• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1064319
異議申立番号 異議2001-71348  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-27 
確定日 2002-06-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3106786号「半導体装置およびその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3106786号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続きの経緯
本件特許第3106786号の請求項1乃至4に係る発明についての出願は、平成5年8月26日になされ、平成12年9月8日にその特許の設定登録がなされ、その後、佐藤勝明より特許異議の申立てがなされ、平成13年11月6日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年1月15日に訂正請求がなされたものである。

(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
*訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1における、「基板の同一平面上に酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体と金属層とが形成され、前記金属層の一部が酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体の上に重なっている半導体装置」及び「アルミニウムよりも貴である金属」を、それぞれ「基板の同一平面上に酸化インジウムスズ導電体と金属層とが形成され、前記金属層の一部が前記酸化インジウムスズ導電体の上に重なっている半導体装置」及び「アルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属」と訂正する。
*訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2における、「拡散防止金属層」を、「拡散防止金属層としてチタン」と訂正する。
*訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3における、「基板の一主面上に酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体を被着し、フォトリソグラフィにより加工する工程と、前記酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体上に標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を含むアルミニウムを被着し、前記標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を含むアルミニウム合金をポジ型フォトリソグラフィにより加工する工程とを含む半導体装置の製造方法。」を、「基板の一主面上に酸化インジウムスズ導電体を被着し、前記酸化インジウムスズ導電体をポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程と、前記酸化インジウムスズ導電体上に標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウムを被着し、前記標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウム合金をアルカリ性の現像液を用いるポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程とを含む半導体装置の製造方法。」と訂正する。
*訂正事項d
特許請求の範囲の請求項4における、「アルミニウムよりも貴である金属」及び「拡散防止金属層」を、それぞれ「アルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属」及び「拡散防止金属層としてチタン」と訂正する。
*訂正事項e
段落0006における、
「【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、配線金属としてアルミニウムに標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を添加したものを用いるようにしたものである。添加する金属は、好ましくはパラジウム、バナジウム、タングステン、タンタル、ニッケル、インジウム、チタン等があげられる。」を、
「【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、配線金属としてアルミニウムに標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を添加したものを用いるようにしたものである。添加する金属は、好ましくはパラジウム、バナジウム、ニッケルがあげられる。」と訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、「酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体」及び「アルミニウムよりも貴である金属」とあるのを、それぞれ「酸化インジウムスズ導電体」及び「パラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項2において、「拡散防止金属層」とあるのを、「チタン」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
