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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1065528
審判番号 不服2002-5234  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-28 
確定日 2002-10-03 
事件の表示 平成10年特許願第354765号「切換装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年11月 9日出願公開、特開平11-313313]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成5年10月6日に出願した特願平5-276168号の一部を平成10年12月14日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成14年4月26日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のものである。
「【請求項1】静止衛星から送信された信号に関連する超高周波信号がコンバータからそれぞれ入力される複数の入力端子と、
これら入力端子にそれぞれ入力側が接続され、同数の分配出力側を有し、各分配側の出力が等しい複数の分配器と、
各分配器の分配出力側それぞれに接続された上記分配器と同数の入力側と、1つの出力側とを、それぞれが有し、これら複数の入力側のうち1つを選択して前記出力側に接続する複数の選択手段と、
これら複数の選択手段に対応して設けられ、対応する選択手段の出力側に接続され、かつ上記各超高周波信号の受信装置に接続される複数の出力端子とを、
有し、上記各選択手段は、対応する上記出力端子に上記受信装置から供給される電圧の値に応じて上記各入力側の1つを選択する制御手段を有する切換装置。」

2.引用例の記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用した特開平5-14900号公報(以下「引用例1」という。)、特開平5-14899号公報(以下「引用例2」という。)には、下記の事項が記載されている。
(引用例1)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はBS放送、CS放送等の衛星放送の受信を共有の衛星アンテナで行う衛星放送受信システム及びこのシステムに用いる切換分配器に関する。」
「【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。図1及び図2には本発明の第1実施例が示されている。
【0009】図2には衛星放送受信システムの回路ブロック図が示されている。図2において、衛星アンテナはBSアンテナ1とCS1アンテナ2とCS2アンテナ3の3本が設置され、BSアンテナ1はBS放送波、CS1アンテナ2はCS1放送波、CS2アンテナ3はCS2放送波をそれぞれ集束させる。
【0010】BSアンテナ1で集束するBS放送波はBSコンバータ4に取込まれる。BS放送波は円偏波であり、BSコンバータ4は1種類のBS放送信号を所定の周波数に変換して信号ケーブル5を介して切換分配器6の第1入力端子t1に導く。
【0011】CS1アンテナ2で集束するCS1放送波はCS1コンバータ7に取込まれる。CS1放送波は直交する2種の直線偏波であり、CS1コンバータ7は水平偏波放送信号と垂直偏波放送信号をそれぞれ所定の周波数に変換して2本の信号ケーブル8,9を介して切換分配器6の第2及び第3入力端子t2,t3にそれぞれ導く。
【0012】CS2アンテナ3で集束するCS2放送波はCS2コンバータ10に取込まれる。CS2放送波はCS1放送波と同様に直交する2種の直線偏波であり、CS2コンバータ10は水平偏波放送信号と垂直偏波放送信号をそれぞれ所定の周波数に変換して2本の信号ケーブル11,12を介して切換分配器6の第4及び第5入力端子t4,t5にそれぞれ導く。
【0013】切換分配器6は4つの分配出力端子t6〜t9を有し、この各分配出力端子t6〜t9には前記5本の入力放送信号の内所望の放送信号を別個独立に選択して出力するもので、この詳しい構成は図1に示されている。各分配出力端子t6〜t9にはそれぞれ信号ケーブル13〜16が接続され、この各信号ケーブル13〜16の他端がBS/CS受信機17〜20に接続されている。
【0014】各BS/CS受信機17〜20は電源スイッチにて電源がオンされるとコンバータ電源を各信号ケーブル13〜16を介して出力するよう構成されている。又、各BS/CS受信機17〜20は放送選択スイッチを有し、このスイッチで5種類(BS放送、CS1の水平偏波放送等)の放送を選択できる。この放送選択スイッチによる選択情報はパルスコード回路にてコントロールパルスに変換され、このコントロールパルスを各信号ケーブル13〜16を介して前記コンバータ電源に重畳して出力するよう構成されている。
