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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1064325
異議申立番号 異議2001-70703  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-02-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-02 
確定日 2002-06-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3088709号「甘味改善剤」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3088709号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3088709号の請求項1及び2に係る発明は、平成10年11月30日に特許出願され、平成12年7月14日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人 吉本修一により特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年8月6日に訂正請求がなされ、更に審尋がなされ、平成14年2月18日に回答書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
a.特許請求の範囲の記載について、「【請求項1】酵母抽出物を有効成分とする甘味改善剤。【請求項2】酵母抽出物が5’-イノシン酸ナトリウム及び/または5’-アデニル酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々1〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有したものである、請求項1記載の甘味改善剤。」とあるのを、「【請求項1】5’-イノシン酸ナトリウム及び/または5’-アデニル酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々3.9〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有した酵母抽出物を有効成分とする甘味改善剤。」と訂正する。
b.明細書の段落【0005】の記載について、「各々1〜15%」とあるのを、「各々3.9〜15%」と訂正する。
c.明細書の段落【0008】の記載について、「各々1〜15%」とあるのを、「各々3.9〜15%」と訂正する。
d.明細書の段落【0009】の記載について、「本発明の甘味改善剤は、甘味料に対して、0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜1重量%添加される。また、食品に対する本発明の甘味改善剤の添加量は、・・・0.0001〜10重量%の値が選択される。」とあるのを、「本発明の甘味改善剤は、甘味料に対して、0.001〜1重量%添加される。」と訂正する。
e.明細書の実施例の記載について、訂正前の実施例9及び10を削除して、訂正前の実施例11以降を繰り上げる、即ち、訂正前の実施例11〜27を実施例9〜25に、また、表11〜27を表9〜25に訂正する。
f.明細書の段落【0071】(訂正前)の記載について、「以上説明してきた通り、本発明によると、甘味を増強したり甘味のキレを改善する、甘味特性、特に後味特性を改善する甘味改善剤及びそれを用いた食品が提供される。」とあるのを、「以上説明してきた通り、本発明によると、甘味を増強したり甘味のキレを改善する、甘味特性、特に後味特性を改善する甘味改善剤が提供される。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a.は、請求項1の記載を削除し、請求項2を請求項1とすると共に、請求項2の「各々1〜15%」を「各々3.9〜15%」とし、5’-イノシン酸ナトリウム、5’-アデニル酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5’-シチジル酸ナトリウムの含量を減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、また、上記訂正b及びcは、特許請求の範囲の上記a.の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当するものである。
そして、上記訂正事項a.ないしc.については、願書に添付した明細書の実施例14(訂正前の実施例16)において5’-シチジル酸ナトリウムを3.9%含有する酵母抽出物が使用されており、かつこの数値は当初明細書に記載された数値範囲に含まれているから、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正dについては、甘味料に対する甘味改善剤の添加量をさらに好ましい添加量に限定するとともに、食品についての記載を削除するものであり、また、上記訂正e.は、特許請求の範囲の記載と整合させるために、実施例を削除するものであるから、これらの訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当するものである。そして、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正f.については、本件発明の甘味改善剤を用いた食品は本件特許請求の範囲に含まれないため、この食品に関する記載を削除するものであり、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。また、この訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項、及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件発明は上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである、
「【請求項1】5’-イノシン酸ナトリウム及び/または5’-アデニル酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々3.9〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有した酵母抽出物を有効成分とする甘味改善剤。」(以下、「本件発明」という。)

(2)異議申立ての理由の概要
異議申立人 吉本修一は、下記甲第1号証ないし甲第3号証を提出して、
a、訂正前の請求項1に記載された発明は甲第1号証に記載された発明であり、また訂正前の請求項2に記載された発明は甲第1ないし3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、及び
b、訂正前の請求項1に記載された発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて、また訂正前の請求項2に記載された発明は甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
と主張している。

甲第1号証:Foods Food Ingredients Journal of Japan、No.172(1997)、p90〜96
甲第2号証:月刊フードケミカル、1990年6月号、第99〜103頁
甲第3号証:WO 88/05267号公報

