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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04H
管理番号 1064967
審判番号 不服2000-14429  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-11 
確定日 2002-09-13 
事件の表示 特願2000- 23851「配信データ伝送装置および方法、並びに配信データ受信装置および方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 8月11日出願公開、特開2000-224123]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成6年6月24日に出願した特願平6-142742号の一部を平成12年2月1日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成14年6月17日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のものである。
「【請求項1】放送波の伝送容量の隙間を利用して配信データを送信する配信データ伝送装置であって、
第1の鍵情報を用いて、前記配信データに第1の暗号化を施す第1の暗号化手段と、
前記第1の暗号化が施された前記配信データに対して、第2の暗号化を施す第2の暗号化手段と、
前記第2の暗号化が解除された前記配信データを記録媒体に記録する受信装置に、第2の暗号化を解除する第2の鍵情報を、前記第2の暗号化が施された配信データに多重して伝送する第1の伝送手段と、
前記記録媒体に記録された前記配信データに施された前記第1の暗号化を解除するための第1の鍵情報を所定の伝送媒体を介して、前記受信装置に伝送する第2の伝送手段と
を備えることを特徴とする配信データ伝送装置。」

2.引用例の記載
これに対し、当審における拒絶理由通知に引用した特開平2-279083号公報(以下「引用例1」という。)、特開平6-132916号公報(以下「引用例2」という。)には、下記の事項が記載されている。
(引用例1)
「D発明が解決しようとする問題点
ところで、このように契約者に与えたデコーダを動作させるか否かは、一般に送信側である放送局が契約に基づいて制御し得るようになされている。
これにより、放送局は契約者との個別契約状況に応じて、チャンネルや時間帯の単位でデコーダのオンオフ制御を行うことができるようになされており、かくして希望する番組だけ料金を支払って視聴するような、いわゆるペイ/ビュー方式のサービスを実現し得るようになされている。
ここでこのような伝送システムにおいて、例えば新作の映画、特別番組等のように番組ソースのコストが大きい場合には、通常契約により動作しているデコーダにおいて、さらに特別契約しないと視聴できないような運用、すなわち二重のペイ/ビュー方式のサービスを実現できれば、システム全体の有用性を一段と向上し得ると考えられる。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で必要に応じて二重にスクランブルされて伝送されるデイジタルデータを良好に受信し得るデータ受信装置を提案しようとするものである。
E問題点を解決するための手段
かかる問題点を解決するため本発明においては、第1のスクランブル方法でスクランブルして、又は第1のスクランブル方法に加えて第2のスクランブル方法でスクランブルして伝送されるデイジタルデータSDAD1を受信するデータ受信装置4において、受信したデイジタルデータSDAD1を第1のスクランブル方法に応じてデイスクランブルして第1のデイスクランブルデータDAD1を送出する第1のデイスクランブル手段10と、第2のスクランブル方法に応じた第2のデイスクランブル制御データDTDSが入力される入力端子14と、第1のデイスクランブルデータDAD1を、入力端子14を介して入力される第2のデイスクランブル制御データDTDSに基づいてデイスクランブルする第2のデイスクランブル演算手段13とを設け、第2のスクランブル方法に応じた第2のデイスクランブル制御データDTDSが入力されたとき、第1のデイスクランブルデータDAD1をデイスクランブルして送出し、また所定値でなる第2のデイスクランブル制御データDTDSが入力されたとき第1のデイスクランブルデータDAD1をそのまま送出するようにした。」(第2頁右上欄欄第11行〜右下欄第18行)
「G実施例
以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。
