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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1064272
異議申立番号 異議1998-70236  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-01-23 
確定日 2002-07-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2633091号「像投影方法、回路製造方法及び投影露光装置」の請求項1〜22に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2633091号の請求項1〜22に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
特許第2633091号(平成3年2月22日出願、平成9年4月25日設定登録)は、異議申立人井原好明及び株式会社ニコンにより特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成10年11月17日に訂正請求がなされ、さらに取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年7月9日に、上記訂正請求の取下げがなされるとともに新たに訂正請求がなされたものである。

[2]訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
(1-1)訂正事項a
請求項8を、「前記パターン照明段階は、前記微細パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項1の像投影方法。」と訂正する。

(1-2)訂正事項b
請求項12を、「前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの外接円が描ける非円形であり、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項9の回路製造方法。」と訂正する。

(1-3)訂正事項c
請求項14を、「前記パターン照明段階は、前記回路パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項9の回路製造方法。」と訂正する。

(1-4)訂正事項d
請求項15を、「レチクルのパターンを投影する投影光学系と、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り、前記レチクルのパターンの縦と横の各パターンの方向に延びる互いに直交する一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するレチクル照明光学系とを有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たすことを特徴とする投影露光装置。」と訂正する。

(1-5)訂正事項e
請求項18を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「前記レチクル照明系は、前記レチクルの回路パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項15の投影露光装置。」と訂正する。

(1-6)訂正事項f
特許明細書の段落【0014】を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「又、本発明の投影露光装置は、レチクルのパターンを投影する投影光学系と、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り、前記レチクルのパターンの縦と横の各パターンの方向に延びる互いに直交する一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するレチクル照明光学系とを有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たすことを特徴としている。本発明においては.前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置である。又、本発明のある形態は、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記一対の軸の部分の光強度がゼロである。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び拡張・変更の存否
(2-1)訂正事項a、c、eについて
訂正事項a、c、eは、請求項8、14、18の構成を、四角錐プリズムによって有効光源の4つの部分に対応する4つの光束を得ることに限定しようとするものであって、上記訂正事項に関する記載は、特許明細書の【0047】〜【0051】及び図5、あるいは【0080】及び図10等に、出願当初から記載されている。
したがって、この訂正は特許請求の範囲の減縮に該当する。

(2-2)訂正事項bについて
訂正事項bは、請求項12で引用されている請求項9との整合を図るためになされたものてあって、上記請求項9の発明を、「回路製造方法」と訂正したものである。
したがって、この訂正は誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明に該当する。

(2-3)訂正事項dについて
訂正事項dは、請求項15におけるレチクルパターンと有効光源の所定の関係が、「前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り、前記レチクルのパターンの縦と横の各パターンの方向に延びる互いに直交する一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源」であることに限定しようとするものであって、上記訂正事項に関する記載は、特許明細書の【0032】〜【0033】に記載されている。
したがって、この訂正は特許請求の範囲の減縮に該当する。

(2-4)訂正事項fについて
特許明細書の段落【0014】の訂正は、請求項15の訂正との整合を図るためになされたものであって、上記訂正事項に関する記載は、特許明細書の【0032】〜【0033】に記載されている。
したがって、この訂正は明りょうでない記載の釈明に該当する。

そして、上記訂正事項については、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)独立特許要件
訂正明細書の請求項1〜22に係る発明(以下、「本件発明1〜22」という。)は、下記の理由[3]により、特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。
また、他に本件発明1〜22について特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

[3]特許異議の申立てについて
(1)異議申立ての理由の概要
(1-1)異議申立人井原好明は、証拠として、
甲第1号証:特開昭61-91662号公報
甲第2号証:”Proximity effects and influences of nonuniform illumination in projection lithography”,SPIE Vol.334,pp.37-43(1982)
甲第3号証:”A critical examination of submicron optical lithography using simulated projection Images”,J.Vac.Sic.Technol.B,Vol.1,No.4,pp.1190-1195,Oct-Dec.1983
甲第4号証:特願平2-309458号(特開平4-180612号公報参照)
を提出して、本件特許の請求項1〜4、請求項6〜12、請求項14〜22に係る発明は甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、同請求項1、2、請求項5〜11、請求項13〜16、請求項18〜22に係る発明は甲第1、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、それぞれ特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、同請求項1、9、15、19、20に係る発明は甲第4号証に記載された発明と同一であるから、同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第113条の規定に該当し、取り消すべきものである旨主張している。

(1-2)異議申立人株式会社ニコンは、証拠として、
甲第1号証:特願平2-408094号(特開平4-225358号公報参照)
甲第2号証:特願平2-408093号(特開平4-225357号公報参照)
甲第3号証:特願平2-408095号(特開平4-225359号公報参照)
を提出して、本件特許の請求項1〜22に係る発明は甲第1〜3号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第113条の規定に該当し、取り消すべきものである旨主張している。

(2)本件発明
本件発明1〜22は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1〜22に記載された次のとおりのものである(なお、請求項1、9、15については(ア)〜(ク)に分節した。)。

「【請求項1】(ア)縦のパターンと横のパターンを備える微細パターンの像を投影光学系により投影する方法において、(イ)前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記縦と横の方向へ延びる一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するパターン照明段階を有し、(ウ)前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たすことを特徴とする像投影方法。
【請求項2】前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置であることを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項3】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの円形で、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項4】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの外接円が描ける非円形であり、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項5】前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記縦と横の方向へ延びる一対の軸の部分の光強度がゼロであることを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項6】前記微細パターンは回路パターンであること特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項7】前記微細パターンは半導体の集積回路のパターンであることを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項8】前記パターン照明段階は、前記微細パターンを照明する光としてのi線、g線、又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項9】(エ)投影光学系により回路パターンを基板に投影して転写する段階を有する回路製造方法において、(オ)前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記回路パターンの縦と横の各パターンの方向へ延びる一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するパターン照明段階を有し、(カ)前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たすことを特徴とする回路製造方法。
【請求項10】前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置であることを特徴とする請求項8の回路製造方法。
【請求項11】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの円形で、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項8の回路製造方法。
【請求項12】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの外接円が描ける非円形であり、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項9の回路製造方法。
【請求項13】前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記縦と横の方向へ延びる一対の軸の部分の光強度がゼロであることを特徴とする請求項9の回路製造方法。
【請求項14】前記パターン照明段階は、前記回路パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項9の回路製造方法。
【請求項15】(キ)レチクルのパターンを投影する投影光学系と、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り、前記レチクルのパターンの縦と横の各パターンの方向に延びる互いに直交する一対の軸の部分より他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するレチクル照明光学系とを有し、(ク)前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たすことを特徴とする投影露光装置。
【請求項16】前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置であることを特徴とする請求項15の投影露光装置。
【請求項17】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの円形で、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項15の投影露光装置。
【請求項18】前記レチクル照明系は、前記レチクルの回路パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項15の投影露光装置。
【請求項19】前記照明光学系は前記pの値を変える変更手段を有することを特徴とする請求項15又は17の投影露光装置。
【請求項20】前記照明光学系は前記p、qの夫々の値を変える変更手段を有することを特徴とする請求項17の投影露光装置。
【請求項21】前記変更手段は開口形状が可変な絞りを有することを特徴とする請求項19又は20の投影露光装置。
【請求項22】前記変更手段は開口形状が異なる複数の絞りを有することを特徴とする請求項19又は20の投影露光装置。」

(3)甲各号証の記載事項
(3-1)異議申立人井原好明の提出した甲第1〜4号証について

<甲第1号証>
甲第1号証の特開昭61-91662号公報には、半導体集積回路の製造に関する発明が開示され、さらに、「レチクル8を照射した光は投影光学系14を通り、レチクル8上の微細パターン上の像がウエハ15上のレジストに投影露光転写される」(496頁右下欄5〜7行)と記載され、図6には、レチクル8を投影する投影光学系14が図示されている。

<甲第2号証>
甲第2号証の「SPIE Vol.334,pp.37-43(1982)」には、集積回路における光リトグラフに関する発明が開示され、さらに、「集光開口部照明(condenser aperture i11umination)の強度分布」(41頁図13)が図示され、4つのガウス分布が描かれている。なお、「condenser aperture i11umination」とは、一般的にレクチルからみた光源のことである。また、「4つのガウス分布を持った照明と通常の均一な照明についてのコヒーレンスとコントラストの関係」(41頁図14)が図示され、コヒーレンスが大きい領域で、4つのガウス分布を持った照明が優れたコントラストを持っていることが示されている。ここで、コヒーレンスとは空間的なコヒーレンスであり、レクチルからみた光源の大きさを示すものである。
また、図13、14の説明として、「ガウス分布光源のコヒーレンスの関数として画像コントラストのグラフが、一様な光源の同じグラフと共に、図14に示されている。この例では、ガウス分布のピークが正規化半径0.35の円の上にあり、半値半幅が0.25である。」が記載されている(41頁右欄8〜13行)。

<甲第3号証>
甲第3号証の「J.Vac.Sic.Technol.B、Vol.1,No.4,pp.1190-1195,Oct-Dec.1983」には、サブミクロン領域の多層レジストシステムのためのリトグラフに関する発明が開示され、さらに、十字型障壁によって4分割された光源と通常のディスク光源の焦点深度の比較が図示され(1193頁図7)、焦点深度は焦点の位置の許容範囲を示しているので、中心からのずれに対応してその半分の値を縦軸としており、図7から明らかなように、4分割された光源を用いた場合の方が焦点深度は深いことが示されている。
また、図7の説明として、「格子のE-Dwindowの光源形状の効果。文献18に示された照明システムの光源形状に対応する図が挿入されている。ここでは、円形光源(σ=0.7)と4分割された光源(同一径)についてE-Dwindowの計算結果を比較した。十字型障壁は、径の15%の幅を持っている。」が記載されている(図7下欄)。

<甲第4号証>
甲第4号証の特開平4-180612号公報には、半導体回路パターンの転写に利用される投影露光装置に関する発明が第4〜9図とともに開示され、さらに、「第4図ではレチクルパターン28がx,y2方向に周期構造を持っている場合について示している。回折格子状パターン13b1,13b3はy方向に周期構造を持つレチクルバターン28に対応するものであり、回折格子状パターン13b2,13b4(「13b3」は誤記。)はx方向に周期構造を持つレチクルパターン28に対応するものである。」(71頁右下欄12〜18行)、「第7図は第6図のごとき市松格子状パターン13cに対する空間フィルター16cを示したものであり、斜線部は遮光部を表し、白丸は光透過部を表す。光透過部161aと161b,161dと161cの間隔は第6図に示す回折格子状パターン13cのx方向のピッチによって決まり、光透過部161aと161d、161bと161cの間隔は第6図に示す回折格子状パターン13cのy方向のピッチによって決まる。」(72頁右上欄8〜17行)がそれぞれ記載されている。

