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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1065845
異議申立番号 異議2001-70887  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-19 
確定日 2002-07-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3090293号「光回路及びその製造方法」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3090293号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
特許第3090293号の請求項1乃至4に係る発明についての出願は、平成4年8月4日に出願され、平成12年7月21日に設定登録され、その後、上野悠より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、平成13年8月28日に訂正請求がなされ、さらに取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成14年3月18日に、先の訂正を取下げ、特許異議意見書とともに訂正請求がなされたものである。

【2】訂正の適否についての判断
【2-1】訂正の要旨
特許権者が求めている、平成14年3月18日の訂正の内容は、以下のa〜iのとおりである。
a.特許第3090293号発明の明細書中の特許請求の範囲の請求項1〜7において、もとの請求項1、4、5を削除し、以下項数を繰り上げ1、2、3、4と訂正する。
b.訂正前の特許明細書の、特許請求の範囲の請求項2を訂正後の請求項1とし、当該請求項1を「平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路であって、
前記少なくとも片方の光導波路は、Ge02、Ti02、あるいは、Ce203が添加された、石英系ガラスを素材として作成され、かつ前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備えるように、可視または紫外光レーザ光が照射されて前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値が調整された部分を有することを特徴とする光回路。」と訂正する。
c.訂正前の特許明細書の、特許請求の範囲の請求項3を訂正後の請求項2とし、当該請求項2を「平面基板上に設けられる光導波路を有し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
前記平面基板上に、Ge02、Ti02、あるいは、Ce203を添加した石英系ガラスを素材として、前記光導波路を作成する工程と、
前記光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水乎なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を、偏波依存性が解消する値に調節する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。」と訂正する。
d.訂正前の特許明細書の、特許請求の範囲の請求項6を訂正後の請求項3とし、当該請求項3を「平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、
前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を解消する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。」と訂正する。
e.訂正前の特許明細書の、特許請求の範囲の請求項7を訂正後の請求項4とし、当該請求項4を「平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、
前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、TE偏波の光とTM偏波の光が分離されるように前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を増加させる工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。」と訂正する。
f.特許明細書の段落【0017】を「【課題を解決するための手段】本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。即ち、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路であって、前記少なくとも片方の光導波路は、Ge02、Ti02、あるいは、Ce203が添加された、石英系ガラスを素材として作成され、かつ、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備えるように、可視または紫外光レーザ光が照射されて前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値が調整された部分を有することを特徴とする。」と訂正する。
g.特許明細書の段落【0018】を「また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を有し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、前記平面基板上に、Ge02、Ti02、あるいは、Ce203を添加した石英系ガラスを素材として、前記光導波路を作成する工程と、前記光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を、偏波依存性が解消する値に調節する工程とを有することを特徴とする。」と訂正する。