(3)刊行物1〜3(甲第1〜3号証)記載の発明
当審において通知した取消理由で引用した刊行物1(甲第1号証)には、「5.甘味の増幅、味質改善効果」(第94頁〜)の項に、
「近年、菓子業界に中心にシュガーレスブームを迎え、砂糖不使用をセールストークとした商品が、店頭の棚を賑わせている。砂糖を使用せずに甘味を出すために、甘味料や糖アルコール等が使用されている。しかしながら、これらの甘味物質の「質」に関しては、満足のいくものとは言い難い。例えば、甘味以外の異味、刺激が邪魔をしたり、甘味が持続しなかったりする場合がある」(第94頁左欄下から16行〜9行)との記載、
「これまで、酵母エキスが甘味を中心とした菓子に使用された事例はほとんどなかった(一部、乳系のフレーバーとしての効果は認められており、使用されている)。しかし、調味料としての酵母エキスの機能を考えると、甘味に対しても同様の効果が認められることが考えられる。」(第94頁左欄下から8行〜3行)との記載、
「そこで著者らは、甘味料の「アスパルテーム」、糖アルコールの「エリスリトール」に対する酵母エキス添加の有効性について検討し、いくつかの知見を得たので報告する。」(第94頁左欄下から2行〜右欄2行)との記載、
「アスパルテームに対しては、甘味強度をアップさせる効果が確認された(図7)。酵母エキスを添加した方が甘味を強く感じると回答された比率が高く、・・・していることがわかる。さらに、味質については、アスパルテーム特有の刺激をやわらげることにより、マイルドな味感に変化させることが分かった。また、甘味の持続性、後味を増幅させる効果が確認された(図8)。」(第94頁右欄15〜25行)との記載、
「エリスリトールに対しては、甘味強度に対する影響は確認されなかったが、甘味の質に対しては、アスパルテームと同様に、甘味の持続、後味の増幅効果が確認された(図9)。」(第94頁右欄26行〜第95頁左欄1行)との記載、及び
「本試験で確認された効果は、試験に供した酵母エキスの主要構成成分である、ぺプチドの効果によるものと考えられる。」(第95頁左欄2〜4行)との記載がある、
次に、刊行物2(甲第2号証)には、
「また、実際に使用される場合には、酵母エキスのみでは不足する味を補足するために、日本で国中博士らが開発したRNA分解法による、5’-ヌクレオチド系呈味料である5’-イノシン酸(5’-I)や5’-グアニル酸(5’-G)あるいはグルタミン酸等の化学調味料が別途加えられているのが実状である。」(第99頁左欄11〜17行)との記載、
「1-1 規格 表1に示したものは、粉末タイプのアロマイルドである。なお、固形分45%以上、5’-イノシン酸及び5’-グアニル酸の合計含量9%を保証するペーストタイプも商品化している。 1-2 特徴 (1)うま味成分としての5’-イノシン酸および5’-グアニル酸の合計含有率が、粉末タイプの場合、20%以上というように高い。」(第99頁右欄15〜22行)との記載、
「アロマイルド中の各遊離アミノ酸の含有率を、粉末タイプの製品5ロットについて調べた結果が表2である。また、図1にはその平均の重量組成比を示した。これらの結果より明白なように、遊離アミノ酸の主成分はグルタミン酸であり、約5W/W%を含有している」(第100頁左欄下から8〜3行)との記載、及び
酵母エキス「アロマイルド」の商品規格に関する表1(第100頁)、
の記載がある。
さらに、刊行物3(甲第3号証)には、
「1.RNAの含有率が高い生の酵母菌体を含有する水溶液を80℃〜120℃で加熱処理した後、RNA及びエキス分を抽出し、次いで5’-フォスホジエステラーゼを作用させることを特徴とする5’-GMPの含有率が高い天然イーストエキスの製造方法。」(請求の範囲)との記載、及び
「請求項9 酵母菌体抽出液に酵素を作用させ、系外から当該成分を添加することなく5’-IMP及び5’-GMPをそれぞれ7重量%以上、又は、5’-GMPを7重量%以上含有するイーストエキス。」(請求項9)との記載があり、また、実施例3には、この方法で得られたイーストエキス中には、5’-IMPが12重量%、5’-GMPが8.3重量%、5’-CMPが6重量%、5’-UMPが11.8重量%含有されていること(実施例3、公報第7頁)、実施例4には、この方法で得られたイーストエキス中には、5’-IMPが10.2重量%、5’-GMPが7.1重量%、5’-CMPが5.1重量%、5’-UMPが10.0重量%含有されていること(実施例4、公報第8頁)が記載されている。