(3-2)異議申立人株式会社ニコンの提出した証拠

<甲第1号証>
甲第1号証の特願平2-408094号(特開平4-225358号公報参照)には、半導体等の回路パターン又は液晶表示素子のパターン等の転写に使用される投影露光装置に関する発明が開示され、さらに以下の事項が記載されている。

(1)「位相シフトレチクルについては、その製造工程が複雑になる分コストも高く、また検査及び修正方法も未だ確立されていないなど、多くの問題が残されており、・・・本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、通常のレチクルを使用しても、高解像度・・・が得られる投影型露光装置の実現を目的とする。」(段落【0010】)

(2)特許請求の範囲に記載された請求項1、2を要約すると 次のとおりである。
光源からの照明光を周期性のパターン部分を有するマスクに照射する照明光学系と、マスクのパターンの像を感光基板に結像投影する投影光学系とを備えた投影型露光装置において、照明光学系の光路中で、照明光を複数の光束に分割し、マスクのパターンのフーリエ変換相当面もしくはその共役面位置近傍に、互いに分離した4つの光量分布を作成する光束分割部材と、マスクのパターンから発生する回折光成分が投影光学系の瞳面で光軸からほぼ等距離に分布するように、マスク上のパターンの微細度に応じた角度で、4つの光量分布の夫々の重心を投影光学系の光軸に対して対称な位置に設定する位置調整部材とを備えた露光装置。

(3)図4について、「照明光L41bは両側テレセントリックな投影光学系15の光軸AXに対して角度ψだけ傾いてレチクルパターン14に入射するので、0次回折光成分DOもまた投影光学系の光軸AXに対して角度ψだけ傾いた方向に進行する。」(段落【0013】)

(4)「ウエハ17上には0次回折光成分D0と-1次回折光成分Dmの2光束による干渉縞が生じる。この干渉縞はレチクルパターン17の像であり、・・・ウエハ17上に塗布されたレジストにレチクルパターン14の像をパターニングすることが可能となる。
このときの解像限界は、
sin(θm-ψ)=NAR(4)
となるときであり、従って、NAR+sinψ=λ/P
P=λ/(NAR+sinψ)(5)
が転写可能な最小パターンのレチクル側でのピッチである。
一例として今sinψを0.5×NAR程度に定めるとすれば、転写可能なレチクル上の最小ピッチは、
P=λ/(NAR+0.5×NAR)=2λ/3NAR(6)
となる。」(段落【0016】〜段落【0018】)

(5)甲第1号証の段落【0029】〜段落【0030】、及び図2、3には、レチクルパターン14のフーリエ変換相当面9近傍に光軸AXから偏心した位置に配置された4つのファイバー射出端7a、7b、7c、7dが、可動部材8により可動であることが記載されている。

(6)甲第1号証の段落【0031】、及び第6図には、射出面がレチクルパターン14のフーリエ変換面9と一致しており、さらに、レンズ12の射出面側主点から射出面までの距離と、レンズ12のレチクル側主点からレチクルパターン14までの距離は共にfであるとすることが記載されている。

(7)図7、8(A)について、「線分La、Lbと光軸AXからのX方向(ピッチ方向)の距離αは、レチクルパターン14aのピッチP等により決定され、ピッチや線分が細かければ、距離αを大きくとり、ピッチや線分が大きければ、間隔αは小さくすると良い。距離αは、λを露光波長としたとき、α=f・(1/2)・(λ/P)に等しい。この距離αをf・sinψと表わせれば、sinψ=λ/2Pであり、これは作用の項で述べた数値と一致している。
・・・射出部7bについても同様であり、X方向の線分La上、又は線分Lb上の任意の位置に設定される。また、照明光量の重心を光軸と一致させる為、射出部7a、7bを光軸AXを挟んで対称に配置するのが望ましい。」(段落【0032】〜段落【0033】)

(8)図9、10(A)、(B)について、「図9は、レチクルパクーン14がいわゆる孤立スペースパターン14bである場合であり、かつ、パターンのX方向(横方向)ピッチがPx、Y方向(縦方向)ピッチがPyとなっている。図10(A)、(B)は射出部の位置関係を表す図であり、・・・X方向の線分(La、Lb)上、Y方向の線分(Le、Lf)上での射出部の配置は図8(A)の場合と同様に定めら、距離αはX方向のピッチPxにより定まり、距離β=f・λ/2PyはY方向のピッチPyにより定まる。尚、各射出部は線分Lc、Ld上に配置されなくともよい。また距離αと距離βは必ずしも一致する必要はない。ただしこのとき、同図中に示した距離α、βはα=f・λ/2Px、βf・λ/2Pyの関係を満たしている。
ここで、図9に示すようなパターンに対する複数の射出部の中心の最適位置は、図10(B)に示すようにフーリエ変換面9a中の点Lα、Lβ、Lγ、Lεの4点である。また、2次元に方向性を持つパターンは、図9に示したパターン14bのみでなく、1方向のラインアンドスペースと、それに交差する方向のラインアンドスペースを別々に含むレチクルパターンであってもよい。
また、図10(B)に示された射出部7a、7b、7c、7dの配置は、図7(「図6」は誤記。)に示す様な1次元の方向性を持つパターンに対して行なわれてもよい。」(段落【0034】〜段落【0036】)

(9)「各射出部の開口部の径は、いわゆるσ値(照明光学系の開口数と投影光学系の開口数の比)が、1光束あたり0.1〜0.3程度となるようにすると良い。σ値が0.1以下であると像の忠実度が低下し、0.3以上であると焦点深度の増大効果が少なくなる。」(段落【0042】)

(10)「以上の実施例に於て、光源は水銀ランプ1を用いて説明したが、他の輝線ランプやレーザー(エキシマ等)、あるいは連続スペクトルの光源であっても良い」(段落【0043】)

(11)「本発明によれば、通常のレチクルを使用しながら、従来よりも高解像度、大焦点深度の投影型露光装置を実現することが可能となる。しかも本発明によれば、別のパターンが形成されているレチクルに交換された場合でも、駆動系を有しているためレチクルパターンのフーリエ変換面での光量分布をレチクルのパターンの微細度に応じた任意の位置に配置することが可能となり、スループットを低下させることがない。」(段落【0044】)

<甲第2、3号証>
甲第2号証の特願平2-408093号(特開平4-225357号参照)、及び甲第3号証の特願平2-408095号(特開平4-225359号参照)は、それぞれ甲第1号証と同日に同一人により出願されたものであって、この甲第2、3号証には、甲第1号証と同様に、半導体集積素子等の回路パターン又は液晶素子のパターンの転写に使用される投影型露光装置に関する発明がそれぞれ記載され、その記載事項は、図2〜図7に記載されている光ファイバー束7または空間フィルター12等をフライアイレンズ11の光源側またはレチクル側に配置する構造に関する記載事項の他は、甲第1号証に記載された記載事項と同様のものであるから、その具体的な記載事項については省略する。

(4)対比・判断
(4-1)本件発明1〜22と異議申立人井原好明の提出した甲第1〜3号証との対比・判断

<本件発明1について>
甲第1号証に記載された、「レチクル8を照射した光は投影光学系14を通り、レチクル8上の微細パターン上の像がウエハ15のレジストに投影露光転写される」は、本件発明1の構成(ア)のうち、「微細パターンの像を投影光学系により投影する方法において、」に相当する。
しかしながら、甲第1号証に記載された半導体集積回路における「微細パターン」として、縦のパターンと横のパターンを備えたものは本件出願前周知の事項であるとしても、本件発明1の構成(ウ)の、「有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たす」点については、甲第1〜3号証には何も記載されていないし示唆もされていない。しかも、上記の条件を満たすことが本件出願前周知の事項であるとも認められない。
そして、本件発明1は、上記の点により、光量が少なくなるなどの弊害が生じない状態で、縦横パターンの双方をいずれか一方に偏することなく、良好なコントラストで解像するという特有の作用効果を生ずるものである。
したがって、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明2〜8について>
本件発明2〜8は、それぞれ本件発明1を引用して、さらに構成を限定したものであるから、本件発明1が甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明2〜8についても、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明9について>
本件発明9の構成(カ)は、本件発明1の構成(ウ)と同一であるから、上記<本件発明1について>の構成(ウ)において説示したとおり、本件発明9は、上記構成(エ)、(オ)について検討するまでもなく、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明10〜14について>
本件発明10、11は、それぞれ本件発明8、すなわち本件発明1を引用して、さらに構成を限定したものであるから、本件発明1が甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明10、11についても、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明12〜14は、それぞれ本件発明9を引用して、さらに構成を限定したものであるから、本件発明9が甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明12〜14についても、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明15について>
本件発明15の構成(ク)は、本件発明1の構成(ウ)と同一であるから、上記<本件発明1について>の構成(ウ)において説示したとおり、本件発明15は、上記構成(キ)について検討するまでもなく、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明16〜22について>
本件発明16〜18はそれぞれ本件発明15を引用し、本件発明19は本件発明15または17を引用し、本件発明20は本件発明17、すなわち本件発明15を引用し、本件発明21、22は本件発明19または20、すなわち本件発明15を引用して、さらに構成を限定したものであるから、本件発明15が甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明16〜22についても、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-2)本件発明1、9、15、19、20と異議申立人井原好明の提出した甲第4号証との対比・判断

<本件発明1について>
甲第4号証の第7図は、第6図の回折格子状パターン13cに対する空間フィルター16cを示しており、光透過部161aと161b、161dと161cの間隔が、回折格子状パターン13cのx方向のピッチによって決まり、光透過部161aと161d、161bと161cの間隔が、回折格子状パターン13cのy方向のピッチによって決まることが記載されている(71頁右下欄12〜18行、72頁右上欄8〜17行参照)から、回折格子パターン13cのxy方向のピッチが等間隔である場合には、光透過部161a、161b、161c、161dのxy方向の間隔が等間隔になることは示唆されている。
しかしながら、本件発明1の構成(ウ)の「瞳の半径を1とした時、有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たす」点については、甲第4号証には何も記載されていないし、示唆もされてない。しかも、上記の条件を満たすことが本件出願前周知の事項であるとも認められない。
そして、本件発明1は、上記の点により、光量が少なくなるなどの弊害が生じない状態で、縦横パターンの双方をいずれか一方に偏することなく、良好なコントラストで解像するという特有の作用効果を生ずるものである。
したがって、本件発明1は、本件発明1の構成(ア)、(イ)については検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

