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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1064466
異議申立番号 異議2001-73434  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-25 
確定日 2002-09-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第3178692号「食品包装用フィルム」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3178692号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3178692号の請求項1ないし5に係る発明は、平成6年3月22日に特許出願され、平成13年4月13日にその特許権の設定登録がなされ、その後、申立人三菱樹脂株式会社及び東レ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成14年5月29日に意見書の提出がなされたものである。

2.本件の請求項1ないし5に係る発明
本件の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 乳酸系ポリマー100重量部に対して分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤1〜50重量部を含む食品包装用フィルムであって、該食品包装用フィルムの水蒸気透過度が50〜300g/m2・24hr、厚さが10〜500μmであることを特徴とする食品包装用フィルム。
【請求項2】 前記乳酸系ポリマーが、実質的に水の非存在下で、L-乳酸、D-乳酸またはこれらの混合物、または、L-乳酸、D-乳酸またはこれらの混合物とヒドロキシカルボン酸、を有機溶媒を含む反応混合物中で脱水縮合して得られた重量平均分子量が約100,000〜300,000の乳酸系ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の食品包装用フィルム。
【請求項3】 分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤が、クエン酸エステル、グリセロールエステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステルおよびトリエチレングリコールエステルから選ばれた少なくとも1種のエステル化合物であることを特徴とする請求項1記載の食品包装用フィルム。
【請求項4】 分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤が、クエン酸エステルおよびグリセロールエステルでから選ばれた少なくとも1種の可塑剤であることを特徴とする請求項1記載の食品包装用フィルム。
【請求項5】 少なくとも1軸方向に1.1〜10倍延伸されていることを特徴とする請求項1記載の食品包装用フィルム。」

3.引用刊行物の記載
上記取消理由の通知において引用した刊行物は次のとおりである。何れも、本件の出願前に国内において頒布されたものである。
<引用刊行物>
刊行物1:特開平4一335060号公報(申立人三菱樹脂株式会社の提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭62-257840号公報(同申立人の提出した甲第2号証)
刊行物3:特開平6-65360号公報(同申立人の提出した甲第3号証)
刊行物4:特表平5-508819号公報(同申立人の提出した甲第4号証)

刊行物1には、熱可塑性分解性ポリマー組成物に関して次の事項が記載されている。
(1a)【0013】項には、「十分な柔軟性を得るためにラクタイド、乳酸オリゴマー、ラクタイドオリゴマー等の含量を多くするとフィルム等に成形後、時間が経つとラクタイドが結晶化して透明性がなくなる。」と記載され、【0014】項には、「このように、これまでフィルム、…パッケージ材料等、特に食品包装剤…に用いることが出来るポリ乳酸を主成分とする柔軟性を持ったポリマー組成物は知られていなかった。」と記載され、【0015】項には、「本発明は、前記欠点を克服したフィルム…パッケージ材料等、特に食品包装剤…に用いることが出来るボリ乳酸を主成分とする柔軟性を持ったポリマー組成物を提供することを課題とする。」と記載されている。
(1b)【0016】項には、「本発明者らは、以上の問題点を解決するために鋭意検討した結果、L-乳酸、D-乳酸あるいはそれらの混合物を脱水縮合するか、またはL-ラクタイド(L-LTD)、D-ラクタイド(D-LTD)、D,L-ラクタイド(DL-LTD)、meso-ラクタイド(meso-LTD)またはそれらの混合物を開環重合させたのち、可塑剤を加えることによりポリマーに柔軟性を与えることができ、さらに、十分な柔軟性を与える量だけ添加量を増やしても、透明なポリマー成形物が得られることを見いだし本発明を完成した。」と記載され、【0019】項には、重合方法は、溶媒を用いる方法でも、溶媒を用いない方法でも良いことが記載されている。
(1c)【0025】項には、乳酸系ポリマーに添加する可塑剤について、「添加する可塑剤は食品包装容器等に使用しても安全な物が好ましいが、例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシルのようなフタル酸エステル、アジピン酸ジ-i-ブチル、アジピン酸ジ-n-オクチル、セバシン酸ジ-n-ブチル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシルのような脂肪族二塩基酸エステル、リン酸ジフエニル-2-エチルヘキシル、リン酸ジフエニルオクチルのようなリン酸エステル、アセチルクエン酸トリプチル、アセチルクエン酸トリ-2-エチルヘキシル、クエン酸トリブチルのようなヒドロキシ多価カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ステアリン酸アミルのような脂肪酸エステル、グリセリントリアセテート、トリエチレングリコールジカプリレートのような多価アルコールエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチルのようなエポキシ系可塑剤、ポリプロピレングリコールアジピン酸エステル、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルのようなポリエステル系可塑剤などが挙げられる。」と記載されている。
(1d)【0026】項には、可塑剤の添加量について、「添加剤は、通常ポリマー組成物に対して5〜50重量%用いられる。特に好ましくは、5〜20重量%である。」と記載されている。
(1e)【0028】項には、「可塑化された、ポリマー組成物は、加熱時に押し出し成形鋳型に注入する方法等で加工することが出来る。また、溶剤に溶かし、膜状にしてフィルムを作る等の方法も用いることが出来る。このように加工されたフィルム等の成形物を包装用材料等に用いるためには、適当な弾性率を持っていることが必要である。」と記載されている。
(1f)【0031】項には、乳酸系ポリマーをクロロホルムに溶解し、ゲルバーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にて、重量平均分子量を算定したことが記載され、【表1】には、7つの実施例中4つの実施例において、乳酸系ポリマーの平均分子量が100,000を越えるが120,000は越えないものが記載されている。