上記訂正事項cは、特許請求の範囲の請求項3において、「酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体」、「フォトリソグラフィにより加工する工程」、「アルミニウムよりも貴である金属」及び「ポジ型フォトリソグラフィにより加工する工程」とあるのを、それぞれ「酸化インジウムスズ導電体」、「ポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程」、「パラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属」及び「アルカリ性の現像液を用いるポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
上記訂正事項dは、特許請求の範囲の請求項4において、「アルミニウムよりも貴である金属」及び「拡散防止金属層」とあるのを、それぞれ「パラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属」及び「チタン」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
上記訂正事項eは、請求項1乃至4が訂正されたことに伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正で、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第1項ただし書、第2項乃至第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

(3)特許異議申立てについての判断
ア.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠として、甲第1号証(特開平4-254824号公報)、甲第2号証(特開平3-246524号公報)及び参考文献1(特開昭64-36097号公報)を提示して次のように主張している。
本件請求項1記載の発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項2乃至4記載の発明は、甲第1乃至2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1乃至4に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。

イ.本件発明
訂正明細書の本件発明は、特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものである。
「基板の同一平面上に酸化インジウムスズ導電体と金属層とが形成され、前記金属層の一部が前記酸化インジウムスズ導電体の上に重なっている半導体装置において、前記金属層がアルミニウムに標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むことを特徴とする半導体装置。(以下、「本件発明1」という。)。
金属層の下側に拡散防止金属層としてチタンを配置したことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。(以下、「本件発明2」という。)。
基板の一主面上に酸化インジウムスズ導電体を被着し、前記酸化インジウムスズ導電体をポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程と、前記酸化インジウムスズ導電体上に標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウムを被着し、前記標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウム合金をアルカリ性の現像液を用いるポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程とを含む半導体装置の製造方法。(以下、「本件発明3」という。)。
標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウムの下側に拡散防止金属層としてチタンを配置する工程を含むことを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。(以下、「本件発明4」という。)。

ウ.引用例
異議申立人が提出した甲第1号証には、液晶表示装置用アレイ基板及びその製造方法が図面とともに開示されている。そして同号証には、次のように記載されている。
「【0012】このように構成されたアレイ基板を、図2を参照して製造工程的に説明する。
先ず、プラズマCVD法によるSiOx膜付き透明ガラス基板1上に、スパッタ法によりMo・Ta膜8を3000オングストロ-ム堆積させる。続いて、リソグラフィを用いてゲ-ト電極を含むアドレス配線パタ-ンを形成し、CDE(Chemical Dry Eching)でCF4+O2混合ガスを用いて、Mo・Ta膜8を30度以下のテ-パが出来るようにエッチングする。
【0013】次に、プラズマCVD法によりSiOx9、SiNx10、a-Si(アモルファスシリコン)11、SiNx12の4層を連続堆積する。上層のSiNx12をパタ-ニングし、前処理後にソ-ス・ドレイン電極のコンタクトとして、n+a-Si膜13をプラズマCVD法により堆積する。
【0014】次に、a-Siをパタ-ニングし、透明画素電極(表示電極)としてITO(Indium Tin Oxide)14を形成する。この透明画素電極は、補助容量7の一方の電極の一部としても使用する。続いて、アドレス配線パッド部の開口をHF系エッチング液で行なう。次に、マグネトロンスパッタ法により、2原子%Taを含むAl合金層を合金タ-ゲットで5000オングストロ-ム堆積させる。スパッタ法は、AlとTaそれぞれのタ-ゲットの2元スパッタ法でも可能である。これを、燐酸+硝酸+酢酸の混酸によりエッチングし、デ-タ配線3、ソ-ス電極15およびドレイン電極16として形成する。エッチングはそのほかに、ドライエッチングでも可能で、Cl2+CF4系を用いれば良い。この後、RIE(Reactive Ion Etching)により、バックチャネル上のn+a-Si膜13を除去する。次に、パッシベ-ションとして、プラズマCVD法によりSiNx17を形成すれば、液晶表示装置用アレイ基板が完成する。