h.特許明細書の段落【0019】を「また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を解消する工程とを有することを特徴とする。」と訂正する。
i.特許明細書の段落【0020】を「また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、TE偏波の光とTM偏波の光が分離されるように前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を増加させる工程とを有することを特徴とする。」と訂正する。

【2-2】訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a〜eは願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲範囲の減縮を目的とする訂正であり、上記訂正事項f〜iは、前記a〜eの訂正に伴い、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内でする明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、これらの訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

【2-3】むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で規定する訂正について、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】特許異議の申立てについての判断
【3-1】申立ての理由の概要
異議申立人は、下記刊行物を示し、訂正前の本件の請求項1に係る発明は、刊行物1、2または3に記載された発明である旨、請求項2に係る発明は刊行物2または3に記載された発明である旨、並びに請求項3〜7に係る発明は刊行物2、4若しくは2、5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである旨主張している。
刊行物1:特開平4-113302号公報(甲第1号証)
刊行物2:IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, Vol.3, No.7, PP.640-642 (甲第2号証)
刊行物3:ELECTRONICS LETTERS 21st November, 1991, Vol.27, No.24, PP.2294-2295(甲第3号証)
刊行物4:ELECTRONICS LETTERS 30th July, 1992, Vol.28, No.16, PP.1558-1560(甲第4号証)
刊行物5:ELECTRONICS LETTERS 15th August, 1991, Vol.27, No.17, PP.1548-1550(甲第5号証)
当審が、平成13年12月28日付けで通知した取消理由は、平成13年8月28日付けで訂正された請求項1に対して、『刊行物4には「ゲルマニウムが添加されたファイバに、紫外あるいは可視光を照射することにより導波路に複屈折が誘起される」という現象が開示され、この現象が導波路へ作用する応力変化に起因することは、本件の出願時点において当業者には自明な事項であり、刊行物1に記載されている発明において、基板表面にレーザ光を照射する構成に変えて、導波路にレーザ光を照射して導波路の複屈折を調整する構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることと言える。そして、その効果も、導波路がファイバであるか基板上に形成されているかと言う構成の違いに起因しているに過ぎず、当業者が予想しうる程度のものといえる。』、請求項2、3、4に対して、『刊行物1,4に記載されている発明から容易に想到しうるものである。』というものである。
【3-2】本願発明
本願の請求項1〜4に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項1】 平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路であって、
前記少なくとも片方の光導波路は、Ge02、Ti02、あるいは、Ce203が添加された、石英系ガラスを素材として作成され、かつ、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備えるように、可視または紫外光レーザ光が照射されて前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値が調整された部分を有することを特徴とする光回路。
【請求項2】 平面基板上に設けられる光導波路を有し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
前記平面基板上に、Ge02、Ti02、あるいは、Ce203を添加した石英系ガラスを素材として、前記光導波路を作成する工程と、
前記光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を、偏波依存性が解消する値に調節する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。
【請求項3】 平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、
