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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B
管理番号 1065120
審判番号 不服2000-6967  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-11 
確定日 2002-09-18 
事件の表示 平成 9年特許願第350525号「護岸用覆工ブロック」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 7月 6日出願公開、特開平11-181742]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年12月19日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という。)は、平成12年2月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】施工面を覆うコンクリート製の覆工ブロック部の前面から連結部を介して魚巣ブロック部を一体に持ち出し、上記覆工ブロック部による施工面覆工時に隣接する魚巣ブロック間に開口部を形成すると共に、上記連結部を魚巣ブロック部より小さな断面積にして隣接する魚巣ブロック部の背後に上記開口部と連通する隠れスペースを形成し、上記連結部を河川の水の透水を許容するポーラスコンクリートにて形成して上記隠れスペースの内側面をポーラスコンクリート面にて画成し、該隠れスペースにて上記開口部を通じ流入せる河川の水で満たされる水溜まり室を形成したことを特徴とする護岸用覆工ブロック。
【請求項2】上記魚巣ブロック部の前面にコンクリート製又はポーラスコンクリート製擬石を付設したことを特徴とする請求項1記載の護岸用覆工ブロック。」

なお、本願については、平成12年5月26日付けで手続補正がなされたが、別途、補正の却下の決定により却下された。

2.刊行物
(1)これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平9-88040号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
(ア)「セメントと乾燥籾殻との嵩容積比を、略1:1から1:3前後の範囲に規制した混合割合にすると共に、水セメント比を略40〜60%前後の範囲に押さえたセメントペーストと適量の乾燥籾殻とを、混合、攪拌してセメント・籾殻混練物を形成した上、適宜高さと平面形状とを有する筒状成型型枠内において、それらセメント・籾殻混練物を圧縮比1.1〜1.4の範囲内で加圧、養生して適宜肉厚で柱状中空部を有する筒体に形成してなることを特徴とする河川浄化用ブロック。」(請求項1)、
(イ)「以上のようにして成型された河川浄化用ブロック1は、図1に示されるように円筒形状を成し、通常のコンクリートブロックに比較して乾燥籾殻を含んで製作されているため、比重が極めて小さく、吸湿性に富み、透水性と通気性を備えている。」(7欄22ないし27行)、
(ウ)「図3(当審注:「図2」の誤りと認める。)の斜視図に示される第2の河川浄化用ユニット25は、前記第1の河川浄化用ユニット23と同様に円筒状の河川浄化用ブロック1,1,……を2本ずつ鉛直且つ並列状に配置して合計4本立設されて成り、これら河川浄化用ブロック1,1,……の下部には、通常のコンクリートからなる矩形状のコンクリートベース26が一体に固められた状態で設けられている。更に、4本の河川浄化用ブロック1,1,……の相互間の隙間にも通常のコンクリート部27が充填された状態で設けられている。ここで、円筒状の河川浄化用ブロック1は中空部分は有底孔状に構成されている。」(7欄29ないし39行)、
(エ)「図9には、この河川浄化用ブロック1および河川浄化用ユニット23,25を利用して実施する河川の浄化方法を実施するための護岸構造が、概略的な断面図で示されている。先ず、護岸部分には、前記実施例2で示した第2の河川浄化用ユニット25,25,……が、そのコンクリートベース26の矩形状部分を敷き詰めた状態で複数が配列され、護岸壁面35を形成している。・・・・・・また、護岸壁面35の水中に没する部位や、河底に設置された河川浄化用ユニット23,25は、コンクリートベース24,26が河底に接地して水流に抗して、河川浄化用ブロック1,1,……を鉛直又は水平状態に保持し、河川浄化用ブロック1,1,……は、鉛直方向に中空部が確保され、その内外に流水して内部に複雑な渦流水を発生すると共に、ブロック1,1,……の壁体内の隙間に微生物が生息、繁殖して水流W内の不純物や汚泥類を浄化する作用を果たすと共に、水中植物の定着、植生に都合の良い環境を実現し、それら水中植物によっても水流Wが浄化されることになる。そして、それらの環境は、魚類の生息に最適な環境を実現することになり、人工魚礁としての利用も可能となる。」(9欄35行ないし10欄10行)、
(オ)「一方、河川浄化用ブロック1,1,……および29,29,……を使用した河川浄化用ユニット23,25,28,31,33は、河底や海底に沈めることにより、人工魚礁として利用することも可能となる。筒状に形成された河川浄化用ブロック1,29は、その形状が流れの中で渦を発生するものであり、このような渦の発生する場所には藻等の発生が比較的早いとされている。また、籾殻による凹凸形状は藻の胞子の表面への付着や根付きを容易にし水草、海草等も根付きが早い。これにともない水中に生息する虫や貝等が生息するばかりでなく、魚の巣や餌場、産卵場等としての機能を果たすことができる。筒状の中空孔部分は、特に魚の巣として利用される可能性が高い。」(11欄23ないし35行)
と記載されており、これらの記載及び図1、2、9の記載からみて、刊行物1には、
「護岸部分に敷き詰められるコンクリートベース26の前面に河川浄化用ブロック1を一体に設け、河川浄化用ブロック1を透水性を備えたセメント・籾殻混練物にて形成した、護岸壁面35を形成する河川浄化用ユニット25。」
の発明が記載されていると認められる。

