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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C04B 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 C04B |
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管理番号 | 1064301 |
異議申立番号 | 異議2001-71911 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-11-01 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-07-13 |
確定日 | 2002-06-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3124864号「窒化珪素質焼結体及びその製法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3124864号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第3124864号発明は、平成5年4月26日に特許出願され、平成12年10月27日にその特許の設定登録がなされたものである。 これに対し、高柳 馨より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成14年1月18日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正事項 平成14年1月18日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の減縮、この減縮に伴う明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的として、訂正請求書に添附した全文訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項(1)乃至訂正事項(26)のとおり訂正するものである。 (1)請求項1乃至請求項3を特許請求の範囲の減縮を目的として、次のとおり訂正する。 「【請求項1】β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0.05≦z≦0.23)結晶相を主相とし、その粒界相中に少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有してなる焼結体であって、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、且つ室温の熱伝導率が24W/m・K以上であることを特徴とする窒化珪素質焼結体。 【請求項2】窒化珪素粉末からなる主成分に対して、少なくとも酸化ルテチウムを含む周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素および酸化アルミニウム、あるいはこれらの化合物を助剤成分として含み、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、前記主成分とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合からなる混合物を成形後、1600〜1900℃の非酸化性雰囲気中で焼成し、β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0.05≦z≦0.23)結晶相と、少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有する粒界相からなる焼結体を得ることを特徴とする窒化珪素質焼結体の製法。 【請求項3】珪素粉末、あるいは珪素粉末と窒化珪素粉末からなる主成分に対して、少なくとも酸化ルテチウムを含む周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素および酸化アルミニウム、あるいはこれらの化合物を助剤成分として含み、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、前記主成分中の窒化珪素換算量とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合からなる混合物を成形後、800℃〜1500℃の窒素含有雰囲気中で熱処理をして前記珪素を窒化した後、1600〜1900℃の非酸化性雰囲気中で焼成し、β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0.05≦z≦0.23)結晶相と、少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有する粒界相からなる焼結体を得ることを特徴とする窒化珪素質焼結体の製法。」 (2)本件特許明細書(特許公報)段落【0007】を「【0007】即ち、本発明の窒化珪素質焼結体は、β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0.05≦z≦0.23)結晶相を主相とし、その粒界相中に少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有してなる焼結体であって、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、且つ室温の熱伝導率が24W/m・K以上であることを特徴とするものである。」に訂正する。 (3)本件特許明細書(特許公報)段落【0008】6行目に「0.1乃至10モル%」とあるのを「0.3乃至5モル%」に訂正する。 (4)本件特許明細書(特許公報)段落【0008】8行目に「1.2モル%乃至8.4モル%」とあるのを「1.2モル%乃至5.6モル%」に訂正する。 (5)本件特許明細書(特許公報)段落【0008】15行目に「0.1乃至10モル%」とあるのを「0.3乃至5モル%」に訂正する。 (6)本件特許明細書(特許公報)段落【0008】18行目に「1.2モル%乃至8.4モル%」とあるのを「1.2モル%乃至5.6モル%」に訂正する。 (7)本件特許明細書(特許公報)段落【0010】3行目に「0.05乃至0.35」とあるのを「0.05乃至0.23」に訂正する。 (8)本件特許明細書(特許公報)段落【0010】5行目に「zが0.35を越える」とあるのを「zが0.23を越える」に訂正する。 (9)本件特許明細書(特許公報)段落【0012】3〜4行目に「0.1乃至10モル%、特に0.3乃至5モル%であることが望ましい。」とあるのを「0.3乃至5モル%であることが重要である。」に訂正する。 (10)本件特許明細書(特許公報)段落【0012】5行目に「0.1モル%未満」とあるのを「0.3モル%未満」に訂正する。 (11)本件特許明細書(特許公報)段落【0012】6行目に「10モル%を越えると」とあるのを「5モル%を越えると」に訂正する。 (12)本件特許明細書(特許公報)段落【0012】10行目に「0.1モル%以上」とあるのを「0.3モル%以上」に訂正する。 (13)本件特許明細書(特許公報)段落【0020】1〜2行目に「0.05乃至0.35」とあるのを「0.05乃至0.23」に訂正する。 (14)本件特許明細書(特許公報)段落【0020】5行目に「1.2モル%乃至8.4モル%」とあるのを「1.2モル%乃至5.6モル%」に訂正する。 (15)本件特許明細書(特許公報)段落【0021】3〜4行目に「0.1乃至10モル%、特に0.3乃至5モル%」とあるのを「0.3乃至5モル%」に訂正する。 (16)本件特許明細書(特許公報)段落【0021】6〜7行目に「0.1モル%以上、特に0.3モル%以上」とあるのを「0.3モル%以上」に訂正する。 (17)本件特許明細書(特許公報)段落【0026】3行目に「SiCなどのは」とあるのを「SiCなどは」に訂正する。 (18)本件特許明細書(特許公報)段落【0030】9行目に「0.05乃至0.35」とあるのを「0.05乃至0.23」に訂正する。 (19)本件特許明細書(特許公報)段落【0036】表1に「(%)」とあるのを「(モル%)」に訂正する。 (20)本件特許明細書(特許公報)段落【0036】表1の試料No.13、16〜18を本発明の範囲外とする。 (21)本件特許明細書(特許公報)段落【0037】表2の試料No.13、16〜18を本発明の範囲外とする。 (22)本件特許明細書(特許公報)段落【0038】4行目に「0.35を越えるNo.14は」とあるのを「0.23を越えるNo.13、14は」に訂正する。 (23)本件特許明細書(特許公報)段落【0038】8行目に「10モル%を越えるNo.19の試料」とあるのを「5モル%を越えるNo.16〜19の試料」に訂正する。 (24)本件特許明細書(特許公報)段落【0045】表3に「(%)」とあるのを「(モル%)」に訂正する。 (25)本件特許明細書(特許公報)段落【0047】4行目に「0.35を越える」とあるのを「0.23を越える」に訂正する。 (26)本件特許明細書(特許公報)段落【0047】6〜7行目に「10モル%」とあるのを「5モル%」に訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項(1)は、請求項1乃至請求項3の記載中の「0.05≦z≦0.35」を「0.05≦z≦0.23」に、「0.1乃至10モル%」を「0.3乃至5モル%」に、「1.2モル%乃至8.4モル%」を「1.2モル%乃至5.6モル%」に、及び「15W/m・K以上」を「24W/m・K以上」にそれぞれ限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また訂正事項(2)乃至訂正事項(16)、(18)乃至(26)は、特許請求の範囲の減縮に伴う明りょうでない記載を明瞭にするものや「%」が「モル%」であることを明確化するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。さらに訂正事項(17)は文法上の誤記を訂正するものであるから、誤記の訂正に該当するものであり、しかも、いずれの訂正事項も特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、また当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2-3.むすび したがって、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件訂正発明 特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、本件請求項1乃至3に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1乃至3」という)は、訂正後の請求項1乃至請求項3に記載された事項により特定される上記「2-1.訂正事項(1)」に示すとおりのものである。 4.特許異議申立てについて (1)特許異議申立ての理由 特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第3号証を提出して、訂正前の本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、または甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び2に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号または同条第2項に違反してなされたものであると主張している。 (2)証拠の記載内容 甲第1号証乃至甲第3号証には、それぞれ次の事項が記載されている。 甲第1号証:特開平4-2664号公報 (a)「蛍石型結晶構造のRE2M2-uO7-2uの微結晶(式中、REはHo、Er、Tm、Yb及びLuの中から選ばれた希土類元素、MはHf及び/又はZrを示し、uは-1<u<1を満足する数である。)、 食塩型結晶構造のM′Nvの微結晶 (式中、M′はHf及び/又はZrを示し、vは0.7≦v≦1.2を満足する数である。)