前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を解消する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。
【請求項4】 平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、
前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、TE偏波の光とTM偏波の光が分離されるように前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を増加させる工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。」
(以下、請求項順に「本願発明1」〜「本願発明4」という。)

【3-3】刊行物1、4の記載事項
刊行物1:特開平4-113302号公報(甲第1号証)
第2頁左上欄5行目-8行目「光導波路の複屈折性を調節することにより所望の偏波依存性あるいは偏波無依存性をもつ導波型光回路およびその製造方法に関するものである」
第3頁右上欄16行目-左下欄5行目「基板上に単一モード光導波路を配置してなる導波型光回路において、前記単一モード光導波路は、前記基板上のクラッド層と、該クラッド層に埋設されて光伝搬作用をもつコア部とを有し、前記基板の表面のうち、前記コア部の近傍の基板表面にレーザ光照射により変成された領域を設け、この変成領域の形状および分布により前記基板から前記コア部に作用する応力を非可逆的に変化させて前記単一モード光導波路の応力複屈折値を調整するように構成した」
第3頁右下欄19行目-第4頁左上欄4行目「シリコン基板1上のクラッド層1bは厚さ50μm程度のSiO2系ガラス、リング状光導波路2および入出力光導波路3、4のコア部は、クラッド層1bに埋設されてなる断面寸法6μm×6μmのSiO2-GeO2系ガラスである」
第5頁左下欄5行目-8行目「マッハツェンダ光干渉計型の光周波数多重フィルタの偏波無依存化や、あるいは逆に導波型偏波ビームスプリッタを構成する場合にも適用できる」
以上の事項から、刊行物1には、「平面基板上に設けられたSiO2系ガラスのクラッド層とGeO2が添加された石英系ガラスのコア部からなる光導波路を有するマッハツェンダ干渉計を備えた光回路において、基板表面にレーザ光を照射して基板を変成させることにより、コア部に作用する応力を変化させ、前記マッハツェンダ干渉計が所望の偏波依存性あるは偏波無依存性をもつように複屈折を調整した光回路及びその製造方法」なる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

刊行物4:ELECTRONICS LETTERS 30th July, 1992, Vol.28, No.16, PP.1558-1560(甲第4号証)
第1558頁右欄本文第1行目-5行目「適度な強度で直線偏光された青または緑の光に露光された時、ゲルマニウムが添加されたファイバが、光誘発された複屈折性を示すことを用いて、高複屈折ファイバに書き込まれた偏光カプラが最近実証されている」
第1559頁左欄30行目-36行目「我々は532nmでの2つのフォトンプロセスに対する266nmでのファイバカプラへの書き込み効率を比較できる。2.24J/cm2の光量で266nmの光源を用いて光誘発された複屈折が、2.74MJ/cm2の光量で532nmの光によって誘発されるものと同じオーダに強度であり、紫外線照射を用いることによって達成できる書き込み効率において1.22×106の改善が示されている」

【3-4】対比・判断
【3-4-1】本願発明1、2
《対比》
本願発明1、2と引用発明とを対比すると、引用発明における光導波路は、コア部よりも屈折率の低いクラッド部を周りに備えている光回路であることは明らかである。
また、引用発明における所望の偏波依存性あるは偏波無依存性をもつように複屈折を調整した光回路であるマッハツェンダ干渉計が、「マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備える」こと、及び「導波路を2本有する」ことも当業者に明らかである。
そして、引用発明の「複屈折」は、本願発明1の「基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明は
「平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路であって、前記少なくとも片方の光導波路は、Ge02、Ti02、あるいは、Ce203が添加された、石英系ガラスを素材として作成され、かつ、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備えるように、レーザ光が照射されて前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値が調整された部分を有することを特徴とする光回路。」の点で一致する。
また、本願発明2と引用発明は
「平面基板上に設けられる光導波路を有し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
前記平面基板上に、Ge02、Ti02、あるいは、Ce203を添加した石英系ガラスを素材として、前記光導波路を作成する工程と、
レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を、偏波依存性が解消する値に調節する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。」の点で一致する。
そして、複屈折値を調節するに当たって、本願発明1、2においては、可視または紫外光レーザ光を導波路の調整する部分に照射するのに対して、引用発明は、レーザ光を導波路近傍である基板表面に照射している点(相違点1)で相違する。