<本件発明9について>
本件発明9の構成(カ)は、本件発明1の構成(ウ)と同一であるから、上記<本件発明1について>において説示したとおり、本件発明9は、上記構成(エ)、(オ)について検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

<本件発明15について>
本件発明15の構成(ク)は、本件発明1の構成(ウ)と同一であるから、上記<本件発明1について>において説示したとおり、本件発明15は、上記構成(キ)について検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

<本件発明19、20について>
本件発明19、20は、それぞれ本件発明15を引用して、さらに構成を限定したものであるから、本件発明15が甲第4号証に記載された発明と同一であるとすることができない以上、本件発明19、20についても、甲第4号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

(4-3)本件発明1〜22と異議申立人株式会社ニコンの提出した甲第1号証に記載された発明との対比・判断

<本件発明1について>
本件発明1の構成(ア)について
甲第1号証の段落【0034】〜【0036】、及び図4、9には、2次元(X、Y)に方向性を持つ回路パターンを投影光学系15により投影する方法が記載されているものと認められ、甲第1号証の上記記載は、本件発明1の構成(ア)の「縦のパターンと横のパターンを備える微細パターンの像を投影光学系により投影する方法」と同一である。

本件発明1の構成(イ)について
甲第1号証の段落【0034】〜【0036】、及び図9、10(B)には、図9に示すレチクルパターンに対する複数の射出部の中心の最適位置は、図10(B)に記載されたフーリエ変換面中の光軸から偏心した位置に配置された4つのファイバー射出端であることが示されているから、甲第1号証には、フーリエ変換面9aの中心部分及び中心を通るXY軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい光強度分布を与える有効光源を、フーリエ変換面9aに形成するファイバー射出端7a、7b、7c、7dが記載されているものと認められ、本件発明1の構成(イ)の「投影光学系の瞳の中心部分及び瞳の中心を通り縦と横の方向へ延びる一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を瞳に形成するパターン照明段階を有」することと同一である。

本件発明1の構成(ウ)について
甲第1号証の段落【0034】〜【0036】、及び図9、10(B)の記載を参照すると、図10(B)には、「縦、横パターンの方向へ延びる一対の軸をXY座標のX軸とY軸、投影光学系の瞳の中心を前記XY座標の原点とした時、前記瞳に形成される有効光源が、各々の中心位置の座標が(α,β)、(-α,β)、(-α,-β)、(α,-β)である4つの部分を有する構成」が開示されているものと認められ、本件発明1の構成(ウ)の「一対の軸をxy座標のx軸とy軸、瞳の中心を前記xy座標の原点、瞳の半径を1とした時、有効光源が、各々の中心位置の座標が4つの部分を有する像投影方法」と一致する。
しかしながら、両者は以下の点で相違する。

(1)有効光源が有する4つの部分について、本件発明1では、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)であるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、各々の中心位置の座標が(α,β)、(-α,β)、(-α,-β)、(α,-β)である点。
(2)本件発明1では、0.25<p<0.6の条件を満たすのに対し、甲第1号証に記載された発明では、そのような条件が不明である点。

そこで、上記相違点(1)、(2)について、以下検討する。

相違点(1)について
甲第1号証の図10(A)、(B)は射出部の位置関係を表す図であり、図10(A)について、「距離αと距離βは必ずしも一致する必要はない。」(段落【0034】)と記載されていることからみて、図10(A)と同様の射出部の位置関係を表す図10(B)についても、距離αと距離βとの関係は、図10(A)と同じものであると解するのが相当であるから、距離αと距離βは一致するものと認められる。
してみると、本件発明1の相違点(1)の構成については、甲第1号証に記載されたものと同一である。

相違点(2)について
甲第1号証の実施例として、射出部の位置決定の一具体例である図8(A),(B)について、「距離αは、λを露出波長としたときα=f・(1/2)・(λ/P)に等しい。この距離αをf・sinψと表せれば、sinψ=λ/2Pであり、これは作用の項で述べた数値と一致している。」(段落【0032】)と記載されているものの、この記載は、単に距離αをf・sinψと表せるという意味にすぎない。
さらに、【作用】の項には、ウエハ17上に塗布されたレジストにレチクルパターン14の像をパターニングする際の解像限界について、「一例として今sinψを0.5×NAR程度に定めるとすれば、転写可能なレチクル上の最小ピッチは、P=λ/(NAR+0.5×NAR)=2λ/3NAR(6)となる。」(段落【0018】)と記載されているものの、この記載は、像投影における「斜め入射法」の一般原理について、解像限界を説明するための一例として記載したものであって、単なる数値例にすぎない。
そうすると、これらは、それぞれ別の技術的事項を説明するために用いられているものであり、このような記載を合わせてみても、解像限界を説明するために一例として用いられているにすぎない「0.5×NAR 」という数値例を、実施例の説明で、単に距離αをf・sinψで表せるというだけの「sinψ」に適用する必然性はないし、そのようなことには困難性がある。
また、「0.5×NAR 」という数値例は、方位角0度のとき1次回折光の回折角θが最大になることからみて、方位角0度のもとで、一例として照明光をsinψ=0.5×NAR だけ傾けてレチクルに入射させ、レチクルのパターンを結像したときの解像限界を説明したものにすぎない。
このことは、方位角が0度となるX軸上に射出部を配置した場合に、sinψを0.5×NAR としたときの解像可能な最小ピッチは、【作用】の項の「2λ/3NAR」との記載から明らかなように、2λ/3NAR =0.67λ/3NAR であるのに対し、X軸上から離れた方位角が45度になる位置に射出部を配置した場合には、0.77λ/NAR となることからも明らかである。
してみると、甲第1号証に記載された、図10(B)の実施例に関する記載(段落【0035】〜【0036】)、【作用】の項の「一例として今sinψを0.5×NAR程度に定めるとすると」との記載、及び実施例の「距離αをf・sinψと表せれば」との記載からみて、本件発明1の相違点(2)の構成については、甲第1号証に記載されたものと同一であるとすることはできない。

したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

<本件発明2〜8、10、11について>
本件発明2〜8、10、11は、それぞれ本件発明1を引用して、さらに構成を限定したものであるから、本件発明1が甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることができない以上、本件発明2〜8、10、11についても、甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

<本件発明9について>
本件発明9の構成(カ)は、本件発明1の構成(ウ)と同一であるから、上記構成(ウ)において説示したとおり、本件発明9は、上記構成(エ)、(オ)について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

<本件発明12〜14について>
本件発明12〜14は、それぞれ本件発明9を引用して、さらに構成を限定したものであるから、本件発明9が甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることができない以上、本件発明12〜14についても、甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

<本件発明15について>
本件発明15の構成(ク)は、本件発明1の構成(ウ)と同じ構成であるから、上記構成(ウ)において説示したとおり、本件発明15は、上記構成(キ)について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

<本件発明16〜22について>
本件発明16〜22は、それぞれ本件発明15を引用して、さらに構成を限定したものであるから、本件発明15が甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることができない以上、本件発明16〜22についても、甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることはできない。

(4-4)本件発明1〜22と異議申立人株式会社ニコンの提出した甲第2、3号証に記載された発明との対比・判断
甲第2、3号証にそれぞれ記載された記載事項は、上記甲第1号証に記載された記載事項と同様のものであって、上記(4-3)において説示したとおり、本件発明1〜22は甲第1号証に記載された発明と同一とすることができない以上、本件発明1〜22は、甲第2、3号証にそれぞれ記載された発明と同一であるとすることはできない。