、 式REx(Si、Al)12(O、N)16(式中、REはHo、Er、Tm、Yb及びLuの中から選ばれた変性用希土類元素を示し、xは0<x≦1を満足する数である。)で表されるREα-サイアロンの結晶、 式Si6‐zAlzOzN8‐z(式中、zは0<z≦4.2を満足する数である。)で表されるβ-サイアロンの結晶、 Al、Siを含有する複合酸窒化物のAlNポリタイプ結晶、 及びREを含む前記以外の結晶相及び/又はガラス相から構成されてなる高強度サイアロン基焼結体」(第1頁特許請求の範囲) (b)「本発明は、高温高強度、高硬度及び高靱性を有する各種エンジニアリングセラミックスを製造するために有用な高強度サイアロン基焼結体に関する。」(第1頁右欄第8行乃至第11行) (c)「本発明のサイアロン基焼結体中には、β-サイアロンの結晶、Al、Siを含有する複合酸窒化物のAlNポリタイプ結晶、REを含む結晶相及び/又はガラス相、及び粒界で結晶化した蛍石型結晶構造のRE2M2‐uO7‐2uの微粒結晶及び食塩型結晶構造のM′Nvの微粒結晶が、REα‐サイアロンの結晶と共に存在する。本発明においては、この焼結体中に存在する、RE2M2‐uO7‐2u及びM′Nvの微粒結晶により、粒界相(RE2M2‐uO7-2uとREを含む結晶相及び/又はガラス相)の強度特性が向上する。特に、高温で軟化すると言われている粒界ガラス相の耐熱性が改善され、高温まで優れた機械的特性を維持することができる」(第3頁左上欄第17行〜右上欄第10行) (d)第7頁上欄の第2表には、REとして「Lu」を使用した実施例14について、「原料組成:REα-サイアロン=39.5wt%、α-窒化珪素=59wt%、HfO2=1.5wt%」、「嵩密度=3.375g/cm3」、「生成相(焼結体):REα-サイアロン=33wt%、β-サイアロン=63wt%、REMO=1.5wt%、M′N=1wt%、ANP=1.5wt%」、「曲げ強度:室温=1550MPa、1400℃=970MPa、酸化後室温強度=1350」と記載されている。 甲第2号証:特開平4-42864号公報 (a)「α-窒化珪素の結晶、 式REx(Si、Al)12(O、N)16(式中、REはHo、Er、Tm、Yb及びLuの中から選ばれた変性用希土類元素を示し、xは0<x≦2を満足する数である。)で表されるREα-サイアロンの結晶、 式Si6-zAlzOzN8-z(式中、zは0<z≦4.2を満足する数である。)で表されるβ-サイアロンの結晶、 及びREを含む少量の結晶相及び/又はガラス相から構成されてなる高強度サイアロン焼結体。」(第1頁特許請求の範囲) (b)第5頁下欄の第1表および第6頁上欄の第2表には、実施例14、15としてREが「Lu」である焼結体が記載されている。 甲第3号証:特開昭59-232971号公報 (a)「組成式:Si6-zAlzOzN8-z(ただし、0<z≦4.3)で表されるβ‐サイアロンと、組成式:Mx(Si、Al)12(O、N)16(ただし0<x≦2、M:Li、Na、Ca、Mg、Y、希土類元素のうちの1種または2種以上を示す)で表されるα-サイロアンとを主成分とし、このほかに、 分散相形成成分としての酸化ジルコニウムおよび酸化ハフニウムのうちの1種または2種:1〜40容量%、 結合相形成成分としての上記Mに含まれる元素、上記分散相を構成する金属元素、Si、およびAlの酸化物および窒化物のうちの1種または2種以上:1〜20容量%、 を含有し、かつ上記α-サイロアン/β-サイアロンの容量比が25/75〜95/5の範囲内にあることを特徴とする耐摩耗性のすぐれたサイアロン基セラミックス。」(第1頁特許請求の範囲) (b)第5頁の第1表の2には、本発明セラミックス15としてMの希土類元素が「Lu」であるセラミックスが記載されている。 (3)当審の判断 (i)本件訂正発明1について 甲第1号証の上記(a)には、「式Si6‐zAlzOzN8‐z(式中、zは0<z≦4.2を満足する数である。)で表されるβ-サイアロンの結晶・・・及びREを含む前記以外の結晶相及び/又はガラス相から構成されてなる高強度サイアロン基焼結体」が記載され、そして上記(d)には、希土類元素REが「Lu」(実施例14)の「高強度サイアロン基焼結体」の具体例について、その生成相が「REα-サイアロン=33wt%、β-サイアロン=63wt%、REMO=1.5wt%、M′N=1wt%、ANP=1.5wt%」であることが記載されているから、甲第1号証には、本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、「β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0<z≦4.2)結晶相を主相とし、その粒界相中に少なくともルテチウムを含むRE、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有してなる窒化珪素質焼結体」の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されていると云える。 そこで、本件訂正発明1と上記甲1発明とを対比すると、両者は、「β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z)結晶相を主相とし、その粒界相中に少なくともルテチウムを含む第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有してなる窒化珪素質焼結体」という点で一致し、次の(イ)及び(ロ)の点で相違していると云える。 (イ)本件訂正発明1では、β-サイアロンのzを0.05≦z≦0.23と規制し、室温の熱伝導率を24W/m・K以上とするのに対し、甲1発明では、0<z≦4.2であり、室温の熱伝導率も明らかではない点 (ロ)本件訂正発明1では、周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であるのに対し、甲1発明では、この点が必ずしも明らかでない点 次に、これら相違点の上記(イ)について検討するに、本件訂正発明1の「熱伝導率24W/m・K以上」という性質については、本件特許明細書の段落【0010】や【0020】の記載によれば、β-サイアロンのzを0.05≦z≦0.23に規制することによって達成されるものであり、そして、この「0.05≦z≦0.23」というz値も、アルミニウムの酸化物換算量の、主成分組成である珪素の窒化珪素換算量と窒化珪素の合計量とアルミニウムの酸化物換算量の合計量に対するモル分率を1.2モル%乃至5.6モル%に調製することによって得られるものであるから、この観点で、甲第1号証の記載をさらに検討すると、甲第1号証には、本件訂正発明1のz値やモル分率を満足する具体的な例は一切記載されておらず、また、熱伝導率と上記z値及びモル分率との関係について示唆する何らの記載もない。 