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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない B60S
管理番号 1065377
審判番号 訂正2002-39065  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-02-09 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-02-28 
確定日 2002-09-24 
事件の表示 特許第3086888号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1手続きの経緯
本件訂正審判は、平成14年2月28日付けで、特許3086888号[平成9年7月17日(1997.7.17)に特許出願、平成12年7月14日(2000.7.14)に設定登録、平成13年3月9日(2001.3.9)特許異議申立て、平成13年11月29日(2001.11.29)異議決定、平成14年1月16日(2002.1.16)東京高裁出訴(平成14年行ケ第34号)]の願書に添付した明細書について、審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正を求めるものであったが、これに対し、当審より平成14年4月19日付けで訂正拒絶理由の通知をしたところ、その指定期間内の平成14年6月24日付けで審判請求書及び同請求書に添付した訂正明細書について手続補正書が提出されたものである。

2 訂正事項
(1) 訂正審判請求書の補正について
平成14年6月24日付け手続補正は、上記訂正明細書の請求項1及び請求項2に「コーティング組成物中のバインダー成分の含有量は、溶剤にバインダー成分を溶解させてなるコーティング剤塗料中で0.01〜30重量%」なる点を挿入する補正を求めている。
しかし、上記補正部分は、訂正審判請求書による訂正事項にない新たな訂正事項であるから、訂正審判請求書の要旨を変更するものと認められ、特許法131条2項の規定に違反するものであり、採用しない。

(2)本件審判請求による訂正事項は、平成14年2月28日付け審判請求書及び同請求書に添付した訂正明細書の記載からみて、次のとおりのものと認める。
【請求項1】シリコーン系又はフッ素系の撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスと組み合わせて用いられ、かつ、天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されていると共に、上記車両ウインドガラスと摺動されるリップ部がコーティング組成物でコーティングされてなる車両用ワイパーブレードであって、
上記コーティング組成物が、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれるウレタン系樹脂でなるバインダー成分とを含んでいることを特徴とする車両用ワイパーブレード。」を、
「【請求項1】 天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形され、かつ、車両ウインドガラスと摺動されるリップ部が、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれるウレタン系樹脂でなるバインダー成分とを含むコーティング組成物でコーティングされてなり、
基剤が、アミノ変性ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキルシランからなる群より選ばれたシリコーン系又はフッ素系の撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスと組み合わせて用いられるものであることを特徴とする車両用ワイパーブレード。」と訂正する。

「【請求項2】雨天時の車両走行に際して、撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスの表面で、摺動性を向上させるためのコーティングが施されたゴムブレードのリップ部を摺動させる車両ウインドガラスの水滴払拭方法であって、
上記撥水剤がシリコーン系又はフッ素系であり、上記ゴムブレードが天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されており、上記コーティングが、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれるウレタン系樹脂でなるコーティング組成物を用いて形成されていることを特徴とする車両ウインドガラスの水滴払拭方法。」を、
「【請求項2】 雨天時の車両走行に際して、基剤が、アミノ変性ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキルシランからなる群より選ばれたシリコーン系又はフッ素系撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスの表面で、摺動性を向上させるためのコーティングが施されたゴムブレードのリップ部を摺動させる車両ウインドガラスの水滴払拭方法であって、
上記撥水剤がシリコーン系又はフッ素系であり、上記ゴムブレードが天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されており、上記コーティングが、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれるウレタン系樹脂でなるコーティング組成物を用いて形成されていることを特徴とする車両ウインドガラスの水滴払拭方法。」と訂正する。

「 【0018】
より具体的には、シリコーン系又はフッ素系の撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスと組み合わせて用いられる車両用ワイパーブレードであって、天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されていると共に、上記車両ウインドガラスと摺動されるリップ部がコーティング組成物でコーティングされている。コーティング組成物は、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、ウレタン系樹脂でなるバインダー成分とを含んでいる。そして、ウレタン系樹脂は、油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれる。」を、
「 【0018】
より具体的には、シリコーン系又はフッ素系の撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスと組み合わせて用いられる車両用ワイパーブレードであって、天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されていると共に、上記車両ウインドガラスと摺動されるリップ部がコーティング組成物でコーティングされている。上記撥水材は、その基剤が、アミノ変性ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキルシランからなる群より選ばれたものであることを要する。コーティング組成物は、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、ウレタン系樹脂でなるバインダー成分とを含んでいる。そして、ウレタン系樹脂は、油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれる。」と訂正する。