【0015】図1には切換分配器6の回路ブロック図が示されている。図1において、切換分配器6には分配出力端子t6〜t9と同数の第1〜第4切換スイッチSW1〜SW4が設けられ、この各切換スイッチSW1〜SW4には5つの入力放送信号が全て入力されている。各切換スイッチSW1〜SW4は5つの入力放送信号の1信号を切換制御信号に基づいて選択し、この選択した放送信号はダイオードD1及びコントロールパルストラップ回路21を介して各分配出力端子t6〜t9に供給されている。
【0016】また、各分配出力端子t6〜t9はコイルL及びダイオードD2を介してレギュレータ22に接続され、このレギュレータ22はコントロールパルス検出回路23及びマイコン24に定電圧を供給する。又、各分配出力端子t6〜t9は前記コイルLを介してコントロールパルス検出回路23に接続され、このコントロールパルス検出回路23は伝送されてくるコントロールパルスを検出してこれをマイコン24に出力する。
【0017】マイコン24はコントロールパルスをデコードし、このデコードした選択情報に基づき選択情報が入力された分配出力端子t6〜t9に対応する第1〜第4切換スイッチSW1〜SW4に切換制御信号を出力する。
【0018】以下、上記構成の作用について説明する。4台のBS/CS受信機17〜20の例えば1台のBS/CS受信機17がその電源スイッチをオンし、且つ、放送選択スイッチにてBS放送を選択する。すると、コンバータ電源が信号ケーブル13を介して出力されると共にコントロールパルスがこれに重畳されて出力される。ここで、コントロールパルスはディジタル信号であるため電圧変動に強く確実に伝送される。
【0019】レギュレータ22はコンバータ電源にてコントロールパルス検出回路23及びマイコン24に電源を供給し、マイコン24にはコントロールパルス検出回路23よりコントロールパルスが入力される。マイコン24はこのコントロールパルスをデコードして第1切換スイッチSW1に切換制御信号を出力する。
【0020】第1切換スイッチSW1はBS放送用端子を選択し、前記コンバータ電源はこの第1切換スイッチSW1より信号ケーブル5を介してBSコンバータ4に供給される。この電源供給によりBSコンバータ4が駆動し、BSコンバータ4はBS放送信号を出力する。この出力したBS放送信号は信号ケーブル5を介して切換分配器6内に導かれ、第1切換スイッチSW1を通って第1分配出力端子t6に導かれる。そして、BS放送信号は信号ケーブル13を介してBS/CS受信機17に出力される。
【0021】また、この状況にあって他のBS/CS受信機18〜20も電源オンされ、且つ所望の放送信号が選択されると、上記と同様にして第2乃至第4切換スイッチSW2〜SW4が所望の放送信号端子を選択する。そして、選択されたCS1コンバータ7やCS2コンバータ10にコンバータ電源が供給されてCS1コンバータ7やCS2コンバータ10が駆動して各BS/CS受信機18〜20には所望の放送信号が出力される。従って、各BS/CS受信機17〜20には切換分配器6との間を1本の信号ケーブル13〜16で接続するだけで別個独立に所望の放送を受信できる。」
これらの記載によれば、引用例1には、
BS放送、CS放送等の衛星放送信号がコンバータ4、7、10からそれぞれ入力される複数の入力端子t1〜t5と、
前記入力端子t1〜t5は、それぞれ同数の分配出力側を有し、
前記各分配出力側それぞれに接続された前記入力端子t1〜t5と同数の入力側と、1つの出力側とを、それぞれが有し、これら複数の入力側のうち1つを選択して前記出力側に接続する複数の切換スイッチSW1〜SW4と、
これら複数の切換スイッチSW1〜SW4に対応して設けられ、対応する切換スイッチSW1〜SW4の出力側に接続され、かつ前記各衛星放送信号の受信装置17〜20に接続される複数の分配出力端子t6〜t9とを有し、
前記各切換スイッチSW1〜SW4は、対応する前記分配出力端子t6〜t9に前記受信装置17〜20から供給されるコントロールパルスに応じて前記各入力側の1つを選択するマイコン24を有する切換分配器
が記載されている。
(引用例2)
「【0018】各コンバータ電源検出回路21a,21bはコンバータ電源の電圧レベルを検出し、15V(水平偏波の放送選択時)であればH信号、11V(垂直偏波の放送選択時)であればL信号を電源回路20及び各対応する切換スイッチSWa,SWbにそれぞれ出力する。
【0019】・・・各切換スイッチSWa,SWbはH信号出力のとき水平偏波用の変換部14出力を、L信号出力のとき垂直偏波用の変換部15出力をそれぞれ選択するよう切り換える。