[4]むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜22の特許については、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜22の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1〜22の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
像投影方法、回路製造方法及び投影露光装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】縦のパターンと横のパターンを備える微細パターンの像を投影光学系により投影する方法において、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記縦と横の方向へ延びる一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するパターン照明段階を有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6 の条件を満たすことを特徴とする像投影方法。
【請求項2】前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置であることを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項3】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの円形で、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項4】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの外接円が描ける非円形であり、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項5】前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記縦と横の方向へ延びる一対の軸の部分の光強度がゼロであることを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項6】前記微細パターンは回路パターンであること特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項7】前記微細パターンは半導体の集積回路のパターンであることを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項8】前記パターン照明段階は、前記微細パターンを照明する光としてのi線、g線、又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項1の像投影方法。
【請求項9】投影光学系により回路パターンを基板に投影して転写する段階を有する回路製造方法において、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記回路パターンの縦と横の各パターンの方向へ延びる一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するパターン照明段階を有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6 の条件を満たすことを特徴とする回路製造方法。
【請求項10】前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置であることを特徴とする請求項8の回路製造方法。
【請求項11】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの円形で、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項8の回路製造方法。
【請求項12】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの外接円が描ける非円形であり、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項9の回路製造方法。
【請求項13】前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記縦と横の方向へ延びる一対の軸の部分の光強度がゼロであることを特徴とする請求項9の回路製造方法。
【請求項14】前記パターン照明段階は、前記回路パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項9の回路製造方法。
【請求項15】レチクルのパターンを投影する投影光学系と、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り、前記レチクルのパターンの縦と横の各パターンの方向に延びる互いに直交する一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するレチクル照明光学系とを有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6 の条件を満たすことを特徴とする投影露光装置。
【請求項16】前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置であることを特徴とする請求項15の投影露光装置。
【請求項17】前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの円形で、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項15の投影露光装置。
【請求項18】前記レチクル照明系は、前記レチクルの回路パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項15の投影露光装置。
【請求項19】前記照明光学系は前記pの値を変える変更手段を有することを特徴とする請求項15又は17の投影露光装置。
【請求項20】前記照明光学系は前記p、qの夫々の値を変える変更手段を有することを特徴とする請求項17の投影露光装置。
【請求項21】前記変更手段は開口形状が可変な絞りを有することを特徴とする請求項19又は20の投影露光装置。
【請求項22】前記変更手段は開口形状が異なる複数の絞りを有することを特徴とする請求項19又は20の投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は像投影方法、回路製造方法及び投影露光装置に関し、特に、0.5μm以下の線幅の回路パターンをウエハ-に形成する際に好適な、新しい像投影方法、回路製造方法及び投影露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの高集積化は益々加速度を増しており、それに伴って微細加工技術の進展も著しいものがある。特にその中心をなす光加工技術は1MDRAMを境にサブミクロンの領域に踏み込んでいる。そして、光加工用装置の代表的なものが所謂ステッパ-と呼ばれる縮小投影露光装置であり、この装置の解像力の向上が半導体デバイスの将来を担っていると言っても過言ではない。
【0003】
従来、この装置の解像力を向上させる為に用いられてきた手法は、主として光学系(縮小投影レンズ系)のNAを大きくしていく手法であった。しかしながら光学系の焦点深度はNAの2乗に反比例する為、NAを大きくすると焦点深度が小さくなるといった問題が生じる。従って、最近は、露光波長をg線からi線或は波長300nm以下のエシマレ-ザ-光に変えようという試みが行なわれている。これは、光学系の焦点深度と解像力が波長に反比例して改善されるという効果を狙ったものである。
【0004】
一方、露光波長の短波長化の流れの他に解像力を向上させる手段として登場してきたのが位相シフトマスクを用いる方法である。この方法は、マスクの光透過部の一部分に他の部分に対して180度の位相シフトを与える薄膜を形成するやり方である。ステッパ-の解像力RPは、RP=k1 λ/NAなる式で表わすことができ、通常のステッパ-は、k1 ファクタ-の値が0.7〜0.8である。ところが、この位相シフトマスクを使用する方法であれば、理論的には、k1ファクタ-の値を0.35位にできる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この位相シフトマスクを実現させるためには未だ多くの問題点が残っている。現状で問題となっているのは以下の諸点である。
【0006】
1.位相シフト膜を形成する薄膜形成技術が未確立。
【0007】
2.位相シフト膜付回路パタ-ン設計のCADの開発が未確立。
【0008】
3.位相シフト膜を付与できないパタ-ンの存在。
【0009】
4.位相シフト膜の検査、修正技術が未確立
このように実際に位相シフトマスクを実現するためには様々な障害があり、実現までに多大な時間が掛かることが予想される。
【0010】
従って、未解決の問題が多い位相シフトマスク技術とは異なる、高い解像力が得られる微細パターン像の投影方法を見つける必要があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成する為に、回路パタ-ンの微細化に伴い回路パタ-ンが主に縦横パタ-ンにより構成されることに着目し、縮小投影レンズ系等の像投影用光学系の瞳面に形成する有効光源の形態を工夫したものである。従って、本発明に基づいて半導体デバイスを製造する場合には、ステッパ-本体側の改良により位相シフトマスクを使用する場合と同等の解像力を達成することができる。
【0012】
本発明の像投影方法は、縦のパターンと横のパターンを備える微細パターンの像を投影光学系により投影する方法において、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記縦と横の方向へ延びる一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するパターン照明段階を有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6 の条件を満たすことを特徴としている。
【0013】
又、本発明の回路製造方法は、投影光学系により回路パターンを基板に投影して転写する段階を有する回路製造方法において、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り前記回路パターンの縦と横の各パターンの方向へ延びる一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するパターン照明段階を有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6 の条件を満たすことを特徴としている。
【0014】
又、本発明の投影露光装置は、レチクルのパターンを投影する投影光学系と、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り、前記レチクルのパターンの縦と横の各パターンの方向に延びる互いに直交する一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するレチクル照明光学系とを有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6 の条件を満たすことを特徴としている。本発明においては、前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置である。又、本発明のある形態は、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記一対の軸の部分の光強度がゼロである。
【0015】
【実施例】
本発明の思想を理解し易くする為に、先ず、微細パタ-ンの結像に関して詳しく説明を行う。
【0016】
第1図は高周波数(ピッチ2dが数μm程度)を持つ微細パターン6の像を投影レンズ系7により投影する様子を示す。その表面に垂直な方向から照明された微細パターン6は、それに入射する光束を回折する。この時生じる回折光は、入射光束の進行方向と同じ方向へ向けられる0次回折光、入射光束とは異なる方向へ向けられる例えば±1次以上の高次回折光である。これらの回折光の内特定次数例えば0次及び±1次回折光が、投影レンズ系7の瞳1に入射し、瞳1を介して投影レンズ系7の像面に向けられ、この像面に微細パターン6の像を形成することになる。この種の結像において像のコントラストに寄与する光成分は高次の回折光である。この為、微細パターンの周波数が大きくなるにつれ、高次回折光を光学系で捕らえることができなくなり、像のコントラストが低下する。そして、最終的には結像そのものが不可能になる。