してみると、甲第1号証には、甲1発明の上記「窒化珪素質焼結体」が「熱伝導率24W/m・K以上」という性質を具備しているとする何らの根拠も記載されていないと云えるから、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明とすることはできない。 また、甲第2号証及び甲第3号証について検討すると、これら証拠も「Lu」を含む「β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0<z≦4.2)」の焼結体や「β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0<z≦4.3)」のセラミックスを開示するだけであり、熱伝導率とz値との関係についても何ら開示するものではない。 してみると、本件訂正発明1の上記相違点(イ)については、甲第2号証及び甲第3号証にも何ら示唆されていないから、これら証拠の記載に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるとは云えない。 したがって、上記相違点(ロ)について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。 (ii)本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の「窒化珪素質焼結体」の製法に係る発明であるところ、その構成として本件訂正発明1と同様「β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0.05≦z≦0.23)結晶相」という構成を有する他に、「β-サイアロン(Si6‐zAlzOzN8‐z、0.05≦z≦0.23)結晶相」とするための「主成分とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合」という構成を有するものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできないし、また甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。 4.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件訂正発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 窒化珪素質焼結体及びその製法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相を主相とし、その粒界相中に少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有してなる焼結体であって、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、且つ室温の熱伝導率が24W/m・K以上であることを特徴とする窒化珪素質焼結体。 【請求項2】窒化珪素粉末からなる主成分に対して、少なくとも酸化ルテチウムを含む周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素および酸化アルミニウム、あるいはこれらの化合物を助剤成分として含み、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、前記主成分とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合からなる混合物を成形後、1600〜1900℃の非酸化性雰囲気中で焼成し、β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相と、少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有する粒界相からなる焼結体を得ることを特徴とする窒化珪素質焼結体の製法。 【請求項3】珪素粉末、あるいは珪素粉末と窒化珪素粉末からなる主成分に対して、少なくとも酸化ルテチウムを含む周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素および酸化アルミニウム、あるいはこれらの化合物を助剤成分として含み、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、前記主成分中の窒化珪素換算量とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合からなる混合物を成形後、800℃〜1500℃の窒素含有雰囲気中で熱処理をして前記珪素を窒化した後、1600〜1900℃の非酸化性雰囲気中で焼成し、β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相と、少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有する粒界相からなる焼結体を得ることを特徴とする窒化珪素質焼結体の製法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、室温から高温までの強度特性に優れ、さらに高熱伝導率を有し、耐熱衝撃性に優れた自動車用部品やガスタービンエンジン用部品等に使用される窒化珪素質焼結体及びその製法に関する。 【0002】 【従来技術】従来から、窒化珪素質焼結体は、耐熱性、耐熱衝撃性および耐酸化性に優れることからエンジニアリングセラミックス、特にターボローター等の熱機関用として応用が進められている。