• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1065727
審判番号 不服2000-12332  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-07 
確定日 2002-10-10 
事件の表示 平成10年特許願第359111号「プリント配線基板」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 6月30日出願公開、特開2000-183540]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成10年12月17日の出願であって、平成11年11月15日及び平成12年8月7日付で、それぞれ手続補正したものであるが、そのうちの平成12年8月7日付の手続補正書に係る補正は決定をもって却下された。よって、本願の請求項1〜4に係る発明は、平成11年11月15日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 多層プリント配線基板において、1層以上の信号配線層と電源配線層とグランド層とからなり、電源配線層は、2層のグランド層で挟まれ、表面に設けられたLSIの電源ごとに配線化されており、前記グランド層は、層間を配線するビアホールおよびその周りを除いて、プリント基板全体に拡がっている金属板である構造において、前記電源配線層とグランド層との間において、磁性体材料が電源配線を覆うように構成され、また、その他の部分には絶縁誘電体が形成されていることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】 前記電源配線層に形成された電源配線の上下に、配線の幅よりもわずかに大きい幅の磁性体薄膜が形成され、かつ、前記電源配線が磁性体薄膜で覆われている構造であって、前記グランド層との間には絶縁誘電体が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】 前記電源配線層とグランド層との間において、前記磁性体材料あるいは磁性薄膜の周囲に、誘電損失が大きい絶縁誘電体が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】 前記プリント配線基板の内部の電源配線層と、表面に実装されたICの電源ピンとの間に存在する層間ビアホールの内部に、誘電損失の大きな誘電体あるいは絶縁質または金属質磁性体が、埋め込まれていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプリント配線基板。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-270862号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「EMI抑制多層プリント基板」に関し、図1〜5と共に、以下の事項が記載されている。
イ)「本発明は、トランジスタ、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)などの回路素子が搭載され、これら回路素子に給電するための電源層を有する多層プリント基板に関し、特に、EMI(Electromagnetic Interference;電磁波妨害)を抑制できる多層プリント基板に関する。」(段落【0001】)
ロ)「本発明の多層プリント基板は、複数の回路素子を搭載し、グランド層と信号層と回路素子に電源電圧を供給するための電源層とがそれぞれ絶縁材を介して積層された多層プリント基板において、各回路素子は、その動作速度に応じて複数のグループに分類され、グループごとに多層プリント基板における搭載領域が決定され、電源層では、グループごとに電源パターンが形成され、異なるグループに対応する電源パターン間が、当該電源パターン間を高周波的に分離する電源配線パターンによって接続している。」(段落【0014】)
ハ)「この多層プリント基板は、5層の信号層5、2層のグランド層6及び1層の電源層7の合計8層の導体層を有し、各導体層が絶縁材8あるいは磁性体混合絶縁材9を介して積層した8層プリント基板である。具体的には、図示下方から上方に向け、信号層5、絶縁材8、グランド層6、磁性体混合絶縁材9、電源層7、磁性体混合絶縁材9、グランド層6の順で積層し、さらに、その上に、絶縁材8及び信号層5がそれぞれ4層ずつ交互に積層している。ここで、絶縁材8には、例えばガラス-エポキシなどの、誘電特性のみを有する材料が使用されている。一方電源層7を上下にはさむ絶縁材料層である磁性体混合絶縁材9には、磁性体を分散させた絶縁材料が使用される。磁性体としては、例えば、センダストやフェライトの粉砕物が使用でき、絶縁材料としては、ガラス-エポキシなどが使用できる。ただし、センダスト自体は金属材料なので、分散量を調節し、磁性体混合絶縁材9として絶縁性能が保たれるようにする。」(段落【0021】)
ニ)「グランド層6は、多層プリント基板による部品実装に不可欠となるヴァイアホールあるいはスルーホール以外の孔を含まず、・・・全面平板構成の導電膜として形成されている。」(公報第7欄第8〜12行)
ホ)「本実施例の形態の多層プリント基板では、電源層7をはさむ上下の絶縁層として磁性体混合絶縁層9を用いることにより、非磁性の絶縁材を用いる場合に比べ、電源層7の線路インピーダンス、特に電源配線パターン2の線路インピーダンスを高めることができる。」(公報第7欄第33〜38行)
(2)刊行物2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-111588号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「薄膜多層基板及びその製造方法」に関し以下の事項が記載されている。