【0015】上記の場合、ソ-ス電極15は、直接、透明画素電極であるITO14と接続しているが、ソ-ス電極15はAl金属と10原子%以下の高融点金属を含む合金からなっているため、ソ-ス電極15とITO14との接続部もAl金属と10原子%以下の高融点金属を含む合金からなり、この発明の特徴となっている。
そして、デ-タ配線抵抗は、平均デ-タ配線幅を10μm、デ-タ配線長を20cmとした場合、約3kΩとなり、Al単層膜5000オングストロ-ムでの2kΩの1.5倍しか増加しなかった。又、ITOとの電蝕反応及びオ-ミック性については、全く問題はなかった。」(段落0012〜段落0015)
「【0019】ここで表1の「加工性」における○印はエッチング可能を表わし、×印はエッチング不可能を表わしている。「ITOとの電蝕反応性」における○印は起こる、△印は一部起こる、×印は起こらないをそれぞれ表わしている。「ITOとのオ-ミック性」における○印は良好を表わし、×印は悪いを表わしている。
【0020】そして、各薄膜は室温でのマグネトロンスパッタ法により形成された。Al合金の各薄膜とも高融点金属の成分が10原子%以上存在すると抵抗率が大きくなり、大面積LCDのデ-タ配線として使用出来なくなる。又、10原子%以下の薄膜は、エッチング加工性が良く、ITOとの電蝕反応性がなく、ITOとのオ-ミック性が十分とれる薄膜となっている。
尚、高融点金属としては表1に示されたもの以外に、Nb(ニオブ)やW(タングステン)等であっても良い。」(段落0019〜段落0020)及び表1。
異議申立人が提出した甲第2号証には、液晶表示素子及びその製造方法が図面とともに開示されている。そして同号証には、次のように記載されている。
「第1図(a)〜(e)は本発明の液晶表示素子に用いられる基板の電極配線の製造工程の一実施例を示す工程図である。同図において、1はガラス基板、2はITOからなる第1層、3はMoからなる第2層、4はAlからなる第3層、5はフォトレジストである。先ず、ガラス基板1上にスパッタ法により膜厚1000ÅのITO2を形成し、通常のフォトリソ技術によりストライプ状のパターンを形成した(第1図(a)参照)。
次に、膜厚500ÅのMoと、膜厚3000ÅのAlの積層膜をITOと同様にスパッタ法にて形成した。さらに、ポジ型フォトレジスト5(OFPR-800 東京応化(株)製)をロールコータ一を用いて約1μmの厚さに塗布した後(第1図(b)参照)、露光し、有機アルカリを主成分とする現像液(NMD-3 東京応化(株)製)に浸積してパターンを形成した(第1図(c)参照)。この工程において、Alはアルカリ溶液に溶解するが、AlとITOの間にMoが存在するために、ITOにピンホールが発生することを防ぐことができる。
次に、リン酸に硝酸、酢酸および水を少量加えた16:1:2:1の容量比のエッチング液でAl,Moをエッチングした後、フォトレジストを剥離して金属電極を形成した(第1図(d)参照)。このとき、上記エッチング液に対するエッチング速度は、通常AlよりMoの方が大きいため、Al電極のオーバーハングが形成される。第1図(e)は第1図(d)のAの部分を示す部分拡大図であり、Al電極のオーバーハングの状態を示す。
この基板に配向処理を施し、該基板2枚を貼り合わせた後に強誘電性液晶(商品名:CS-1014 チッソ(株)社製)を封入して液晶表示装置を得た。」(第3頁左上欄第8行〜右上欄第19行)
「以上、実施例1,2では金属配線としてAlを用いる場合について述べたが、エレクトロマイグレーションや耐触性の観点から、Al-Si,Al-Si-Cu、Al-Ti等のAl合金を金属配線に使う場合にも、Mo-Ta合金のTa含有率又はMo-Ti合金のTi含有率を調製することにより、上記Al合金とMo-Ta合金又はMo-Ti合金のエッチング速度を同じくすることが可能であり、同様の効果を得ることができる。」(第3頁右下欄第11行〜19行)

異議申立人が提出した参考文献1には、半導体装置において、ITOとAl金属との間に拡散防止層を形成することが記載されている。

エ.対比・判断
(本件発明1及び3について)
本件発明1と甲第1号証に記載の発明を対比すると、甲第1号証には、本件発明1の必須の構成要件である、基板の同一平面上に酸化インジウムスズ導電体と金属層とが形成され、前記金属層の一部が酸化インジウムスズ導電体の上に重なっている半導体装置において、前記金属層がアルミニウムに標準単極電位がアルミニウムよりも貴である、「パラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含む」点について記載も示唆もされていない。
次に本件発明3と甲第1乃至2号証に記載の発明を対比すると、甲第1乃至第2号証には、本件発明3の必須の構成要件である、半導体装置の製造方法において、「酸化インジウムスズ導電体上に標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウムを被着し、前記標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウム合金をアルカリ性の現像液を用いるポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程」を採用する点について記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1及び3は、それぞれ上記の点を備えることにより、明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1及び3が、甲第1、第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。