近時、高密度で高強度の焼結体を作製するために焼結助剤としてY2O3、Sc2O3などの希土類元素酸化物や酸化アルミニウムを添加することが特公昭52-3649号、特公昭58-5190号にて提案されている。 【0003】また、酸化アルミニウムを含む系においては、窒化珪素との反応によりβ-サイアロンが形成されることが知られており、このβ-サイアロンを主成分とする焼結体を得ることにより耐食性を改善することも提案されている。 【0004】 【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、焼結助剤としてY2O3等と酸化アルミニウムを併用して用いた場合には、その焼結性を高めることができ、これにより室温や高温強度に優れた高密度の焼結体が得られ、構造用材料として用いられつつあるが、その使用条件が厳しくなるとともに耐熱衝撃性等の熱に対する耐久性を高める必要があり、材料としての信頼性を高めるためにさらなる特性の向上が望まれている。 【0005】よって、本発明は、室温から高温まで自動車用部品やガスタ-ビンエンジン用部品等で使用されるに充分な機械的特性、特に、室温から1000℃の高温までの抗折強度に優れ、しかも高熱伝導率を有する耐熱衝撃抵抗に優れた窒化珪素質焼結体およびその製造方法を提供するにある。 【0006】 【問題点を解決するための手段】本発明者らは、焼結体の機械的、熱的特性を高めるためには、焼結体の主結晶相および窒化珪素相の粒界に存在する副相を制御することが重要であるという見地に基づき検討を重ねた結果、助剤成分として用いられる希土類元素化合物のうち、Lu2O3等のルテチウム化合物を用いることによりこれまで多用されているY2O3等に比較して高強度化が可能であり、且つこれを粒界相中に存在させること、また、β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z)を主結晶相として構成し、そのz値を特定の範囲に制御するとともに熱伝導率が特定以上の焼結体が、室温から1000℃の高温までの抗折強度に優れるとともに、耐熱衝撃性を高めることができることを知見した。 【0007】即ち、本発明の窒化珪素質焼結体は、β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相を主相とし、その粒界相中に少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有してなる焼結体であって、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、且つ室温の熱伝導率が24W/m・K以上であることを特徴とするものである。 【0008】また、本発明の製法は、窒化珪素粉末からなる主成分に対して、少なくとも酸化ルテチウムを含む周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素および酸化アルミニウム、あるいはこれらの化合物を助剤成分として含み、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、前記主成分とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合からなる混合物を成形後、1600〜1900℃の非酸化性雰囲気中で焼成するか、あるいは珪素粉末、あるいは珪素粉末と窒化珪素粉末からなる主成分に対して、少なくとも酸化ルテチウムを含む周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素および酸化アルミニウム、あるいはこれらの化合物を助剤成分として含み、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、前記主成分中の窒化珪素換算量とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合からなる混合物を成形後、800℃〜1500℃の窒素含有雰囲気中で熱処理をして前記珪素を窒化した後、1600〜1900℃の非酸化性雰囲気中で焼成することにより、β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相と、ルテチウム、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有する粒界相からなる焼結体を得ることを特徴とするものである。 【0009】以下、本発明を詳述する。本発明の窒化珪素質焼結体は、組織上、β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z)を主結晶相とし、少なくともルテチウムと、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有する粒界相から構成される。 【0010】本発明によれば、第1に主結晶相であるβ-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z)の組成式中のzの値が0.05乃至0.23である事が重要である。これは、zが0.05未満では、β-サイアロンの優れた特長が引き出せなく、zが0.23を越えると焼結体の熱伝導率が低下してしまうためである。 【0011】また、本発明によれば、焼結助剤成分として少なくともルテチウム化合物を用いることが重要で、粒界相中にルテチウムを含有させることにより、粒界相の融点が上昇し高温強度を高める事ができる。なお、このルテチウムは、その他の周期律表第3a族元素のうちの1種以上を併用して含有させることも当然できる。 【0012】また、これらのルテチウムの酸化物換算量、あるいはルテチウムとその他の周期律表第3a族元素のうちの1種以上の酸化物換算量の合計量が0.3乃至5モル%であることが重要である。これは、上記量が0.3モル%未満では焼結性が低下し、5モル%を越えると、焼結体中に占める粒界相の体積分率が増加し、高温強度を低下させると共に熱伝導率を低下させてしまうためである。