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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
審判 全部申し立て 発明同一  G02B
管理番号 1064408
異議申立番号 異議2002-70173  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-01-23 
確定日 2002-08-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3191447号「樹脂接合型非球面レンズの製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3191447号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3191447号の発明は、平成4年10月21日に特許出願され、平成13年5月25日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、田口輝子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年5月31日に特許異議意見書が提出された。
2.特許異議の申立てについて
(1)[申立ての理由の概要]
特許異議申立人田口輝子は、下記甲第1〜5号証を提出し、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)の特許は、甲第1、2号証にそれぞれ記載された発明であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、又、本件発明の特許は、甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、取り消すべき旨主張している。
刊行物1:特開平5-138658号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平4-371813号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平4-280824号公報(甲第3号証)
刊行物4:特開昭64-35401号公報(甲第4号証)
刊行物5:特開平2-234103号公報(甲第5号証)
(2)[本件発明]
【請求項1】
第1工程:球面又は粗い非球面を有するガラスレンズを水平に置く工程;
第2工程:前記ガラスレンズの中央部に所定量の放射線硬化型樹脂液を垂らす工程;
第3工程:前記ガラスレンズの天地を反転させる工程;
第4工程:前記ガラスレンズを「所望の非球面を有する金型」上に載せる工程;
第5工程:前記ガラスレンズと前記金型との間隔を所定値まで接近させる工程;
第6工程:前記ガラスレンズと前記金型との間に挟まれた前記樹脂液に放射線を照射することにより硬化させる工程;及び
第7工程:硬化して得られた樹脂成形層を前記金型との界面から剥離する工程;からなることを特徴とする「非球面を有する樹脂成形層と前記ガラスレンズとからなる樹脂接合型レンズ」を製造する方法。
(3)[引用刊行物記載の発明]
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物2(甲第2号証)には、
「【0008】 具体的には、図1に示す様に、表面を球面状に加工された硝子部材100の片面である接合面100aに、活性エネルギー線硬化型樹脂の薄い膜から成る樹脂層102を形成するものである。硝子部材100は、その外周部に胴付き部100bを有しており、この胴付き部100bが、支持部材14の上端部14aに当接した状態で、支持部材14上に支持される。この上端部14aは、樹脂材料の表面形状を形成するための、型部材12の成形面12aのエッジ部から、高さhだけ突出している。この突出量hにより、樹脂層の厚みが最も薄くなる部位においても所定の厚み(例えば30μm程度)を有する様に規定される(成形面12bが非球面形状であるため、樹脂層の厚みは場所により異なる)。そして、型部材12の成形面12aと、接合面100aとにより規定される空間内に充填された液体状の樹脂材料に、活性エネルギー線を照射することにより、この樹脂材料を硬化させ、レプリカレンズ105を完成させる。」(第3頁左欄第10行〜第26行)
「【0031】 まず、第1のロボット28と第3のロボット32による、型10に対する紫外線硬化型樹脂及び硝子部材30の供給動作を図7乃至図11を用いて説明する。