(4)判断
〈異議申立人の主張3.(2)a、について〉
訂正前の請求項1は削除されたので、本件発明(以下、「前者」という。)と刊行物1(甲第1号証)記載の発明(以下、「後者」という。)を対比すると、両者はアスパルテーム、エリスリトール等の甘味料に酵母エキスを添加して味質を改善する点で一致しており、一方、前者は5’-イノシン酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム等の5’-ヌクレオチド系化合物を各々3.9〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有するものであるのに対して、後者においてはその点が明記されていない点で相違している。
この点について検討する。
刊行物1には、甘味料に添加した酵母エキスの具体的な名称が記載されておらず、僅かに「3.酵母エキスの製造方法」の項に酵母エキスの原料はビール酵母、パン酵母及びトルラ酵母であることが記載され(第91頁左欄)、また、酵母エキスの製造法を説明する図1(第92頁)に「酵母エキス「ミースト」シリーズ」なる記載が、また「6.畜肉の発色効果」の項に、「ミーストS」、「スーパーミーストR-1」(いずれもアサヒビール食品社製)の名称が記載されているだけである。
そこで、刊行物1から具体的に確認できる「ミースト」シリーズの酵母エキスについて検討すると、乙第1号証(アサヒビール食品株式会社「加工用製品カタログ」)には、アサヒビール食品株式会社製の加工用製品の一欄表が掲載され、そこには、「酵素分解法によって造られる、核酸呈味成分(5’-IMP、5’-GMP)含量の高い酵母エキス」として、「スーパーミースト R-1」(ペースト)、「スーパーミーストパウダー A-001」(パウダー)及び「スーパーミースト R-7」(液体)の商品名が挙げられている。これら3種類のエキスの中ではパウダーのものが核酸呈味成分の含量割合が最も高いと考えられるところ、乙第2号証(「スーパーミーストパウダー A-001」についてのパンフレット)には、5’-イノシン酸Naが1.3%、及び5’-グアニル酸Naが1.1%含まれることが記載されているから、これらのミーストシリーズの製品では、核酸呈味成分である5’-ヌクレオチド類は1%を多少越える程度の量でしか含有していないものと認められる。
また、刊行物1にはビール酵母の他にパン酵母、トルラ酵母の記載が見られるが、この記載は単に酵母エキスの製造に使用される酵母を例示したにすぎないものであって、刊行物1記載の甘味の増幅、味質改善効果の実験において、これらの酵母を原料とする酵母エキスが使用されたことを示すものではない。
このように、刊行物1には、5’-ヌクレオチド系化合物を各々3.9〜15%の高含量で含有する酵母エキスを使用することは開示されていない。
又、刊行物2は本件発明で使用している酵母エキス「アロマイルド」について説明しており、また刊行物3は「アロマイルド」についての特許出願であるが、いずれの刊行物にも、「アロマイルド」を甘味改善剤として使用することについては何も記載されていない。
したがって、本件発明が刊行物1ないし3に記載された発明であるとすることはできない。