なお、ルテチウムとその他の周期律表第3a族元素とを併用する場合には、ルテチウムが酸化物換算量で0.3モル%以上、特に全周期律表第3a族元素の酸化物換算量中、20%以上の割合で存在させることによりルテチウムの添加効果が発揮される。 【0013】本発明に用いられるルテチウム以外の周期律表第3a族元素として、Yやランタノイド元素が上げられるが、特にYb、Erが好ましい。 【0014】次に、本発明の窒化珪素質焼結体を製造する方法について説明する。まず、原料粉末として窒化珪素粉末、または珪素粉末および/または窒化珪素粉末を主成分として用いる。窒化珪素粉末はそれ自体α-Si3N4、β-Si3N4のいずれでも用いることができ、それらの粒径は0.4〜1.2μmが好ましい。 【0015】出発原料として珪素粉末を用いると、後述する窒化工程において、寸法変化が無く、重量増加するために、成形体の密度が向上し、焼成時の寸法収縮量を小さくでき、焼結体の寸法精度を向上できる。珪素粉末は窒化を容易にするためにその平均粒径が10μm以下、特に3μm以下の微粒のものが適当である。ただし、出発原料中に珪素粉末を多量に含む場合は、後述する窒化工程において、添加された珪素粉末を全て窒化珪素に変換することが困難となり、逆に特性が低下することがあるために、珪素粉末と窒化珪素粉末とを珪素粉末の窒化珪素換算量と窒化珪素粉末の比率が1以下となる比率で併用することが好ましい。 【0016】次に、上記主成分に対する助剤成分として、少なくも酸化ルテチウム、あるいは酸化ルテチウムと周期律表第3a族元素酸化物のうちの一種以上と、酸化珪素、酸化アルミニウム粉末を添加するか、あるいはこれらの成分の化合物粉末を用いる。ここで、酸化珪素は、窒化珪素原料に不可避的に含まれる酸素、あるいは、SiO2等の添加物として添加する全量を示している。 【0017】本発明による窒化珪素と酸化アルミニウムの反応によるβ-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z)の生成反応は下記化1 【0018】 【化1】 【0019】のように考えられる(M.E.MILBERG and W.M.MILLER,J.Am.Ceram.Soc.,61 3-4 179(1978))。 【0020】したがって、zの値を0.05乃至0.23の間に制御するためには、アルミニウムの酸化物換算量の、主成分組成である珪素の窒化珪素換算量と窒化珪素の合計量とアルミニウムの酸化物換算量の合計量に対するモル分率が1.2モル%乃至5.6モル%になるように調製、混合する必要がある。 【0021】一方、助剤成分として添加される酸化ルテチウム、あるいは酸化ルテチウムとその他の周期律表第3a族元素酸化物との合計量は0.3乃至5モル%になるように調製、混合する。なお、ルテチウム以外の周期律表第3a族元素酸化物を併用する場合、酸化ルテチウムは0.3モル%以上であることが必要である。 【0022】このようにして得られた混合粉末を公知の成形方法、例えば、プレス成形、鋳込み成形、押出し成形、射出成形、冷間静水圧成形などにより所望の形状に成形する。 【0023】次に、成形体に珪素粉末が含まれる場合は、成形体を窒素含有雰囲気中で800℃〜1500℃の温度で熱処理して成形体に含まれる珪素粉末を窒化し、窒化珪素を生成させる。この窒化処理において、含有される珪素粉末をすべて窒化させるためには、上記温度範囲内にて、温度を多段に上昇させつつ徐々に窒化させていくことが好ましい。 【0024】その後、得られた成形体を公知の焼成方法、例えば、ホットプレス方法、常圧焼成、窒素ガス圧力焼成、さらには、これらの焼成後にHIP焼成やガラスシ-ルHIP焼成等で焼成し、緻密な焼結体を得る。この焼結過程でルテチウム、あるいはルテチウムと周期律表第3a族元素のうちの一種以上とアルミニウムと酸素と窒素から構成される液相を通して、窒化珪素粒子が溶解-再析出 【化1】 [2-(z/4)]Si3N4+(z/2)Al2O3 → Si6-zAlzOzM8-z+(z/4)SiO2 段階で、窒化珪素が液相中のアルミニウム元素と酸素元素を取り込みながら、焼結が進行し、β-サイアロン主結晶相が生成されると考えられる。 【0025】この時の焼成温度は、高すぎると主結晶相であるβ-サイアロン結晶が粒成長し強度が低下するため、1900℃以下、特に、1600〜1850℃の窒素ガス含有非酸化性雰囲気であることが望ましい。 【0026】また、本発明によれば、上記組成に加え、周期律表第4a、5a、6a族元素金属や、それらの炭化物、窒化物、珪化物、または、SiCなどは、分散粒子やウィスカ-として本発明の焼結体に存在しても特性を劣化させるような影響が少ないことから、これらを周知技術の基づき、適量添加して複合材料として特性の改善を行うことも当然可能である。 【0027】 【作用】窒化珪素焼結体の機械的特性および熱的特性は、構成されるβ-サイアロン粒子と粒界相によって決定されるが、通常、セラミックスの熱衝撃破壊抵抗係数は下記数1 【0028】 【数1】 【0029】より求められる。式中、R‘は熱衝撃破壊抵抗係数、Sは抗折強度、Eはヤング率、νはポアソン比、kは熱伝導率、αは熱膨張率である焼結体のヤング率、ポアソン比、熱膨張率は粒界相量が極端に多くならない限り、ほぼ一定であるが、抗折強度と熱伝導率は焼結体により大幅に変化する。特に、高強度材料において、数1から明らかなように、熱伝導率を高める事で、熱衝撃破壊抵抗係数を高める事ができ、ひいては焼結体の耐熱衝撃抵抗を高める事ができる。 【0030】セラミックスは結晶と粒界相から構成される多結晶体である。したがって、熱伝導率を低下させるフォノン散乱の要因が多数存在する。β-サイアロン焼結体の熱伝導率は、粒子内部や粒界に残存している不純物量、結晶の完全性、微構造に大きく依存している。特に、結晶内のAlとOの固溶量の増加とともに熱伝導率は低下する。本発明によれば、上記観点に基づき、熱伝導率とAl 【数1】 R’=S(1-ν)k/Eα とOの固溶量との関係を検討した結果、zが0.05乃至0.23の範囲において熱伝導率を最大にすることができ、これにより焼結体の耐熱衝撃抵抗を高めることができる。 【0031】また、ルテチウムは、周期律表第3a族元素の中でも最もイオン半径が小さい元素であり、粒界相の融点およびガラス転移温度を上昇できるため室温から高温まで機械的強度を向上させることができる。 