《判断》
上記相違点1を検討するに、刊行物4には「ゲルマニウムが添加されたファイバに、紫外あるいは可視光を照射することにより導波路に複屈折が誘起される」という現象が開示され、この現象が導波路へ作用する応力変化に起因することは、本件の出願時点において当業者には自明な事項である。
とすれば、引用発明において、基板表面にレーザ光を照射する構成に替えて、導波路に紫外あるいは可視光のレーザ光を照射して導波路の複屈折を調整する構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることと言える。そして、その効果も、導波路がファイバであるか基板上に形成されているかと言う構成の違いに起因しているに過ぎず、当業者が予想しうる程度のものといえる。
なお、特許異議意見書において、刊行物に記載されている、光ファイバで誘起される複屈折の変化は10-6のオーダであり、本件の場合、10-5のオーダで複屈折の変化が得られる旨主張しているが、仮にそうであっても、前記主張の効果は、引用発明に当業者が当然に試みる刊行物4の手段を適用して得られた単なる結果にすぎない。
したがって、本願発明1、2は、刊行物1、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

【3-4-2】本願発明3
本願発明3は、本願発明1の発明のカテゴリーを物から方法に変更するとともに、本願発明1を方法にしたものを偏波の依存性を解消するものに限定し、さらに、本願発明1の「Ge02、Ti02、あるいは、Ce203が添加された」を「紫外線に敏感なドーパントを含む」としたものである。
したがって、本願発明3と引用発明とは、【3-4-1】に示した相違点1に加えて、本願発明3は、紫外線に敏感なドーパントを含むのに対して、引用発明はGeO2が添加されている点(相違点2)で相違する。
しかし、相違点1については、【3-4-1】で説明したとおりであり、また、引用発明に刊行物4を適用するに際して、引用発明のGeO2の添加が、刊行物4のゲルマニウムの添加すなわち、紫外線に敏感なドーパントの添加と同様であることは当業者に明らかである。
したがって、本願発明3は、刊行物1、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

【3-4-3】本願発明4
本願発明4は、本願発明1の発明のカテゴリーを物から方法に変更するとともに、本願発明1を方法にしものをTE偏波の光とTM偏波の光が分離されるものに限定し、さらに、本願発明1の「Ge02、Ti02、あるいは、Ce203が添加された」を紫外線に敏感なドーパントを複含む」としたものである。
したがって、本願発明4と引用発明とは、【3-4-1】に示した相違点1に加えて、【3-4-2】に示した相違点2の点で相違する。
しかし、相違点1、2については、【3-4-1】、【3-4-2】で説明したとおりであり、本願発明4は、刊行物1、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

【3-5】むすび
以上のとおり、本件の請求項1〜4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対して特許されたものである。
従って、本件の請求項1〜4に係る発明の特許は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光回路及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路であって、
前記少なくとも片方の光導波路は、GeO2、TiO2、あるいは、Ce2O3が添加された、石英系ガラスを素材として作成され、かつ、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備えるように、可視または紫外光レーザ光が照射されて前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値が調整された部分を有することを特徴とする光回路。
【請求項2】 平面基板上に設けられる光導波路を有し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
前記平面基板上に、GeO2、TiO2、あるいは、Ce2O3を添加した石英系ガラスを素材として、前記光導波路を作成する工程と、
前記光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を、偏波依存性が解消する値に調節する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。
【請求項3】 平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、
前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を解消する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。
【請求項4】 平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、
前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、TE偏波の光とTM偏波の光が分離されるように前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を増加させる工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、基板上に光導波路を配置した光回路及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、光導波路の複屈折性を調整することにより所望の偏波依存性、あるいは偏波無依存性を持つ様に構成した光回路及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石英系ガラス基板やシリコン基板上に形成可能な石英系ガラス導波路は、損失が低い、安定性が高い、加工性がよい、石英系ファイバとの整合性がよいなどの特徴があり、光合分波回路などの実用的な導波型光部品を構成する上で非常に有用であるため、研究開発が進められている。