即ち図7に示す様に、第1のロボット28をインデックステーブル24の外周部から遠ざかる方向に移動させ、この後、回転駆動装置54を動作させて、ハンド60を図7に二点鎖線で示した様に、吸着部60aを上に向けた状態にしておく。次に、第3のロボット32に設けられたハンド34により、パレット44から硝子部材100を1個取り出し、この硝子部材100を図7に二点鎖線で示した様に、第1のロボット28のハンド60の吸着部60a上に載置し、第1のロボット28のハンド60を吸着状態に動作させる。そして、この状態で、第3のロボット32に設けられた液体定量供給装置36により、樹脂材料を第1の所定量硝子部材100の上面、すなわち接合面100a上に供給する。
【0032】 次に図8に示した様に、開閉装置25の第2のエアシリンダ25eを動作させて、爪体25gを蓋体16の切欠部16dに挿入した後、第1のエアシリンダ25cを動作させて、支持部材14に対して蓋体16を上方向にスライドさせる。
この状態において、第3のロボット32の液体定量供給装置36の先端部を型10の内部に進入させ、樹脂材料を型部材12の成形面12a上に第2の所定量供給する。このとき上記の第1の所定量と第2の所定量とを合計した量は、硝子部材100の接合面100aと、型部材12の成形面12aとの間に規定される空間を、ちょうど満たす量よりも僅かに多い量に設定されている。また、この樹脂材料の供給動作中に、回転駆動装置54を動作させて硝子部材100の接合面100aが下側を向く様に、ハンド60の向きを反転させておく。
【0033】 次に図9に示した様に、液体定量供給装置36の先端部を、型10の内部から逃がした後、ハンド60を蓋体16に形成された穴部16cから型10の内部に進入させ、第1のロボット28の支柱52を下側にスライドさせる。この様にすることにより、硝子部材100は、支持部材14の上端部14aに接近していくわけであるが、このときの硝子部材100の下側に移動する動作に伴って、図10に示した様に、樹脂材料が、成形面12a上で押し広げられ、成形面12aと接合面100aの間に規定される空間内にまんべんなく広がる。
【0034】 また、このときの支柱52の下側へのスライド量は、硝子部材100が支持部材14の上端部14aにちょうど接する量よりも大きく取られており、この支柱52の下側への行き過ぎ量は、ハンド60がスライドシャフト58に対して上側に移動することにより吸収される。そして、ハンド60は、圧縮バネ57により下側に付勢されているので、硝子部材100は、この圧縮バネ57の付勢力により支持部材14の上端部14a上に押しつけられることとなり、硝子部材100は支持部材14に確実に密着した状態で、保持されることとなる。
【0035】 この状態で、ハンド60の吸着状態を解除し、第1のロボット28の支柱52を上方に移動させ、ハンド60の先端を硝子部材100から離間させた状態で、
このハンド60を型10の内部から退避させる。この後、第1のエアシリンダ25cを再び動作させて蓋体16を支持部材14に対して下側にスライドさせ、硝子部材100をこの蓋体16により挟み込んで支持部材14上に固定する。この状態を示した図が図11である。
【0036】 以上で、型10Aに対する樹脂材料及び硝子部材100の供給を終了する。
型10Aに対する樹脂材料と硝子部材100の供給動作が終了すると、インデックステーブル24が図4における反時計回転方向に45°回転し、型10Aは、紫外線照射装置12Aの真下に移動され、紫外線が蓋体16の穴部16aを介して所定時間だけ照射される。
【0037】 この後、前述した様に、型10Aは、反時計回転方向に、さらに45°づつ回転された位置でそれぞれ停止し、紫外線照射装置12B〜12Fによる紫外線の照射を各々受けた後、第2のロボット30に対応する位置に戻ることになる。この第2のロボット30に対応する位置に戻ってきた時点では、樹脂材料は完全に硬化しているので、架台22上のピン駆動装置19を動作させて押上ピン18により、レプリカレンズ105を押上げ、型部材12から離型させる。この後、第2のロボット30のハンド60により、第1のロボット28による、硝子部材100の供給動作と反対の手順により、レプリカレンズ105を型10Aから取り出し、図7に二点鎖線で示した状態と同じ状態で、完成したレプリカレンズ105を保持する。そして、第2のロボット30のハンド60の吸着状態を解除した後、第3のロボット32のハンド34により、完成したレプリカレンズ105をパレット44に戻す。」(第5頁右欄第20行〜第6頁右欄第3行)