〈異議申立人の主張3.(2)b、について〉
刊行物1には、アスパルテーム、エリスリトール等の甘味料に酵母エキスを添加して味質を改善することが記載されているが、5’-イノシン酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム等の5’-ヌクレオチド系化合物を各々3.9〜15%含有する酵母エキスを使用することについては何も記載されていない。
この点について、検討する。
上記「異議申立人の主張3.(2)a、について」で述べたとおり、刊行物1の甘味改善効果の実験において使用したと推測される「ミースト」シリーズの酵母エキスは、核酸呈味成分である5’-イノシン酸Naを1.3%、5’-グアニル酸Naを1.1%含有するものであり、同刊行物には、これらの核酸呈味成分を各々3.9〜15%の高含量で含有する酵母エキスを使用することは記載されておらず、また示唆もない。
そして、刊行物1の「甘味の増幅、味質改善効果」についての実験においては、酵母エキスを添加したことにより、アスパルテームにおいては、甘味強度がアップされるとともに、図8から明らかなように甘味の持続性、後味の増幅効果が確認されており、また、エリスリトールにおいても、図9から明らかなように、甘味の持続、後味の増幅効果が得られることが確認されているのである。これに対して、本件発明は、明細書の段落【0002】及び【0004】に記載されているように、アスパルテーム等の低カロリー甘味剤は甘味質としての厚みに欠け、また、特に後味として舌に残る呈味(甘み)が食品の呈味全体に悪影響を与えるために、段落【0005】等に記載されているように、核酸呈味成分の5’-イノシン酸Naや5’-グアニル酸Naを3.9%以上含有する酵母エキスを使用して、甘味特性、特に後味特性を改善し得たものである。このことは、乙第4号証(酵母抽出物中の有効成分、特に5’-ヌクレオチド含量による甘味改善効果についての「実験成績証明書」)における、核酸呈味成分である5’-イノシン酸Naや5’-グアニル酸Na等を3.9%以上含有する「大日本明治製糖製HYスーパー」、及び核酸呈味成分を1%を多少越える程度の量で含有しており、対象としての「アサヒビール食品製スーパーミースト A-001」を使用した比較実験において、前者の製品が上白糖及びアスパルテームのいずれに対しても、特に甘味のキレにおいて顕著な効果を奏し得たことが示されていることから明らかである。このように、本件発明は刊行物1に記載された甘味作用とは対照的な甘味作用を奏し得るものであるといえる。
しかも、刊行物1には、上記甘味改善効果は酵母エキスの構成成分であるペプチドによる効果と考えられるとも記載されているから、本件発明の如く、5’-イノシン酸、5’-グアニル酸等の核酸呈味成分を特定量含有させれば上述の甘味改善効果が得られるということは、直ちには想定できないことである。
次に、刊行物2及び3について検討すると、刊行物2には、「アロマイルド」は5’-イノシン酸及び5’-グアニル酸を合計含量で9%含有するものであることが記載されており、又、刊行物3には5’-IMP(イノシン モノ フォスホリック アシド)、5’-GMP(グアニン モノ フォスホリック アシド)等を高率に含有するイーストエキスが記載されているが、いずれの刊行物にも、これらの酵母エキスを甘味のキレを改善するために使用することはもとより、甘味を増強する等の甘味改善剤として使用することについてさえ、何も教示していない。
以上のとおりであるから、刊行物1ないし3記載の発明に基づいて、当業者が本件発明を容易になし得たということはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び提出した証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
甘味改善剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 5’-イノシン酸ナトリウム及び/または5’-アデニル酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々3.9〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有した酵母抽出物を有効成分とする甘味改善剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、甘味特性、特に後味特性を改良する甘味改善剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、甘味料としては、健康志向のもとで高カロリーの砂糖に代わり、低カロリー、ノンカロリー甘味料が急速に普及してきた。例えば低カロリー甘味料の一つであるアスパルテームは、苦渋味や刺激味がなく、爽やかな甘味を有するという特徴を有している。しかしながら、甘味質として厚みに欠け、また後味に甘さが残るという欠点があり、また、他の低カロリー、ノンカロリー甘味料も甘味が不足したり、異質の甘味が生じたり、甘味のキレが悪いという欠点を有していた。これら低カロリー、ノンカロリーの甘味料を用いた食品においても甘味が不足したり、異質の甘味が生じたり、甘味のキレが悪いという欠点が生じてきており、これら甘味料を用いた食品についても甘味の不足、異質の甘味の発生、甘味のキレの悪さという同様の問題が生じてきている。
【0003】
