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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1064472
異議申立番号 異議1998-74753  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-30 
確定日 2002-08-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第2732791号「難燃性・熱伝導性シリコーンゴム組成物」の請求項1〜4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2732791号の請求項1〜4に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続きの経緯
本件特許第2732791号発明は、平成5年12月3日に出願されたものであって、平成9年12月26日にその特許の設定登録がなされ、その後、信越化学工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成12年8月2日付けで取消理由通知がなされ、平成12年10月4日付けで特許権者より特許異議意見書及び訂正請求書が提出され、平成13年2月1日付けで特許権者に対する訂正拒絶理由通知と特許異議申立人に対する審尋通知がなされ、平成13年4月10日付けで特許権者より意見書が提出され、平成13年4月13日付けで特許異議申立人より回答書が提出されたものである。
【2】訂正の適否についての判断
〔1〕上記訂正請求書における訂正事項のうちの本件特許請求の範囲の請求項1における「シリコーンオイルを含む」を「シリコーンオイルを含み、水酸化金属化合物を実質的に含まない」にする訂正は、本件特許請求の範囲の請求項1の発明に係る「難燃性・熱伝導性シリコーンゴム組成物」を水酸化金属化合物を実質的に含まないものに限定するものであるから特許請求の範囲を減縮を目的とするものに該当し、また、発明の詳細な説明の段落番号【0012】における「従来技術の難燃性を付与するために添加していた水酸化金属化合物などを添加しなくてもよくなるため、その分熱伝導性物質を添加でき、熱伝導率が大きくなるという利点がある。」という記載(本件特許公報第2頁第4欄第43行〜第46行)を根拠とするものであるから、本件の願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、認められるものである。
そして、上記訂正明細書における請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】難燃性と熱伝導性及び電気絶縁性を有するシリコーンゴム組成物であって、シリコーンゴム100重量部に対して、
30〜1000重量部の範囲の塩基性金属酸化物と、
難燃性助剤として0.01〜10重量部の範囲の白金化合物と、
シリコーンオイルを含み、
水酸化金属化合物を実質的に含まないことを特徴とする難燃性・熱伝導性シリコーンゴム組成物。」
〔2〕当審が通知した訂正拒絶理由に引用した刊行物の記載事項
なお、刊行物の番号は取消理由で使用したものと同じ番号を使用した。
(1)刊行物3(特開昭56-2349号公報、特許異議申立人信越化学工業株式会社が提出した甲第3号証)
該刊行物には次の事項が記載されている。
「1(A)一般式……(……)で表わされ、且つ1分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリジオルガノシロキサン100重量部、
(B)充填剤 30〜300重量部、
(C)(1)……、及び
(2)(イ)……ポリオルガノハイドロジェンシロ キサン0.1〜30重量部と、
(ロ)触媒量の白金化合物、から成る群より選ばれた、(A) のポリジオルガノシロキサンを硬化せしめる物質、
(D)一般式……
(……)で表わされるシリコーンオイル0.1〜5重量部
から成る組成物を硬化して得られる放熱用ゴム状成形品。」(特許請求の範囲第1項)、
「本発明は熱伝導性に優れた放熱用ゴム状成形品に関するものである。近年、半導体素子のパワーアップ、エレクトロニクス製品のコンパクト化に伴い、熱伝導性に優れた絶縁材が強く望まれている。」(第2頁右上欄第9行〜第13行)、
「本発明で用いられる(B)成分の充填剤は……、アルミナ、酸化ジルコニウム、……、酸化マグネシウム、……などが例示される。これら充填剤は1種もしくは2種以上の混合系で用いることができる。」(第3頁右下欄第11行〜第19行)、
「又(c)(2)(ロ)成分の白金化合物は(A)成分のポリジオルガノシロキサンと(c)(2)(イ)成分との反応を促進するための触媒である。加熱加硫型シリコーンゴムの場合には、一般式……で表わされる(0)価の白金-リン錯体が使われる。……。この(0)価の白金-リン錯体の配合量は(A)成分100重量部に対して0.0001〜0.2重量部の範囲から選ばれ、通常0.0001〜0.1重量部である。」(第4頁左下欄第4行〜第17行)、
「上記(A)〜(D)に属する化合物を配合した例」(実施例1〜4)。
