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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11C
管理番号 1065724
審判番号 不服2001-10073  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-02-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-14 
確定日 2002-10-10 
事件の表示 平成3年特許願第295056号「不揮発性メモリ装置及び書込データの経時変化監視方法」拒絶査定に対する審判事件[平成5年2月5日出願公開、特開平5-28788]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成3年10月15日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年7月22日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
電気的に書き込み消去可能なメモリセルで構成されデータビットの書き込まれる第1メモリセルと、電気的に書き込み消去可能なメモリセルで構成され経時変化監視用データビットの書き込まれる第2メモリセルとを有する不揮発性メモリ装置において、
高電圧発生回路と前記第2メモリセルの間に前記高電圧発生回路からの電圧を下げるための1/n回路を有し、前記1/n回路を用いて前記経時変化監視用データビットを前記第2メモリセルに書き込む際の書き込み電圧を前記第1メモリセルに対する前記データビットの書き込み電圧より低く設定し、前記経時変化監視用データビットの経時変化を促進していることを特徴とする不揮発性メモリ装置。」

2.引用例に記載された発明
これに対して、当審において平成14年5月31日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開平2-49300号公報(以下、「引用例1」という。)には、EEPROM内蔵マイクロコンピュータに関し、以下(a)、(b)の事項が記載されている。
(a)作用として、「本発明のマイクロコンピュータによれば、EEPROM12の記憶内容の消失を防止する記憶内容検出手段13を設けている。このため、予め、EEPROM12に比べて、記憶性能を劣化させた専用メモリセル131に、該EEPROM12と同様に情報データを書き込み処理をし、…、定期的に専用メモリセル131の情報データを読み出し処理をし、データリテンション(データ化け)等の異常があれば、…、EEPROM12の全てのメモリセルについて初期に記憶した情報データの再書き込み処理をすることが可能となる。これにより、常に初期に記憶した、かつ高信頼度の情報データを保持することが可能となる。」(第3頁右上欄第7行〜同頁左下欄第3行)
(b)実施例の説明として、「一般に、電荷(データ)の保持能力はEEPROMのメモリセル加わる電界によって、フローティングゲートFGにチャージされた電荷の移動難易度で決定される。このため、保持能力は、コントロールゲートCGに印加する電界強度に大きく影響される。従って、本発明の実施例に係る専用メモリセル131は…トランジスタQ4のコントロールゲートCGに印加する電界を強くすることにより記憶性能を劣化させることができる。」(第4頁左上欄第18行〜同頁右上欄第8行)
以上(a)、(b)の事項及び図面の記載から、引用例1には、
EEPROM12の通常のメモリセル121と、専用メモリセル131とを有し、強い電界を印加して記憶性能を劣化させた上記専用メモリセル131に、通常のメモリセル121と同様に情報データを書き込み処理をし、定期的に専用メモリセル131の情報データを読み出し処理をし、データ化け等の異常があれば、通常のメモリセル121について初期に記憶した情報データの再書き込み処理をするEEPROM装置
が記載されていると認められる。
同じく引用した特開平2-31400号公報(以下、「引用例2」という。)には、「高温保管の後、急激にしきい値電圧の低下したものは通常使用時の電源電圧においても期待通りの内容が読出せなくなる為、排除が可能であるが、しきい値電圧の変化が比較的小さく、不良の程度の軽いものは排除する事が不可能であった。」(第2頁右上欄第11〜16行)、「しきい値電圧は、第2図(a)、(b)に示すように、書込み時間が長くなる程蓄積電子数が多くなるので、そのレベルは高くなる。」(第3頁右上欄第7〜9行)、「本発明は、通常の書込み時には従来と同様にメモリセルのゲート電極に高いレベルの電圧を印加してメモリセルに高いしきい値電圧を与え、試験用の書込み時には従来の書込み時の電圧より低いレベルの電圧を印加して低いしきい値電圧を与える構成とすることにより、試験用の書込みの後、高温保管等の保持特性試験により経時的に劣化する保持特性不良のメモリセルの検出が容易となり、…効果がある。」(第3頁左下欄第2〜13行)と記載されており、これらの記載及び第2図の記載から、引用例2には、
不揮発性メモリ装置において、保持特性不良のメモリセルの検出が容易となるように、試験時のメモリセルへの書き込み電圧を通常時の書き込み電圧より低い電圧として、書き込みによるメモリセルの蓄積電荷量を通常時の書き込みによる蓄積電荷量より少なくすること
が記載されていると認められる。

3.本願発明と引用例に記載された発明との対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比する。
(イ)後者の、「通常のメモリセル121」、「専用メモリセル131」、「EEPROM装置」は、前者の、「第1メモリセル」、「第2メモリセル」、「不揮発性メモリ装置」にそれぞれ相当しており、
(ロ)後者のように、専用メモリセル131の記憶性能を劣化させると、経時変化後の蓄積電荷量がより少なくなり、前者と同様に、専用メモリセル131の記憶する情報データの経時変化を促進することになると認められる。
よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「電気的に書き込み消去可能なメモリセルで構成されデータビットの書き込まれる第1メモリセルと、電気的に書き込み消去可能なメモリセルで構成され経時変化監視用データビットの書き込まれる第2メモリセルとを有する不揮発性メモリ装置において、前記経時変化監視用データビットの経時変化を促進している不揮発性メモリ装置」である点。
[相違点]
前者が、経時変化監視用データビットの経時変化を促進するのに、高電圧発生回路と前記第2メモリセルの間に前記高電圧発生回路からの電圧を下げるための1/n回路を有し、前記1/n回路を用いて経時変化監視用データビットを第2メモリセルに書き込む際の書き込み電圧を第1メモリセルに対する前記データビットの書き込み電圧より低く設定しているのに対して、後者は、第2メモリセル(専用メモリセル131)に強い電界を印加して記憶性能を劣化させている点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例2に、不揮発性メモリ装置において、保持特性不良のメモリセルの検出が容易となるように、試験時のメモリセルへの書き込み電圧を通常時の書き込み電圧より低い電圧として、書き込みによるメモリセルの蓄積電荷量を通常時の書き込みによる蓄積電荷量より少なくすることが記載されており、書き込みによる蓄積電荷量を少なくすると経時変化後の蓄積電荷量も少なくなることは明らかであるから、後者において、経時変化監視用データビットの経時変化を促進するのに、経時変化監視用データビットを第2メモリセルに書き込む際の書き込み電圧を第1メモリセルに対するデータビットの書き込み電圧より低く設定することは、当業者が容易になし得たことであり、その際に、高電圧発生回路からの電圧を下げるための1/n回路を用いることは、当業者が適宜になし得た設計的事項にすぎない。

5.まとめ
以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、引用例1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-08 
結審通知日 2002-08-13 
審決日 2002-08-26 
出願番号 特願平3-295056
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 俊哉  
特許庁審判長 斎藤 操
特許庁審判官 石川 正二
山本 穂積
発明の名称 不揮発性メモリ装置及び書込データの経時変化監視方法  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  

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