これら甘味料の甘味特性の改善に関しては、従来より種々の提案がなされており、例えば糖誘導体を併用する方法(特開昭60-149358号公報、特開昭63-12263号公報、特開平1-300871号公報)、塩化ナトリウムを添加する方法(特開昭61-212257号公報、特開平4-237473号公報)、ペッパー抽出物を添加する方法(特開昭64-63356号公報)、はちみつフレーバあるいはココナツフレーバを添加する方法(特開平4-222575号公報)、ヘスペリジン誘導体を添加する方法(特開平8-256725号公報)等の方法が報告されており、同様の方法で食品の甘味特性の改善が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低カロリー、ノンカロリー甘味料の甘味特性を改善して砂糖のそれに匹敵する満足度を与える点ではまだ十分なものとはいい難く、また、多くの場合、併用・添加成分がこれら甘味料と同程度の質量を必要とするという問題点を有していた。さらに、特に後味として舌に残る呈味(甘味)が食品の呈味全体に悪影響をもたらし易く、後味のキレの改善も望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討の結果、酵母抽出物、特に5’-イノシン酸ナトリウム及び/または5’-アデニル酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々3.9〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有した酵母抽出物が、甘味特性、特に後味特性を改善することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、酵母抽出物を有効成分とする甘味改善剤を提供するものである。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の酵母抽出物で使用される酵母は、食品あるいは食品添加物として用いられている酵母で、例えばパン酵母、ビール酵母、トルラ酵母等をあげることができる。
【0007】
本発明の有効成分である酵母抽出物とは、酵母を、1)pH5〜12の温熱水で抽出する方法、2)タンパク質分解酵素、細胞壁分解酵素などを添加して抽出する方法、3)酵母中の酵素を利用して自己消化により抽出する方法、4)これらの方法を二つ以上組み合わせた方法、5)抽出した酵母抽出物にさらに核酸分解酵素、AMPデアミナーゼ等を作用させる方法、等の方法で得られる酵母抽出物をいう。
【0008】
これら酵母抽出物の中でも、酵母を温熱水で抽出したのち、核酸分解酵素、AMPデアミナーゼを作用させることにより得られる、5’-イノシン酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々3.9〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有した酵母抽出物が特に好ましく、甘味増強や甘さのキレ等の甘味特性の改善効果も大きい。
【0009】
本発明の甘味改善剤は、甘味料に対して0.001〜1重量%添加される。
【0010】
甘味料としては、砂糖、果糖、麦芽糖、キシロース、乳糖、ソルボース、蜂蜜、楓糖などの天然糖甘味料、ソルビット、ソルビトール、マンニット、マンニトール、マルチット、マルチトール、キシリット、キシリトール、リガシン等の糖アルコール、サッカリン、アスパルテーム、グリチルリチン、ステビオサイド、タウマチン等のその他の甘味料を挙げることができる。
【0011】
また、甘味料を用いた食品として、アイスクリーム、あめ、あん、あんみつ、ういろう、おしるこ、おはぎ、かしわ餅、カステラ、果糖練乳(コンデンスミルク)、ガム、かりん糖、金つば、きび団子、キャラメル、クッキー、クリーム、グミ、ケーキ、こんぺい糖、桜もち、シロップ、ジャム、ジュース、ゼリー、大福、チョコレート、プリン、パイ、ホットケーキ、ビスケット、まんじゅう、みつ豆、もなか、ようかん、ヨーグルト、わらび餅等、様々な食品を例示することができる。
【0012】
【実施例】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本例の評価は以下の方法によった。
12名のパネラーにより、各種甘味料溶液と同溶液に本発明の甘味改良剤を添加した溶液、及び各種食品と同食品に本発明の甘味改善剤を添加した食品の官能評価を行った。
【0013】
評価結果は、甘味の強さについては糖度で2倍以上を+++、1.5倍以上を++、1.5倍未満〜1.2倍以上を+、1.2倍未満〜0.8倍以上を±、0.8倍以下を-で、甘さのキレについては甘味の持続時間が2分の1以下を+++、2分の1をこえ1.5分の1以下を++、1.5分の1をこえ1.2分の1以下を+、1.2分の1をこえ0.8分の1以下を±、0.8分の1以上を-で、また総合評価については、甘さの強さ、甘味のキレなどの好みについて、極めてよいを+++、よいを++、ややよいを+、変わらないを±、悪いを-として、それぞれ評価した。
【0014】
実施例1
10%上白糖(三井製糖製)水溶液と、同溶液に上白糖に対して0.01重量%の酵母抽出物(興人製アロマイルド、5’-イノシン酸ナトリウム10.9%、5’-グアニル酸ナトリウム10.9%、5’-ウリジル酸ナトリウム10.5%、5’-シチジル酸ナトリウム8.8%、グルタミン酸ナトリウム5.0%含有)を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表1に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0015】
【表1】