【0020】以下、上記構成の作用について説明する。一方のBS/CS受信機7a(又は7b)を操作してCS放送を選択し、且つ、水平偏波の放送を選択すると、BS/CS受信機7a(又は7b)より15Vのコンバータ電源がCSコンバータ9に送られる。すると、コンバータ電源検出回路21a(又は21b)がH信号を出力して電源回路20が水平偏波用の変換部14へ電源供給すると共に切換スイッチSWa(又はSWb)が水平偏波用の変換部14出力側(H端子側)に接続される。従って、入力プローブ12よりピックアップされた水平偏波信号は変換部14によって中間周波の水平偏波信号に変換され、この変換された水平偏波信号が切換スイッチSWa(又はSWb)を通り信号ケーブル10(又は11)を介してBS/CS受信機7a(又は7b)に供給される。」
「【0022】この状態にあって、一方のBS/CS受信機7a(又は7b)の選択を垂直偏波の放送に変換すると、一方のBS/CS受信機7a(又は7b)が送るコンバータ電源が11Vのレベルに変更される。すると、コンバータ電源検出回路21a(又は21b)がL信号を電源回路20及び対応する切換スイッチSWa(又はSWb)に出力する。電源回路20は垂直偏波用の変換部20にも電源供給を開始し、対応する切換スイッチSWa(又はSWb)が垂直偏波用の変換部15出力側(L端子側)に接続を切り換える。」

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「前者」という。)と上記引用例1に記載の発明(以下「後者」という。)を比較する。
両者は、いずれも切換装置であって、
後者の「衛星放送信号」、「入力端子t1〜t5」、「切換スイッチSW1〜SW4」、「分配出力端子t6〜t9」、「マイコン24」は、それぞれ前者の「超高周波信号」、「入力端子」、「選択手段」、「出力端子」、「制御手段」に対応している。
したがって、両者は、静止衛星から送信された信号に関連する超高周波信号がコンバータからそれぞれ入力される複数の入力端子と、
これら入力端子にそれぞれ入力側が接続され、同数の分配出力側を有し、
各分配出力側それぞれに接続された同数の入力側と、1つの出力側とを、それぞれが有し、これら複数の入力側のうち1つを選択して前記出力側に接続する複数の選択手段と、
これら複数の選択手段に対応して設けられ、対応する選択手段の出力側に接続され、かつ上記各超高周波信号の受信装置に接続される複数の出力端子とを、
有し、上記各選択手段は、対応する上記出力端子に上記受信装置から供給される制御信号に応じて上記各入力側の1つを選択する制御手段を有する切換装置
である点で一致し、
(1)前者は、これら入力端子にそれぞれ入力側が接続され、同数の分配出力側を有し、各分配側の出力が等しい複数の分配器であるのに対し、後者はそうではない点、
(2)制御信号が、前者では、電圧の値であるのに対し、後者では、コントロールパルスである点
で相違する。
次に、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
衛星放送受信アンテナ2のBSコンバータ3と各加入者1a、1b・・・1nの衛星放送チューナー5との間に分配器4を設けるようにした衛星放送受信システムは、特開昭64-29126号公報にみられるように周知である。
そうすると、後者の「前記入力端子t1〜t5は、それぞれ同数の分配出力側を有」する構成をこのような分配器で構成するようにすることは当業者が容易に推考し得ることである。
その際、分配器の各分配側の出力を等しくすることは当然行われるべきことであって、この点を格別のものとすることはできない。
相違点(2)について
電圧の値に応じて切換手段を切り換えることは上記引用例2に記載されており、後者において、選択手段を切り換える制御手段を電圧の値に応じて制御するようなものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、本願発明の効果についてみても、上記事項の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

4.むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-06 
結審通知日 2002-08-06 
審決日 2002-08-20 
出願番号 特願平10-354765
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 橋本 正弘
長島 孝志
発明の名称 切換装置  
代理人 木村 正俊  

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