(2)刊行物4(特開平4-328163号公報、特許異議申立人信越化学工業株式会社が提出した甲第4号証)
該刊行物には次の事項が記載されている。
「【請求項1】A):平均重合度が6,000〜12,000であるオルガノポリシロキサン95〜50重量部、
B):平均重合度200〜2,000であるオルガノポリシロキサン5〜50重量部、
C):球状酸化アルミニウム粉末500〜1,200重量部
及び
D):A)〜C)からなる組成物を硬化させるのに充分な量の硬化剤とからなり、……熱伝導性シリコーンゴム組成物。」(請求項1)、
「そこで、本発明者等は、成形加工性に優れた熱伝導性電気絶縁材料について鋭意検討した結果、……成形加工性も良好である熱伝導性シリコーンゴム組成物を得ることができることを見い出し、本発明に到達した。」(第2頁第2欄第22行〜第30行)、
「本発明で使用するB)成分のオルガノポリシロキサンは、……オイル状のものである。」(第3頁第3欄第26行〜第29行)、
「以上のA)〜D)の成分から成る本発明の組成物には、必要に応じて……、難燃性を付与する白金化合物、……を添加しても良い。」(第3頁第4欄第33行〜第45行)、
「上記A)〜D)成分を配合した例」(実施例1〜7)。
(3)刊行物5(特開昭56-5851号公報、特許異議申立人信越化学工業株式会社が提出した甲第5号証)
該刊行物には次の事項が記載されている。
「1(A)……ポリオルガノシロキサン100重量部、
(B)補強性シリカ10〜150重量部、
(C)組成式……で表わされる水酸基含有セリウム化合物0.05〜5重量部、
(D)煙霧質二酸化チタン0.1〜5重量部、
(E)白金又は白金化合物、白金として(A)成分に対し2〜200ppm、
(F)平均粒径10μ以下の塩基性炭酸亜鉛0.1重量部以上5重量部未満、及び
(G)有機過酸化物0.1〜5重量部
から成る難燃性シリコーンゴム組成物。」(特許請求の範囲第1項)、
「(E)の白金又は白金化合物は、組成物に難燃性を付与するものであり、……が例示される。配合量は、白金として(A)成分に対し2〜200ppm、好ましくは5〜100ppmである。」(第3頁右下欄第3行〜第11行)。
〔3〕対比・判断
訂正後の本件請求項1に係る発明と刊行物3に記載された発明を対比すると、
(イ)刊行物3に記載された発明における(A)成分は訂正後の本件請求項1に係る発明におけるシリコーンゴムに該当し、
(ロ)刊行物3に記載された発明における(B)成分の充填剤の例示化合物中のアルミナ、酸化ジルコニウム及び酸化マグネシウムはいずれも訂正後の本件請求項1に係る発明における塩基性金属酸化物に該当するものであり、また刊行物3に記載された発明における充填剤の配合量も訂正後の本件請求項1に係る発明におけるものと重複しており、
(ハ)刊行物3に記載された発明における充填剤は水酸化金属化合物を必須としていないし、また、刊行物3の実施例はすべて水酸化金属化合物を含んでいない(実施例で使用する充填剤は、シリカ、石英、アルミナ、酸化チタン等であって、いずれも水酸化金属化合物ではない。)から、刊行物3には水酸化金属化合物を使用しない組成物が記載されており、この点で訂正後の本件請求項1に係る発明と同じであり、
(ニ)刊行物3に記載された発明は白金化合物を使用するものであり〔(C)(2)(ロ)〕、その配合量も訂正後の本件請求項1に係る発明におけるものと重複し、そして
(ホ)刊行物3に記載された発明における(D)成分のシリコーンオイルは訂正後の本件請求項1に係る発明におけるシリコーンオイルそのものである。
それ故、訂正後の本件請求項1に係る発明は刊行物3に記載された発明と組成の点で区別できず同一である。
なお、訂正後の本件請求項1には「難燃性と熱伝導性及び電気絶縁性を有する」と記載されているが、これによって、刊行物3に記載された発明と組成物の発明としてはその構成を区別できない。もっとも、刊行物3においても、熱伝導性及び電気絶縁性を有することは記載されており、また、白金化合物は難燃性に寄与することは後述するように、刊行物1(特開平5-140456号公報、特許異議申立人信越化学工業株式会社が提出した甲第1号証)、刊行物4及び刊行物5に記載されたように良く知られたことであるから、この点も刊行物3に実質的に記載されているに等しいことである。
また、訂正後の本件請求項1に係る発明と刊行物4に記載された発明を対比すると、
(イ)刊行物4に記載された発明におけるA)成分は訂正後の本件請求項1に係る発明におけるシリコーンゴムに該当し、
(ロ)刊行物4に記載された発明におけるB)成分は訂正後の本件請求項1に係る発明におけるシリコーンオイルに該当し、
(ハ)刊行物4に記載された発明におけるC)成分の酸化アルミニウムは訂正後の本件請求項1に係る発明における塩基性金属化合物に該当し、
(ニ)刊行物4に記載された発明においても難燃性を付与するために白金化合物を使用し得るものであり、この点で訂正後の本件請求項1に係る発明と同じであり、
(ホ)刊行物4に記載された発明は水酸化金属化合物を必須の成分とするものでなく(特許請求の範囲参照)、また、刊行物4の実施例は全て水酸化金属化合物を含んでいないから、この点で訂正後の本件請求項1に係る発明と同じであり、しかも、