【0016】
実施例2
BRIX70%の水飴(スドージャム製)と、これに水飴に対して0.01重量%の実施例1記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表2に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘さの強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0017】
【表2】

【0018】
実施例3
3.0%アスパルテーム(味の素製、パルスイート)水溶液と、これにアスパルテームに対して0.01重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表3に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0019】
【表3】

【0020】
実施例4
0.2%ステビア(丸善製薬製、マルミロン50)水溶液と、これにステビアに対して0.01重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表4に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0021】
【表4】

【0022】
実施例5
10%エリスリトール(三菱化学製)水溶液と、これにエリスリトールに対して0.01重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表5に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0023】
【表5】

【0024】
実施例6
10%キシリトール(東和化成工業製、キシリット)水溶液と、これにキシリトールに対して0.01重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表6に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0025】
【表6】

【0026】
実施例7
0.1%グリチルリチン(丸善製薬製、グリチミン)水溶液と、これにグリチルリチンに対して0.01重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表7に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0027】
【表7】

【0028】
実施例8
実施例1に記載の上白糖10%水溶液と、同溶液に上白糖に対して0.005重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表8に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0029】
【表8】

【0030】
実施例9
実施例3に記載のアスパルテーム3.0%水溶液と、これにアスパルテームにして0.005重量%の酵母抽出物(下記方法に従って作製した酵母抽出物、5’-アデニル酸ナトリウム11.1%、5’-グアニル酸ナトリウム10.8%、5’-ウリジル酸ナトリウム9.0%、5’-シチジル酸ナトリウム8.7%、グルタミン酸ナトリウム5.3%含有)を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表9に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0031】
酵母抽出物の作製方法
30L容ジャーファーメンターを用い以下に示す培地15Lにキャンディダ・ウチリスの前培養液1Lを植菌し、30℃で24時間通気培養して酵母菌体を得た。培地組成はグルコース5重量%、燐酸アンモニウム0.2重量%、硫酸アンモニウム0.2重量%、硫酸マグネシウム0.1重量%、塩化カリウム0.17重量%、硫酸第二鉄5ppm、硫酸亜鉛9ppm、塩化マンガン4ppmを含む水溶液をアンモニアでpHを4.5に調整したものである。
【0032】
培養終了後、シャープレス型遠心分離機にて集菌し湿潤菌体を得た。これを水に再懸濁して遠心分離することを2回繰り返した。本法により乾燥重量として350gの菌体が得られた。ここで得られた酵母菌体に水を加え全量を1500mlとし、次いで湯浴中で加熱し液温が90℃で30分間加熱した。この後、直ちに流水中にて冷却し液温を40℃とした後、プロチンPC-10(大和化成株式会社製プロテアーゼ製剤)の1.5gを少量の水に溶解後、添加し40℃で10時間、攪拌しながら反応させた。
【0033】
次いで、液温90℃で30分間加熱し、続いて65℃に冷却した。これにリボヌクレアーゼP(天野製薬株式会社製5’-フォスホジエステラーゼ製剤)の0.2gを少量の水に溶解し加え、この温度で3時間攪拌しながら反応させた。この後遠心分離により不溶性固形分を除去しエキスを得た。次いでこのエキスを95℃で30分間加熱し、放置冷却後、スプレードライヤーにより粉末化し、上記実施例11で使用した酵母抽出物90gを得た。
【0034】
【表9】

【0035】
実施例10
実施例4に記載のステビア0.2%水溶液と、これにステビアに対して0.002重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表10に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0036】
【表10】

【0037】
実施例11
実施例4に記載のステビア0.2%水溶液と、これにステビアに対して0.005重量%の実施例9に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表11に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0038】
【表11】

【0039】
実施例12
実施例5に記載のエリスリトール10%水溶液と、これにエリスリトールに対して0.01重量%の酵母抽出物(興人製アロマイルドG、5’-イノシン酸ナトリウム5.3%、5’-グアニル酸ナトリウム5.9%、5’-ウリジル酸ナトリウム5.2%、5’-シチジル酸ナトリウム4.4%、グルタミン酸ナトリウム1.3%含有)を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表12に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0040】
【表12】

【0041】
実施例13
実施例6に記載のキシリトール10%水溶液と、これにキシリトールに対して0.02重量%の酵母抽出物(協和発酵工業製酵母エキスH、5’-イノシン酸ナトリウム5.4%、5’-グアニル酸ナトリウム5.1%、5’-ウリジル酸ナトリウム4.0%、5’-シチジル酸ナトリウム4.2%、グルタミン酸ナトリウム3.1%含有)を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表13に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0042】
【表13】