「 【0020】
より具体的には、上記撥水剤がシリコーン系又はフッ素系であり、上記ゴムブレードが天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されており、上記コーティングが、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれるウレタン系樹脂でなるコーティング組成物を用いて形成されている、というものである。」を、
「 【0020】
より具体的には、上記撥水材は、その基剤が、アミノ変性ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキルシランからなる群より選ばれたシリコーン系又はフッ素系撥水剤がであることを要する。上記ゴムブレードが天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されており、上記コーティングが、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれるウレタン系樹脂でなるコーティング組成物を用いて形成されている、というものである。」と訂正する。

3訂正拒絶理由の概要
平成14年4月19日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、
[先願明細書] 特願平8―250246号(特開平10―95314号公報参照)の願書に最初に添付した明細書または図面〈異議申立人提出の甲第1号証〉
[刊行物1(C)]昭和55年3月15日丸善株式会社発行「化学便覧応用編」改訂3版P794,P892 〈異議決定時の刊行物C〉
[周知例1] 特開平7―41336号公報
[周知例2] 特開平8―277388号公報
を引用し、
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも本件発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められない。
よって、本件発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないので、本件審判請求は、特許法第126条第4項の規定に適合しない、というものである。

4当審の判断
(1) 訂正の要旨
(特許請求の範囲)
a 請求項1の「シリコーン系又はフッ素系の撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスと組み合わせて用いられ」を「基剤が、アミノ変性ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキルシランからなる群より選ばれたシリコーン系又はフッ素系の撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスと組み合わせて用いられ」と訂正し、請求項後半に移動する。

b 請求項1の「リップ部が」と「コーティング組成物でコーティングされてなる」との間に、請求項後半のコーティング組成物を特定する部分「シリコーンゴム、二硫化モリブデン《中略》バインダー成分とを含」を移動する。

c 請求項2の「上記撥水剤がシリコーン系又はフッ素系であり」を「基剤が、アミノ変性ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキルシランからなる群より選ばれたシリコーン系又はフッ素系」と訂正し、請求項冒頭の「雨天時の車両走行に際して、」と「撥水剤を用いて」の間に移動する。

(発明の詳細な説明)
d 明細書段落番号【0018】及び【0020】中の記載について、上記a,b,cと同じ趣旨の訂正をする。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(特許請求の範囲)
上記a,cについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「シリコーン系又はフッ素系の撥水剤」の構成をより具体的な構成に限定し、かつ、不明瞭になる文章構成を明確化するものである。
したがって、上記a,cは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記bについては、上記a,cの訂正によって不明瞭となる文章構成をより明確化するものである。
(発明の詳細な説明)
上記dについては、明細書の記載と特許請求の範囲との整合を図るためのもので不明瞭となる文章構成を明確化するものである。