【0003】
最近では、その特性を生かしてより高機能高集積化した平面型光回路の製造が進められている。その中で、光の位相を利用した光回路は、電子回路では実現できにくい回路を可能にするため、重要性が高い。
【0004】
石英系光導波路では、シリコン基板上にアンダークラッド層堆積→コア層堆積→コアエッチング→オーバークラッド堆積の製造プロセスによりコア・クラッド構造が構成されるが、光の位相を利用した高機能高集積化光回路では、光の位相は導波路の屈折率と伝搬長に依存するので、製造上の微小な屈折率や導波路形状の変動、及び導波路に加わる応力が素子特性に大きく影響する。従って、高集積光回路において生産性を向上させるためには、製造上の微小な変動等を修正する必要があり、局所的に屈折率及び複屈折を制御した光回路が望まれてきた。
【0005】
このような平面型光回路を構成する重要な要素部品である、MZ(Mach-Zehnder)干渉計を一例として挙げる。MZ干渉計は、2つの方向性結合器とその方向性結合器を結ぶ2本の導波路からなるものであり、光スイッチや光分波器を構成する上で欠かすことのできない部品である。
【0006】
しかし、MZ干渉計では、石英系光導波路に限らず、わずかな屈折率や導波路形状の変動及び導波路に加わる応力が素子特性に大きく影響する。
【0007】
いま、このMZ干渉計が光路長差L1を持つとき、このMZ干渉計の出力強度は、入射光の周波数f(又は波長λ)に関して
【0008】
【数1】

【0009】
を周期とする特性を有することが知られており、この出力光強度の周期特性を利用して、光スイッチ、光周波数合分波器等として動作する光デバイスが実現されている。
【0010】
しかし、導波路が有する複屈折は、光干渉計の周期特性の位相に偏光方向によるずれをもたらし、入射光の偏光方向を基板に水平(TE偏光)もしくは垂直(TM偏光)のいずれか一方に予め調整しておかないと、光スイッチ、光周波数合分波器としての動作特性に著しい劣化を生じさせることになる。
【0011】
従って、MZ干渉計を用いた光回路において、生産性を向上させるためには、作製上の微小な変動を修正する必要性があり、効果的な調節法が望まれていた。
【0012】
現在は、複屈折を局所的に微調整する方法として、非晶質シリコン等の応力付与膜を適当な形状に加工し、導波路の近傍につけ、複屈折を調整するかもしくは、導波路近傍に、溝を彫り複屈折を調整することが行われている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法は、導波路作製の工程数が増し、且つ煩雑であるという問題があった。
【0014】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、屈折率及び複屈折を効果的かつ局所的に調節し、生産性を向上させた光回路を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、偏波制御機能を有する光回路を提供することにある。
【0016】
本発明の前記ならびにその他の目的及び新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。即ち、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路であって、前記少なくとも片方の光導波路は、GeO2、TiO2、あるいは、Ce2O3が添加された、石英系ガラスを素材として作成され、かつ、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備えるように、可視または紫外光レーザ光が照射されて前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値が調整された部分を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を有し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、前記平面基板上に、GeO2、TiO2、あるいは、Ce2O3を添加した石英系ガラスを素材として、前記光導波路を作成する工程と、前記光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を、偏波依存性が解消する値に調節する工程とを有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を解消する工程とを有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、TE偏波の光とTM偏波の光が分離されるように前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を増加させる工程とを有することを特徴とする。
【0021】
【作用】
前述の手段の主要部は、石英系ガラス導波路により構成された導波型MZ干渉計の製造法において、少なくともMZ干渉計の片方の導波路に可視又は紫外領域の光を照射することによってコアの複屈折を制御し、MZ干渉計等の偏波に依る位相、すなわち出力を調節するものである。
【0022】