【0043】
実施例14
実施例2に記載の水飴と、これに水飴に対して0.02重量%の酵母抽出物(大日本明治製糖製酵母エキスHYスーパー、5’-イノシン酸ナトリウム5.0%、5’-グアニル酸ナトリウム5.0%、5’-ウリジル酸ナトリウム4.2%、5’-シチジル酸ナトリウム3.9%、グルタミン酸ナトリウム2.8%含有)を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表14に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘さの強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0044】
【表14】

【0045】
実施例15
実施例2に記載の水飴と、これに水飴に対して0.005重量%の実施例13に記載の酵母抽出物を添加・溶解した溶液を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表15に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘さの強さ、キレで有意に優れており、甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0046】
【表15】

【0047】
実施例16
水350gを沸騰させ、実施例1に記載の上白糖300gを入れ溶解させる。これに、こしあん(橋本食糧工業製)150gを入れ、適当なかたさまで煮詰めあんを作製する。同様に作製したあんに対して、0.01重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・混合したあんを作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表16に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、あんに対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0048】
【表16】

【0049】
実施例17
もち粉(山県産業製)200gと実施例1に記載の上白糖50gを十分に混ぜ合わせ、水160gを徐々に加えよくこね合わし生地を作製する。蒸し器に付近を敷き、生地を少量ずつちぎって並べ蒸す。蒸し上がった生地をボールに移し練りまとまる。生地を等分に切り分け、実施例16で作製したあん(酵母抽出物無添加)を包み込み、大福を作製した。同様に作製した生地に対して0.005重量%の実施例1記載の酵母抽出物を添加・混合した生地を作製し、実施例16で作製したあん(酵母抽出物添加)を用い大福を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表17に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘さの強さ、キレで有意に優れており、大福に対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0050】
【表17】

【0051】
実施例18
ボールにクッキーミックス(日清製粉製)とやわらかくしたバターを入れ混ぜ合わせる。溶き卵を加えてなめらかな生地になるまで練る。麺棒で伸ばし型抜き後、オーブンで焼きクッキーを作製する。クッキーミックスに対して0.01重量%の実施例14に記載の酵母抽出物を添加・混合したクッキーミックスを準備し、同様の方法でクッキーを作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表18に示す。(クッキーミックスの原材料:小麦粉、砂糖、植物性油脂、脱脂粉乳、乳化剤、ベーキングパウダー、香料)
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、クッキーに対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0052】
【表18】

【0053】
実施例19
ボールに熱湯を入れ、ゼリーの素(伊那食品工業製)を加え、よく溶かす。冷蔵庫で冷やし固める。ゼリーの素に対して0.01重量%の実施例13に記載の酵母抽出物を添加・混合したゼリーの素を準備し同様の方法でゼリーを作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表19に示す。(ゼリーの素の原材料:ぶどう糖、砂糖、寒天、増粘多糖類、酸味料、ビタミンC、香料、ブドウ色素)
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、ゼリーに対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0054】
【表19】

【0055】
実施例20
ミカンの皮を剥き、ミキサーで破砕し搾汁する。パルプ質の除去を行い、脱気する。糖度を砂糖にて、酸度をクエン酸にて調製し、オレンジエッセンスを添加し、オレンジジュースとする。オレンジジュースに対して0.01重量%の実施例12に記載の酵母抽出物を添加・溶解したオレンジジュースを作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表20に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、オレンジジュースに対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0056】
【表20】

【0057】
実施例21
炭酸飲料(コカ・コーラインターナショナル製、コカコーラ)と、これに炭酸飲料に対して0.002重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した炭酸飲料を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表21に示す。(炭酸飲料の原材料:糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)、カラメル色素、酸味料、香料、カフェイン)
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、炭酸飲料に対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0058】
【表21】

【0059】
実施例22
清涼飲料水(コカ・コーラインターナショナルセールス製、ラクティアクリアウォーター)と、これに清涼飲料水に対して0.005重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・溶解した清涼飲料水を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表22に示す。(清涼飲料水の原材料:エリスリトール、マルチトール、糖類(果糖、オリゴ糖)、脱脂粉乳、香料、乳性ミネラル、酸味料、大豆多糖類、甘味料(ステビア)、ビタミンE)
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、清涼飲料水に対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0060】
【表22】