また上記aないしdは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3) 引用例の記載
[先願明細書]
ア 【0008】には、「本発明に係る他のワイパーブレードは、ゴム弾性体よりなるブレード本体と、この本体表面に、分子内に反応性基を有するフッ素系樹脂と、このフッ素系樹脂の反応性基と反応性を有する硬化剤とからなる表面被覆層を有するワイパーブレードであって、表面被覆層は、分子内に反応性基を有するフッ素系樹脂 100重量部に対して固体潤滑材 10 〜110 重量部配合してなることを特徴とする。」と記載されている。
イ 【0015】には、「本発明の表面被覆層を構成する分子内に反応性基を有するフッ素系樹脂は、《中略》本発明にあっては、とくに水酸基(-OH )を分子内に有するフッ素系樹脂が好ましく、具体的にはフルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位とからなる共重合体であって、ビニルエーテル単位に水酸基を有するフッ素系樹脂が好適である。」と記載されている。
ウ 【0016】には、分子内に反応性基を有するフッ素系樹脂と反応する硬化剤としては、フッ素系樹脂の反応性基と反応する官能基を有する硬化剤であれば使用することができる。とくに反応性基が水酸基である場合は、イソシアネート基(-NCO)や-NHR基を有する硬化剤が好ましい。《中略》水酸基(-OH )を有するフッ素系樹脂とイソシアネート基(-NCO)を有する硬化剤との配合割合は、水酸基(-OH )とイソシアネート基(-NCO)との当量比で1: 0.5〜1.1 の範囲が好ましく、とくに表面被覆層に柔軟性を付与し、ワイパーブレードの拭き取り性を向上させるためには 1: 0.6〜1 の範囲が好ましい。」と記載されている。
エ 【0018】には、「本発明に係る四フッ化エチレン樹脂(以下、PTFEと略称する)は、テトラフルオロエチレンの重合体をいう。《中略》熱焼成した後、粉砕して粉末化したいわゆる再生PTFEや、バージンPTFEをガンマ線照射などの方法で処理して粉末化したいわゆるPTFE潤滑粉や、バージンPTFEを粉砕し、微粉末化したPTFE粉等が好ましく使用できる。」と記載されている。
オ 【0020】には、「本発明に係る固体潤滑材は、表面被覆層に配合することにより、すべり性や耐摩耗性を向上させることのできる固体粉末であれば使用することができる。具体的には、グラファイト(黒鉛)、二硫化モリブデン( MoS2 )、カーボン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、二硫化タングステン等を挙げることができる。」と記載されている。
カ 【0023】には、『また、撥水処理を施すとは、たとえばシリコーン系やフッ素系の撥水剤で処理することをいう。シリコーン系の撥水剤は、たとえばガラス面に塗り込むタイプやウインドウオッシャー液タイプがあり、前者の例としては「スーパーレインX」、「スーパーレインX plus」(以上錦之堂社より市販されている商品名)、「ソフト99ガラコ」、「ぬりぬりガラコ」(以上ソフト99社より市販されている商品名)等があり、後者の例としては、「スーパーウオッシャーゼット」(アウグ社より市販されている商品名)、「ガラコウオッシャー液」(ソフト99社より市販されている商品名)等がある。フッ素系の撥水剤の例としては、「超ガラコ」(ソフト99より市販されている商品名)、「日産撥水システム」(日産自動車社より市販されている商品名)等のガラス面に塗り込むタイプを例示することができる。これらの撥水処理層は、 1層ある場合でもワイパーブレードのビビリ振動を起こしやすくなる。』と記載されている。
キ 【0036】には、「比較例4ポリウレタン樹脂 100重量部をメチルエチルケトン 350重量部で希釈して、その溶液中に表1に示す配合割合の原料を混合し、さらに表1に示す配合割合の硬化剤を配合して表面被覆形成液を得た。この表面被覆形成液を用いて、硬化条件を表1に示す条件とする以外は実施例1と同一の条件方法で、 8〜15μm の層厚の表面被覆層を有するワイパーブレードおよび試験片を得た。得られたワイパーブレードおよび試験片を実施例1と同様に評価した。評価結果を表2に示す。」と記載されている。
ク 【0040】【表1】には、その比較例4において、PTFE及びグラファイトを配合されている点を見ることが出来る。

そして、上記の記載(特に、【0015】及び【0016】)及び下記刊行物I(C)の記載により、水酸基とイソシアネートが反応してウレタン系樹脂が生成することは自明であり、また、比較例4にもウレタン樹脂を用いていることからみれば、先願明細書には、以下のとおりの発明が記載されていると認められる。[以下、〈〉内には、訂正明細書の請求項の記載で相当する事項の用語を示す。]
「シリコーン系又はフッ素系の撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスと組み合わせて用いられ、かつ、天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されていると共に、上記車両ウインドガラスと摺動される摺接部〈リップ部〉が表面被覆層である〈コーティング組成物でコーティングされてなる〉車両用ワイパーブレードであって、
上記表面被覆層〈コーティング組成物〉が、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、ウレタン系樹脂でなるバインダー成分とを含んでいることを特徴とする車両用ワイパーブレード。」
[刊行物I(C)] 892頁に「湿気硬化型ウレタン樹脂はグリコール類に過剰のジイソシアナートを反応させ末端に遊離イソシアナート基を残す」と記載され、また、表10.123には、ブロック型として、「加熱によりブロック剤がはずれて-NCOが再生し,-OHと反応」と記載されている。
また、表10.123(ウレタン塗料の分類)には、ウレタン塗料が、1液型「油変性ポリウレタン」「湿気硬化型ウレタン」「ブロック型」と2液型に分類される点が示されている。

