の厚さは3.5〜11ミクロンであることを意味すると理解できるものの、箔全体の瘤状の凹凸についてその突出高さが3.5〜11ミクロンであることを意味するものとはいえず、電着によって形成される瘤状の突出高さを意味するものではない。また、刊行物3において形成されるのは酸化銅の層であり、良好な電気的導通に関して酸化銅は不適切な材料であり、亜塩酸ソーダ処理法によって該銅箔の表面を処理した場合、プリント配線基板においては密着性の向上には役立つとしても、導電性ポリマー要素を用いる回路保護デバイスにおいては、酸化銅の表面層は絶縁層となり、デバイスの電気的導通を損ねるものであると解される。刊行物2に記載された発明において電着により銅箔表面に形成される瘤状突起の直径は、該瘤状突起の表面に平行な少なくとも1つの次元であり得るとともに、種々の他の次元例えば突出高さでもあり得ると解されるので、刊行物2に瘤状の凹凸に関して表面に平行な少なくとも1つの次元が記載乃至開示されているとまではいえない。そして、仮に、刊行物3に(樹枝状)突起の突出高さが、刊行物2に瘤状突起の表面に平行な1つの次元が示されているとしても、これらの寸法を本件発明1、2の組合せとすることについてその根拠が見当たらず、その組合せが当業者にとって自明もしくは本件出願前に周知の事項であったものとも認められない。
したがって、相違点1に係る本件発明1、2の構成を刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。
そうすると、相違点2、4に関し、基板と積層される銅箔(金属箔)の表面に電着により粗面を形成することが上記刊行物2〜5に記載されているように周知の技術であるとしても、刊行物1に記載された発明に刊行物2〜5に記載された発明を適用して当業者が本件発明1、2を容易に想到できたものとすることはできない。

よって、本件発明1、2は、取消しの理由で引用した上記刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

〔2-5〕むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて

〔3-1〕異議申立ての理由の概要
特許異議申立人東原文和は、証拠として、甲第1号証(特開昭52-117980号公報)、甲第2号証(特開昭60-196901号公報)、甲第3号証(特開昭52-19746号公報)、参考資料1(米国特許第3,293,109号明細書(1966年))、及び参考資料2(米国特許第3,674,656号明細書(1972年))を、また、文献1(「プリント配線の設計と試作」(誠文堂新光社、昭39-10-10 p.72-81、p.110-115、167))、文献2(「プリント配線用材料の加工技術」(株式会社シーエムシー、昭56-11-20 p.71-93))、文献3(特公昭53-43555号公報)、及び文献4(特開昭60-258902号)を提出して、特許請求の範囲の第1項に記載された発明は、甲第1〜3号証、参考資料1、2、及び文献1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許請求の範囲の第1項に記載された発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべき旨主張する。
特許異議申立人ボーンズ,インコーポレイテッドは、証拠として、甲第1号証(特開昭60-196901号公報)、甲第2号証(米国特許第4,426,633号明細書(1984年))、甲第3号証(Transactions of the INSTITUTE OF METAL FINISHING ,INCORPORATING ELECTRODEPOSITORS' TECHNICAL SOCIETY, Volume 48, 1970,p.88-92)、甲第4号証(米国特許第4,348,584号明細書(1982年))、甲第5号証(米国特許第4,315,237号明細書(1982年))、及び甲第6号証(特開昭59-136484号公報)を提出して、特許請求の範囲の第1項に記載された発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許請求の範囲の第1項に記載された発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべき旨主張する。
特許異議申立人花井恭子は、証拠として、甲第1号証(特開昭60-196901号公報)、甲第2号証(特開昭59-136484号公報)、甲第3号証(特開昭58-164797号公報)、甲第4号証(特開昭52-117980号公報)、甲第5号証(米国特許第3,293,109号明細書(1966年))、甲第6号証(特開昭53-81435号公報)、甲第7号証(特開昭50-19636号公報)、甲第8号証(米国特許第3,674,656号明細書(1972年))、及び甲第9号証(特開昭56-161464号公報)を、また、公知文献1(「プリント配線の設計と製作」株式会社誠文堂新光社、昭39-10-10 p.72-81、p.112-115)、公知文献2(「プリント配線用材料と加工技術」株式会社シ-エムシー、昭56-11-20 p.77下から11行-p.80 第11行)、公知文献3(「界面物性」丸善、昭51-6-25 p.223-227)、公知文献4(米国特許第4,454,379号明細書(1984年))、公知文献5(米国特許第4,331,861号明細書(1982年))、公知文献6(特公昭57-38162号公報)、公知文献7(特公昭42-23228号公報)、公知文献8(特開昭61-260607号公報)、公知文献9(特公昭50-40109号公報)、公知文献10(米国特許第3,220,897号明細書(1965年))、公知文献11(米国特許第3,673,121号明細書(1972年))、及び、公知文献12(特開昭60-258902号公報)を提出して、特許請求の範囲の第1項に記載された発明は、甲第1〜9号証、及び公知文献1〜12に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許請求の範囲の第1項に記載された発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、本件特許の特許請求の範囲の第1項に記載された発明は明細書に当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されていないので、特許請求の範囲の第1項に記載された発明の特許は特許法第36条第3項の規定を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべき旨主張する。