図において、1は全体として本発明を適用した衛星テレビジョン放送信号送受信システムを示し、送信装置2から送出された衛星テレビジョン放送信号が中継用の衛星を含む衛星回線3を通じて受信装置4に伝送される。
この送信装置2の場合、映像信号SVDは映像スクランブル回路部5に入力され、制御回路(図示せず)から入力されるスクランブルデータSDAに応じた水平走査線の順序で、1フレーム単位のラインシャッフリングが施され、この結果スクランブル映像信号SDVDが送出される。
また音声信号DADは、PCMオーデイオデータでなり、映像スクランブル回路部5に供給されるスクランブルデータSDAと共に、データスクランブル回路部6に入力される。
このデータスクランブル回路部6は、入力されるデイジタル音声信号DAD及びスクランブルデータSDAを、所定フォーマットに基づいてフォーマットした後、制御回路から入力されるキーデータKEYに応じてデイジタル的にスクランブルし、この結果得られるスクランブル音声信号SDADを送出する。
・・・
このようにして、データスクランブル回路6から送出されたスクランブル音声信号SDADには、多重化回路7において制御回路から入力されるキーデータKEY及び受信を許可した複数の受信装置4に応じたデコーダ識別番号DIDを含んでなるスクランブル制御情報SIFが書き込まれる。」(第3頁左上欄第16行〜左下欄第15行)
「なお上述の実施例においては、通常契約に加えて特別契約によるサービスを行う場合、音声信号についてのみ、二重のスクランブル方法で伝送するようにしたが、本発明はこれに限らず、映像信号についても同様に二重のスクランブル方法で伝送するようにしても良く、このようにすれば、衛星テレビジョシ放送信号送受信システム1全体としての有用性を一段と向上できる。
また上述の実施例においては、本発明を衛星テレビジョン放送信号の受信装置に適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、映像信号を用いた衛星通信や地上通信等、他のデータ伝送装置のデータ受信装置に広く適用して好適なものである。」(第5頁左上欄第8行〜右上欄第1行)
これらの記載によれば、引用例1には、
デイジタルデータSDAD1を送信する配信データ伝送装置であって、
第2のスクランブル方法を用いて、デジタルデータに第2のスクランブルを施す手段と、
前記第2のスクランブルが施されたデジタルデータDADに対して、第1のスクランブル方法(キーデータKEY)で第1のスクランブルを施してスクランブル音声信号SDADを出力するデータスクランブル回路部6と、
前記デイジタルデータSDAD1を受信する受信装置4に、第1のスクランブルを解除する第1のディスクランブル方法(キーデータKEY)を、前記スクランブル音声信号SDADに多重して伝送する衛星回線3と、
第2のディスクランブル制御データを前記受信装置4に供給する手段と、
を備えることを特徴とする配信データ伝送装置
が記載されている。
(引用例2)
「【0031】・・・ 図4に示されたテープ・ディスク記録/演奏装置はチューナ部・デコーダ部・デコーダ制御部・記録再生部を備えており、チューナ部において放送電波から取り出された信号は、デコーダ部においてデータ通信装置を経由してデコーダ制御部から供給されたデコード情報を用いてスクランブルが解除され、このスクランブルが解除された信号が記録部に記録され、再生部において再生され表示装置あるいは音響装置等の出力装置に出力される。・・・」
「【0032】図6に示された受信装置は図4に示された受信装置と構成要素は同じであるが、構成要素間の配列が異なっており、したがって信号の処理も異なっている。この受信装置の記録部にはチューナ部において放送電波から取り出された信号はデコーダ制御部をとおらずにスクランブルされたまま記録され、再生時にデコーダをとおることによりスクランブルが解除される。このような構成にすれば、予約作業等を行わずに深夜等に放送される複数の番組を記録し、記録された放送番組のうち任意のものに対してスクランブルの解除を行ういわばペイパービューのオンデマンド化を行うことができる。・・・」

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「前者」という。)と上記引用例1に記載の発明(以下「後者」という。)とを比較する。
両者は、いずれも配信データ伝送装置であって、
後者の「デイジタルデータSDAD1」、「衛星回線3」は、それぞれ前者の「配信データ」、「第1の伝送手段」に対応している。