「【0040】 また、レプリカレンズを形成する場合について説明したが、本発明は、硝子材料の表面に樹脂層を形成するものであれば、他の種類の光学素子にも同様に適用可能である。また、樹脂材料を硝子部材と、型部材の両方に供給する様に説明したが、これに限定されることなく、樹脂材料の全量を、硝子部材か、型部材の一方に供給する様にしても良い。」(第6頁右欄第25行〜第31行)
が記載されている。
(4)[対比・判断]
本件発明と刊行物2(甲第2号証)に記載された発明を対比すると、刊行物2の「硝子部材」、「型部材」、「活性エネルギー線」、「液体状の樹脂材料」は、各々、本件発明の「ガラスレンズ」、「金型」、「放射線」、「樹脂液」に相当するから、
両者は、「第1工程:球面又は粗い非球面を有するガラスレンズを水平に置く工程;
第3工程:前記ガラスレンズの天地を反転させる工程;
第4工程:前記ガラスレンズを「所望の非球面を有する金型」上に載せる工程;
第5工程:前記ガラスレンズと前記金型との間隔を所定値まで接近させる工程;
第6工程:前記ガラスレンズと前記金型との間に挟まれた前記樹脂液に放射線を照射することにより硬化させる工程;及び
第7工程:硬化して得られた樹脂成形層を前記金型との界面から剥離する工程;からなることを特徴とする「非球面を有する樹脂成形層と前記ガラスレンズとからなる樹脂接合型レンズ」を製造する方法」である点で一致し、
1)本件発明では、「第2工程:前記ガラスレンズの中央部に所定量の放射線硬化型樹脂液を垂らす工程」を備えるものであるのに対して、刊行物2記載の発明では、紫外線硬化型樹脂材料を第1の所定量硝子部材の上面に供給し、型部材の成形面上に第2の所定量供給するものである点で相違する。
そこで上記相違点について検討する。
刊行物2の図7には、2点鎖線の位置で硝子部材100の上面、すなわち接合面100aに樹脂材料を供給し、反転して接合面が下に向いた状態が示されている。このとき、接合面上の樹脂材料は硝子部材のほぼ中央部に位置しているものと認めることができる。また刊行物2には、「硝子部材100の下側に移動する動作に伴って、図10に示した様に、樹脂材料が、成形面12a上で押し広げられ、成形面12aと接合面100aの間に規定される空間内にまんべんなく広がる。」、「また、樹脂材料を硝子部材と、型部材の両方に供給する様に説明したが、これに限定されることなく、樹脂材料の全量を、硝子部材か、型部材の一方に供給する様にしても良い。」という記載があり、これらによれば、硝子部材の接合面が反転して下を向いた状態においてその中央部に樹脂材料が位置することや、さらに、樹脂材料の全量を硝子部材の上面に供給するにあたり、樹脂材料を硝子部材の中央部以外の位置に供給することの技術的意義が特に見あたらないことや技術常識を勘案すれば、樹脂材料は硝子部材の中央部に供給されると解するのが妥当であると認められる。
ところで、特許権者は特許異議意見書において、「刊行物1または2にはレンズの中央部に樹脂液を垂らす記述がないのみならず、レンズを反転させながら樹脂液を垂らすと記載されています。」と主張しているが、この「レンズを反転させながら樹脂液を垂らす」という構成は、段落【0032】の「この樹脂材料の供給動作中に、回転駆動装置54を動作させて硝子部材100の接合面100aが下側を向く様に、ハンド60の向きを反転させておく。」が対応する記述と認められるものの、これは、該硝子部材の反転が型部材への樹脂材料供給中に行われることを表すものであるから、特許権者の主張は妥当なものではない。
結局、本件発明のこの相違点に係る全ての構成は、実質的に刊行物2に記載されているから、本件発明は、刊行物2に記載された発明であると認められる。
(5)[結び]
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-07-08 
出願番号 特願平4-282651
審決分類 P 1 651・ 113- Z (G02B)
P 1 651・ 161- Z (G02B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 森内 正明  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 青木 和夫
柏崎 正男
登録日 2001-05-25 
登録番号 特許第3191447号(P3191447)
権利者 株式会社ニコン
発明の名称 樹脂接合型非球面レンズの製造方法  
代理人 渡辺 隆男  

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