刊行物2には、防曇性複層フィルムに関して次の事項が記載されている。
(2a)本発明は、例えば野菜、根菜、果実、草花、花木、きのこ類など(以下本明細書ではこれらを広義の意味で青果物と称する)収穫後も生理作用を営む物の包装に好適なフィルムに関し、殊に保存時の鮮度保持作用及び防曇作用を効果的に発揮させることにより包装商品としての商品価値を高めることができる複層フィルムに関するものである。」(1頁右下欄18行〜2頁左上欄5行)
(2b)「水蒸気透過度:15〜200g/m2・24hr・atm・40℃
水蒸気透過度は、青果物に付着している水分の蒸発及び蒸散作用により放出される水分による袋内湿度を適正に保ち、湿度過剰によるむれ現象を防止して腐敗を抑制すると共に、湿度不足による青果物の萎凋、変色(黄変又は渇変)、軟化、弾力性喪失等を防止するうえで重要な特性であり、水蒸気透過度が15g/m2・24hr・atm・40℃未満では湿度過剰によるむれ現象によって青果物が腐敗し易く、一方200g/m2・24hr・atm・40℃を超える場合は包装袋内部が湿度不足となって青果物が萎凋、変色等を起こし易く、何れの場合も満足のいく鮮度保持効果を得ることができない。(3頁左下欄2行〜16行)
(2c)「基層及び表面層の肉厚も格別の制約はないが、経済性や物性等を加味して最も一般的なのは、基層:4〜200μm程度、表面層:0.3〜8μm程度である。」(6頁右上欄11行〜14行)。

刊行物3には、ポリヒドロキシカルボン酸およびその製造方法に関し、その【請求項1】に、実質的に水の非存在下で、ヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを、有機溶媒を含む反応混合物中で脱水縮合反応し、重量平均分子量が約15,000以上の乳酸系ポリマーを製造することが記載されている。

刊行物4には、ポリヒドロキシ酸(乳酸系ポリマーを含む)のフィルムを、最初の幅および長さの3倍まで延伸することにより、2軸配向し、強くて、光学的に透明で光沢のあるものが得られる旨記載されている(5頁右下欄10行〜15行)。

4.対比・判断
(1)本件発明1について
そこで、本件発明1と刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、両者とも、廃棄後自然環境下に蓄積することのない食品包装用フィルムに関するものであり、また、引用発明には、可塑剤として、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシルのようなフタル酸エステル、アジピン酸ジ-i-ブチル、アジピン酸ジ-n-オクチル、セバシン酸ジ-n-ブチル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシルのような脂肪族二塩基酸エステル、クエン酸トリブチル、グリセリントリアセテート、トリエチレングリコールジカプリレート等が挙げられており、これらはいずれも、本件発明1における分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤に相当するので、両者は、
「乳酸系ポリマーに対して分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤を含む食品包装用フィルム」
である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。
[相違点]
(ア)可塑剤の添加量が、本件発明1においては、乳酸系ポリマー100重量部に対して1〜50重量部であるのに対して、引用発明においては乳酸系ポリマー組成物に対して5〜50重量%である点
(イ)食品包装用フィルムが、本件発明1においては、水蒸気透過度が50〜300g/m2・24hrであり、厚さが10〜500μmであるのに対して、引用発明においては、水蒸気透過度も厚さも明らかでない点