(本件発明2及び4について)
本件発明2及び4は、本件本件発明1又は3の構成を前提とするものであるから、本件発明1及び3と同様の理由により、本件発明2及び4が甲第1乃至第2号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
なお異議申立人の提出した参考文献1を参酌しても、本件発明1乃至4について、上記の結論は変わらない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1乃至4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1乃至4に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の同一平面上に酸化インジウムスズ導電体と金属層とが形成され、前記金属層の一部が前記酸化インジウムスズ導電体の上に重なっている半導体装置において、前記金属層がアルミニウムに標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 金属層の下側に拡散防止金属層としてチタンを配置したことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】 基板の一主面上に酸化インジウムスズ導電体を被着し、前記酸化インジウムスズ導電体をポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程と、
前記酸化インジウムスズ導電体上に標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウムを被着し、前記標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウム合金をアルカリ性の現像液を用いるポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程とを含む半導体装置の製造方法。
【請求項4】 標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウムの下側に拡散防止金属層としてチタンを配置する工程を含むことを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は半導体装置、特に液晶などと組み合わせて画像表示装置を構成するための薄膜トランジスタ(以後TFTと呼ぶ)製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のTFTの構造およびその製造方法を図6を参照して説明する。まず、ガラスなどの透明絶縁基板1上にCrを成膜して、フォトリソグラフィー技術によりゲート電極2を形成する。次にTFTの主材料である窒化シリコン(SiNx)からなるゲート絶縁体層3、アモルファスシリコン(a-Si)半導体層4、およびソース、ドレイン電極-半導体層間でオーミック接触を得るためのn+-a-Siからなるオーミックコンタクト層5をプラズマCVD法により連続成膜し、TFTを形成するところ以外のa-Si半導体層4およびオーミックコンタクト層5をフォトリソグラフィ技術によりエッチング除去する。次に酸化インジウムズズ(ITO)を成膜して、フォトリソグラフィー技術により透明画素電極6を形成する。
【0003】
次に、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)の順に成膜して、フォトリソグラフィー技術により拡散防止層7、ソース、ドレイン電極8a、8bを形成し、TFTのチャンネル部上のn+-a-Si層5を除去してTFTが完成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の構成を有するTFTの製造方法では、ソース、ドレイン電極7a、7bを形成する際のフォトリソグラフィにポジ型レジストを用いた場合、現像液がアルカリ性であることから、図4に示すように、アルカリ水溶液中ではITOの還元電位よりもアルミニウムの酸化電位の方が卑であるために、レジストの現像工程中にアルミニウムとITO間で酸化還元反応を起こしてITOが還元され、腐食するという課題が発生した。従って、上述のフォトリソグラフィではネガ型レジストしか使用できないため、フォトリソグラフィを加工精度が高く剥離の容易なポジ型に統一することができず、製造工程上不合理であった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、ITOと電食反応を起こすことなく、ポジ型レジストを用いてAlを主材とする金属配線を形成することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、配線金属としてアルミニウムに標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を添加したものを用いるようにしたものである。添加する金属は、好ましくはパラジウム、バナジウム、ニッケルがあげられる。
【0007】
【作用】
本発明は上記構成により、ポジ型レジスト用現像液中におけるアルミニウム主材とする配線金属の酸化電位が純粋なAlの酸化電位よりも貴側にシフトしてITOの還元電位よりも貴になるため、配線金属-ITO間でのの電池反応が成立せず、ITOの還元反応による腐食を防止でき、従ってポジ型のフォトリソグラフィによりソース、ドレイン電極等の配線を形成でき、その結果、ネガレジストを使用するときよりも微細加工が可能となり、高精細のTFTアレイを形成することができる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。