〔3-2〕特許法第29条第2項違反について
(3-2-1)異議申立人の提出した甲各号証等に記載乃至開示された事項

(1)異議申立人東原文和の提出した甲各号証等に記載乃至開示された事項

複合金属箔に関するもので、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア) 「一般に、二種のものの界面における接着性ないしは接合性は、界面が粗面状である場合にすぐれている。従って、二種の物を接合する場合は、何れか一方または両方の面を予め粗化し凹凸を形成しておく。この考え方は金属面を有する合成樹脂板の製造の場合にも応用される。すなわち、たとえば銅箔を粗面化して接着力の向上を図っている。したがって、粗面を有する銅箔等を如何にして、また最も都合のよい形状の粗面を如何にして、場合によってはできるだけ薄い粗面化銅箔を製造するかが、より具体化された課題であった。」(第2頁左上欄第11行〜同頁右上欄第1行。)
(イ) 「本発明は以上のような事情に基づきなされたのであり、中間材料としての複合金属箔を提供するものである。第1図、第2図は表されているのは、本発明に係る実施例としての複合金属箔の断面を幾分誇張して示したものである。これらの図で1はプラスチックスシート、2は金属層である。そして、第2図に示してある8は保護材である。プラスチックシート1と金属層2との界面は粗面状に形成されている。これは、この複合金属箔の使用法が、プラスチックスシート1を剥離して金属層2の粗面を剥き出しにして、この面を合成樹脂板に当接々着する方法によることのためであり、その場合の接着力を大きくするためである。したがってプラスチックスシート1は金属面に対する粗面付与材として作用すると言える。」(第2頁第2〜16行。)
(ウ) 「プラスチックスシート1の面上に形成される粗面の形状については特に限定するものではない。適用される粗面形成法、あるいは凹凸原板等の粗面形状に応じた波状、略錐体状、円柱状、角柱状を基本にした種々の粗面が形成される。しかし形成されるべき粗面形状のうちで、最も好ましく、実現性が大きいのは、略錐体状または円柱状の凹凸である。略錐体状凹凸の中には、略円錐、略三角錐、略四角錐等が含まれる。この中でも略円錐の場合が、実現性、後の金属面の接着性の点から好ましい。・・・(中略)・・・
なお、これらの凹凸は、プラスチックスシート面に主として凹部となって表われる場合、および主として凸部となって表われる場合の両方を含む。・・・(中略)・・・略錐体状凹凸の大きさについては限定しないが、略錐体としての底面の平均差渡しが0.5〜20μで、高さが平均差渡しと同等ないし2倍が好ましい。また円柱状凹凸の場合は差渡し、高さ共2〜20μが好ましい。転写シート面に形成される凹凸形状の良し悪しは後の接着面の接着性、接合性を左右するものである。ここで、接着性、接合性とは主として剥離強度を指し、剥離強度が大なる程好ましいのである。」(第3頁左上欄第11行〜同頁左下欄第5行。)
(エ) 「表面粗化プラスチックスシート1の製法について特に錐体状および円柱状凹凸を例にとって述べる。これの製造のためには、たとえば先づ前記凹凸形状についての窪みに対応する突起を有する原板が形成され、これがプラスチックスシート1に転写される。この場合に用いられる原板は金属製である。金属の種類については限定はしないが、銅が製造がし易く好ましい。原板に対する該突起の形成法は、限定はしないが電解メッキ法が製造が容易である点好ましい。製法につき例示的に説明するとメッキ浴中に、チタン製の鏡面を有するドラムを浸し、これを陰極としてかつドラムを徐々に回転させ乍ら電気メッキを行い、ドラム面に形成された電解金属箔を剥離して得る。かくすることにより略錐体状突起を有する原板が得られる。そして、要すればこの突起面に、さらに電解メッキを施して略錐体状突起面に小突起を形成する。」(第3頁左下欄第6行〜同頁右下欄第4行。)
(オ) 「表面粗化プラスチックスシート1の表面に金属層を形成する第1段階の措置として、該粗化面に蒸着法、スパッタリング法、化学メッキ法等により(方法は限定しない)金属層を形成し、要すればその上にさらに電気メッキを施して金属層を厚くする。・・・化学メッキ法はやや能率が良いが、何れも電気メッキ法を併用するのが厚い金属層を得るのには都合がよい。また初めから電気メッキができないのはプラスチックスシートが不導体のためである。
・・・(中略)・・・
以上のようにして得られた複合金属箔は第1図の実施例に示した構成のものとなる。この実施例のような構成の複合金属箔は金属層2が厚い場合に有利な構成である。そして通常は複合金属箔そのものとして取扱い、合成樹脂板と一体にする直前にプラスチックスシートを除去して用いる。
・・・(中略)・・・
つぎに以上のようにして得られる複合金属箔実用に供する場合、すなわち、合成樹脂板に接着する場合はプラスチックスシート1を除去し、接着に供する。この場合のプラスチックスシート1の除去法は単に引き剥す方法でもよく、溶剤等で溶解除去する方法でもよい。また、プラスチックスシート1の除去時期は使用前の方がよいが、他に障害がなければ複合金属箔製造後に直ちに除去してもよい。
合成樹脂板と1体化する方法は、合成樹脂板の性質、製法により異なる。例えば予め板状に整えられているものに対する場合は接着剤を用いるか、ボンデングシートを用いて圧着する。なお、板が熱可塑性である場合は単に熱圧するのみで接着することも可能である。合成樹脂板が予め整えられていなくて、たとえば熱硬化性樹脂プリプレグを用いて、金属箔または複合金属箔と1体化する場合は1層または多数層に重ねたプリプレグの上に、該複合金属箔よりプラスチックスシート1を除いて、剥き出しにした粗面を、プリプレグ面に当接重畳し、加熱加圧して1体化する。」(第4頁左上欄第14行目〜同頁右下欄第16行。)
(カ)「本発明に係る複合金属箔はプラスチックスシートの粗面に金属層を形成した構成を有するので、任意の厚さで接着性の大きい、金属面合成樹脂板の中間材料とする。そして、該金属層の外面に保護材を付することにより、損傷からの保護効果および薄い金属層が安価に供給できる利点を付加できる。さらに粗面化プラスチックスシートの粗面に金属などの導電性物質を蒸着、スパッタリング、化学メッキ、ブレンド等の方法で付着させることにより、あるいはさらにこれに電気メッキを施すことにより任意の厚さの粗面化金属箔が得られるのである。」(第5頁右上欄第13行〜同頁左下欄第3行目。)

取消しの理由で引用した刊行物1であり、上記(2-4-2)で示した事項が記載乃至開示されている。

導電性ポリマーがポリビニリデンフルオライド系のものであるPTC導電性ポリマー組成物が記載されている。

プリント回路に使用される改良された接合特性を有する導電素子に関するもので、次の技術事項が記載乃至開示されている。
(ア)「本発明は、導電金属の表面を改良し、該導電金属の樹脂性素材への接着力力の向上及び該表面を改良する方法に関する。特に、本発明は、改良された電気伝導素子及び本発明の改良銅体をプラスチックの基板と層状関係にて使用するプリント回路などの複合層状構造体に関する。」(第1欄第1〜8行目。)
(イ)「この方法によって得られた表面構造は、高倍率にして見ると、きわめて不規則になっており、表面からの節突起を特徴とする。故に、接着力を向上する露出表面積が大幅に増大するばかりでなく、該節構造により接着の機械的な側面も向上する。」(第2欄第29〜35行目。)
(ウ)「第3図は、本発明により処理された上表面21の銅体20の拡大断面図を描いたものを示す。銅-酸化銅の内芯を持った数多くの突起22が示されている。その上に搭載されているのは、銅金属の外被覆23で、突起22の銅体20の表面21への固定を確かなものにしている。実際の銅体の断面図を数百倍の倍率で観察すると、第3図に示されたものと同様の構造が得られ、第3図に描かれたような複数の節突起を特徴とする。
第4図は、6000倍の倍率の電子顕微鏡写真を示したもので、本発明の方法によって処理された銅体の表面の上面図を示す。」(第3欄第45〜61行。)

取消しの理由で引用した刊行物2であり、上記(2-4-2)で示した事項が記載乃至開示されている。

また、審尋に対する回答書に添付された資料に記載乃至開示された事項は次のとおりである。

・プリント基板用銅箔には、電着箔(電解銅箔)と圧延箔があり(第74頁第14行)、電着箔が主流である(第75頁第11行)こと。
・箔の厚みは35ミクロン(0.035μm)が最も多いこと(第78頁第2〜3行)。
・電着銅箔の表面は、電解条件によって粗面を形成させ、・・・機械的投錨効果を与えること(第112頁第21〜22行)。