(2)同じく、特開平7-138928号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
(ア)「河川の護岸に構築する張ブロックの基板の前方に、突設した四角柱状または台垂状の突設部を設け一該突設部の外囲の少なくとも一部に組張り時の魚巣形状の略半分の形状が形成される張ブロツクであって、該張ブロツクを組張りし護岸を構築した際、隣接し合う張ブロツクの突設部間に魚巣が形成される、その魚巣形状は突設部間の隙間より広い楕円状または多角形の生息室を形成することを特徴とする魚巣内装型張ブロック。」(請求項1)、
(イ)「図2は、本発明の第1実施例を示す張ブロック(A)の正面図である。その右側面を示した図3に基づいて説明すれば、張ブロック(A)は、四角形状の基板(1)より前方(図の左方向)に、基板より小さい底面を有する四角柱状または台垂状の突設部(3)を突設する。魚巣に魚類の出入りが可能な隙間は、基板(1)と突設部の正面(6)との大きさの差によって(突設部は基板よりも、小面積になるよう形成される)、その突設部の外周が魚類の出入り口となる。魚が生息する生息室(符号なし)は、突設して成る四角柱状または台垂状の突設部(3)の外囲の四辺に凹入部(4)によって形成され、張ブロック(A)の合端部(2)、即ち目地部を中心として魚巣形状の略半分を形成する。 この実施例では、張ブロック(A)の突設した正面(6)に、凹窪部(7)を形成する。また、張ブロックを単体でなく、複数組張りした場合に形成される魚巣は、図22に見られるように、組張りして成る連続した魚巣(15)の形状は、隣接した魚巣ブロック(A)間の各突設部(3)の隙間が小魚類の出入り口になり、出入り口に続いて魚類が生息する生息室が各ブロックの凹入部(4)を対向して形成される。魚類が生息するための生息室の断面形状は、隣接する突設部の隙間の幅より広い楕円状、円形状または小判状に形成する。」(2欄28行ないし3欄1行)
と記載されている。

3.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と刊行物1に記載の発明とを比較すると、刊行物1に記載の発明の「護岸部分に敷き詰められる」、「コンクリートベース26」、「透水性を備えた」、「セメント・籾殻混練物」及び「護岸壁面35を形成する河川浄化用ユニット25」は、それぞれ本願発明の「施工面を覆う」、「コンクリート製の覆工ブロック部」、「河川の水の透水を許容する」、「ポーラスコンクリート」及び「護岸用覆工ブロック」に相当し、刊行物1に記載の発明の「河川浄化用ブロック1」と本願発明1の「連結部及び魚巣ブロック部」とは、ともに魚巣を形成する「張出部」であるから、両者は、
「施工面を覆うコンクリート製の覆工ブロック部の前面から張出部を一体に持ち出し、少なくとも張出部の一部を河川の水の透水を許容するポーラスコンクリートにて形成した護岸用覆工ブロック」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願発明1では、張出部が連結部及び魚巣ブロック部からなり、覆工ブロック部による施工面覆工時に、隣接する魚巣ブロック間に開口部を形成すると共に、連結部を魚巣ブロック部より小さな断面積にして隣接する魚巣ブロック部背後に開口部と連通する隠れスペースを形成し、隠れスペースの内側面をポーラスコンクリート面にて画成し、隠れスペースにて開口部を通じ流入せる河川の水で満たされる水溜まり室を形成するのに対し、刊行物1に記載の発明では、そのような構成を有しない点

そこで、相違点について検討すると、刊行物2には、基板(1)より前方に、突設部(3)(本願発明1の「連結部及び魚巣ブロック部」に相当。)を突設し、複数組張りした場合(本願発明1の「施工面覆工時」に相当。)に、突設部(3)の外周の隙間(本願発明の「開口部」に相当。)を魚類の出入り口とし、突設部(3)の外囲の凹入部(4)(本願発明1の「魚巣ブロック部より小さな断面積」に相当。)によって、出入り口に続いて魚類が生息する生息室(本願発明1の「隠れスペース及び水溜まり室」に相当。)を形成する点が記載されており、刊行物1に記載の発明と刊行物2に記載のものとは、ともに魚巣を備えた護岸用覆工ブロックという共通の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載の発明の河川浄化用ブロックの形状として刊行物2に記載のものを適用して、相違点に係る本願発明1の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
そして、全体として本願発明1によりもたらされる効果も、刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載のものから当業者であれば当然に予測できる程度のものであって顕著なものではない。
したがって、本願発明1は、刊行物1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用して、さらに、「上記魚巣ブロック部の前面にコンクリート製又はポーラスコンクリート製擬石を付設した」という構成を限定したものであるが、魚巣ブロックの前面にコンクリート製擬石を付設することは、例えば、特開平9-203029号公報、実用新案登録第2518200号に記載のように周知技術にすぎない。
したがって、本願発明2は、刊行物1、2に記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-25 
結審通知日 2002-07-02 
審決日 2002-08-07 
出願番号 特願平9-350525
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤木 啓二横井 巨人  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
発明の名称 護岸用覆工ブロック  
代理人 中畑 孝  

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