【0009】
図1は、本実施例によるよるTFTの構造および製造方法を示す。図1(a)に示すように、第1の工程として絶縁透明基板上11に金属を成膜し、ポジ形フォトリソグラフィにより所定の形状にパタ-ニングしてゲート電極12とする。次に、図1(b)に示すように、第2の工程として透明基板11上にP-CVD法等でゲート絶縁体層13、非晶質シリコン半導体層14、チャネル保護絶縁体層15を成膜する。次に図1(c)に示すように、第3の工程として透明絶縁基板11上のゲ-ト電極12上のチャネル保護絶縁体層15をTFTが形成できるようにポジ形フォトリソグラフィによりパタ-ニングする。次に図1(d)に示すように、第4の工程としてP-CVD法で透明絶縁基板11上にP(リン)を不純物とした不純物半導体であるn+:非晶質シリコン層16を形成する。さらに図1(e)に示すように、第5の工程としてチャネル保護絶縁体層15を覆うようにn+:非晶質シリコン層16と非晶質シリコン半導体層14とを将来ソ-ス・ドレイン電極になるようにポジ形フォトリソグラフィによりパタ-ニングする。次に図1(f)に示すように、第6の工程として透明絶縁基板11上に表示用透明画素電極材料であるITOを成膜し、画素電極17になるようにポジ形フォトリソグラフィによりパタ-ニングする。そして図1(g)に示すように、第7の工程として透明絶縁基板11上にTi等の拡散防止バリヤ金属18、パラジウム(Pd)を5at%添加したAl19を成膜し、そのAl19の一部をすでにパターニングされている表示用透明画素電極17であるITOの上とn+:非晶質シリコン層16の上とに重ねて接続するようにポジ形フォトリソグラフィによりパタ-ニングして、液晶表示装置のためのTFTアレイを形成する。通常は最終SiNx膜等のパッシベ-ション膜20を形成、パタ-ニングする工程をへてTFTアレイが完成する。
【0010】
本実施例によれば、ソース、ドレイン電極19材料であるPdを添加したAlは、ポジ現像液中でITOとの間の酸化還元反応が抑制され、ITOの腐食を防止できる。これは、図4に示すように、Pdを添加したAlのアノード分極電位がITOのカソード分極電位よりも貴であるために、ITOとの間で電池反応が成立しないためである。従って、本実施例では基本的に全てポジレジストを使用して、パタ-ニング形成できる。また、Pdの添加量も数at%であるため、比抵抗の増加も小さい。
【0011】
また、Alに添加する金属として、Pd以外にバナジウム、タングステン、タンタル、ニッケル、インジウム、チタンを使用しても同様の効果があることを確認した。
【0012】
図5に、各種金属を添加したAlの比抵抗および酸化電位のシフト量と添加濃度の関係を示す。図に示すごとく、添加濃度が大きくなると比抵抗が増加し、また、酸化電位のシフト量も大きくなる。酸化電位のシフト量は添加する金属の種類により異なり、添加濃度は比抵抗も考慮しながら適正に決定する。
【0013】
次に本発明の第2の実施例におけるTFTの製造工程について図2を用いて説明する。まず図2(a)に示すように、第1の工程として絶縁透明基板31上に光遮弊金属膜32を成膜し、ポジ形フォトリソグラフィにより所定の形状にパタ-ニングする。次に図2(b)に示すように、層間絶縁膜33としてSiO2を成膜し、続いてITOを成膜して画素電極34およびソース電極35になるようにポジ形フォトリソグラフィによりパタ-ニングする。
【0014】
次に図2(c)で示すように、P-CVD法により非晶質シリコン半導体層36を成膜し、図のごとくポジ形フォトリソグラフィにより島状にパターニングする。その後、図(d)に示すように、Mo層37、Pdを添加したAl層38を成膜し、そのAl層38の一部をソース電極35であるITO上に重ねて接続するようにポジ形フォトリソグラフィによりパタ-ニングしてソース配線を形成し、P-CVD法等でゲ-ト絶縁体層39を成膜する。最後に図(e)で示すように、Alを成膜してポジ形フォトリソグラフィによりパターニングしてゲート電極40を形成し、本実施例のTFTアレイが完成する。本実施例においても全てポジレジストを用いてパターニングできる。
【0015】
次に本発明の第3の実施例におけるTFTの製造工程について図3を用いて説明する。まず図3(a)に示すように、透明絶縁基板41上に多結晶シリコン半導体42を成膜し、図のごとくパターニングする。次に図3(b)に示すように、LPCVD法によりSiO2ゲート絶縁膜43を成膜した後、ゲート電極44を形成し、SiO2層間絶縁膜45を成膜する。次に図3(c)に示すように、ソース領域46およびドレイン領域47となる位置のゲート絶縁膜43に開孔し、リンをイオン注入してソース電極およびドレイン電極を形成する。次に図3(d)に示すように、ITOからなる表示電極48を形成し、最後に、Pdを添加したAl層49を成膜し、パターニングしてソース配線を形成し、本実施例のTFTを完成する。本実施例においても前述の実施例同様全てポジレジストを用いてパターニングできる。
【0016】
次に本発明の第4の実施例におけるTFTの加工方法について説明する。上述してきた第1〜第3の実施例のTFTにおいて、ソース配線のパターニング後、陽極酸化法によりソース配線の表面を酸化する。本実施例によれば、ソース配線の表面が酸化膜で被覆されるため、耐腐食性が増して信頼性が向上した。
【0017】
以上、実施例ではソース配線金属のみに本発明を適応したが、ゲート金属においても本発明は適応できる。たとえば、実装部にITOを用いてゲート金属と接続する場合である。この場合でも同様の効果が得られる。
【0018】
【発明の効果】