(ヘ)刊行物4に記載された発明における塩基性金属化合物の配合量は訂正後の本件請求項1に係る発明におけるものと重複しているのであるから、これらの点で両者の発明は一致しており、訂正後の本件請求項1に係る発明では白金化合物の使用量が規定されているのに対して、刊行物4ではそれが明記されていない点で相違している。
しかし、刊行物4に記載された発明は、成形加工性に優れた熱伝導性電気絶縁材料を意図したものであり、また、それは白金化合物の添加によって難燃性をも付与できるものであるから、難燃性と熱伝導性及び電気絶縁性を有するシリコーンゴムを提供しようとする訂正後の本件請求項1に係る発明とはその目的においても一致しているものといえる。
してみると、そのためにはどの程度の量の白金化合物を使用しすればよいかについては、当業者が実験などによってその好適な量範囲を決定することは容易になし得ることであるばかりでなく、刊行物5にはシリコーンゴム組成物において難燃性を付与するためには白金化合物をシリコーンゴムに対して白金として2〜200ppm添加することが記載されているのであるから、刊行物4と刊行物5の記載を併せ見れば訂正後の本件請求項1に係る発明は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
してみると、訂正後の本件請求項1に係る発明は、本件の出願前に頒布された刊行物3に記載された発明であるか、或いは、本件の出願前に頒布された刊行物4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定、或いは、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
それ故、訂正後の本件請求項1に係る発明はその出願の際独立して特許を受けることができないものである。
〔4〕むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
【3】特許異議申立てについての判断
〔1〕本件発明
本件請求項1〜4に係る発明は、特許明細書の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】難燃性と熱伝導性及び電気絶縁性を有するシリコーンゴム組成物であって、シリコーンゴム100重量部に対して、
30〜1000重量部の範囲の塩基性金属酸化物と、
難燃性助剤として0.01〜10重量部の範囲の白金化合物と、
シリコーンオイルを含むことを特徴とする難燃性・熱伝導性シリコーンゴム組成物。(以下「本件第1発明」という。)
【請求項2】塩基性金属酸化物が、水と反応させたときのギブス(Gibbs)の標準自由エネルギーが-170kJ/mol以上0kJ/mol以下の範囲の物質である請求項1に記載の難燃性・熱伝導性シリコーンゴム組成物。(以下「本件第2発明」という。)
【請求項3】塩基性金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも一つの化合物である請求項1に記載の難燃性・熱伝導性シリコーンゴム組成物。(以下「本件第3発明」という。)
【請求項4】UL規格による燃焼試験測定法で、94V-0である請求項1に記載の難燃性・熱伝導性シリコーンゴム組成物。(以下「本件第4発明」という。)」
〔2〕当審が通知した取消理由に引用した刊行物の記載事項
(1)刊行物1(特開平5-140456号公報、特許異議申立人信越化学工業株式会社が提出した甲第1号証)
該刊行物には次の事項が記載されている。
「【請求項1】(A)下記平均組成式(1)で示され、平均重合度が300以上のオルガノポリシロキサン、
RnSiO(4-n)/2 …(1)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.05の正数を表す。)
(B)平均粒径が10μm以下の水酸化アルミニウム、
(C)酸化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種の熱伝導性充填剤、
(D)白金又は白金化合物、
(E)硬化剤
を含む熱伝導性シリコーンゴム組成物の製造方法において、前記(A)及び(B)成分を混合して100〜200℃の温度で熱処理し、次いで前記(C),(D)及び(E)成分を非加熱下で添加混合することを特徴とする熱伝導性シリコーンゴムの製造方法。」(特許請求の範囲)、
「【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】……熱伝導性シリコーンゴムの難燃化は白金又は白金化合物の添加により行われることがほとんどであり、特公昭44-2591号公報では、微量の白金又は白金化合物をシリコーンゴムに添加することにより難燃化する方法が提案されている。また、特開平2-45562号公報では、熱伝導性無機粉末、四三酸化鉄、白金化合物、水酸化アルミニウムの組合せが提案されている。」(第2頁第1欄第22行〜第45行)、
「【課題を解決するための手段及び作用】本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(A)下記平均組成式(1)で示され、平均重合度が300以上のオルガノポリシロキサン、
RnSiO(4-n)/2 …(1)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.05の正数を表す。)
