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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D |
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管理番号 | 1065578 |
審判番号 | 不服2000-14541 |
総通号数 | 35 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-01-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-09-12 |
確定日 | 2002-10-04 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第167702号「有機質土地盤の改良工法」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 1月19日出願公開、特開平11- 13049]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年6月24日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年4月4日受付の手続補正書により補正された明細書及び平成9年6月25日付けの手続補正書により補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「有機質土層が地盤の表層を覆っている有機質土地盤の表面に、施工機械類を設備可能な強度のサンドマットの如き支持体を用意する段階と、 用意した支持体の上に掘削機を据え付け、地盤土壌を掘削排土しケーシングを少なくとも有機質土層を貫通する深さまで打設する段階と、 打設したケーシングの空洞の中へ骨材料を投入し、その後ケーシングを引き抜く段階と、 前記のようにして骨材料との置換が体積比で50%程度終了した地盤について、地盤改良機により普通ポルトランドセメント・高炉セメントのような汎用系安定材を使用した混合処理工法によるラップ施工の改良処理を設計深さまで行う段階とより成ることを特徴とする、有機質土地盤の改良工法。」 なお、本願については、平成12年10月10日受付で手続補正がなされたが、本審決と同日付けの補正の却下の決定により却下された。 2.刊行物 (1)これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平6-128932号公報(以下、「刊行物1」という。)には、 (ア)「本発明は、粘性土系の軟弱地盤(泥炭性の軟弱地盤を含む)の改良工法に関するものである。」(段落【0001】)、 (イ)「本発明では、先ず、軟弱地盤に所定のピッチで多数のサンドパイルを造成して排水法による第1次の地盤改良を行うが、そのサンドパイルの構成材料には砂以外に、砂と同様にドレーン材と骨材の両方に使用できる鉱滓等を用いることができる。 サンドパイルの造成方法には特に限定はなく、ケーシングを用いた従来公知の方法で行えばよい。…… 第1次の地盤改良を行った後、サンドパイルの砂と地盤土壌と固化材とを攪拌混合して、固化材添加による第2次の地盤改良を行うが、この攪拌混合は、回転軸の下端部に攪拌翼を放射状に突設して該攪拌翼の回動域に固化材を供給するようにした従来の公知の単軸式もしくは多軸式の攪拌混合処理機を用いて行われ、また、固化材にはセメント等が用いられる。 前述の攪拌混合処理により、地中に多数の固化パイルが形成されるが、この固化パイルにはサンドパイルの砂が骨材として混入されているので、その強度は従来の深層攪拌混合処理工法で形成される固化パイルの場合よりも大であり、強度を同じにするのであれば固化材が節約できることになる。 前述の第2次の地盤改良において、サンドパイルの中心部に単軸式の攪拌混合処理機の回転軸を通してサンドパイルの砂とその周辺の地盤土壌と固化材とを攪拌混合すると、サンドパイルのピッチに関係なく、サンドパイルの砂を無駄なくしかも比較的均等に固化パイル内に混入させることができる。 なお、前述の攪拌混合処理は、サンドパイルの全長に亙って行うか、或は、上方部や中間部のように部分的に行うか、その何れでもよい。」(段落【0006】ないし【0012】) と記載されており、これらの記載からみて、刊行物1には、 「泥炭性の軟弱地盤にケーシングを用いた従来公知の方法により所定のピッチで多数の砂を構成材料とするサンドパイルを造成し、単軸式もしくは多軸式の攪拌混合処理機によりサンドパイルの砂と地盤土壌とセメントとを攪拌混合してサンドパイルの全長に亙って地盤改良を行う泥炭性の軟弱地盤の改良工法。」の発明が記載されていると認められる。 (2)同じく、特開昭53-100612号公報(以下、「刊行物2」という。)には、軟弱地盤上への覆土に関し、 「一方、施工現場の地形、状態、覆土目的あるいは施工計画等によっても、覆土した直後その上に台車1を乗せて台車1の前方向に散布覆土しながら施工を進めて行くことができ、覆土作業後ある日数経過した後に既に覆土を終つた地盤上に台車1を乗せて台車1の横方向に散布覆土しながら施工を進めて行くこともできる。」