取消しの理由で引用した刊行物3であり、上記(2-4-2)で示した事項が記載乃至開示されている。

銅箔マット表面(粗面化した面)に基質(基板)に対して不活性な金属(ニッケル等)を被覆して銅箔の基質に対する高温接着強度を増加させることに関するもので、次の事項が記載されている。
・「銅箔のマット表面に金属を被覆する最適の方法は銅箔を電解質の中に通す方法である。これに使用する装置は多数の陽極を有し、銅箔と導電性ローラとを適当に接触させ、銅箔を陰極にして陽極近くを蛇行通過させる。銅箔のマット表面を陽極に向けて電解質中を通過させると、該マット表面に電解質からの電着金属が析出して被覆する。」(第2頁第16〜22行。)

高分子正温度特性抵抗体に関するもので、素子の耐久性を向上させることを目的として、次の事項が記載乃至開示されている。
「高密度ポリエチレンの導電性ポリマーから成る正温度係数特性材料の成形体表面を酸化処理し、電解ニッケル箔、電解銅箔などの金属箔電極を取り付けた正温度特性抵抗体。」

(2)異議申立人ボーンズ,インコーポレイテッドの提出した甲各号証等に記載乃至開示された事項

取消しの理由で引用した刊行物1であり、上記(2-4-2)で示した事項が記載乃至開示されている。

2つの金属箔間に直接接触して挟まれているPTC導電性ポリマー素子を有する層状電気装置に関し、次の事項が記載されている。
(ア)「導電性ポリマーを有する加熱装置において、金属箔電極を用いる可能性は先行技術に記載されている。例えば、・・・は、平らな導電性ポリマー素子、例えばPTC素子を有する平らなヒータを開示している。平らな導電性ポリマー素子は2つの金属箔に挟まれており、各々は好ましくは10〜25ミクロンの厚さである。」(第2欄第14〜23行)
(イ)「発明は以下のものを有する電気装置を提供する。
(a)導電性ポリマー組成物から構成される素子、
(b)前記導電性ポリマー素子と電気的に接触しており、金属箔である薄層状の、例えば平らな、曲がった、又は波形の電極、
前記導電性ポリマー素子と前記金属箔は互いに面と面で直接又は間接に接触し、かつ確実に互いに接合しており、前記装置は少なくとも次の特徴の1つを有している。
i) 導電性ポリマー素子はPTCの性質を示す導電性ポリマーから構成される少なくとも1つのPTC素子を有している。
ii) 金属箔電極は導電性ポリマー素子、好ましくはPTC導電性ポリマー素子と直接物理的及び電気的に接触している。
iii)・・・
iv) 装置は23℃で1000オームより低い抵抗、好ましくは100オームより低い抵抗、さらに好ましくは1オームより低い抵抗を有している。大変低い抵抗の装置は、例えば0.1オームより低い、更には例えば0.01オームより低くされ、そして高正常動作電流を持つ回路における回路保護装置として役立つ。」(第3欄第20〜53行)
(ウ)「上記規定されたプロセスは好ましくは以下の特徴の1つ又はそれ以上を有する。
i) ステップ(c)で、金属箔及び少なくともこれと接触している素子の一部の温度は、結果として生成物の抵抗が最小となるよう選択される。・・・
ii) ・・・
iii)ステップ(c)で、採用された圧力は金属箔と導電性ポリマーを適切にボンディングするのに十分である。」(第4欄第38行〜第5欄第10行)
(エ)「本発明に用いられる導電性ポリマーはPTC、ZTC、又はNTCの性質を示すことができる。・・・好ましくは、ポリマー組成物は少なくとも重量で80%は1つ又はそれ以上の結晶から成るポリマーを有し、特に少なくとも1つのポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポロプロピレン、及び少なくとも1つのオレフィンの共重合体、例えばエチレン、及びポラーコモノマー、例えばアクリル酸、エチルアクリル酸塩又はビニルアセテートの混合である。好ましくは金属箔電極は導電性ポリマー素子と直接物理的に接触している。」(第5欄第11〜26行)

電気鋳造された銅及びニッケルのプラスチック薄層への接合に関するもので、次の事項が記載乃至開示されている。
(ア)「機械的キーイングを与えるため銅又はニッケル表面を電気鋳造することにより、エポキシド薄層への接合は4lb/inの剥脱強度から12lb/inに増加する。」(第88頁「SUMMARY」の欄)
(イ)「回路がより小さく、より複雑なほど、金属とプラスチック間全体の各小さな部分にわたって強いボンディングをすることがより必要である。・・・この研究の目的は、金属被覆層の接合を改善することである。」(第88頁「INTRODUCTION」の欄の第6〜12行)
(ウ)「電気鋳造された、35μm(0.0014in)の厚さの銅とニッケル箔は、それぞれ酸性硫酸銅とワットニッケル溶液から制御された形の表面を有している。電着物と表面の構造は基板金属の性質とメッキ条件-溶液、清浄さ、電流密度、及び温度に依存することが知られている。」(第88頁「EXPERIMENTAL」の欄の第1〜12行)
(エ)「電着の構造は断面が柱状であり、35μmの厚さの箔の外側表面は、表面から3μm突出したピラミッドで構成されている(Fig 1(a))。」(第89頁左欄第1〜4行)
(オ)第88頁の表1には、電気鋳造された銅箔のエポキシド薄層への接合表面について示されている。

結節を設けた金属箔電極を用いた層状PTC装置に関するもので、次の事項が記載乃至開示されている。
(ア)「本発明によると、PTC材料により隔てられた少なくとも2つのフレキシブル電気導体を有するフレキシブル加熱素子が設けられている。」(第2欄第20〜23行)
(イ)「電気導体として好ましい材料は、銅、特に約1%のカドミウムを含む、及び銀、錫、アルミ及びそれらの合金のような他の低抵抗材料、同様に銀、錫、又はニッケルをメッキした銅を含む。」(第2欄第48〜52行)
(ウ)「本発明における電気導体は、例えば、平ら、丸い、固体、又は撚られたような都合のよい形のどれかにすることができる。もし望むなら、電気導体の表面に結節を設けることができる。例えば顕微鏡的精密さで結節を設ければ、接合力を改善し、接合抵抗を減じることができる。」(第5欄第8〜13行)
(エ)「高密度ポリエチレンを有するPTC材料である、請求項1に記載された加熱素子」(第10欄第38〜39行)