(B)平均粒径が10μm以下の水酸化アルミニウム、
(C)酸化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種の熱伝導性充填剤、
(D)白金又は白金化合物、
(E)硬化剤
を含む熱伝導性シリコーンゴム組成物の製造方法において、前記(A)及び(B)成分を混合して100〜200℃の温度で熱処理し、次いで前記(C),(D)及び(E)成分を非加熱下で添加混合した場合、この組成物を硬化して得られた熱伝導性シリコーンゴムは、従来の熱伝導性シリコーンゴムと同様な熱特性を有し、かつ難燃性規格UL94V-0クラスに適合でき、発熱性部品を放熱器や金属シャーシに取り付ける際に用いる絶縁性放熱シートとして好適であることを知見した。」(第2頁第2欄第17行〜第36行)、
「(C)成分の配合量は(A)成分100部に対して、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムの場合は200〜1,000部、窒化ホウ素の場合は100〜500部とすることが好ましい。」(第3頁第3欄第42行〜第45行)、
「(D)成分の白金化合物としては、……などが挙げられる。その添加量は白金に換算して3〜500ppmの範囲であり、多量に添加してもコストがかかるだけで難燃性はあまり向上しない。」(第3頁第4欄第8行〜第16行)、
「この発明の必須成分の他にα、ω-ジヒドロキシメチルポリシロキサン(重合度10)を配合したものも記載され、その難燃性の試験結果〔UL94〕がV-0であること」(実施例1〜3)。
(2)刊行物3、刊行物4及び刊行物5には上記[2]で記載したとおりのことが記載されている。
〔3〕対比・判断
本件第1発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、
(イ)刊行物1に記載された発明における(A)のオルガノポリシロキサン成分は本件第1発明におけるシリコーンゴムに該当し、
(ロ)刊行物1に記載された発明における(C)の酸化アルミニウム成分は本件第1発明における塩基性金属酸化物に該当し、その配合量も両者で重複一致しており、
(ハ)刊行物1に記載された発明における(D)の白金化合物は本件第1発明における白金化合物に相当し、その配合量も両者で重複一致しており、
(ニ)刊行物1の実施例に記載された重合度10のα、ω-ジヒドロキシメチルポリシロキサンは本件第1発明のシリコーンオイルに該当するのであるから、本件第1発明は刊行物1に記載された発明と組成の点で区別することができず同一である。
なお、本件第1発明には難燃性、熱伝導性及び電気絶縁性を有すると記載されているが、これによって、刊行物1に記載された発明と組成物の発明としてはその構成を区別できない。もっとも、刊行物1においても、熱伝導性及び難燃性を有することが明記され、また、この組成物が絶縁性放熱シートとして好適であるとが記載されているので、絶縁性を有することは実質的に記載されているということができ、この点でも両者は同一である。
本件第2発明及び本件第3発明はいずれも本件第1発明における塩基性金属酸化物について限定を付すものであるところ、本件明細書の実施例の記載によれば、本件第3発明における酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等はいずれも本件第2発明におけるギブス(Gibbs)の標準自由エネルギーの数値範囲に入るものであり(酸化マグネシウムは-27.0kJ/mol、酸化カルシウムは-57.7kJ/mol、酸化アルミニウムは-2.6kJ/mol)、刊行物1に記載された発明における(C)成分は酸化アルミニウムであるから、本件第2発明及び本件第3発明も刊行物1に記載された発明と同一である。
本件第4発明は本件第1発明の組成物の燃焼測定値がV-0であることを規定するものであるが、刊行物1の【発明の効果】の項(段落番号【0042】)や実施例には〔UL94〕がV-0のものが記載されているので、本件第4発明も刊行物1に記載された発明と同一である。
次に、本件第1発明と刊行物3に記載された発明を対比すると、
(イ)刊行物3に記載された発明における(A)は本件第1発明におけるシリコーンゴムに該当し、
(ロ)刊行物3に記載された発明における(B)の充填剤の例示化合物中のアルミナ、酸化ジルコニウム及び酸化マグネシウムはいずれも本件第1発明における塩基性金属酸化物に該当するものであり、また刊行物3に記載された発明における充填剤の配合量も本件第1発明におけるものと重複一致しており、
(ハ)刊行物3に記載された発明は白金化合物を使用するものであり〔(C)(2)(ロ)〕、その配合量は本件第1発明におけるものと重複一致しており、
(ニ)刊行物3に記載された発明における(D)のシリコーンオイルは本件第1発明におけるシリコーンオイルそのものである。
してみると、本件第1発明は刊行物3に記載された発明と組成の点で区別することができず同一である。