【0017】
第2図(A)、(B)に、夫々、第1図の微細パタ-ン6を従来型のマスクに形成した場合の瞳1における光分布、第1図の微細パタ-ン6を位相シフトマスクに形成した場合の瞳1における光分布、を示す。
【0018】
第2図(A)においては、0次回折光3aの回りに+1 次回折光3b,-1 次回折光3cが生じているが、第2図(B)においては、位相シフト膜の効果により0次回折光5aが消失し、±1 次回折光5b、5cのみが生じている。第2図(A)、(B)の比較から、位相シフトマスクの、空間周波数面即ち瞳面における効果として下記の2点が挙げられる。
【0019】
1.位相シフトマスクでは周波数が1/2に低減されている。
2.位相シフトマスクでは0次回折光が存在しない。
【0020】
又、他の注目すべき点は、位相シフトマスク場合の±1 次回折光の瞳面での間隔aが、従来型のマスクの場合の0次光と±1 次回折光の夫々との間隔aと合致することである。
一方、瞳1での光分布は、従来型のマスクと位相シフトマスクとで、位置的には一致する。両者の間で異なっているのは、瞳1における振幅分布の強度比であり、第2図(B)で示される位相シフトマスクの場合0次、+1次、-1次回折光の振幅比が0:1:1であるのに対して、第2図(A)で示される従来型マスクの場合には0次、+1次、-1 次回折光の振幅比が 1:2/π:2/πになっている。
【0021】
本発明は、位相シフト膜を使用せずに、瞳1に、位相シフトマスクと類似の光分布を発生させる。本発明では、微細パタ-ン6、特に従来技術の項で述べたk1 ファクタ-が 0.5付近の空間周波数を持つ微細パタ-ン、を照明した際、0次回折光が瞳1の中心から外れた位置に入射し他の高次回折光も瞳1の中心から外れた他の位置に入射するように、前記瞳の中心を通り前記縦横パタ-ンの方向へ延びる一対の軸上及び前記瞳の中心の各部分よりも他の部分の光強度が大きい光量分布を備える有効光源、好ましくは前記瞳の中心を通り前記縦横パタ-ンの方向へ延びる一対の軸上及び前記瞳の中心の各部分の光強度がほぼゼロである有効光源、を形成する。
【0022】
このような有効光源を形成し、例えばk1 ファクタ-が 0.5程度の微細パタ-ンを照明した時生じる0次回折光と1 次回折光の内、0次回折光と正負の1次回折光の内の一方を瞳1に入射させ、正負の1次回折光の内の他方を瞳1に入射させないことによって、瞳1での光分布を位相シフトマスクの場合と似た形にすることが可能になる。この為、微細パタ-ンを照明する照明法/照明系を工夫するだけで位相シフトマスクを使用した場合と同様の効果を得ることができ、実現化が容易である。
【0023】
本発明では、単位光束による照明を行なうと、瞳1における一対の回折光の振幅比が1:2/πとなり、位相シフトマスクを使用した場合に近い、より好ましい振幅比1:1にはならない。しかしながら、本件発明者の解析により、この振幅比の違いは、例えば、マスクの縦パターンを解像する場合には、マスク(微細パターン)へ斜入射させる光を、瞳の縦軸(瞳の中心を通り縦パターンの方向に伸びる軸)に対して対称となる一対の光パターンができるようにペアの光でマスクを照明し、マスクの横パターンを解像する場合には、マスク(微細パターン)へ斜入射させる光を、瞳の横軸(瞳の中心を通り横パターンの方向に伸びる、前記瞳の縦軸に垂直な軸)に対して対称となる一対の光パターンができるようにペアの光でマスクを照明することにより、実質的に補償できることが判明した。従って、有効光源の瞳での光量分布が、瞳中心を通りxy軸とほぼ45°を成す方向に延びる第1軸に沿った、瞳中心に関して対称な場所に互いの強度がほぼ等しい一対のピークを有するように、例えば2個の照明光束により照明を行なう。又、有効光源の瞳での光量分布が、瞳中心を通りxy軸とほぼ45°を成す方向に延びる第1軸に沿った瞳中心に関して対称な場所に、互いの強度がほぼ等しい一対の部分を有し、且つ、瞳中心を通り別記第1軸とほぼ90°をなす方向に延びる第2軸に沿った、瞳中心に関して対称な場所であって第1軸上の一対の部分と瞳中心に対してほぼ同じに位置に、互いの強度がほぼ等しい他の一対の部分を有するように、例えば4個の照明光束により照明を行う。
【0024】
本発明の第1実施例として、第1図の瞳1での0次回折光の光分布、所謂瞳面上の有効光源の分布を第3図(A)、(B)の夫々に示す。
【0025】
図中、1が瞳、xが瞳の横軸(瞳の中心を通り横パタ-ンの方向に伸びる軸)、yが瞳の縦軸(瞳の中心を通り縦パタ-ンの方向に伸びる、前記瞳の横軸に垂直な軸)、そして2a、2b、2c、2dが有効光源の各部分を示す。
【0026】
ここで示す二つの実施例の有効光源は主として4つの部分より成る分布を持っている。そして個々の部分(光パタ-ン)の分布は円形であり、瞳1の半径を1.0、瞳中心を座標原点、xy軸を直交座標軸とした時、第3図(A)の例では、各部分2a、2b、2c、2dの中心が夫々 (0.45,0.45),(-0.45,0.45),(-0.45,-0.45),(0.45,-0.45)の位置にあり、各部分の半径は 0.2である。又、第3図(A)の例では、各部分2a、2b、2c、2dの中心が夫々(0.34,0.34),(-0.34,0.34),(-0.34,-0.34),(0.34,-0.34) の位置にあり、各部分の半径は 0.25 である。
【0027】
本実施例の有効光源は、このように瞳面に設定したxy軸により4つの象限に分けた時、一つ一つの部分2a、2b、2c、2dが夫々対応する象限に形成され、互いに重なり合うことなく互いに対称な関係に且つ独立に存在することを特徴としている。この場合各象限を分ける軸であるx軸とy軸は、例えば集積回路パタ-ンが設計されるときに用いられるx軸、y軸の方向と合致し、夫々マスクの縦横パタ-ンが延びる方向である。
【0028】
本実施例における有効光源の形状は、その像が投影される微細パタ-ンの縦横パタ-ンの方向性に着目し決定したものであり、4つの円形の部分2a、2b、2c、2dの中心が丁度±45°方向(x軸及びy軸に対し±45°を成し瞳1の中心を通過する一対の軸が延びる方向)に存在していることが特徴である。このような有効光源を発生させる為には、4個の照明光束を、互いに同じ入射角で、一組づつ互いに直交する入射平面に沿って、微細パタ-ンへ斜入射させる。
【0029】
又、有効光源の4つの部分2a、2b、2c、2dの強度が互いに等しいことが重要で、この比が狂うと、例えば焼付が行なわれるウェハ-がデフォ-カスした時に回路パタ-ン像が変形を受ける。従って、4個の照明光束の強度も互いに等しく設定される。この時、4つの部分2a、2b、2c、2dの各々の強度分布は、全体がピ-ク値を示す均一な強度分布を持つものであっても、中心にのみピ-クがあるような不均一な強度分布を持つものでも、適宜決めることができる。従って、4個の照明光束の形態も、瞳1に形成する有効光源の形態に応じて様々な形態が採られる。例えば、本実施例では、有効光源の4つの部分が互いに分離しており、各部分以外の場所に光パタ-ンが生じていないが、有効光源の4つの部分が比較的強度が弱い光パタ-ンを介して連続していてもいい。
【0030】
又、有効光源の4つの部分2a、2b、2c、2dの分布(形状)は円形に限定されない。但し、4つの部分の中心はその形状に関係なくその強度分布の重心位置が、第3図(A)、(B)に示す実施例の如く、xy軸に関して±45°方向にあり、且つ互いに対称であることが好ましい。
【0031】
因に、より高解像を狙う、即ちk1 の値が小さい系を構成する際の最適有効光源の配置を採ろうとすると、第3図(B)から第3図(A)に目を移した時に感じる通り、各象限にある有効光源の各部分2a、2b、2c、2dの重心位置が瞳1の中心から離れ、これに伴って個々の象限にある独立した各部分2a、2b、2c、2dの径が小さくなる第3図(A)、(B)では二つの予想される有効光源の形態を示しているが、実際の設計においてもこの二つの形態に近い有効光源が使用されるであろう。というのは、有効光源の各部分の重心位置をあまり瞳1の中心から離れた位置に持っていきすぎると、光学系の設計上の都合から、光量が少なくなったりするなどの弊害が生じてくるからである。
【0032】
本件発明者の、この点を考慮した検討によれば、第3図に示す瞳1と座標を参照すると、第1及び第3象限にある互いに分離された一対の部分2a、2cの形状を円形とし、半径をqとし、第1部分2a及び第2部分 2cの中心位置(重心位置)の座標を夫々(p,p)、(-p,-p)とした時、以下の条件を満たすのがいいことが分かった。
【0033】
0.25<p<0.6
0.15<q<0.3
又、他の第2及び第4象限の各部分の大きさ、位置についても、それらの第1及び第3象限の各部分2a、2cに対する対称性より自ら定まる。即ち、第2及び第4象限の各部分2a、2cの形状を円形とし、半径をqとし、各々の中心位置(重心位置)の座標を(-p,p)、(p,-p)とすると、上記条件を満たすのが良いことになる。尚、図3に示す通り、上記条件は瞳の半径を1とした時のものである。又、有効光源の各部分が円形でない、例えば3角形、4角形の場合でもここに示した条件の領域内に入っていることが好ましい。この時qは、各部分に外接する円の半径を用いる。第3図(A)、(B)に示した実施例は、この条件中の中心付近の値を持つものである。p、qの値は、使用する光学系(照明系/投影系)にどの程度の線幅の微細パターンの投影を要求するかによって異なる。
【0034】
今まで使用されてきたステッパ-では、瞳1の中心(x, y)=(0,0)に有効光源のピ-クが存在していた。この装置で、コヒ-レンスファクタ-σ値が0.3とか 0.5とか言われるのは、瞳1の中心を中心として半径がそれぞれ 0.3、0.5の稠密の有効光源分布を持っていることを意味している。本件発明者の解析によると、瞳中心に近い位置にある有効光源、例えばσ値で0.1以下の範囲の場合は、デフォ-カスが生じた時、主として粗い線巾、前述のk1 ファクタ-が1以上の線巾、でのコントラストを高く保つことに効果があるが、このデフォ-カス時の効果はk1 ファクタ-が 0.5に近づくにつれて急速に悪化する。そして、k1 ファクタ-が 0.5を越えると、極端な場合には像のコントラストが全く失なわれてしまう。現在要求されているのは、k1 ファクタ- 0.6以下でのデフォ-カス性能の向上であり、k1 ファクタ-がこの付近については、瞳中心近傍の有効光源の存在は、結像に関して悪影響を与える。
【0035】
これに対し第1実施例で示した有効光源はk1 ファクタ-の値が小さく、k1ファクタ- 0.5付近の結像を行なう際のデフォ-カス時のコントラストを高く保つことに効果がある。第3図(A)の例は第3図(B)の例よりより外側に有効光源の各部分2a、2b、2c、2dが存在している為、第3図(B)より高周波特性が優れている。尚、有効光源の瞳中心から離れている部分でのデフォ-カス特性は、k1 ファクタ-で1前後まで、焦点深度がほぼ一定の水準を保つという特性を持っている。
【0036】
第4図は第3図(B)の形態をNA0.5 の投影レンズ系を持つi線ステッパ-に適用した時の解像力と焦点深度の関係を、光学像のコントラスト 70%を満たす範囲内のデフォ-カスは焦点深度内(許容値)として計算した例である。図中、曲線Aは、通常のレチクルに対する従来法(σ=0.5 )での解像力と焦点深度の関係、曲線Bが第3図(B)の場合の解像力と焦点深度の関係を示す。ステッパ-の実用的に許容できる焦点深度の限界を 1.5μm に設定すると、従来法での解像力の限界は0.52μm であるのに対し、第3図(B)の場合には、ほぼ 0.4μmまで解像力が改善されている。これは比にして約 30%の改善であり、この分野では非常に大きなものである。又、実効的にはk1 ファクタ-で0.45程度の解像力までは容易に達成できる。
【0037】
尚、本発明の、瞳中心に有効光源を形成しないリング照明法との相違点は、瞳1において、微細パタ-ンの縦横パタ-ンの方向に相当するx軸及びy軸上には有効光源のピ-クが存在していないことである。これは、x及びy軸上に有効光源のピ-クを配置すると、像のコントラストの落ちが大きく、大きな焦点深度を得ることができないからである。従って、主として縦横パタ-ンで構成される微細パタ-ンの像投影に関して、本発明は、リング照明法よりも改善された像質の像を得ることを達成した。
【0038】
又、本発明の有効光源の主たる各部分の光量(光強度)は均一にも、ガウシアン分布のように不均一にも、設定される。