【0061】
実施例23
鍋にへたを取り除いたイチゴを入れ、加熱しながら加糖(グラニュー糖使用)する(加糖は3回に分けて行い、最初に添加するグラニュー糖にペクチンを混合しておく)。加熱により濃縮を行い、濃縮終了時にクエン酸を加え、イチゴジャムを作製する。イチゴジャムに対して0.01重量%の実施例12に記載の酵母抽出物を添加・混合したイチゴジャムを作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表23に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、イチゴジャムに対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0062】
【表23】

【0063】
実施例24
ミカン缶詰(サンヨー堂製、みかん・シラップづけ(エキストラライト))と、これにみかん缶詰に対して0.01重量%の実施例14に記載の酵母抽出物を添加・溶解したみかん缶詰を作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表24に示す。(みかん缶詰の原材料:みかん、糖類(エリスリトール、ぶどう糖果糖液糖)、酸味料、甘味料(ステビア、ソーマチン))
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、みかん缶詰に対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0064】
【表24】

【0065】
実施例25
砂糖100g、水飴100g、練乳30g、小麦粉12gを鍋に入れ、80℃に加熱し攪拌混和する。クリーム状になったら120℃まで煮詰める。次にバター4gを加えよく混和する。40〜50℃まで冷却しいったんロール状にし、成形し、ミルクキャンディーを作製する。原材料の全量に対して0.005重量%の実施例1に記載の酵母抽出物を添加・混合した砂糖、水飴を用い、同様の方法でミルクキャンディーを作製し、甘味の強さ、甘味のキレ等について評価した。評価結果を表25に示す。
その結果、酵母抽出物を添加したものが、甘味の強さ、キレで有意に優れており、ミルクキャンディーに対して甘味特性の改善効果があることが認められた。
【0066】
【表25】

【0067】
【発明の効果】
以上説明してきた通り、本発明によると、甘味を増強したり甘味のキレを改善する、甘味特性、特に後味特性を改善する甘味改善剤が提供される。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)特許請求の範囲の記載について、「【請求項1】酵母抽出物を有効成分とする甘味改善剤。【請求項2】酵母抽出物が5’-イノシン酸ナトリウム及び/又は5’-アデニル酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々1〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有したものである、請求項I記載の甘味改善剤。」とあるのを特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】5’-イノシン酸ナトリウム及び/又は5’-アデニル酸ナトリウム、5’-グアニル酸ナトリウム、5’-ウリジル酸ナトリウム及び5-シチジル酸ナトリウムを各々3.9〜15%、及びグルタミン酸ナトリウムを1〜20%含有した酵母抽出物を有効成分とする甘味改善剤。」と訂正する。
(2)明細書の段落【0005】に「及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々1〜15%」とあるのを不明瞭な記載の釈明を目的として、
「及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々3.9〜15%」と訂正する。
(3)明細書の段落【0008】に「及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々1〜15%」とあるのを不明瞭な記載の釈明を目的として、
「及び5’-シチジル酸ナトリウムを各々3.9〜15%」と訂正する。
(4)明細書の段落【0009】に「本発明の甘味改善剤は、甘味料に対して、0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜10、さらに好ましくは0.001〜1重量%添加される。また、食品に対する本発明の甘味改善剤の添加量は、・・・0.0001〜10重量%の値が選択される。」とあるのを不明瞭な記載の釈明を目的として、
「本発明の甘味改善剤は、甘味料に対して、0.001〜1重量%添加される。」と訂正する。
(5)明細書の実施例について、不明瞭な記載の釈明を目的として、訂正前の実施例9及び10を削除して、訂正前の実施例11以降を繰り上げる、即ち、訂正前の実施例11〜27を実施例9〜25に、また、表11〜27を表9〜25に訂正する。
(6)明細書の段落【0071】の記載について、「以上説明してきた通り、本発明によると、甘味を増強したり甘味のキレを改善する、甘味特性、特に後味特性を改善する甘味改善剤及びそれを用いた食品が提供される。」とあるのを不明瞭な記載の釈明を目的として、「以上説明してきた通り、本発明によると、甘味を増強したり甘味のキレを改善する、甘味特性、特に後味特性を改善する甘味改善剤が提供される。」と訂正する。
異議決定日 2002-05-31 
出願番号 特願平10-338343
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A23L)
P 1 651・ 113- YA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 眞壽田 順啓
特許庁審判官 斎藤 真由美
田中 久直
登録日 2000-07-14 
登録番号 特許第3088709号(P3088709)
権利者 株式会社興人
発明の名称 甘味改善剤  

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