なお、本件請求項1には難燃性、熱伝導性及び電気絶縁性を有すると記載されているが、これによって、刊行物3に記載された発明と組成物の発明としてはその構成を区別できない。もっとも、刊行物3においても、熱伝導性及び電気絶縁性を有することは記載されており、また、白金化合物は難燃性に寄与することは後述するように、刊行物1、刊行物4及び刊行物5に記載されたように良く知られたことであるから、この点も刊行物3に実質的に記載されているに等しいことである。
本件第2発明及び本件第3発明はいずれも本件第1発明における塩基性金属酸化物について限定を付すものであるところ、本件明細書の実施例の記載によれば、本件第3発明における酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等はいずれも本件第2発明におけるギブス(Gibbs)の標準自由エネルギーの数値範囲に入るものであり(酸化マグネシウムは-27.0kJ/mol、酸化カルシウムは-57.7kJ/mol、酸化アルミニウムは-2.6kJ/mol)、刊行物3の(B)の充填剤成分としては酸化アルミニウムや酸化マグネシウムを使用するのであるから、本件第2発明及び本件第3発明も刊行物3に記載された発明と同一である。
本件第4発明は本件第1発明に係る組成物の燃焼測定値がV-0であることを規定するものであるが、刊行物3にはそのことは記載されてはいないが、この値は組成物の性質に他ならないから、本件第1発明と刊行物3に記載された発明における燃焼測定値とは組成物の組成が一致する以上、当然に同一の性質を有するはずであり、従ってこの点で両者は区別できない。
また、本件第1発明と刊行物4に記載された発明を対比すると、
(イ)刊行物4に記載された発明における(A)は本件第1発明におけるシリコーンゴムに該当し、
(ロ)刊行物4に記載された発明における(B)は本件第1発明におけるシリコーンオイルに該当し、
(ハ)刊行物4に記載された発明における(C)の酸化アルミニウムは本件第1発明における塩基性金属化合物に該当するものであり、
(ニ)刊行物4に記載された発明においても難燃性を付与するために白金化合物を使用し得るものであり、この点で本件第1発明と同じであり、しかも、
(ホ)刊行物4に記載された発明における塩基性金属化合物の配合量は本件第1発明におけるものと重複しているのであるから、これらの点で両者の発明は一致しており、ただ、本件第1発明では白金化合物の使用量が規定されているのに対して、刊行物4ではそれが明記されていない点で相違している。
しかし、刊行物4に記載された発明は、成形加工性に優れた熱伝導性電気絶縁材料を意図したものであり、また、それは白金化合物の添加によって難燃性をも付与できるものであるから、難燃性、熱伝導性及び電気絶縁性を有するシリコーンゴムを提供しようとする本件第1発明とはその目的に於いて一致しているものと認められる。
してみると、そのためにはどの程度の量の白金化合物を使用しすればよいかについては、当業者が実験などによってその好適な量範囲を決定することは容易になし得ることであるばかりでなく、刊行物5にはシリコーンゴム組成物において難燃性を付与するためにはシリコーンゴムに対して2〜200ppm添加することが記載されているのであるから、刊行物4と刊行物5の記載を併せ見れば本件第1発明は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
また、本件第4発明は本件第1発明に係る組成物の燃焼測定値がV-0であることを更に規定するものであり、刊行物4にはそのことは記載されてはいないが、白金化合物によって難燃性が向上することは刊行物4のみならず刊行物1や刊行物5にも記載されていることであるから、V-0の燃焼測定値を達成することが全く予期し得ないことではない。
よって、本件第4発明は刊行物4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
〔4〕むすび
以上のとおりであるから、本件第1発明〜本件第4発明は、本件の出願前に頒布された刊行物1又は3に記載された発明であるか、或いは、本件の出願前に頒布された刊行物4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定、或いは、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件第1発明〜本件第4発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-07-05 
出願番号 特願平5-304255
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (C08L)
P 1 651・ 121- ZB (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 宮坂 初男  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 柿崎 良男
船岡 嘉彦
登録日 1997-12-26 
登録番号 特許第2732791号(P2732791)
権利者 富士高分子工業株式会社
発明の名称 難燃性・熱伝導性シリコーンゴム組成物  
代理人 佐藤 公博  
代理人 岩見谷 周志  
代理人 池内 寛幸  
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