PTC要素を含む電気デバイスに関するもので、次の事項が記載乃至開示されている。
(ア)「本発明装置の電極は、一般に金属又は0.1Ω-cmより小さい比抵抗を持った他の材料よりなる。電極はPTC素子と物理的に接合することができる。」(第4欄第31〜34行)
(イ)「このように、電極は好ましくはニッケル、錫、銀又は金、あるいは銅又は別の金属上に被覆されたこれらの金属の1つより成る。」(第4欄第45〜48行)
(ウ)「本発明の装置は回路制御装置を有し、・・・そして、25℃における装置の抵抗は相対的に低い、例えば、50Ωより低く、好ましくは10Ωより低く、又は1Ω又は0.5Ωより低いような小さな値である。」(第4欄第59行〜第5欄第2行)

印刷配線用の金属箔に適用する金属箔の粗面化処理に関するもので、次の技術事項が記載されている。
(ア)「本発明に於いて、適選の方法で粗面化された金属箔とは、電解銅箔の場合にあっては、その製造時に生じる析出側の粗面そのものであっても本発明の適用が可能であるが、より強い接着力を必要とする場合には、予め電気化学的な粗面化処理を施すことが好ましい。
また圧延銅箔の場合には、エッチングにより粗面を形成してもよいが、より強い接着力を必要とする場合には、予め電解メッキにより2〜3μmのメッキ層を形成した後、1〜10μmの大きさの突起状析出物を均一に析出させる粗面化を施すことが好ましい。」(第2頁左上欄第7〜18行。)
(イ)「第1図は電解銅箔の断面を拡大、模写したものであるが、本発明の圧延加工は第1図の粗面側を第2図に示す如く、粗面の形状が完全には消滅しない程度に圧延加工を施すものであり、この時のロール間隔、圧力は金属箔の材質、及びその製造条件等により選択すればよい。
この圧延加工により、こぶ状の粗面が、きのこ状に変形され、基板との接着力がより強固となる。しかしながら、粗面の形状によっては目的とするきのこ状には変形されない場合があり、この場合には予め電気化学的な粗面化処理が必要である。即ち、第3図に示す如く、こぶ状突起の部分に、1〜10μm程度の突起状析出物を析出させる電気化学的な粗面化処理を施し、次いで圧延加工を行うと第4図に示す如ききのこ状の粗面を形成することができる。」(第2頁右上欄第1〜16行。)

(3)異議申立人花井恭子の提出した甲各号証等に記載乃至開示された事項

取消しの理由で引用した刊行物1であり、上記(2-4-2)で示した事項が記載乃至開示されている。

異議申立人ボーンズ,インコーポレイテッドの提出した甲第6号証であり、上記(3-2-1)(2)で示した事項が記載乃至開示されている。

(ア)「本発明は金属シート又は金属箔の表面を処理して、その基板物質に対する接着能力を高めるための改良された方法及び装置に関する。更に詳しくは本発明は、銅のシート又は箔の表面を処理して、樹脂質基板に対する該シート又は箔の接着能力を改良することに関する。」(第2頁左下欄第6〜11行)
(イ)「プリント配線の製造に当たっては、・・・金属箔と基板との間の密着性は弱いので、従来は基板に対する金属箔の結合の強さを増加させるように該金属箔を処理することに、かなりの努力が傾けられてきた。このような努力の結果として、種々の処理法が開発され、それらは該金属箔のすくなくとも1つの表面上に粗面化された表面を形成する結果となった。使用される金属箔が銅箔である場合には一般的にこれらの処理は該処理表面が硬化性のプラスチック材料によりコーティングされた場合に、主として機械的結合である強じんな結合を形成するように、該表面上に樹枝状銅層を電着させることより成る。
結合強さを増進するための従来技術の処理の一つの形成は複数の電着工程を有する方法を包含する。これらの方法の一つの工程は一般的に、金属箔表面上に主として銅又は酸化銅の粒子であるノジュラー(小節状)粉状銅層を電着により被覆することを包含する。」(第2頁左下欄第20行〜第3頁左上欄第2行。)

異議申立人東原文和の提出した甲第1号証であり、上記(3-2-1)(1)で示した事項が記載乃至開示されている。

異議申立人東原文和の提出した参考資料1であり、上記(3-2-1)(1)で示した事項が記載乃至開示されている。

次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は電解液を高速で循環せしめ、発生ガスを除去し、陰極面に絶えず濃厚な電解液を供給し、金属箔の電着、二次電解処理、水洗、乾燥、剥離の諸工程をドラムが一回転する間に一挙に同一ドラム面上で行うことにより生産効率を高め、同時に品質の向上を図る金属箔の製造方法を提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第7〜13行)
(イ)「上記の装置を用いて下記の条件で厚さ25μmの良好にノジュラー化したピンホールのない銅箔を一挙に高速で製造することができた。」(第3頁右下欄第14〜16行)

(ア)「本発明は、印刷回路用に好適な表面処理を施した接着性のよい銅箔にかかるものである。」(第1頁左欄第9〜10行)
(イ)「第二の種類の微粒子をメッキ層中に包含する銅箔は、基板に重ねて加熱加圧することにより恭子に接着する性質を有するので、印刷回路用はもとよりその他の積層品材料としても有用である。
このような微粒子の粒径は、0.1〜10μ、懸濁量はメッキ1l当たり10〜200g程度が適当で、この範囲外では接着強度その他前述の諸性能のすぐれた銅箔が得られにくい。」(第2頁右上欄第9〜17行)
(ウ)「・・・微粒子の包含によって生じる微細な突起のために接着性は著しく向上し」(第1頁右下欄第14〜16行)

異議申立人東原文和の提出した参考資料2であり、上記(3-2-1)(1)で示した事項が記載乃至開示されている。

PTC導電性ポリマー組成物およびそれからなる装置に関するもので、次の事項が記載されている。
・「本発明の新規組成物のポリマー成分は架橋されているものであっても架橋のないものであってもよく、また、1またはそれ以上のポリマーからなっていてもよい。・・・好ましいポリマーは・・・ハロゲン化ビニルおよびビニリデンポリマー類、例えばポリビニルクリド、ポロビニリデンクロリド、ポリビニルフルオライド・・・などである。」(第4頁左上欄第4行〜同頁右上欄第8行)

また、審尋に対する回答書に添付された資料に記載乃至開示された事項は次のとおりである。

異議申立人東原文和の提出した文献1であり、上記(3-2-1)(1)で示した事項が記載乃至開示されている。

異議申立人東原文和の提出した文献2であり、上記(3-2-1)(1)で示した事項が記載されている。

金属材料の接点における密着性と電気抵抗との関係が開示されており、密着性が増大すると表面の接点の数が多くなり、これにともなって接点の電気抵抗が減少することが開示されている。(特に、p.225参照。)

電気ケーブルのシールドテープに関するもので、接合される部材との接着性を高めるために瘤状の突起を有する金属粗面化表面が開示されている。(特に、図2、及び第3欄第63行〜第4欄第15行を参照。)