後者のスクランブルも暗号化の一つであるから、後者の「第2のスクランブル方法を用いて、デジタルデータに第2のスクランブルを施す手段」、「前記第2のスクランブルが施されたデジタルデータDADに対して、第1のスクランブル方法(キーデータKEY)で第1のスクランブルを施してスクランブル音声信号SDADを出力するデータスクランブル回路部6」は、それぞれ前者の「第1の鍵情報を用いて、前記配信データに第1の暗号化を施す第1の暗号化手段」、「前記第1の暗号化が施された前記配信データに対して、第2の暗号化を施す第2の暗号化手段」に対応している。
したがって、両者は、配信データを送信する配信データ伝送装置であって、
第1の鍵情報を用いて、前記配信データに第1の暗号化を施す第1の暗号化手段と、
前記第1の暗号化が施された前記配信データに対して、第2の暗号化を施す第2の暗号化手段と、
受信装置に、第2の暗号化を解除する第2の鍵情報を、前記第2の暗号化が施された配信データに多重して伝送する第1の伝送手段と、
前記配信データに施された前記第1の暗号化を解除するための第1の鍵情報を、前記受信装置に供給する供給手段と
を備えることを特徴とする配信データ伝送装置
である点で一致し、
(1)配信データを、前者は、放送波の伝送容量の隙間を利用して送信するのに対し、後者はそうではない点、
(2)受信装置に、前者は、前記第2の暗号化が解除された前記配信データを記録する記録媒体を備えるのに対し、後者はそのような記録媒体を備えていない点、
(3)前者は、前記配信データに施された前記第1の暗号化を解除するための第1の鍵情報を所定の伝送媒体を介して、前記受信装置に伝送する第2の伝送手段を備えるのに対し、後者はそのような伝送手段を備えていない点
で相違している。
次に、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
天気予報、株式情報等の文字情報をテレビ映像信号に多重するテレビ多重文字放送は実願昭54-55339号(実開昭55-155160号)のマイクロフィルム、特開昭63-296586号公報にみられるように周知である。
このように、放送波の伝送容量の隙間を利用して他の情報を送信することは周知であるから、後者においても、配信データを放送波の伝送容量の隙間を利用して送信するようにすることに格別困難性はない。
相違点(2)について
後者において、第1のスクランブル方法に着目すると、第1のスクランブルが施されたデイジタルデータSDAD1と、第1のスクランブルが解除された第1のデイスクランブルデータDAD1が存在し、第2のスクランブル方法に着目すると、第2のスクランブルが施された前記第1のデイスクランブルデータDAD1と、第2のスクランブルが解除された第2のデイスクランブルデータDAD2が存在する。
引用例2には、受信したスクランブルされた信号を、そのまま記録すること、又はスクランブルを解除して記録することが記載されており、スクランブルされた信号と、スクランブルを解除した信号のどちらかを記録するという技術思想が開示されている。
そうすると、後者にかかる技術思想を適用する場合、記録するデータとして、第1のスクランブルが施されたデイジタルデータSDAD1と、第1のスクランブルが解除された第1のデイスクランブルデータDAD1(第2のスクランブルが施された前記第1のデイスクランブルデータDAD1)と、第2のスクランブルが解除された第2のデイスクランブルデータDAD2との3つのデータが存在し、このうちいずれのデータを記録するかは、当業者が適宜選択できる事項にすぎない。
したがって、後者において、前記第2の暗号化が解除された前記配信データを記録する記録媒体を受信装置に備えるようにすることに格別発明力を要するとすることはできない。
相違点(3)について
衛星放送受信局に対して、スクランブル信号を解除する鍵を電話回線(前者の「第2の伝送手段」に相当する。)を介して伝送することは特開平5-292047号公報にみられるように周知であるから、後者においても、前記第1の暗号化を解除するための第1の鍵情報を所定の伝送媒体を介して、前記受信装置に伝送する第2の伝送手段を備えるようにすることは当業者が適宜なし得ることである。
また、本願発明の効果についてみても、上記事項の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

4.むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-07-23 
結審通知日 2002-07-23 
審決日 2002-08-05 
出願番号 特願2000-23851(P2000-23851)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 長島 孝志
橋本 正弘
発明の名称 配信データ伝送装置および方法、並びに配信データ受信装置および方法  
代理人 稲本 義雄  

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