【0032】本発明によれば、上述したようにβ-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z)結晶相のz値を制御し、且つ粒界相に少なくともルテチウムと珪素とアルミニウムと酸素と窒素を含有せしめることにより、室温から1000℃までの優れた機械的特性と優れた熱伝導率を付与することができ、これにより高温での耐熱衝撃性を大幅に向上することができる。 【0033】 【実施例】 実施例1 窒化珪素粉末(BET比表面積9m2/g、α率98%、酸素量1.2重量%)と酸化ルテチウム、あるいは酸化ルテチウムと各種の周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末を用い、一部、酸化ルテチウムと酸化珪素粉末から合成したLu2Si2O7粉末を用いて(試料No.11)、表1に示す組成になるように調合後、1t/cm2で金型成形した。 【0034】成形体を炭化珪素質の匣鉢に入れて、組成変動を少なくするために、雰囲気を制御し、加圧窒素ガス気流中、1800℃の温度で10時間焼成した。 【0035】得られた焼結体をJIS-R1601にて指定されている形状まで研磨し試料を作製した。この試料についてアルキメデス法に基づく比重測定、X線回折測定によるβ-窒化珪素結晶のピークシフトよりz値を求め、さらにJIS-R1601に基づく室温および1000℃での4点曲げ抗折強度試験を実施した。また、熱伝導率をレーザーフラッシュ法により求めた。結果を表2に示した。 【0036】 【表1】 【0037】 【表2】 【0038】表1および表2の結果によると、β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z)結晶相中のz値が0.05未満のNo.1は緻密化不足であり、z値が0.23を越えるNo.13、14は熱伝導率が低下した。ルテチウムを含まない試料No.3、4、5は、ルテチウムを含む本発明品に比較して高温強度が低いことがわかる。さらに、ルテチウムと周期律表第3a族元素の酸化物換算量が5モル%を越えるNo.16〜19の試料は熱伝導率が低下していた。これらの比較例に対して、その他の本発明に基づく試料は、いずれも室温および1000℃の抗折強度に優れるとともに、高い熱伝導率を有するものであった。 【0039】実施例2 原料粉末として平均粒径3μm、酸素量1.1重量%の珪素粉末と窒化珪素粉末(BET比表面積9m2/g、α率98%、酸素量1.2重量%)と酸化ルテチウム、周期律表第3a族元素酸化物素粉末、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末を用いて、表3に示す組成になるように調合後、1t/cm2で金型成形した。 【0040】得られた成形体を窒素気流中、1200℃で5時間、さらに1400℃で10時間窒化処理をした。この際、重量増加率から珪素の窒化率を下記数2 【0041】 【数2】 【0042】により求めた。 【0043】得られた窒化体を炭化珪素質の匣鉢に入れて、組成変動を少なくするために、雰囲気を制御し、加圧窒素ガス気流中で1800℃の温度で10時間 【数2】 の条件で焼成した。 【0044】得られた焼結体の評価は実施例1と同じに行った。結果は表4に示す。 【0045】 【表3】 【0046】 【表4】 【0047】表3および表4の結果によると、β-サイアロン(Si6-ZAlzOzN8-z)結晶相中のz値が0.05未満のNo.22は緻密化不足であり、z値が0.23を越えるNo.26は熱伝導率が低下していた。ルテチウムを含まないNo.24は高温強度が低下していた。さらに、ルテチウムの酸化物換算量が5モル%を越えるNo.27の試料は熱伝導率が低下していた。これらの比較例に対して、その他の本発明に基づく試料は、いずれも高温までの抗折強度に優れ、高い熱伝導率を有していた。 【0048】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、β-サイアロンを主相として系において、室温から1000℃までの強度を高めるとともに耐熱衝撃性を向上させることができ、自動車用部品やガスタービンエンジン用部品等への実用化を図ることができる。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 本件訂正の要旨は、本件特許第3124864号発明の特許明細書を平成14年1月18日付け訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的として、次の訂正事項(1)乃至(26)のとおりに訂正するものである。 (1)請求項1乃至請求項3を特許請求の範囲の減縮を目的として、次のとおり訂正する。 「【請求項1】β-サイアロン(Si6-zAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相を主相とし、その粒界相中に少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有してなる焼結体であって、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、且つ室温の熱伝導率が24W/m・K以上であることを特徴とする窒化珪素質焼結体。 【請求項2】窒化珪素粉末からなる主成分に対して、少なくとも酸化ルテチウムを含む周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素および酸化アルミニウム、あるいはこれらの化合物を助剤成分として含み、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、前記主成分とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合からなる混合物を成形後、1600〜1900℃の非酸化性雰囲気中で焼成し、β-サイアロン(Si6-zAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相と、少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有する粒界相からなる焼結体を得ることを特徴とする窒化珪素質焼結体の製法。 