公知文献5〜7には、PTC抵抗器が開示されている。

PTC材料に接合される金属表面をメッキにより粗面化することが開示されている。

公知文献9,10には、印刷回路用銅箔に関するもので、電解処理(電着)によって金属表面をノジュール状に粗面化することが開示されている。

公知文献11、12には、PTC抵抗材料が開示されている。

(3-2-2) 対比・判断
(1)本件発明と異議申立人東原文和の提出した甲各号証等に記載乃至開示された事項との対比・判断
甲第1号証に記載されたものは、複合金属箔に関するもので、金属箔の表面を粗面化して基体との接着性を向上するという点では本件発明1、2と共通するものの、該金属箔に直接物理的に接触するPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスに用いるものではない。甲第1号証には、合成樹脂面に金属箔を接合したプリント回路の具体例が挙げられているが、本件発明1、2に係るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスは、金属箔(電極)とPTC要素間に良好な接着強度に加え良好な電気的導通特性が必要なものであり、単に金属箔と絶縁基板との接着強度を問題とするプリント回路とは対象が異なるものである。なお、プリント回路では金属箔と基板との電気的導通はあってはならないものである。
甲第2号証(取消しの理由で引用した刊行物1)は、本件発明1、2と同様有機質正特性サーミスタ(PTC)に関するものであるが、本件発明1、2と対比すると上記(2-4-3)で示したとおりの相違点を有するものである。
甲第1号証に記載されたものと甲第2号証に記載されたものとは上記のように対象が異なるものであり、組み合わせることは困難であると考えられるが、強いて組み合わせたとしても、本件発明1、2における金属箔の表面に形成される(瘤状の)凹凸に関する「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する」構成は導出され得ない。また、この構成を当業者の技術常識、あるいは周知事項であるとする根拠も見当たらない。
甲第3号証に開示されている導電性ポリマー組成物は、本件発明1、2と何ら関係のないものであることは明らかである。
参考資料1、及び参考資料2(取消しの理由で引用した刊行物2)は、何れもプリント回路における銅箔と基板の接着に関するものであって、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。
文献1、及び文献2(取消しの理由で引用した刊行物3)も、プリント回路における銅箔と基板の接着に関するものであって、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。なお、文献2に記載されたものは、電解銅箔の接着性が不十分であることから亜塩酸ソーダ処理法によって該銅箔の表面を処理して形成された多孔質構造の酸化銅の層の厚さは3.5〜11ミクロンであることを意味すると理解できるものの、箔全体の瘤状の凹凸についてその突出高さが3.5〜11ミクロンであることを意味するものとはいえず、電着によって形成される瘤状の突出高さを意味するものではない。また、文献2において形成されるのは酸化銅の層であり、良好な電気的導通に関して酸化銅は不適切な材料であり、亜塩酸ソーダ処理法によって該銅箔の表面を処理した場合、プリント配線基板においては密着性の向上には役立つとしても、導電性ポリマー要素を用いる回路保護デバイスにおいては、酸化銅の表面層は絶縁層となり、デバイスの電気的導通を損ねるものであると解される(上記(2-4-4)を参照。)。
文献3は、単に銅箔のマット表面に金属を被覆する技術を開示するものであり、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関して何らの記載、示唆もない。
文献4は、PTC抵抗体の導電性ポリマーを高密度ポリエチレンとすること、金属箔電極として電解ニッケル箔、電解銅箔を用いることが開示されているが、金属箔の表面に形成される(瘤状の)凹凸に関する「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する」という本件発明1、2の構成は何ら示されていない。
結局、甲第1〜3号証、参考試料1、2、及び、文献1〜4を組み合わせても、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスにおける金属箔電極の表面に形成される(瘤状の)凹凸に関する「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する」という本件発明1、2の構成は導出され得ない。また、該構成を当業者の技術常識、あるいは周知事項であるとする根拠も見当たらない。

したがって、本件発明1、2は、参考試料1、2、及び、文献1〜4を参酌しても、異議申立人東原文和の提出した甲第1〜3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件発明と異議申立人ボーンズ,インコーポレイテッドのの提出した甲各号証等に記載乃至開示された事項との対比・判断
甲第1号証は、取消しの理由で通知した刊行物1であり、本件発明1、2と同様有機質正特性サーミスタ(PTC)に関するものであるが、本件発明1、2と対比すると、上記 (2-4-3) で示したとおりの相違点を有するものである。
甲第2号証は、2つの金属箔間に直接接触して挟まれているPTC導電性ポリマー素子を有する層状電気装置に関するものであるが、金属箔の表面に形成される(瘤状の)凹凸に関する「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する」という本件発明1、2の構成は何ら示されていない。
甲第3号証は、銅、ニッケル等の金属箔にプラスチックを直接接合する技術に関するものであって、金属箔に直接物理的に接触するPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。
甲第4号証は、結節を設けた金属箔電極を用いた層状PTC装置に関するものであるが、金属箔の表面に形成される(瘤状の)凹凸に関する「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する」という本件発明1、2の構成は何ら示されていない。
甲第5号証は、25Ω-cmより小さい比抵抗、高密度ポリエチレンの導電性ポリマーよりなるPTC素子と直接接続した2つの金属箔電極を備えた電気デバイスに関するものであるが、金属箔の表面に形成される(瘤状の)凹凸に関する「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する」という本件発明1、2の構成は何ら示されていない。 甲第6号証は、印刷配線用の金属箔の粗面化処理に関するものであり、金属箔に直接物理的に接触するPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。

本件発明1、2に係るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスは、金属箔(電極)とPTC要素間に良好な接着強度に加え良好な電気的導通特性が必要なものであり、単に金属箔と絶縁基板との接着強度を問題とするプリント回路とは対象が異なるものであるから、有機質正特性サーミスタ(PTC)に関する甲第1号証に、金属箔とプラスチックの接合に関する甲第3、6号証に記載されたものを適用することはできない。また、甲第2、4、5号証には本件発明1、2のミクロラフ表面の瘤状の凹凸の寸法については何ら示されていない。甲第1〜6号証に記載されたものを組み合わせても、PTC要素を含んでなる回路保護デバイスにおける金属箔電極の表面に形成される(瘤状の)凹凸に関する「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する」という本件発明1、2の構成は導出され得ない。また、該構成を当業者の技術常識、あるいは周知事項であるとする根拠も見当たらない。