【0039】
第5図(A)、(B)、(C)は本発明の第2実施例を示す図であり、本発明の方法で微細パタ-ンの像を投影する半導体製造用投影露光装置を示す。
【0040】
図中、11は、その発光部が楕円ミラ-の第1焦点に設置される超高圧水銀灯、12は楕円ミラ-、14、21、25、27は折り曲げミラ-、15は露光量制御用シャッタ-、105はフィ-ルドレンズ、16は波長選択用干渉フィルタ-、17はクロスNDフィルタ-、18は所定の開口を備えた絞り部材、19は、その光入射面が楕円ミラ-12の第2焦点に設置されるオプチカルインテグレ-タ-、20、22は第1結像レンズ系(20、22)の各レンズ、23はハ-フミラ-、24はレチクル上の照明領域を規制する矩形開口を備えるマスキングブレ-ド、26、28は第2結像レンズ系(26、28)の各レンズ、30は最小線巾約2um程度の主に縦横パタ-ンで構成された集積回路パタ-ンが形成されたレチクル、31はレチクル30の回路パタ-ンを1/5に縮小投影する縮小投影レンズ系、32はレジストが塗布されたウエハ-、33はウエハ-32を吸着保持するウエハ-チャック、34はウエハ-チャック33を保持するXYステ-ジ、35は中央に開口部35aを備える遮光膜が形成されたガラス板、36は上面に開口部を備えたケ-ス、37はケ-ス36内に設けた光電変換器、38はステ-ジ34の移動量を計測する為の不図示のレ-ザ-干渉計の一部を成すミラ-、40は、ブレ-ド24の受光面と光学的に等価な位置に置かれ、ブレ-ド24と同様にインテグレ-タ-19の各レンズから出射した光束がその上で互いに重なり合う、所定の開口を備える遮光板、41は遮光板40の開口からの光を集光する集光レンズ、42は4分割デイテクタ-を、示す。
【0041】
この装置の特徴的な構成はインテグレ-タ-19の前に置いたフィルタ-17及び絞り部材18である。絞り部材18は、第5図(B)に示すように、装置の光軸近傍の光を遮るリング状の開口を備えた、投影レンズ系31の瞳面での有効光源の大きさ及び形状を定める開口絞りであり、この開口の中心は装置の光軸と一致している。又、フィルタ-17は、第5図(C)に示すように、4個のNDフィルタ-を全体としてクロス状に成るよう配列したものであり、この4個のNDフィルタ-により絞り部材18のリング状開口の4か所に入射する光の強度が10〜100パ-セント減衰しめられる。この4か所とは、とりもなおさず、投影レンズ系31の瞳面の、レチクル30の縦横パタ-ンの方向に相当するxy軸上の4点を含む部分に対応する場所であり、このフィルタ-17によって、投影レンズ系31の瞳面のxy軸上の有効光源の光強度が弱まるようにしている。
【0042】
レチクル30は不図示のレチクルステ-ジに保持されている。そして、投影レンズ系31はフィルタ-16により選択されたi線(波長365nm)の光に対して設計されている。又、第1及び第2結像レンズ系(20、22、26、28)はインテグレ-タ-19の光出射面と投影レンズ系31の瞳面とが互いに共役になるよう設定され、第2結像レンズ系(26、28)はブレ-ド24の開口部のエッジとレチクル30の回路パタ-ン部とが互いに共役になるよう設定されている。尚、ブレ-ド24は、レチクル30上の集積回路パタ-ンの大きさに応じて開口部の大きさを調整できるように、通常、4枚の夫々独立に可動なナイフエッジ状の先端を持つ遮光板で構成され、不図示の装置全体の制御を行うコンピュ-タ-の指令によって各遮光板の位置が制御され、開口部の大きさが使用するレチクル30に最適化される。
【0043】
ハ-フミラ-23はインテグレ-タ-19からの光束の一部を反射するミラ-で、ミラ-23で反射した光は、遮光板40の開口を介してレンズ41に入射し、レンズ41により4分割ディテクタ-42上に集光される。4分割ディテクタ-の42の受光面は投影レンズ系31の瞳面と光学的に等価になるよう設定されており、この受光面上に絞り部材18で形成したリング状の有効光源を投影する。4分割ディテクタ-42は、個々のディテクタ-毎に各受光面に到達した光の強度に応じた信号を出力し、4分割ディテクタ-42からの各出力信号を加算することによりシャッタ-15の開閉制御の為の積算信号を得る。
【0044】
XYステ-ジ34上の部材35〜37は、レチクル30の上方の照明系の性能チェック用の測定ユニットであり、XYステ-ジ34は照明系のチェックを行う際所定の位置に移動し、この測定ユニットを投影レンズ系31の真下に持ってくる。この測定ユニットで、ガラス板35の開口部35a及びケ-ス36の開口部を介して、照明系を出て投影レンズ系31の像面に達した光を光電変換器37へ導く。開口部35aの受光面は投影レンズ系31像面位置にあり、必要であれば不図示の焦点検出系(ウエハ-32の表面の高さを検出する周知のセンサ-)とXYステ-ジ34に内蔵された測定ユニット駆動系とを用い、開口部35の装置の光軸方向の高さが調整される。ガラス板35はケ-ス36に取り取り付けられており、ケ-ス36は前述の通り中央に開口部が開いているが、ここでは、このケ-ス36の開口部がガラス板35の開口部と所定量だけずらせるように、測定ユニットが組まれている。ケ-ス36の開口部が置かれる位置は投影レンズ系31の像面側のNAの大きい場所で且つ像面から十分離れている。従ってケ-ス36の開口部の受光面では、投影レンズ系31の瞳面での光分布がそのまま現れる。本実施例では、この測定ユニットは使用しない。従って、この測定ユニットの使用法の説明は後の実施例で説明する。
【0045】
本実施例では、フィルタ-17と絞り部材18の作用により、投影レンズ系31の瞳面に、全体としてリング状を成しレチクル30の縦横パタ-ンの方向に相当するxy軸上の4点を含む部分の強度が他の部分よりも低い有効光源を形成しつつ、照明系(11、12、14、15、105、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28)により、レチクル30の回路パタ-ンを均一な照度で照明し、投影レンズ系31により回路パタ-ン像をウエハ-32上に投影して、ウエハ-32のレジストに回路パタ-ン像を転写している。このような投影露光による効果は先に第3図及び第4図を使って説明した通りであり、ウエハ-32のレジストに、i線で、安定して、鮮明な0.4μmの微細パタ-ンを記録できる。
【0046】
又、ここでは、フィルタ-17と絞り部材18をインテグレ-タ-19の前に置いているが、フィルタ-17と絞り部材18をインテグレ-タ-19の直後に置いてもいい。又、後述する第3実施例で使用する第6図(B)に示す絞り部材18を、フィルタ-17と絞り部材18より成る系の代わりに使用してもいい。第6図(A)、(B)は本発明の第3実施例を示す図であり、本発明の方法で微細パタ-ンの像を投影する半導体製造用投影露光装置の他の例を示す。
【0047】
図中、第5図で示した部材と同じ部材又は同じ機能を持つ部材には、第5図で付した番号と同じ番号を付している。従って、第5図の装置と本実施例の装置を比較すると、本実施例の構成で第5図の装置と異なっている点は、第6図(B)に示すように絞り部材18の開口部が4個の独立した開口より成る点、クロスNDフィルタ-の代わりに部材18の各独立開口に対応させて4個の独立なフィルタ-17a、17b、17c、17dを設けている点、更にミラ-12とミラ-14の間に4角錐プリズム13を挿入している点である。
【0048】
又、本実施例では、4分割ディテクタ-42からの出力をシャッタ-15の開閉制御以外の用途にも使用し、測定ユニット(35-37)も使用する。
【0049】
以下、前記実施例との相違点を重点的に説明しながら、本実施例の作用効果を述べる。
【0050】
4角錐プリズム13、フィルタ-17a、17b、17c、17d及び絞り部材18を置かない状態で、水銀灯11からの光によりインテグレ-タ19を照明すると、インテグレ-タ19の光射出面で中心に高いピ-クを持つガウシアン分布に似た光量分布の2次光源が生じてしまう。インテグレ-タ-19の光射出面は投影レンズ系31の瞳面と共役であるから、この瞳面には、瞳中心に光量分布のピ-クを持つ有効光源ができる。既に説明した様に、本発明で用いる有効光源は瞳中心でピ-クを示さない光量分布を持つものであるから、前記実施例の如くインテグレ-タ-19の中心部付近に入射する光を遮る必要がある。しかしながら、絞り部材18を単にインテグレタ-19の前に置いた場合、水銀灯11からの光の大部分をけってしまい、光量損失が大きくなる。そこで、本実施例では、楕円ミラ-12の直後に四角錐プリズム13を挿入して、オプティカルインテグレ-タ-19上での照度分布をコントロ-ルする。
【0051】
水銀灯11は、その発光部が楕円ミラ-12の第1焦点位置と一致するように置かれており、水銀灯11から発し楕円ミラ-12で反射した光は、四角錐プリズム13により相異なる方向に偏向された4本の光束に変換される。この4本の光束はミラ-14で反射されシャッタ-15の位置に到達する。そして、シャッタ-15が開いていれば、そのままフィルタ-16に入射し、フィルタ-16により、レチクル30の像をウェハ-32上のレジスト(感光層)に投影する投影レンズ系31が最も良い性能を発揮できる様に、水銀灯11の発光スペクトルからi線が選択される。
【0052】
フィルタ-16からの4本の光束は、夫々、フィ-ルドレンズ105を通過した後、本実施例の重要な要素であるフィルタ-17a、17b、17c、17dに入射する。この4個のフィルタ-は、4本の光束の光量が互いにほぼ同じになるようにし、これによりインテグレ-タ-19の光出射面及び投影レンズ系31の瞳面に形成する有効光源の4個の部分間の光量の対称性を補正する補正部材である。各フィルタ-の光量減衰作用を調節する場合には、各フィルタ-毎に数種類のNDフィルタ-を用意しておきNDフィルタ-を切り換えて調節してもいいし、各フィルタ-を干渉フィルタ-で構成し、この干渉フィルタ-の狭帯域性を利用し、この干渉フィルタ-を傾けることにより調節してもいい。
【0053】
絞り部材18は、フィルタ-17a、17b、17c、17dからの4本の光束を受ける。この絞り部材18は、第6図(B)に示すように4個の円形開口を備えており、4個の円形開口の夫々と、フィルター17a、17b、17c、17dからの4本の光束とが、一対一に対応する。そして、絞り部材18の4個の開口からの光でインテグレ-タ-19が照明され、インテグレ-タ-19の光出射面及び投影レンズ系31の瞳面に、絞り部材18の開口に対応する、第3図(A)で示した有効光源が形成される。
【0054】
通常、絞り部材18の開口形状は、インテグレ-タ-19を構成する各微小レンズの外形に対応した形状に設定される。従って、各微小レンズの断面が六角形である場合には、開口形状も微小レンズの六角形に沿った形にする。
【0055】
インテ-グレ-タ-19からの光は、レンズ20、ミラ-21、レンズ22、ハ-フミラ-23を介してブレ-ド24に向けられる。この時、前述した様に、インテグレ-タ-19の各レンズからの光束がブレ-ド24上で互いに重なり、ブレ-ド24が均一な照度で照明される。又、ハ-フミラ-23は、インテグレ-タ-19の各レンズからの光束の一部分づつを反射して、反射光により遮光板40を照明する。遮光板40の開口部からの光がレンズ41により4分割ディテクタ-42上に集光される。
【0056】
ブレ-ド24の開口部を通過した光は、ミラ-25、レンズ26、ミラ-27及びレンズ28によりレチクル30に向けられる。ブレ-ド24の開口部とレチクル30の回路パタ-ン部とは互いに共役であるから、インテグレ-タ-19の各レンズからの光束がレチクル30上でも重なり合い、レチクル30を均一な照度で照明する。そして、レチクル30の回路パタ-ンの像が、投影レンズ系31により投影される。
【0057】
4分割ディテクタ-42の各ディテクタ-は、第3図(A)に示す如き有効光源の互いに分離した4つの部分の夫々に対応しており、各部分の光量を独立に検出できる。各ディテクタ-の出力を加え合わせればシャッタ-15の開閉制御を行うことができるのは、前述した通りである。一方、各ディテクタ-の出力を互いに比較することによって有効光源の個々の部分の光量の割合がアンバランスになっていないかどうかのチェックを行う。この時、4分割ディテクタ-42の各ディテクタ-相互のキャリブレ-ションを行うことがチェックの際の信頼性を高めることに通じる。このキャリブレ-ションについては後述する。
【0058】
装置の瞳面に形成される有効光源の形状はインテグレ-タ-19の形状に対応したものになる。インテグレ-タ-19自体は微小なレンズの集まりである為、有効光源の光量分布を細かく見ると、個々の微小レンズの形状に対応した離散的なものとなっているが、マクロな観点で見れば第3図(A)に示す光量分布が実現されている。
【0059】