導波路の屈折率制御に関し、類似の報告としてMaloらによる光ファイバの屈折率の変化に関するものがある(B.Malo,et al.,Opt.Lett.15,953,1990)。それによれば、GeO2添加石英系光ファイバにおいて紫外線照射によりコアの屈折率が3×10-5だけ変化することが観測されたと報告されている。
【0023】
シリコン基板上に形成された石英系光導波路においても同様な光誘起屈折率変化Δnが観測されるが、この時、導波路のTE,TM方向に光を入射して測定した屈折率変化をそれぞれΔnTE,ΔnTMとすると、ΔnTEとΔnTMの大きさは異なっている。
【0024】
本発明は、この原理を用いることにより、GeO2添加石英系ガラス導波路のMZ干渉計等の複屈折を調節するものである。
【0025】
まず、GeO2添加石英系ガラス導波路のMZ干渉計の位相が調節できる原理を以下に説明する。
【0026】
図1は、GeO2添加石英系ガラス導波路のMZ干渉計の位相が調節できる原理を説明するための図であり、1a,1bは方向性結合器、2a,2bは2つの方向性結合器を結ぶ導波路、1〜4はポートである。ここでは、簡単のためMZ干渉計の2つの方向性結合器を同一のものとし、方向性結合器の結合長をL0とする。そのとき、図1のMZ干渉計において片方の導波路(2a)の長さΔL1の部分において屈折率がΔn変化したとする。このとき、波長λの光がこのMZ干渉計のポート1に入射したとすると、ポート3と4からの出力比I4/(I3+I4)は、次式で表される。
【0027】
【数2】

【0028】
ここで、Lc(λ)は方向性結合器の完全結合長である。式(2)から明らかなように、
【0029】
【数3】
λ=ΔnΔL1 ・・・・(3)
【0030】
を満たすときに、出力が反転する。波長1.3μmにおいて、Δnが3×10-5変化したとすると、ΔL1の値として3.3cmが得られる。従って、MZ干渉計を構成する導波路長が充分であれば、MZ干渉計の特性を調節することができる。
【0031】
ここで、コアの屈折率変化は、波長245nmのGeO2に関連した吸収に起因する。従って、屈折率変化のために用いるレーザは、245nm付近に発振波長を有するものであればよい。また、可視域に発振波長を有するレーザも使用可能である。それは、可視域のレーザでも2光子吸収により同様の変化を誘起するからである。すなわち、本発明では、使用するレーザに関しては、He-Cdレーザ、N2レーザ、各種エキシマレーザ、Arイオンレーザ、Nd3+:YAGレーザ、アレキサンドライト(Cr3+:BeAl2O3)レーザの第2次、3次、4次高調波、など紫外・可視領域の波長を有するものであればよい。
【0032】
以上のような、光照射に起因する屈折率変化Δnは、照射光の偏光状態及び照射条件により、導波路のTE方向成分に関する屈折率変化ΔnTEとTM方向成分に関する屈折率変化ΔnTMが異なる。
【0033】
従って、紫外もしくは可視レーザ光の照射強度、照射時間等を適当に取ることにより導波路が有する複屈折を調整することができる。
【0034】
なお、本発明は、紫外もしくは可視レーザ光の照射を止めてもその効果は永続するものである。
【0035】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0036】
(実施例1)
本発明の実施例1では、石英系光導波路においてエキシマレーザによりMZ干渉計の特性を調節した。
【0037】
図2は、本実施例1において作製したMZ干渉計光回路の構成図であって、1c,1dは方向性結合器、2c,2dは導波路、3a,3b,3c,3dは光ファイバ、4aはシリコン基板、5は遮蔽用の金属マスク、6はエキシマレーザ、7はミラー、8a,8bはレンズである。
【0038】
図2のMZ干渉計は非対称型であり、導波路2cが2dより長くなっている。このタイプのMZ干渉計は、周波数又は波長分波器として動作するものである。図2のMZ干渉計では2つの導波路2c,2dの光路長差ΔL2を約1cmとし、周波数10GHz間隔で入射光を分波できるように設計した。
【0039】
まず、通常の方法でシリコン基板上にGeO2添加石英系ガラス導波路型MZ干渉計を作製した。導波路のコアは矩形であり、サイズは7×7μmである。コアとクラッドの屈折率差は0.75%とした。方向性結合器1cと1dでは結合率が波長1.3μmでほぼ50%になるようにした。
【0040】
作製したMZ干渉計に波長248nmのKrFエキシマレーザを照射し、照射前後の特性変化を調べた。KrFエキシマレーザ光は、導波路上部より、図2に示すように、金属マスクで覆われていない部分を照射した。従って、エキシマレーザ光は、導波路2eの一部分だけに屈折率変化を誘起することになる。KrFエキシマレーザの照射パワーは、100mJ/cm2、パルス繰り返し50Hz、照射時間は20minとした。
【0041】
MZ干渉計の特性を調べるため、中心波長1.3μmの電流掃引型半導体レーザをファイバ3eから光回路に導入した。本実施例1では、エキシマレーザの照射中にMZ干渉計の特性変化をモニターすることができた。
【0042】
図3に、20分間照射後におけるファイバ3cからの出力の波長依存性を照射前と比較して示す。図3において、縦軸は挿入損失(Insertion loss)、横軸は波長(Wavelength)である。
【0043】
KrFエキシマレーザ照射前では、ファイバ3cと3dからの出力光スペクトル特性が、図3に示すように、TE偏光とTM偏光では、異なっており、このMZ干渉計は偏波依存性を有していた。
【0044】
照射後、図3に示すように、TE偏光とTM偏光の光スペクトル特性が一致し、1.3μm付近の信号光における偏波依存性をエキシマレーザ光照射により解消することができた。
【0045】
以上の結果により、本実施例1によれば、MZ干渉計の複屈折が調節可能であることが確認された。
【0046】
