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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P |
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管理番号 | 1065111 |
審判番号 | 不服2000-4786 |
総通号数 | 35 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-11-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-03-01 |
確定日 | 2002-09-19 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第102155号「誘導電動機の制御方法及び制御装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年11月 8日出願公開、特開平 6-315291]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年4月28日の出願であって、その発明は請求項1乃至6に記載されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を本願発明という。)は特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「誘導電動機を駆動する電力変換器の回転座標系の電圧指令値に交流信号を重畳し、この際の電動機電流の回転座標系変換値と前記交流信号に基づいて、前記変換値に含まれる前記交流信号に関係する成分を検出し、検出された前記成分に基づいて電動機磁束の位置角を求め、前記位置角に応じて前記電力変換器の出力周波数あるいは位相を変化させることを特徴とする誘導電動機の制御方法。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された「Proceedings International Conference on Electrical Machines Volume 115thー17th September 1992」(以下、引用例1という。)に、「低速、停止時の誘導電動機のセンサレス制御」(863頁1行乃至2行)の標題のもとに、「基本的な理論は、誘導機の飽和状態における僅かな漏れ磁束の違いにより磁束軸を検出することである。」(863頁左欄ABSTRACT5行乃至8行)、「本論文では、機械的センサに換えて、INFORM法(オンラインでのリアクタンス計測による直接磁束検出法)を用いた磁束軸直接検出手順方法を示し、磁束モデルはIMsを適用する。」(863頁左欄1章8行乃至12行)、「初め、INFORM法は永久磁石同期機(PSM)に適用された。しかし、誘導機にも適用できる。」(863頁左欄2章1行乃至3行)、「電圧ベクトルを加えたことによる電流ベクトルの変化量を計測することにより実行される。」(863頁左欄2章6行乃至7行)、「しかし、漏れ磁路の磁気抵抗は、誘導機の飽和領域によって、ロータ磁束対称軸の直接電流検出値の分布に僅かに依存する。この影響は、再度磁束軸検出に利用される。」(864頁左欄2.1.2章6行乃至11行)、「電機子電圧と電機子電流の変化分から、2つの磁束軸の変化分を求めることが可能であることを示す。」(864頁左欄2.1.3章1行乃至4行)、「インバータ仕様の場合、3つのベクトルは、電圧ベクトルusからわかる。」(864頁2.1.3章7行乃至9行)と記載され、また、864頁左欄2.1.2章15行には、電流変化分、漏れインダクタンス(複素数量)、磁束ベクトルと電圧ベクトルの位相角、電圧ベクトルの関係式が記載されていることが認められ、これらの記載及び図2によれば、引用例1には、「誘導電動機に、その駆動電圧とは異なる周波数の交流電圧を重畳して加え、この際に流れる電動機電流と前記交流電圧により、電動機のインダクタンスを計測し、これに基づいて電動機磁束の位置角を求め、電力変換器の周波数を変化させる誘導電動機の制御方法」との発明(以下、引用例発明という。)が開示されていると認めることができる。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-308187号公報(以下、引用例2という。)に、「本発明は、誘導電動機の制御および保護に係り、特に誘導電動機の2次時定数が変化してもすべり周波数を常に適切に制御し、トルクおよび回転速度を高精度に制御して保護する誘導電動機の制御方法および装置に関する。」(9欄6行乃至10行)、「本発明の主たる目的は、上述したような従来方法における不具合を解消し、温度計やホールセンサあるいはサーチコイル等を電動機に取付ける必要がなく、また電動機の運転周波数が零の範囲から、基本波成分並びに1次抵抗の影響を受けることなく、2次時定数を高精度に検出できる方法および装置を提供することにある。〔課題を解決するための手段〕上記課題は、誘導電動機を電力変換装置により制御する装置において、電力変換装置の出力電圧又は出力電流の指令信号に交流電流を重畳し、その出力電流、出力電圧に含まれる前記交流信号に対応する成分を基本波成分と分離検出し、それら電圧電流成分に基づいて電動機の2次抵抗値を算定することを基本とし、」(12欄15行乃至13欄10行)と記載されていることが認められる。 3.対比・判断 本願発明と引用例発明とを対比すると、両者は「電動機磁束をの位置角を求め、前記位置角に応じて電力変換器の出力周波数を変化させる誘導電動機の制御方法」の点で一致し、本願発明が電動機磁束の位置角を、誘導電動機を駆動する電力変換器の回転座標系の電圧指令値に交流信号を重畳し、この際の電動機電流の回転座標系変換値と前記交流信号に基づいて、前記変換値に含まれる前記交流信号に関係する成分を検出し、検出された前記成分に基づいて求めているのに対し、引用例発明が電動機磁束の位置角を、電動機電圧に交流信号を重畳し、電動機電流に含まれる重畳交流に関係する成分から求めている点で相違する。 前記相違点について検討するに、前示引用例2の記載によれば、引用例2からは、電動機の2次抵抗値を算出するためではあるが、「誘導電動機を駆動する電力変換装置の出力電圧の指令信号に交流信号を重畳し、その出力電流に含まれる交流信号に対応する成分を基本波成分から分離検出し、それらの電圧電流分に基づいて算出する」という技術思想を読み取ることができ、そして、係る技術思想が引用例2のように電動機の2次抵抗値を算出するためにしか適用できないとする技術的理由も見当たらないのであるから、引用例2に接した当業者であれば、引用例発明の電動機電圧に交流信号を重畳することを電力変換器の回転座標系の電圧指令値に適用しようとすることは容易に着想できるものといえ、かかる適用に当たっては電圧指令値に重畳した交流信号と電動機電流の回転座標系変換値に基づいて、該変換値に含まれる前記交流信号に関係する成分を検出して足りるのであるから、そうすると、本願発明の前記相違点に係る構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。 そして、本願発明が奏する「誘導電動機の一次抵抗の影響を受けずに、電動機内の磁束の位置を推定することができるため、磁束位置を基準としたベクトル制御が可能となり、零速度近傍を含めて高精度な速度、及びトルク制御が実現できる。」(段落【0084】)との作用効果も引用例1及び引用例2から当業者が予測できる範囲のものである。 4.むすび したがって、本願発明は引用例1及び引用例2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-04-09 |
結審通知日 | 2002-04-16 |
審決日 | 2002-08-07 |
出願番号 | 特願平5-102155 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02P)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 恭司 |
特許庁審判長 |
大森 蔵人 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 川端 修 |
発明の名称 | 誘導電動機の制御方法及び制御装置 |
代理人 | 作田 康夫 |