ヘ)「ポスト状導体を用いて層間接続を行う薄膜多層基板において、電解めっきにより形成される配線導体を取り巻く環状磁性体薄膜を内挿し、EMIノイズの低減を行うことを特徴とする薄膜多層基板。」(【請求項1】)
ト)「本発明は、高速信号を取り扱う薄膜多層基板に係り、特にEMIノイズを低減する基板の構造及びその製造方法に関するものである。」(段落【0001】)
チ)「本発明の第2実施例について詳細に説明する。この実施例では、アディティブ法により各層ごとに配線導体を形成し、絶縁樹脂で被覆しながら多層化する薄膜多層基板において、電解めっきによる配線導体形成直後に、同一の給電薄膜を用いて、その周囲に環状磁性体小片を電解めっきにより形成し、各層磁性体小片を積層して配線導体を取り巻く環状磁性体薄膜とし、信号、電源に重畳するEMIノイズの低減を図った薄膜多層基板の製造方法」(段落【0022】)

3.対比・判断
(1)請求項1に係る発明について
上記刊行物1に関するハ)の記載内容からすれば、刊行物1の多層プリント基板は1層以上の信号層と電源層とグランド層からなり、電源層は2層のグランド層で挟まれている。また、ロ)の記載内容からすれば、刊行物1の多層プリント基板は、搭載される回路素子がグループ化され、電源層はこのグループ化された回路素子ごとに電源パターンが形成されているというのであるから、回路素子の電源ごとに電源層を配線化したものといい得るし、多層プリント基板において、回路素子の電源ごとに電源層を配線化することは技術常識でもある。さらに、ニ)の記載内容及び技術常識を勘案すれば、刊行物1の多層プリント基板のグランド層は層間を配線するヴァイアホール及びその周りを除いてプリント基板全体に拡がっている金属板であるといって良い。
よって、刊行物1には、「多層プリント基板において、1層以上の信号層と電源層とグランド層からなり、電源層は、2層のグランド層で挟まれ、表面に設けられた回路素子の電源ごとに配線化されており、グランド層は、層間を配線するヴァイアホール及びその周りを除いて、プリント基板全体に拡がっている金属板である構造において、電源層とグランド層との間の絶縁層として磁性体混合絶縁層を用いた」発明が記載されていると認められる。
刊行物1記載の発明と請求項1に係る発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「多層プリント基板」は請求項1に係る発明の「多層プリント配線基板」に相当し、以下同様に、「信号層」は「信号配線層」に、「電源層」は「電源配線層」に、「回路素子」は「LSI」に、「ヴァイアホール」は「ビアホール」にそれぞれ相当する。また、その図1より、刊行物1記載の発明の磁性体混合絶縁層9は電源層7を覆うよう構成されていると認められる。
よって、両者は、多層プリント配線基板において、1層以上の信号配線層と電源配線層とグランド層とからなり、電源配線層は、2層のグランド層で挟まれ、表面に設けられたLSIの電源ごとに配線化されており、前記グランド層は、層間を配線するビアホールおよびその周りを除いて、プリント基板全体に拡がっている金属板である構造において、電源配線層とグランド層との間において、磁性体材料が電源配線を覆うよう構成されている点で一致し、次の点で相違する。
相違点
請求項1に係る発明は、電源配線層とグランド層との間において、絶縁誘電体のみから構成される部分が存在するのに対し、刊行物1記載の発明は、磁性体材料が電源配線層とグランド層間で磁性体混合材料として形成され、電源配線層とグランド層との間には絶縁誘電体のみから構成される部分は存在しない点。
上記相違点について検討する。
刊行物2には、上記へ)〜チ)として摘示したところから明かなように、多層プリント基板である薄膜多層基板において、電源配線である配線導体を磁性体材料であるパーマロイ等で部分的に取り巻く構造とし、その他の部分は絶縁誘電体である絶縁膜で構成した技術が記載されている。つまり、必要な部分のみに磁性体材料を配置し、その他の部分は磁性体材料を含まない絶縁誘電体とすることの開示がある。また、刊行物1における上記ハ)の記載内容からも示唆されるように、電源配線層とグランド層間の絶縁不良防止の必要性という技術課題は、当業者には本願出願前周知の技術課題といいうる。よって、刊行物1の記載の発明において、電源層とグランド層間の絶縁性を確保するために、刊行物2に開示の上記技術を応用し、電源配線層とグランド層との間に絶縁誘電体層のみからなる部分を部分的に形成するようなことは当業者であれば容易に想到し得たものである。
そして、請求項1に係る発明の効果は、刊行物1及び刊行物2に記載された事項より当業者が予測しうる程度のものであって格別なものとはいえない。
(2)請求項2以下の発明について
請求項2〜4に係る発明は、請求項1に係る発明を技術的に限定するものであるが、ここで規定される構成は、いずれも、刊行物1及び刊行物2に実質的開示されている構成か、または、当業者にとっては技術常識といえる構成であって格別なものとはいえない。また、各請求項に係る発明の効果も刊行物1及び刊行物2に記載された事項より当業者が予測しうる程度のものであって格別なものとはいえない。

4.むすび
したがって、請求項1〜4に記載された事項により特定される発明は、いずれも刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-07 
結審通知日 2002-08-13 
審決日 2002-08-29 
出願番号 特願平10-359111
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
尾崎 和寛
発明の名称 プリント配線基板  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