【請求項3】珪素粉末、あるいは珪素粉末と窒化珪素粉末からなる主成分に対して、少なくとも酸化ルテチウムを含む周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素および酸化アルミニウム、あるいはこれらの化合物を助剤成分として含み、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、前記主成分中の窒化珪素換算量とアルミニウムの酸化物換算量との合計量に対するアルミニウムの酸化物換算量が1.2モル%乃至5.6モル%の割合からなる混合物を成形後、800℃〜1500℃の窒素含有雰囲気中で熱処理をして前記珪素を窒化した後、1600〜1900℃の非酸化性雰囲気中で焼成し、β-サイアロン(Si6-zAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相と、少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有する粒界相からなる焼結体を得ることを特徴とする窒化珪素質焼結体の製法。」 (2)本件特許明細書(特許公報)段落【0007】を「【0007】即ち、本発明の窒化珪素質焼結体は、β-サイアロン(Si6-zAlzOzN8-z、0.05≦z≦0.23)結晶相を主相とし、その粒界相中に少なくともルテチウムを含む周期律表第3a族元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含有してなる焼結体であって、前記周期律表第3a族元素の総量が酸化物換算で0.3乃至5モル%であり、且つ室温の熱伝導率が24W/m・K以上であることを特徴とするものである。」に訂正する。 (3)本件特許明細書(特許公報)段落【0008】6行目に「0.1乃至10モル%」とあるのを「0.3乃至5モル%」に訂正する。 (4)本件特許明細書(特許公報)段落【0008】8行目に「1.2モル%乃至8.4モル%」とあるのを「1.2モル%乃至5.6モル%」に訂正する。 (5)本件特許明細書(特許公報)段落【0008】15行目に「0.1乃至10モル%」とあるのを「0.3乃至5モル%」に訂正する。 (6)本件特許明細書(特許公報)段落【0008】18行目に「1.2モル%乃至8.4モル%」とあるのを「1.2モル%乃至5.6モル%」に訂正する。 (7)本件特許明細書(特許公報)段落【0010】3行目に「0.05乃至0.35」とあるのを「0.05乃至0.23」に訂正する。 (8)本件特許明細書(特許公報)段落【0010】5行目に「zが0.35を越える」とあるのを「zが0.23を越える」に訂正する。 (9)本件特許明細書(特許公報)段落【0012】3〜4行目に「0.1乃至10モル%、特に0.3乃至5モル%であることが望ましい。」とあるのを「0.3乃至5モル%であることが重要である。」に訂正する。 (10)本件特許明細書(特許公報)段落【0012】5行目に「0.1モル%未満」とあるのを「0.3モル%未満」に訂正する。 (11)本件特許明細書(特許公報)段落【0012】6行目に「10モル%を越えると」とあるのを「5モル%を越えると」に訂正する。 (12)本件特許明細書(特許公報)段落【0012】10行目に「0.1モル%以上」とあるのを「0.3モル%以上」に訂正する。 (13)本件特許明細書(特許公報)段落【0020】1〜2行目に「0.05乃至0.35」とあるのを「0.05乃至0.23」に訂正する。 (14)本件特許明細書(特許公報)段落【0020】5行目に「1.2モル%乃至8.4モル%」とあるのを「1.2モル%乃至5.6モル%」に訂正する。 (15)本件特許明細書(特許公報)段落【0021】3〜4行目に「0.1乃至10モル%、特に0.3乃至5モル%」とあるのを「0.3乃至5モル%」に訂正する。 (16)本件特許明細書(特許公報)段落【0021】6〜7行目に「0.1モル%以上、特に0.3モル%以上」とあるのを「0.3モル%以上」に訂正する。 (17)本件特許明細書(特許公報)段落【0026】3行目に「SiCなどのは」とあるのを「SiCなどは」に訂正する。 (18)本件特許明細書(特許公報)段落【0030】9行目に「0.05乃至0.35」とあるのを「0.05乃至0.23」に訂正する。 (19)本件特許明細書(特許公報)段落【0036】表3に「(%)」とあるのを「(モル%)」に訂正する。 (20)本件特許明細書(特許公報)段落【0036】表1の試料No.13、16〜18を本発明の範囲外とする。 (21)本件特許明細書(特許公報)段落【0037】表2の試料No.13、16〜18を本発明の範囲外とする。 (22)本件特許明細書(特許公報)段落【0038】4行目に「0.35を越えるNo.14は」とあるのを「0.23を越えるNo.13、14は」に訂正する。 (23)本件特許明細書(特許公報)段落【0038】8行目に「10モル%を越えるNo.19の試料」とあるのを「5モル%を越えるNo.16〜19の試料」に訂正する。 (24)本件特許明細書(特許公報)段落【0045】表1に「(%)」とあるのを「(モル%)」に訂正する。 (25)本件特許明細書(特許公報)段落【0047】4行目に「0.35を越える」とあるのを「0.23を越える」に訂正する。 (26)本件特許明細書(特許公報)段落【0047】6〜7行目に「10モル%」とあるのを「5モル%」に訂正する。 |
異議決定日 | 2002-05-17 |
出願番号 | 特願平5-99587 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YA
(C04B)
P 1 652・ 113- YA (C04B) |
最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
沼沢 幸雄 |
特許庁審判官 |
野田 直人 唐戸 光雄 |
登録日 | 2000-10-27 |
登録番号 | 特許第3124864号(P3124864) |
権利者 | 京セラ株式会社 |
発明の名称 | 窒化珪素質焼結体及びその製法 |