したがって、本件発明1、2は、異議申立人ボーンズ,インコーポレイテッドが提出した甲第1〜6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)本件発明と異議申立人花井恭子の提出した甲各号証等に記載乃至開示された事項との対比・判断
甲第1号証は、取消しの理由で引用した刊行物1であり、本件発明1、2と同様有機質正特性サーミスタ(PTC)に関するものであるが、本件発明1、2と対比すると、上記(2-4-3)で示したとおりの相違点を有するものである。
甲第2号証は、異議申立人ボーンズ,インコーポレイテッドの提出した甲第6号証であり、印刷配線用の金属箔の粗面化処理に関するものであって、金属箔に直接物理的に接触するPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。
甲第3号証は、銅のシート又は箔の表面を処理して、樹脂質(プラスチック)基板に対する該シート又は箔の接着能力を改良するものであり、銅箔の表面にノジュラー(小節状)粉状銅層を電着により被覆するものであるが、金属箔に直接物理的に接触するPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。
甲第4号証は、異議申立人東原文和の提出した甲第1号証であり、複合金属箔に関するもので、金属箔の表面を粗面化して基体との接着性を向上するという点では本件発明1、2と共通するものの、該金属箔に直接物理的に接触するPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスに用いるものではない。甲第4号証には、合成樹脂面に金属箔を接合したプリント回路の具体例が挙げられているが、本件発明1、2に係るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスは、金属箔(電極)とPTC要素間に良好な接着強度に加え良好な電気的導通特性が必要なものであり、単に金属箔と絶縁基板との接着強度を問題とするプリント回路とは対象が異なるものである。
甲第5号証は、異議申立人東原文和の提出した参考資料1であり、プリント回路における銅箔と基板の接着に関するものであって、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。
甲第6号証は、電解法による銅箔の製造に関し、ノジュラー化した銅箔を高速で製造するものであるが、この銅箔を電極としてPTC要素を含んで成る回路保護デバイスに用いることは何ら示されていない。
甲第7号証は、印刷回路用に好適な表面処理を施した接着性のよい銅箔に関するものであるが、該銅箔に直接物理的に接触するPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスに用いることは何ら示されていない。
甲第8号証は、異議申立人東原文和の提出した参考資料2であり、プリント回路における銅箔と基板の接着に関するものであって、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。
甲第9号証には、単に、各種のPTC導電性ポリマー組成物が示されているに過ぎない。

公知文献1、2は、それぞれ異議申立人東原文和の提出した文献1、2(取消しの理由で引用した刊行物3)であり、プリント回路における銅箔と基板の接着に関するものであって、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。なお、公知文献2に記載されたものは、電解銅箔の接着性が不十分であることから亜塩酸ソーダ処理法によって該銅箔の表面を処理して形成された多孔質構造の酸化銅の層の厚さは3.5〜11ミクロンであることを意味すると理解できるものの、箔全体の瘤状の凹凸についてその突出高さが3.5〜11ミクロンであることを意味するものとはいえず、電着によって形成される瘤状の突出高さを意味するものではない。また、公知文献2において形成されるのは酸化銅の層であり、良好な電気的導通に関して酸化銅は不適切な材料であり、亜塩酸ソーダ処理法によって該銅箔の表面を処理した場合、プリント配線基板においては密着性の向上には役立つとしても、導電性ポリマー要素を用いる回路保護デバイスにおいては、酸化銅の表面層は絶縁層となり、デバイスの電気的導通を損ねるものであると解される(上記(2-4-4)を参照。)。
公知文献3は、単に、金属材料の接点における密着性と電気抵抗との関係が開示されているのみで、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関して何ら示されていない。
公知文献4は、電気ケーブルのシールドテープに関するもので、瘤状の突起を有する金属粗面化表面が開示されているが、金属箔に直接物理的に接触するPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスについては何ら示されていない。
公知文献5〜7は、単にPTC抵抗体について一般的な開示があるのみで、PTC要素を含んでなる回路保護デバイスにおける金属箔電極の表面に形成される(瘤状の)凹凸の寸法に関しては何ら示されていない。
公知文献8は、本件出願日後に公開されたものであるから、本件発明1、2に対し先行技術とはなり得ない。
公知文献9、10は、印刷回路用銅箔に関するもので、電解処理によって金属表面を粗面化することが開示されているが、PTC要素を含んで成る回路保護デバイスに関するものではない。
公知文献11、12は、単に各種のPTC抵抗材料が開示されているのみで、PTC要素を含んでなる回路保護デバイスにおける金属箔電極の表面に形成される(瘤状の)凹凸の寸法に関しては何ら示されていない。

本件発明1、2に係るPTC要素を含んで成る回路保護デバイスは、金属箔(電極)とPTC要素間に良好な接着強度に加え良好な電気的導通特性が必要なものであり、単に金属箔と絶縁基板との接着強度を問題とするプリント回路とは対象が異なるものであるから、有機質正特性サーミスタ(PTC)に関する甲第1号証に、金属箔とプラスチックの接合に関する甲第2〜5、7、8号証、及び公知文献1、2、9、10に記載されたものを適用することはできない。また、甲第6、9号証、及び公知文献3、4〜7、11〜12は、単に(ノジュラー状に)粗面化した銅箔、PTC抵抗体の材料等が個々に開示されているだけで本件発明1、2のミクロラフ表面の瘤状の凹凸の寸法については何ら示されていない。甲第1〜9号証、公知文献1〜12に記載されたものを組み合わせても、PTC要素を含んでなる回路保護デバイスにおける金属箔電極の表面に形成される(瘤状の)凹凸に関する「0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する」という本件発明1、2の構成は導出され得ない。また、該構成を当業者の技術常識、あるいは周知事項であるとする根拠も見当たらない。

したがって、本件発明1、2は、異議申立人花井恭子の提出した甲第1〜9号証、及び公知文献1〜12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

〔3-3〕特許法第36条第3項違反について
異議申立人花井恭子の主張する具体的理由は、特許査定時の請求項1における記載「(b) 0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの面に平行な少なくとも1つの次元を有する凹凸を本質的に有して成り」を満足する金属箔の粗面化状態は、当業者が容易に達成できるものとは考えられないというものである。
そこで、この主張について検討する。本件特許明細書には金属箔の粗面状態について次の記載がある。
(ア)「ミクロラフ」表面について、「(a) 0.1〜100ミクロンの距離だけ表面から突出し、(b)(i)500ミクロンを越えない、好ましくは100ミクロンを越えない、特に10ミクロンを越えない、また、(ii)好ましくは少なくとも0.03ミクロン、特に少なくとも0.1ミクロンである表面に平行な少なくとも1つの次元を有し、さらに(c)電着により形成される凹凸を有して成る表面を意味するものとして本明細書では使用している。凹凸は、電着により形成された形状、例えば、一般に表面から突出する球状の瘤のような形状である。」(特許掲載公報第3欄第34〜44行)
(イ)「ミクロラフ金属箔表面は電着により形成され、電解質にさらされる表面がミクロラフ表面になる。従って、電着箔(特に、電着銅およびニッケル箔)を本発明に用いることができる。一つの態様では、平滑表面に同一または異なる金属のミクロラフ層を電着する。要すれば、ミクロラフ表面は、化学的性質を変えるために処理することができる。例えば、電着金属箔は、適当な処理、例えば水安定性酸化物の被膜を与える処理、特に、電着銅箔の亜鉛-ニッケルまたはニッケル処理により不動態化する(即ち、不活性または化学的反応がほとんどないように変える)ことができる。このような処理は、例えば、金属が導電性ポリマー分解の触媒となるような場合に望ましい。」(特許掲載公報第4欄第4〜16行)
(ウ) 実施例1に関し、「金属箔は、サンプルに隣接する表面をニッケルおよび亜鉛で不動態化した電着銅箔であった。この箔は、エイツ・インダストリーズ(Yates Industries)からテックス(TEX)-1という商品名で市販されている。」(特許掲載公報第5欄第12〜16行)
(エ) 実施例3に関し、「2枚のポリマシートのサンプルを2枚の(1オンスの)電着銅箔(6×6インチ)(インターナショナル・ホイルズ(International Foils)製)間に積層した。」(特許掲載公報第6欄第16〜19行)