本実施例では光量モニター(23、40〜42)と測定ユニット(35〜37)を用いて有効光源の光量分布のチェックを行う。この為に、XYステージ34を動かして測定ユニット(35〜37)を投影レンズ系31の真下に持ってくる。この測定ユニットで、ガラス板35の開口部35a及びケース36の開口部を介して、照明系を出て投影レンズ系31の像面に達した光を光電変換器37へ導く。開口部35aの受光面は投影レンズ系31の像面位置に設定されている。ガラス板35はケース36に取り付けられており、ケース36は前述の通り中央に開口部が開いているが、ここでは、このケース36の開口部がガラス板35の開口部と所定量だけずらせるように、測定ユニットが組まれている。本実施例の照明系により照明を行った場合、ケース36の上面では、第3図(A)に示す有効光源の4つの部分が分離して現れる。ケース36の開口は、ブレード24の開口部と同じように形状及び大きさが変更可能にできており、不図示の駆動系により開口の大きさを変えることにより、有効光源の4つの部分を個別に検出することと、有効光源の4つの部分を一度に検出することができる。一方、光電変換器37はガラス板35の開口35aを通過する光束を全て受光し得る面積の受光部を持っている。尚、光電変換器37の受光部の面積が大きくなりすぎて電気系の応答特性が劣化する場合には、ガラス板35と光電変換器37の間に集光レンズを入れ、このレンズによりガラス板35の開口35aからの光束を集光し、光電変換器37の受光部の面積を小さくして応答特性を改善することができる。又、ケース36の開口を有効光源の4つの部分を一度に検出することができるように設定している状態で、XYステージ34を像面に沿って動かすことにより、像面照度の均一性を測ることもできる。
【0060】
ケ-ス36の開口を動かして有効光源の各部分の光量(強度)を測った結果は、照明系側にある4分割ディテクタ-42の対応するディテクタ-の出力との比較が行われる。つまり、XYステ-ジ34側にある光電変換器37を参照ディテクタ-として使用し、4分割ディテクタ-42の出力をキヤリブレ-ションできるため、安定した状態で有効光源の経時変化をモニタ-していくことができる。そして4分割ディテクタ-42又は光電変換器37によって有効光源の各部分間の光量のアンバランスを検出し、その結果に基づいて、フィルタ-17a、17b、17c、17dが、有効光源の各部分の光量のマッチングが図られるよう調整される。
【0061】
本実施例では、第6図(B)の絞り部材18の作用により、投影レンズ系31の瞳面に、第3図(A)に示す、レチクル30の縦横パタ-ンの方向に相当するxy軸上及び瞳中心(光軸)上に光量分布のピ-クを持たない有効光源を形成しつつ、照明系(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28)により、レチクル30の回路パタ-ンを均一な照度で照明し、投影レンズ系31により回路パタ-ン像をウエハ-32上に投影して、ウエハ-32のレジストに回路パタ-ン像を転写している。このような投影露光による効果は先に第3図及び第4図を使って説明した通りであり、ウエハ-32のレジストに、i線で、安定して、大きな焦点深度で、鮮明な0.4μmの微細パタ-ンを記録できる。
【0062】
第7図は本発明の第4実施例を示す図であり、第6図の半導体製造用投影露光装置の改良例を示す部分的概略図である。従って、第7図では、第6図の実施例と同じ部材については第6図と全く同じ番号が付けられている。
【0063】
図中、11は超高圧水銀灯、12は楕円ミラ-である。ここでは楕円ミラ-12から出た光をビ-ムスプリッタ-群(51、53)で分割している。第3図(A)に示す4つの部分を持つ有効光源を形成する為に、楕円ミラ-12から出た光を第1ビ-ムスプリッタ-51、第2ビ-ムスプリッタ-53で順次分割している。52は光路の折り曲げミラ-である。第2ビ-ムスプリッタ-53は第1ビ-ムスプリッタ-51で分割された2本の光束の双方の光路にまたがって斜設されており、紙面に沿って進行する2本の光束を夫々分割し、夫々の光束の一部を紙面と垂直方向に曲げる。夫々の光束の他の部分は図示する通り紙面に沿って進む。又、第2ビ-ムスプリッタ-53から前記一部の光束の光路にはミラ-光学系があって、前記一部の光束を反射して前記他の部分の光路と平行な別な光路に向ける。こうしてビ-ムスプリッタ-群(51、53)及びミラ-52と不図示のミラ-光学系とにより4つに分けられた光路は、インテグレ-タ-19の光出射面で第3図(A)に示すような光分布の2次光源を作るよう結合される。これにより、投影レンズ系31の瞳面に第3図(A)に示す有効光源が形成される。
【0064】
紙面内にある分割された2つの光路には、夫々、リレ-レンズ61a、61bが置かれ、このリレ-レンズ61a、61bの作用で、各光路を進む光がインテグレ-タ-19上に集光せしめられる。第1ビ-ムスプリッタ-の挿入の結果、両光路の光路長が互いに異なる為、リレ-レンズ61a、61bの構成及び焦点距離は互いに少しずつ異なっている。これは紙面内にない一対の光路に置かれる不図示の一対のリレ-レンズについても同様である。
【0065】
63はビ-ムスプリッタ-群(51、53)により得た4本の光束の夫々について開閉制御ができるシャッタ-、16a、16bは紙面内にある分割された2つの光路に置いた波長選択フィルタ-で、紙面外の他の2つの光路の夫々にも同様のフィルタ-が置かれる。これらのフィルタ-は、前記実施例のフィルタ-16と同様、水銀灯11からの光からi線を取り出す。17a、17bが、紙面内にある分割された2つの光路に置いた、有効光源の各部分の光量を調整する為のフィルタ-であり、紙面外の他の2つの光路の夫々にも同様のフィルタ-が置かれる。そして、、これらのフィルタ-の機能は前記実施例のフィルタ-17a、17b、17c、17dと同様の機能を持つ。
【0066】
又、本実施例では、インテグレ-タ-に至る光路を空間的に4つ分割した為、インテグレ-タを4個の小型インテグレ-タ-の集合により構成した。光路の重なり具合の関係から、ここではインテグレ-タ-19a、19bのみを図示している。インテグレ-タ-以降の構成は前記実施例と同じなので、これ以上の説明は省略する。
【0067】
第8図は本発明の第5実施例を示す図であり、本発明の方法で微細パタ-ンの像を投影する半導体製造用投影露光装置の、更に他の例を示す部分的概略図である。
【0068】
本実施例の装置は、有効光源の位置を時間的に移動させることにより等価的に第3図(A)に示すような有効光源を瞳面に形成ながら回路パタ-ン像を投影露光する。第8図では前記各実施例と同じ部材については前記各実施例と同じ番号が付けられている。従って、図中、11は超高圧水銀灯、12楕円ミラ-、14は折り曲げミラ-、15はシャッタ-、16は波長選択用干渉フィルタ-、19がオプティカルインテグレ-タ-を示し、不図示の、投影レンズ系31以降の系は前記各実施例のものと同一である。
【0069】
本実施例の特徴的な構成は、インテグレ-タ-19の後ろに時間的に動く平行平板71を置いたことにある。平行平板71は照明光学系の光軸に対して斜めに配置されており、図示する通り光軸に対する傾角が変化するよう揺動して光軸をずらす役割を行う。従って、レチクル30側から、平行平板71を通してインテグレ-タ-19を観察すると、平行平板71の揺動に伴ってインテグレ-タ-19が上下又は左右に移動する様に見える。ここでは平行平板71が光軸を中心にした回転運動もできるように平行平板を支持しているので、平行平板71を光軸に対して所定角度傾けた状態で回転させることにより、投影レンズ系31の瞳面において、単一有効光源が光軸(瞳中心)から離れたある半径の円周上の任意の位置に配置できることになる。そして実際の露光時には、平行平板71を動かして単一有効光源が所定の位置に来た時、平行平板71の姿勢が固定され、所定の時間露光が行われる。この動作を第3図(A)に示した有効光源の4個の部分の各々に単一有効光源ができるよう4回行なうことによって1つのショットの露光が完了する。
【0070】
本実施例では、光源として水銀灯11を使用しているが、光源がエキシマレ-ザ-の様にパルス発光を行うようなものである時には、平行平板71の動きを連続的な動きとし、平行平板71が所定の位置に来た時に光源を発光させるといった、露光制御を行ってもいい。この時、光源としてエキシマレ-ザ-を使用し、平行平板71の光軸回りの回転の周期をエキシマレ-ザ-の発光の繰り返し周期とマッチングさせると都合が良い。例えば、レ-ザ-が200Hzで発光しているとすると、1回の発光ごとに有効光源が隣の象限に移る様に平行平板71の回転数を制御すれば、効率の良い露光を行うことができる。
【0071】
このように時間的に単一有効光源が移動する方式を採る場合、瞳上の幾つかの部分に形成される有効光源部が同一光源からの光エネルギ-で作られる為、瞳面上で分離された有効光源部の強度を互いに常に同じに設定することが容易である。本実施例で前記各実施例にあるような有効光源光量補正用のフィルタ-17を置かなかったのは、この理由によっている。
【0072】
さて、平行平板71を通過した光は、レンズ72、ハ-フミラ-73、レンズ74を介してレチクル30を均一照明する。本実施例では前記各実施例では置いてた第1結像光学系がない為に、前記各実施例のブレ-ド24とは違うブレ-ド78をレチクル30の近くに配置した。このブレ-ド78は、ブレ-ド24と構成及び機能が同じであり、レチクル30上に形成した回路パタ-ンの大きさに応じてその開口部の大きさが可変である。
【0073】
ミラー73は入射光の大部分を反射する一方、入射光の一部分を透過させて露光量制御用の光量モニターに光を導く。75はコンデンサレンズ、76はレチクル30と光学的に等価な位置にあるピンホール板で、ミラー73からの光がレンズ75によりピンホール板76に集光され、ピンホール板76のピンホールを通過した光がフォトディテクター77で受光され、フォトディテクター77から入射光の強度に応じた信号が出力される。装置の不図示のコンピュータは、この信号に基づいてシャッター15の開閉制御を行う。尚、本実施例では有効光源間の各部分の光量比をモニターする必要がないので、フォトディテクター77は特に4分割ディテクターである必要はない。
【0074】
本実施例では、投影レンズ系31の瞳面に第3図(A)で示す有効光源を形成しつつ、レチクル30の回路パタ-ンを均一な照度で照明し、投影レンズ系31により回路パタ-ン像をウエハ-上に投影して、ウエハ-のレジストに回路パタ-ン像を転写している。このような投影露光による効果は先に説明した通りであり、ウエハ-のレジストに、安定して、鮮明な0.4μmの微細パタ-ンを記録できる。
【0075】
第9図は本発明の第6実施例を示す図であり、本発明の方法で微細パタ-ンの像を投影する半導体製造用投影露光装置の、更に他の例を示す部分的概略図である。
【0076】
本実施例では光源としてKrFエキシマレ-ザ-81(中心波長248.4nm、バンド幅0.003〜0.005nm)を用いた場合の例を示している。エキシマレ-ザ-81はパルス発光する為、シャッタ-を設けずにレ-ザ-自身の駆動制御により露光制御を行うこと、及び、レ-ザ-自身がフィルタ-を持ちレ-ザ-光のバンド幅が狭帯域化されている為、波長選択用干渉フィルタ-を配置しないことが特徴となっている。ビ-ムスプリッタ-群(51、53)、ミラ-52、フィルタ-17及びインテグレ-タ19の働きは、第7図に示した実施例と同じである。又、インテグレ-タ-19以降の系は第6図(A)のものと同じで、但し不図示の投影レンズ系は、波長248.4nmに関して設計された、合成石英のみ主成分としたレンズアセンブリで構成されている。
【0077】
エキシマレ-ザ-81の場合、レ-ザ-光のコヒ-レンシ-が高いので、スペックルパタ-ンの発生を押さえる必要がある。この為、本実施例では、インコヒ-レント化ユニット82が、ビ-ムスプリッタ-群51〜53で光が分離された後に置かれている。エキシマレ-ザ-を用いた照明光学系のスペックル除去の方法については過去いろいろな手法が発表されているが、本発明の有効光源を作ることはそれらと本質的な矛盾はなく、公知の様々な手法が適用可能である。従って、ここではユニット82についての詳細は説明しない。
【0078】
本実施例では、図示する光学系(17、19、51、52、53、82)の作用により不図示の投影レンズ系の瞳面に第3図(A)で示す有効光源を形成しつつ、レチクルの回路パタ-ンを均一な照度で照明し、投影レンズ系により回路パタ-ン像をウエハ-上に投影して、ウエハ-のレジストに回路パタ-ン像を転写している。このような投影露光による効果は先に説明した通りであり、ウエハ-のレジストに、安定して、鮮明な0.3〜0.4umの微細パタ-ンを記録できる。
【0079】