(3頁左下欄下から3行ないし同右下欄4行) と記載されている。 3.対比・判断 本願発明と刊行物1に記載の発明とを比較すると、刊行物1に記載の発明の「泥炭性の軟弱地盤」、「砂」及び「単軸式もしくは多軸式の攪拌混合処理機」は、それぞれ本願発明の「有機質土が地盤の表層を覆っている有機質土地盤」、「骨材料」及び「地盤改良機」に相当し、刊行物1に記載の発明の「セメント」と本願発明の「普通ポルトランドセメント・高炉セメントのような汎用系安定材」とはともに安定材である点で共通し、また、刊行物1に記載の発明の「ケーシングを用いた従来公知の方法により所定のピッチで多数の砂を構成材料とするサンドパイルを造成」することは、技術常識からみて、掘削機を据え付け、地盤土壌を掘削排土してケーシングを打設する段階と、打設したケーシングの空洞の中へ骨材料を投入し、その後ケーシングを引き抜く段階とからなることは明らかであり、さらに、刊行物1に記載の発明の「単軸式もしくは多軸式の攪拌混合処理機によりサンドパイルの砂と地盤土壌とセメントとを攪拌混合してサンドパイルの全長に亙って地盤改良を行う」ことは、混合処理工法による改良処理であるといえるから、両者は、 「有機質土層が地盤の表層を覆っている有機質土地盤の上に掘削機を据え付け、地盤土壌を掘削排土しケーシングを打設する段階と 打設したケーシングの空洞の中へ骨材料を投入し、その後ケーシングを引き抜く段階と、 骨材料との置換が終了した地盤について、地盤改良機により安定材を使用した混合処理工法による改良処理を行う段階とより成る有機質土地盤の改良工法。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本願発明では、有機質土地盤の表面に、施工機械類を設備可能な強度のサンドマットの如き支持体を用意し、支持体の上に掘削機を据え付けるのに対し、刊行物1に記載の発明では、そのような工程を有するか否かが不明である点 相違点2 本願発明では、ケーシングを少なくとも有機質土層を貫通する深さまで打設するのに対し、刊行物1に記載の発明では、ケーシングを地盤中のどの位置まで打設するのか不明である点 相違点3 本願発明では、骨材料との置換を体積比で50%程度行うのに対し、刊行物1に記載の発明では、骨材料との置換をどの程度まで行うのか不明である点 相違点4 安定材が、本願発明では普通ポルトランドセメント・高炉セメントのような汎用系安定材であるのに対し、刊行物1に記載の発明ではセメントである点 相違点5 本願発明では、改良処理をラップ施工により設計深さまで行うのに対し、刊行物1に記載の発明では、改良処理をサンドパイルの全長に亙って行っており、また、改良処理をラップ施工として行うか否かが不明である点 そこで、相違点1について検討すると、刊行物2には、軟弱地盤(本願発明の「有機質土地盤」に対応)の表面に覆土(本願発明の「施工機械類を設備可能な強度のサンドマットの如き支持体」に相当)し、その上に台車1(本願発明の「施工機械類及び掘削機」に対応)を乗せて施工を進める点が記載されており、刊行物1に記載の発明と刊行物2に記載のものとは、軟弱地盤上での施工機械の使用という共通の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載の発明に刊行物2に記載の上記技術事項を適用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。 次に、相違点4について検討すると、安定材として何を用いるかは、改良対象地盤、設計強度、施工方法等に基づき当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。 次に、相違点2、3及び5について検討すると、刊行物1には、「前述の攪拌混合処理により、地中に多数の固化パイルが形成されるが、この固化パイルにはサンドパイルの砂が骨材として混入されているので、その強度は従来の深層攪拌混合処理工法で形成される固化パイルの場合よりも大であり……」(段落【0010】)と記載されており、骨材である砂の混入量が多いほど改良地盤の強度が大きくなることが明らかであるから、骨材料との置換をどの程度の深さまでどのような体積比で行うか、また、混合処理工法による地盤改良処理をどの程度の深さまで行うか、全面または一部について行うかは、有機質土地盤の性状、改良地盤の設計強度等に基づき当業者が適宜決定し得る設計事項にすぎない。 そして、全体として本願発明によりもたらされる効果も、刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載のものから当業者であれば当然に予測できる程度のものであって顕著なものではない。 したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-07-31 |
結審通知日 | 2002-08-07 |
審決日 | 2002-08-20 |
出願番号 | 特願平9-167702 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
中田 誠 鈴木 憲子 |
発明の名称 | 有機質土地盤の改良工法 |
代理人 | 山名 正彦 |