上記(ア)によると、特許請求の範囲に規定されたミクロラフ表面の凹凸の形状、およびその寸法関係が示されており、また、上記(イ)によると、このミクロラフ金属箔表面が電着により形成され、電解質にさらされる表面がミクロラフ表面になることが示されている。さらに、上記(ウ)、(エ)によると、本件発明の実施例のPTC導電性ポリマー組成物を有して成る回路保護デバイスにおける金属箔電極となる電着銅箔として市販されているものを用いる旨が記載されている。以上のことを勘案すると、本件発明1、2における金属箔電極のミクロラフ表面の凹凸の寸法関係つまり粗面状態は当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されていないとすることはできない。なお、本件発明1、2は、上記ミクロラフ表面の凹凸の寸法関係を限定したことのみに特徴を有しているものではなく、当該寸法関係については好ましい範囲を限定的に記載したものであって、実施例等に具体的な電着条件について記載がないことをもって直ちに記載不備があるとまではいえない。

したがって、本件明細書の記載に不備がある旨の異議申立人花井恭子の主張は採用することができない。

〔3-4〕むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1、2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
回路保護デバイス
(57)【特許請求の範囲】
1.(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a)層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、
(b)0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平行な少なくとも1つの次元を有する瘤状の凹凸を本質的に有して成り、
(c)電着により形成される
ミクロラフ表面を有しており、
導電性ポリマーは高密度ポリエチレンであり、
各電極が電着ニッケル箔である
ことを特徴とする回路保護デバイス。
2.(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a)層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、
(b)0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平行な少なくとも1つの次元を有する瘤状の凹凸を本質的に有して成り、
(c)電着により形成される
ミクロラフ表面を有しており、
導電性ポリマーは高密度ポリエチレンであり、
各電極はニッケルの被覆を上に電着させた銅箔である
ことを特徴とする回路保護デバイス。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、PTC導電性ポリマー組成物を有して成る回路保護デバイスに関する。
[従来の技術]
導電性ポリマーは、周知である。導電性ポリマーは、有機ポリマー中に分散させた、または有機ポリマーにより支持された粒状導電性充填剤を含んで成る。それらは、ヒーターおよび回路保護デバイスに使用でき、PTC(正温度係数)またはZTC(零温度係数)挙動として知られた挙動を示すことができる。
導電性ポリマー組成物およびデバイスに関する文献には、例えば、以下のようなものが挙げられる。アメリカ合衆国特許第2,952,761、2,978,665、3,243,753、3,351,882、3,571,777、3,757,086、3,793,716、3,823,217、3,858,144、3,861,029、3,950,604、4,017,715、4,072,848、4,085,286、4,117,312、4,177,376、4,177,446、4,188,276、4,237,441、4,242,573、4,246,468、4,250,400、4,252,692、4,255,698、4,271,350、4,272,471、4,304,987、4,309,596、4,309,597、4,314,230、4,314,231、4,315,237、4,317,027、4,318,881、4,327,351、4,330,704、4,334,351、4,352,083、4,361,799、4,388,607、4,398,084、4,413,301、4,425,397、4,426,339、4,426,633、4,427,877、4,435,639、4,429,216、4,442,139、4,459,473、4,481,498、4,476,450、4,502,929、4,514,620、4,517,449、4,534,889、および4,560,498号;クラソンおよびクーバット(KlasonおよびKubat),ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(J.Applied Polymer Science)19,813-815(1975);ナルキス(Narkis)ら,ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(Polymer Engineering and Science)18,649-653(1978);ヨーロッパ特許出願第38,713、38,714、38,718;74,281、92,406、119,807、133,748、134,145、144,187、157,640、158,410、175,550および176,284号。
[発明の構成]
導電性ポリマーと共に使用されてきた電極には、単線および撚線、金属箔ならびにエキスパンデッドメタルシートおよび穿孔金属シートが包含される。発明者らは、導電性ポリマーと直接物理的に、かつ電気的に接触するミクロラフ(microrough)表面を有する金属箔電極を使用することにより、向上した物理的および電気的性質が得られることを見出だした。「ミクロラフ」なる語は、(a)0.1〜100ミクロンの距離だけ表面から突出し、(b)(i)500ミクロンを越えない、好ましくは100ミクロンを越えない、特に10ミクロンを越えない、また、(ii)好ましくは少なくとも0.03ミクロン、特に少なくとも0.1ミクロンである表面に平行な少なくとも1つの次元を有し、さらに(c)電着により形成される凹凸を有して成る表面を意味するものとして本明細書では使用している。凹凸は、電着により形成された形状、例えば、一般に表面から突出する球状の瘤のような形状である。従って、1つの要旨において、本発明は、(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、各金属箔電極が、(a)層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、(b)0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、500ミクロンを越えない表面に平行な少なくとも1つの次元を有する凹凸を本質的に有して成るミクロラフ表面を有することを特徴とする回路保護デバイスを提供する。
ミクロラフ金属箔表面は電着により形成され、電解液にさらされる表面がミクロラフ表面になる。従って、電着箔(特に、電着銅およびニッケル箔)を本発明に用いることができる。一つの態様では、平滑表面に同一または異なる金属のミクロラフ層を電着する。要すれば、ミクロラフ表面は、化学的性質を変えるために処理することができる。例えば、電着金属箔は、適当な処理、例えば水安定性酸化物の被膜を与える処理、特に電着銅箔の亜鉛-ニッケルまたはニッケル処理により不動態化する(即ち、不活性にまたは化学的反応がほとんどないように変える)ことができる。このような処理は、例えば、金属が導電性ポリマーの分解の触媒となるような場合に望ましい。また、このような処理は、導電性ポリマーとの適当な酸-塩基相互作用を提供するために行うことができる。
電極上のミクロラフ表面の使用により、使用できる導電性ポリマーの範囲が増加する。例えば、従来の金属箔を使用する場合、金属箔に向上した付着性を提供する極性ポリマーまたは他のポリマー成分を導電性ポリマーが含む必要がしばしばあったが、その存在により所定の電気的性質が低下していた。そのような成分は、電着されたミクロラフ金属箔電極を使用する場合、必要ではない。従って、本発明は、特に、曲げ、膨張係数の違い、例えば軽油のような溶剤への露出、または熱的もしくは電気的衝撃の結果としての電極と導電性ポリマーの分離が問題であると考えられるような状況で、より広範囲のPTC導電性ポリマーを使用することを可能にする。適当な導電性ポリマーは、参考文献に記載されているものである。好ましい導電性ポリマーには、ポリオレフィン系のもの、特に高密度ポリエチレン、およびフルオロポリマー系のもの、特にポリビニリデンフルオリドが包含される。向上した付着性の利点には、箔積層物から非常に小さい部分の打ち抜きができること、および高電圧下にさらされた場合にでも有する実質的に向上した電気安定性が包含される。
本発明は、上述の特許および特許出願に記載されている層状の回路保護デバイスのいずれにでも使用でき、それには、特に25オーム以下、より特に1オーム以下の抵抗を有するデバイスが包含される。0.2インチ(5.1mm)以下、例えば0.15インチ以下であるような、また0.1インチ以下のような更に小さい少なくとも1つの層寸法を有する非常に小さい層状デバイスを、箔積層物の打ち抜きにより製造できる。
本発明を次の実施例により説明する。
実施例1
高密度ポリエチレン(マーレックス(Marlex)6003、フィリップス・ペトローリアム(Phillips Petroleum)製)6200g、カーボンブラック(スタテックス(Statex)G、コロンビアン・ケミカルズ(Columbian Chemicals)製)5310g、酸化チタン(ティピュア(TiPure)R101、デュポン(du Pont)製)7955gおよび酸化防止剤205gを混転し、バンバリー(Banbury)ミキサーで混合し、水浴中に溶融押出し、ペレットにした。乾燥後、ペレットを幅8.25インチ(21.0cm)、厚さ0.030インチ(0.076cm)のシートに押し出し、6インチ(15.3cm)平方のサンプルをシートから切り取った。
260℃の加熱プレスを使用して、圧力4000ポンド2分間、次いで圧力7000ポンド3分間で2枚の金属箔(6×6×0.0014インチ)間に各サンプルを積層した。金属箔は、サンプルに隣接する表面をニッケルおよび亜鉛で不動態化した電着銅箔であった。この箔は、エイツ・インダストリーズ(Yates Industries)からテックス(TEX)-1という商品名で市販されている。
直径が0.125インチ(0.318cm)のディスク形状デバイスをこの積層物から打ち抜いた。24AWGのニッケルメッキ鋼リード線を各デバイスの各金属箔に取り付けた。次いで、エポキシ樹脂によりデバイスを封入し、110℃3時間で硬化させた。
実施例2
実施例1に使用した手順により、マーレックス6003(8092g)、スタテックスG(8071g)および酸化防止剤276gをペレットにし、次いで、このペレットからディスク形状デバイスを製造した。
実施例3
ポリビニリデンフルオリド(KF1000、クレハ(Kureha)製)15701g、カーボンブラック(バルカン(Vulcan)XC-72、カボット(Cabot)製)3915g、炭酸カルシウム(オムヤ(Omya)BSH、オムヤ社製)618gおよびトリアリルイソシアヌレート199gを混合し、水浴中に溶融押出し、ペレットにした。
ペレットを押出成形して、幅11インチ(27.9cm)、厚さ0.020インチ(0.051cm)のシートにし、1.5MeV電子ビームを使用して20Mラドの線量で放射線照射した。6インチ(15.3cm)平方のサンプルをシートから切り取った。200℃で圧力1500ポンド4分間、圧力20000ポンド2分間、次いで、冷却して水冷プレスで圧力20000ポンドで、2枚のポリマーシートのサンプルを2枚の(1オンスの)電着銅箔(6×6インチ)(インターナショナル・ホイルズ(International Foils)製)間に積層した。得られたシートは、厚さ0.035インチ(0.089cm)であった。平らな0.005インチ(0.013cm)銅リード線をスラブから切り取ったサンプル(1インチ(2.54cm)×2インチ(5.08cm))にハンダ付けした。次いで、ヒーターをエポキシ樹脂に封入した。
 