次に、これらの相違点について検討する。
[相違点(ア)について]
可塑剤の添加量の範囲は両者において重複しているから、この相違点は実質的な相違点とは認められない。
[相違点(イ)について]
刊行物2には、野菜、果実等の食品を包装する複層フィルムの水蒸気透過度を、15〜200g/m2・24hr・atm・40℃にすることにより、食品の腐敗を抑制したり、萎凋を防止することができることが記載されている。
また刊行物2には、フィルムの厚みは、基層で4〜200μm程度、表面層で0.3〜8μm程度であることも記載されている。
ところで、本件発明1における食品包装用フィルムの水蒸気透過度は、50〜300g/m2・24hrであり、明細書の【0038】項に記載されているように、常圧において温度40±0.5℃で測定したものであるから、刊行物2に記載されたものとその範囲が重複し、実質的に同一のものである。また、本件発明1における食品包装用フィルムの厚さは10〜500μmであり、刊行物2に記載されたものとその範囲が重複し、実質的に同一のものである。
してみると、食品包装用フィルムの水蒸気透過度や厚さを本件発明1におけるものとすることは、刊行物2に記載された事項に倣って、当業者が容易に想到できたことと認められる。

そして、本件発明1におけるかび抵抗性の効果も、引用発明における食品の腐敗抑制の効果から予測できる程度のことと認められるから、本件発明1が、刊行物1および2に記載された発明から予測できない、格別顕著な効果を奏することができたものともいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1および2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