[周知例1] ガラス用撥水剤に関する発明で、請求項1には、「 下記一般式〔1〕(化1)で表わされるアミノ変性ポリシロキサンが0.01〜10.0重量%、ギ酸が0.001〜5重量%、残りが水又はROH(Rは炭素数1〜3個のアルキル基)又はROHを含む水溶液からなることを特徴とするガラス用撥水剤。」(化学式は省略)と記載され、
また【0018】の【実施例及び比較例】には、
「実施例1
撥水剤
*アミノ変性ポリシロキサン 2.0wt%
88%ギ酸 0.5
イソプロピルアルコール 92.5
イオン交換水 5.0
比較例
ジメチルポリシロキサン 2.0wt%
硫酸 0.5
イソプロピルアルコール 97.5」と記載されている。

[周知例2] 請求項1には、「下記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)を含有することを特徴とする長期持続型ガラス用撥水処理剤。
(A)一般式CF3(CF2)nCH2CH2Si(OMe)3又はCF3(CF2)nCH2CH2SiCH3(OMe)2(式中nは5〜8、MeはCH3又はC2H5基)で表されるフルオロアルキルシラン
(B)強酸又は強アルカリ触媒
(C)成分(A)を溶解するアルコール類を主成分とする溶剤
(D)成分(C)の吸収性の高い不溶性微粉末」と記載され、また、
【0002】の【従来の技術】には、「従来、雨天時の自動車の明瞭な視界を確保するためのものとして、特公昭63―67828号及び特公昭50―15473号に開示されている酸及びアルキルポリシロキサンを含む組成物がある。このほか、耐久性をアップするために特開平5―311156号に示されているようにフルオロアルキルシランを撥水基材としたものもある。」と記載され、
【0019】比較例1には、
「ジメチルポリシロキサン 10.0
硫酸 1.0
イソプロピルアルコール 89.0」と記載されている。

(4) 対比・判断
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載の事項により特定された発明〈以下、本件発明という。〉と先願明細書に記載された発明とを比較すると、両者は、
【請求項1】では、「天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形され、かつ、車両ウインドガラスと摺動されるリップ部が、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、ウレタン系樹脂からなるバインダー成分とを含むコーティング組成物でコーティングされてなり、
シリコーン系又はフッ素系の撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスと組み合わせて用いられるものであることを特徴とする車両用ワイパーブレード。」
【請求項2】 では、「雨天時の車両走行に際して、シリコーン系又はフッ素系撥水剤を用いて表面処理された車両ウインドガラスの表面で、摺動性を向上させるためのコーティングが施されたゴムブレードのリップ部を摺動させる車両ウインドガラスの水滴払拭方法であって、
上記ゴムブレードが天然ゴム、合成ゴム又はそれらをブレンドしたゴムを母材とするゴム材料で成形されており、上記コーティングが、シリコーンゴム、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、ナイロン、吸水性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれるパウダー成分と、ウレタン系樹脂でなるコーティング組成物を用いて形成されていることを特徴とする車両ウインドガラスの水滴払拭方法。」である点で一致し、
A:本件発明において、撥水剤は、その基剤が、アミノ変性ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキルシランからなる群より選ばれたものであるのに対し、先願明細書に記載された発明では、撥水剤の成分についての言及がない点と、
B:本件発明においては、ウレタン系樹脂の種類を油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂、ブロック型ウレタン樹脂からなる群より選ばれるものとしたのに対し、先願明細書に記載された発明においては、水酸基とイソシアネートとが反応したウレタン樹脂である点で一応相違する。
しかしながら、Aの点については、周知例1及び2に示されているように、アミノ変性ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキルシランは、撥水剤の基剤として通常用いられる材料であるから、Aの点に実質上の相違はない。
また、Bの点に関しても、刊行物I(C)に示されているようにウレタン系樹脂のほとんどの分類を羅列したに過ぎないのであるから、該点にも実質上の相違はない。

5むすび
以上のとおりであるから、本件発明は先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも本件発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められない。
よって、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載の事項により特定された発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第4項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-07-24 
結審通知日 2002-07-29 
審決日 2002-08-12 
出願番号 特願平9-209967
審決分類 P 1 41・ 121- Z (B60S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 法明
藤井 俊明
登録日 2000-07-14 
登録番号 特許第3086888号(P3086888)
発明の名称 車両用ワイパーブレード及び車両ウインドガラスの水滴払拭方法  
代理人 玉田 修三  

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