訂正の要旨 〔訂正の要旨〕
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりのものである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の第1項及び第2項を削除する。
(2)訂正事項b
訂正前の特許請求の範囲の第3項を訂正後の特許請求の範囲の第1項とし、訂正前の特許請求の範囲の第3項が引用していた訂正前の特許請求の範囲の第1項及び第2項のそれぞれの構成要件であった
「(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a)層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、
(b)0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平行な少なくとも1つの次元を有する凹凸を本質的に有して成り、
(c)電着により形成される
ミクロラフ表面を有することを特徴とする回路保護デバイス」という事項、及び、「導電性ポリマーは高密度ポリエチレンである」という事項を訂正後の特許請求の範囲の第1項においても明記する。
(3)訂正事項c
上記訂正事項bにおける明記に際して、訂正前の特許請求の範囲の第1項における構成要件中の「凹凸」という記載を、「瘤状の凹凸」と訂正する。
(4)訂正事項d
訂正前の特許請求の範囲の第4項を訂正後の特許請求の範囲の第2項とし、訂正前の特許請求の範囲の第4項が引用していた訂正前の特許請求の範囲の第1項及び第2項のそれぞれの構成要件であった
「(i)25Ω以下の抵抗を有し、(ii)2つの金属箔電極ならびに、金属箔電極に直接物理的に接触し、かつPTC導電性ポリマーから成るPTC要素を含んで成る層状回路保護デバイスであって、
各金属箔電極が、
(a)層状導電性ポリマー要素と直接物理的に接触し、
(b)0.1〜100ミクロンの距離で表面から突出し、0.1〜10ミクロンの表面に平行な少なくとも1つの次元を有する凹凸を本質的に有して成り、
(c)電着により形成される
ミクロラフ表面を有することを特徴とする回路保護デバイス」という事項.及び、「導電性ポリマーは高密度ポリエチレンである」という事項を訂正後の特許請求の範囲の第2項においても明記する。
(5)訂正事項e
上記訂正事項dにおける明記に際して、訂正前の特許請求の範囲の第1項における構成要件中の「凹凸」という記載を、「瘤状の凹凸」と訂正する。
異議決定日 2002-06-12 
出願番号 特願昭61-245157
審決分類 P 1 651・ 531- YA (H01C)
P 1 651・ 121- YA (H01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平塚 義三  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 下野 和行
治田 義孝
登録日 1998-06-12 
登録番号 特許第2788968号(P2788968)
権利者 レイケム・コーポレイション
発明の名称 回路保護デバイス  
代理人 柴田 康夫  
代理人 鮫島 睦  
代理人 柴田 康夫  
代理人 下道 晶久  
代理人 西山 雅也  
代理人 神田 正義  
代理人 宮尾 明茂  
代理人 藤本 英介  
代理人 石田 敬  
代理人 青山 葆  
代理人 樋口 外治  
代理人 戸田 利雄  
代理人 青山 葆  
代理人 鮫島 睦  

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