以上述べてきたように本発明によれば、低抵抗金属であるAlを主材料とする配線と、表示用透明画素電極であるITOが同一平面上に存在する構造を有するTFTの製造方法において、全てポジレジストを使用してパタ-ニングすることができるるため、製造工程が合理化でき、製造コストを低減できる効果を有する。さらに、ポジレジストを使用してパタ-ニングするため、微細加工が可能となり、高精細のTFTアレイを形成を容易にできる効果をも有する。以上、実施例としてTFTアレイを代表例として述べたが、これに限るものではなく本発明はITOとアルミニウムを主材とする配線を同一平面上への形成を必要とする薄膜装置すべてに適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施例におけるTFTアレイの製造工程を示す断面構造模式図
【図2】
本発明の第2の実施例におけるTFTアレイの製造工程を示す断面構造模式図
【図3】
本発明の第3の実施例におけるTFTアレイの製造工程を示す断面構造模式図
【図4】
現像液中でのITOおよび各種金属のカソード分極特性とアノード分極特性を示すグラフ
【図5】
各種金属を添加したAlの比抵抗および酸化電位のシフト量と添加濃度の関係を示すグラフ
【図6】
従来におけるTFTの断面構造模式図
【符号の説明】
11 透明絶縁基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁体層
14 非晶質シリコン半導体層
15 チャンネル保護絶縁体層
16 n+:非晶質シリコン層
17 画素電極
18 拡散防止バリア層
19 ソース・ドレイン電極
20 パシベーション膜
 
訂正の要旨 訂正の要旨
*訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1における、「基板の同一平面上に酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体と金属層とが形成され、前記金属層の一部が酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体の上に重なっている半導体装置」及び「アルミニウムよりも貴である金属」を、それぞれ「基板の同一平面上に酸化インジウムスズ導電体と金属層とが形成され、前記金属層の一部が前記酸化インジウムスズ導電体の上に重なっている半導体装置」及び「アルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属」と訂正する。
*訂正事項b
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2における、「拡散防止金属層」を、「拡散防止金属層としてチタン」と訂正する。
*訂正事項c
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項3における、「基板の一主面上に酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体を被着し、フォトリソグラフィにより加工する工程と、前記酸化インジウムまたは酸化錫または酸化インジウムスズ導電体上に標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を含むアルミニウムを被着し、前記標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を含むアルミニウム合金をポジ型フォトリソグラフィにより加工する工程とを含む半導体装置の製造方法。」を、「基板の一主面上に酸化インジウムスズ導電体を被着し、前記酸化インジウムスズ導電体をポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程と、前記酸化インジウムスズ導電体上に標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウムを被着し、前記標準単極電位がアルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属を含むアルミニウム合金をアルカリ性の現像液を用いるポジ型フォトリソグラフィによりパターニングする工程とを含む半導体装置の製造方法。」と訂正する。
*訂正事項d
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項4における、「アルミニウムよりも貴である金属」及び「拡散防止金属層」を、それぞれ「アルミニウムよりも貴であるパラジウム・バナジウム・ニッケルのうちいずれかの金属」及び「拡散防止金属層としてチタン」と訂正する。
*訂正事項e
明りょうでない記載の釈明を目的として、段落0006における、
「【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、配線金属としてアルミニウムに標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を添加したものを用いるようにしたものである。添加する金属は、好ましくはパラジウム、バナジウム、タングステン、タンタル、ニッケル、インジウム、チタン等があげられる。」を、
「【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、配線金属としてアルミニウムに標準単極電位がアルミニウムよりも貴である金属を添加したものを用いるようにしたものである。添加する金属は、好ましくはパラジウム、バナジウム、ニッケルがあげられる。」と訂正する。
異議決定日 2002-06-07 
出願番号 特願平5-211238
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河本 充雄  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 岡 和久
浅野 清
登録日 2000-09-08 
登録番号 特許第3106786号(P3106786)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 半導体装置およびその製造方法  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