なお、特許権者は、上記意見書において、引用発明は、「ポリ乳酸を主成分とする柔軟性を持ったポリマー組成物」の発明であって、このポリマー組成物の有用性を明確にするべく、「前記欠点を克服したフィルム、糸、パッケージ材料等、特に食品包装材あるいは医科用途に用いることが出来る」としているのであり、また、段落番号【0028】の記載、「可塑化された、ポリマー組成物は、加熱時に押し出し成形鋳型に注入する方法等で加工することが出来る。また、溶剤に溶かし、膜状にしてフィルムを作る等の方法も用いることが出来る。このように加工されたフィルム等の成形物を包装用材料等に用いるためには、適当な弾性率を持っていることが必要である。」も引用発明の組成物の有用性を明らかにしているものであって、決してフィルムの発明ではないことは、その実施例の記載からも明白である、旨主張する。
しかしながら、刊行物1には、特許請求の範囲に、熱可塑性分解性ポリマー組成物が記載されているものの、刊行物1に記載された発明が特許請求の範囲に記載された発明に限定されるものではない。その【0015】項に、「本発明は、前記欠点を克服したフィルム…パッケージ材料等、特に食品包装剤…用途に用いることが出来るポリ乳酸を主成分とする柔軟性を持ったポリマー組成物を提供することを課題とする。」と記載されており、このポリマー組成物を、周知慣用の手段により、食品包装用フィルムとすることができるものでるから、請求人の上記主張は採用できない。
また、特許権者は、刊行物2における「本発明においては上記水蒸気、酸素及び炭酸ガスの各透過度がすべて規定範囲内に収まるものでなければならず、何れか1つの透過度が規定範囲を外れたときでも本発明の目的を果たすことはできない。」(4頁左上欄14行〜18行)との記載によれば、同刊行物の「水蒸気透過度:15〜200g/m2・24hr・atm・40℃
水蒸気透過度は、青果物に付着している水分の蒸発及び蒸散作用により放出される水分による袋内湿度を適正に保ち、湿度過剰によるむれ現象を防止して腐敗を抑制すると共に、湿度不足による青果物の萎凋、変色(黄変又は渇変)、軟化、弾力性喪失等を防止するうえで重要な特性であり、水蒸気透過度が15g/m2・24hr・atm・40℃未満では湿度過剰によるむれ現象によって青果物が腐敗し易く、一方200g/m2・24hr・atm・40℃を超える場合は包装袋内部が湿度不足となって青果物が萎凋、変色等を起こし易く、何れの場合も満足のいく鮮度保持効果を得ることができない。」(上記(2b))の水蒸気透過度の記載は、それ自体、独立して意義を有するものではない旨主張する。
しかしながら、刊行物2には、水蒸気、酸素及び炭酸ガスの各透過度を規定範囲内にすることによって、保存時の鮮度保持作用及び防曇作用を効果的に発揮させ、包装商品としての商品価値を高めることができる複層フィルムとすることが記載されているものの、酸素や炭酸ガスの透過度を規定範囲内とするか否かに関わりなく、水蒸気透過度を規定範囲内とすることにより、湿度過剰によるむれ現象を防止して腐敗を抑制すると共に、湿度不足による青果物の萎凋、変色(黄変又は渇変)、軟化、弾力性喪失等を防止することができることは、上記(2b)の記載から明らかであるから、請求人の上記主張は採用できない。
さらに、特許権者は、引用発明における可塑剤として刊行物1の【0025】項に記載されたものは、本件発明1におけるものと同一であるから、両者は「乳酸系ポリマーに対して分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤を含む食品包装用フィルム」である点で一致すると認定しているが、本件発明1の可塑剤は、刊行物1記載の可塑剤から特定の可塑剤を選択してなるものであって両者は、この点で一致していると言うことはできない旨主張している。
しかしながら、先に見たように、引用発明における可塑剤として刊行物1に記載されたものの中には、本件発明1における分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤に相当するものが記載されており、引用発明において、可塑剤として、このようなものを選択したときには、両者は上記の点で一致することは明らかであるから、請求人の上記主張は採用できない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1における乳酸系ポリマーが、実質的に水の非存在下で、L-乳酸、D-乳酸またはこれらの混合物、または、L-乳酸、D-乳酸またはこれらの混合物とヒドロキシカルボン酸、を有機溶媒を含む反応混合物中で脱水縮合して得られた重量平均分子量が約100,000〜300,000の乳酸系ポリマーであることを特定するものである。
そこで、この点について検討するに、刊行物1には、L-乳酸、D-乳酸またはこれらの混合物、または、L-乳酸、D-乳酸またはこれらの混合物とその他のヒドロキシカルボン酸、を脱水縮合して得られた平均分子量(表1参照)が100,000を越えるが120,000は越えないものが記載されている。
そして、表1中には、単に「平均分子量」と記載されているが、【0031】項には、乳酸系ポリマーの分子量について、重量平均分子量を算定したことが記載されているから、上記「平均分子量」は、重量平均分子量のことを意味しているものと認められる。それ故に、両者間で重量平均分子量の範囲が重複しており、実質的に差異はないものと認められる。
してみると、実質的には、脱水縮合の条件について検討すれば足りるので、次にこの点について検討するに、刊行物1には、脱水縮合は、溶媒を用いる方法で行いうることが記載されおり、しかも、この種の乳酸系ポリマーは、刊行物3にみられるように、実質的に水の非存在下で、有機溶媒を含む反応混合物中で脱水縮合により製造されることが知られているのであるから、引用発明において、脱水縮合を上記刊行物3に記載されているような方法により行うことは、当業者にとって格別のこととは認められない。
したがって、本件発明2は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1における、分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤が、クエン酸エステル、グリセロールエステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステルおよびトリエチレングリコールエステルから選ばれた少なくとも1種のエステル化合物であることを特定するものである。
しかしながら、これらはいずれも刊行物1に記載されているから、本件発明3は、刊行物1および2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1における、分子内に2個以上のカルボン酸エステル基を有する可塑剤が、クエン酸エステルおよびグリセロールエステルから選ばれた少なくとも1種の可塑剤であることを特定するものである。
しかしながら、これらはいずれも刊行物1に記載されているから、本件発明4は、刊行物1および2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1における食品包装用フィルムが、少なくとも1軸方向に1.1〜10倍延伸されていることを特定するものである。
そこで、この点について検討するに、刊行物4には、乳酸系ポリマーのフィルムを、最初の幅および長さの3倍まで延伸することにより、2軸配向し、強くて、光学的に透明で光沢のあるものが得られることが記載されている。
それ故に、刊行物1に記載された発明において、乳酸系ポリマーフィルムの物性を改善するために、フィルムを本件発明5におけるような範囲で延伸することは、当業者が容易に想到できたことと認められる。
したがって、本件発明5は、刊行物1、2および4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1〜5についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-07-17 
出願番号 特願平6-50081
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B65D)
最終処分 取消  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 杉原 進
祖山 忠彦
登録日 2001-04-13 
登録番号 特許第3178692号(P3178692)
権利者 三井化学株式会社
発明の名称 食品包装用フィルム  
代理人 鎌田 文二  
代理人 鳥居 和久  
代理人 苗村 新一  
代理人 東尾 正博  
代理人 最上 正太郎  

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