第10図は本発明の第7実施例を示す図であり、第9図に示した第6実施例を改良した装置を示す部分的概略図である。
【0080】
本実施例は、レ-ザ-81からのレ-ザ-光を反射型4角錐プリズムで4個の光束に分離している。第6図の装置では透過型の4角錐プリズム13を用いて光束の分離をしていたが、同様のことは反射型でも行える。本発明の構成は、勿論、超高圧水銀灯を光源に用いても実現できるが、ここでは光源としてKrFエキシマレ-ザ-を用いた例が示してある。レ-ザ-81から出たレ-ザ-光はアフォ-カルコンバ-タ-91で適切なビ-ムサイズに拡大変換された後、4角錐プリズム92に入射する。4角錐プリズムの配置は、その4個の反射面が、結果として不図示の投影レンズ系の瞳位置に第3図(B)のような有効光源を形成できる方向に向くよう設定する。93は4角錐プリズム92の各反射面で分割・反射された光を曲げるミラ-であり、ミラ-93以降の構成は第9図の装置と同じで、インテグレ-タ-19以降の系は第6図(A)のものと同じである。但し不図示の投影レンズ系は、波長248.4nmに関して設計された、合成石英のみ主成分としたレンズアセンブリで構成されている。
【0081】
本実施例でも、図示する光学系(17、19、91、92、93、82)の作用により不図示の投影レンズ系の瞳面に第3図(A)で示す有効光源を形成しつつ、レチクルの回路パタ-ンを均一な照度で照明し、投影レンズ系により回路パタ-ン像をウエハ-上に投影して、ウエハ-のレジストに回路パタ-ン像を転写している。このような投影露光による効果は先に説明した通りであり、ウエハ-のレジストに、安定して、鮮明な0.3〜0.4μmの微細パタ-ンを記録できる。
【0082】
第11図は本発明の第8実施例を示す図であり、本発明の方法で微細パタ-ンの像を投影する半導体製造用投影露光装置の、更に他の例を示す部分的概略図である。
【0083】
本実施例ではファイバ-束101を用いた照明系を示す。ファイバ-束101の光入射面は超高圧水銀灯11の光が楕円ミラ-12によって集光する位置に配置され、各ファイバ-を介して光束が引き回されて、インテグレ-タ19の光入射面に導かれている。ファイバ-束101の超高圧水銀灯11と逆側の端、即ち光出射面は4つ束に分岐され、その一つ一つが第3図(A)の有効光源の各部分に対応している。各ファイバ-束の出口には有効光源の各部分の光量を調整するフィルタ-17が配置されている。これ以降の光学系は第8図の実施例の構成がそのまま流用されている。但し、光量モニタ-のフォトディテクタ-に、各ファイバ-束のからの光の光量(2次光源の4個の部分及び有効光源の4個の部分)のバランスを測定する為、4分割ディテクタ-102が用いられている。4分割ディテクタ-102の個々のディテクタ-は、夫々、4個のインテグレ-タ-19の出口に対応している。
【0084】
本実施例では、投影レンズ系31の瞳面に第3図(A)で示す有効光源を形成しつつ、レチクル30の回路パタ-ンを均一な照度で照明し、投影レンズ系31により回路パタ-ン像をウエハ-上に投影して、ウエハ-のレジストに回路パタ-ン像を転写している。このような投影露光による効果は先に説明した通りであり、ウエハ-のレジストに、安定して、鮮明な0.4μmの微細パタ-ンを記録できる。
【0085】
第12図は本発明の第9実施例を示す図であり、本発明の方法で微細パタ-ンの像を投影する半導体製造用投影露光装置の、更に他の例を示す部分的概略図である。
【0086】
本実施例では複数の光源を用いて照明系を構成している。ここでは、光源として超高圧水銀灯11a、11bを用いているが、光源としてエキシマレ-ザ-を使用し、レ-ザ-光学系即ち平行で発散角の少ないビ-ムに対する光学系を組むことも可能である。
【0087】
本実施例では、重なりの為図示されていないが、超高圧水銀灯を4個置いてあり、4個の超高圧水銀灯の夫々からの光束が凹レンズ103に入射して、凹レンズ103により統合されて、波長選択用干渉フィルタ-16、有効光源の各部分の光量を調整する4個のフィルタ-17を介してインテグレ-タ-19に到達する。インテグレ-タ-19以降の光学系の構成は第11図の装置と同様で、投影レンズ系31の瞳面に第3図(A)に示す有効光源を形成する。従って、本実施例でも、投影レンズ系31により回路パタ-ン像をウエハ-上に投影して、ウエハ-のレジストに回路パタ-ン像を転写している。このような投影露光による効果は先に説明した通りであり、ウエハ-のレジストに、安定して、鮮明な0.4umの微細パタ-ンを記録できる。
【0088】
以上述べた半導体製造用投影露光装置では瞳面での有効光源の配置を固定としてきた。しかしながら、実施例の最初の部分で述べた様に、有効光源の各部分の中心位置を表わすパラメ-タ-pとその半径或はそれに外接する円の半径を表わすパラメ-タ-q、又有効光源の各部分の形状は、投影露光の対象となる回路パタ-ンの種類によって最適値が異なる。従って、例えば、各実施例の装置で有効光源の形状を表すパラメ-タ-p、qを可変にする系を構成するといい。例えば、各実施例の内絞り部材18を使用するものは、絞り部材18として開口形状が可変なものを使用したり、或は複数個の互いに開口形状が異なるの絞りを用意しておくとかする。
【0089】
又、以上述べた装置は半導体製造用の装置であったが、本発明は集積回路パタ-ン像を投影する場合に限定されない。即ち、本発明は、主として縦横パタ-ンからなる微細パタ-ンを持つ物品の像を光学系により投影する様々な場合に適用される。
【0090】
又、以上述べた装置は、像投影用光学系としてレンズ系を使用するものであったが、本発明は、ミラ-系を使用する場合にも適用される。
【0091】
又、以上述べた装置は、像投影に使用する光として、i線、波長248.4nmのレ-ザ-光を用いていたが、本発明は波長の種類に関係なく適用される。従って、例えばg線(436nm)を露光波長とする半導体製造用投影露光装置にも適用されうる。
【0092】
【発明の効果】
以上、本発明では、像投影用光学系の瞳に予め決めた有効光源を形成してやることにより、空間周波数が非常に高い微小パターンの像を、簡単な手法で、投影できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
微小パターン像の投影原理を示す説明図である。
【図2】
瞳上での光分布を示す図で、(A)は従来マスクを用いた時の瞳上での光分布を示す図、(B)は位相シフトマスクを用いた時の瞳上での光分布を示す図である。
【図3】
本発明の第1実施例を示す図で、(A)は本発明の第1実施例の瞳上での有効光源の一例を示す説明図、(B)は本発明の第1実施例の瞳上での有効光源の別の例を示す説明図である。
【図4】
図3(A)の有効光源を形成する投影系と従来の投影系の周波数特性を示す図である。
【図5】
本発明の第2実施例を示す図で、(A)は本発明の第2実施例を示す投影露光装置の概略図、(B)は本発明の第2実施例で用いる絞り部材の正面図、(C)は本発明の第2実施例で用いるクロスフィルターの説明図である。
【図6】
本発明の第3実施例を示す図で、(A)は本発明の第3実施例を示す投影露光装置の概略図、(B)は本発明の第3実施例で用いる絞り部材の正面図である。
【図7】
本発明の第4実施例を示す投影露光装置の部分的概略図である。
【図8】
本発明の第5実施例を示す投影露光装置の部分的概略図である。
【図9】
本発明の第6実施例を示す投影露光装置の部分的概略図である。
【図10】
本発明の第7実施例を示す投影露光装置の部分的概略図である。
【図11】
本発明の第8実施例を示す投影露光装置の部分的概略図である。
【図12】
本発明の第9実施例を示す投影露光装置の部分的概略図である。
【符号の説明】
1:投影光学系の瞳
2a:有効光源
2b:有効光源
2c:有効光源
2d:有効光源
x:横パターンが延びる方向に沿う軸
y:縦パターンが延びる方向に沿う軸
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項8を、「前記パターン照明段階は、前記微細パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項1の像投影方法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的として、請求項12を、「前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源の前記4つの部分の夫々の形状は半径qの外接円が描ける非円形であり、0.15<q<0.3を満たすことを特徴とする請求項9の回路製造方法。」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項14を、「前記パターン照明段階は、前記回路パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項9の回路製造方法。」と訂正する。
(4)訂正事項d
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項15を、「レチクルのパターンを投影する投影光学系と、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り、前記レチクルのパターンの縦と横の各パターンの方向に延びる互いに直交する一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するレチクル照明光学系とを有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(-p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たすことを特徴とする投影露光装置。」と訂正する。
(5)訂正事項e
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項18を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「前記レチクル照明系は、前記レチクルの回路パターンを照明する光としてのi線、g線又はエキシマレーザーからの光を四角錐プリズムに照射することによって前記有効光源の前記4つの部分に対応する4つの光束を得ることを特徴とする請求項15の投影露光装置。」と訂正する。
(6)訂正事項f
明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0014】を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「又、本発明の投影露光装置は、レチクルのパターンを投影する投影光学系と、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記瞳の中心を通り、前記レチクルのパターンの縦と横の各パターンの方向に延びる互いに直交する一対の軸の部分よりも他の部分の光強度が大きい強度分布を備える有効光源を前記瞳に形成するレチクル照明光学系とを有し、前記一対の軸をxy座標のx軸とy軸、前記瞳の中心を前記xy座標の原点、前記瞳の半径を1とした時、前記有効光源が、各々の中心位置の座標が(p,p)、(-p,p)、(- p,-p)、(p,-p)である4つの部分を有し、0.25<p<0.6の条件を満たすことを特徴としている。本発明においては.前記中心位置は各々の部分の光強度分布における重心位置である。又、本発明のある形態は、前記投影光学系の瞳の中心部分及び前記一対の軸の部分の光強度がゼロである。」と訂正する。
異議決定日 2002-06-03 
出願番号 特願平3-28631
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 161- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西脇 博志  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 辻 徹二
中村 朝幸
登録日 1997-04-25 
登録番号 特許第2633091号(P2633091)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 像投影方法、回路製造方法及び投影露光装置  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 長尾 達也  
代理人 内尾 裕一  
代理人 西山 恵三  
代理人 青木 康  
代理人 長尾 達也  
代理人 西山 恵三  
代理人 内尾 裕一  
代理人 青木 康  

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