なお、GeO2濃度に関しては、MZ干渉計の長さにより調節が可能であるから、特に制限するものではない。また、前記実施例1では、ドーパントとしてGeO2を用いたが、そのほかにTiO2,Ce2O3など紫外領域に吸収を有し、紫外線に敏感なドーパントとして用いてもよい。
【0047】
(実施例2)
本実施例2では、石英系ガラス導波路により、MZ干渉計光回路を構成し、KrFエキシマレーザ光を照射することにより、偏波分離光回路を作製した。
【0048】
図4は、本実施例2の偏波分離光回路の製造装置の構成概念図であって、1e,1fは方向性結合器、2e,2fは導波路、3e,3f,3g,3hは光ファイバ、4bはシリコン基板、6はエキシマレーザ、7はミラー、8a,8bはレンズである。
【0049】
まず、通常の方法でシリコン基板上にGeO2添加石英系ガラス導波路型MZ干渉計を作製した。導波路のコアは矩形であり、サイズは7×7μmである。コアとクラッドの屈折率差は0.75%とした。方向性結合器1eと1fでは結合率が波長1.3μmでほぼ50%になるようにした。
【0050】
本実施例2では、7のミラーと8a,8bのレンズを駆使することにより、導波路2eに局所的に、エキシマレーザ光を照射し、導波路2eの複屈折を調整し、光ファイバ3eからTE偏波の光を入射したときには光ファイバ3h、TM偏波の光を入射したときには光ファイバ3gから出力光が得られるようにした。
【0051】
図5は、光ファイバ3eから光を入射した時の光ファイバ3hからの出力光の挿入損失(Insertion loss)特性を示す。図5において、TE’、TM’は照射後の光出力である。光ファイバ3hからの出力光は所望の光周波数(相対光周波数:Relative frequency:24GHz)において、TE偏波の光がTM偏波の光に比べ20dB以上の強度で得られていることが示されている。
【0052】
以上の説明からわかるように、本実施例2によれば、このMZ干渉計光回路は、TE,TMの偏波分離機能を付加することができる。
【0053】
本発明は、光ファイバ3e,3f,3g,3hに偏波保持性を有する光ファイバを用いることを妨げるものではない。
【0054】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において変更し得ることはいうまでもない。
【0055】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、従来の光回路の製造法の変更を必要とせずに効果的かつ簡便に特性が調節された光回路を提供することができる。また、本発明はすでに作製された光回路を対象として実施されるため規格外の出力特性の回路を所望の特性にすることができ、光回路の生産性が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理を説明するためのMZ干渉計光回路の概略構成図、
【図2】 本発明の実施例1で使用した光学系と導波路の配置図、
【図3】 本実施例1で使用した導波路の出力光波長スペクトル特性を示す図、
【図4】 本発明の実施例2で使用した光学系と導波路の配置図、
【図5】 本実施例2の相対光周波数-挿入損失特性を示す図。
【符号の説明】
1a,1b,1c,1d,1e,1f…方向性結合器、2a,2b,2c,2d…光導波路、3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h…光ファイバ、4a,4b…導波路付きシリコン基板、5…レーザ光遮蔽マスク、6…エキシマレーザ、7…ミラー、8a…レンズ、8b…シリンドリカルレンズ。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許権者が求めている、平成14年3月18日の訂正の内容は、以下のa〜iのとおりである。
a.特許第3090293号発明の明細書中の特許請求の範囲の請求項1〜7において、もとの請求項1、4、5を削除し、以下項数を繰り上げ「1、2、3、4」と訂正する。
b.訂正前の特許明細書の、特許請求の範囲の請求項2を訂正後の請求項1とし、当該請求項1を「平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路であって、
前記少なくとも片方の光導波路は、GeO2、TiO2、あるいは、Ce2O3が添加された、石英系ガラスを素材として作成され、かつ前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備えるように、可視または紫外光レーザ光が照射されて前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値が調整された部分を有することを特徴とする光回路。」と訂正する。
c.訂正前の特許明細書の、特許請求の範囲の請求項3を訂正後の請求項2とし、当該請求項2を「平面基板上に設けられる光導波路を有し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
前記平面基板上に、GeO2、TiO2、あるいは、Ce2O3を添加した石英系ガラスを素材として、前記光導波路を作成する工程と、
前記光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水乎なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を、偏波依存性が解消する値に調節する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。」と訂正する。
d.訂正前の特許明細書の、特許請求の範囲の請求項6を訂正後の請求項3とし、当該請求項3を「平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、
前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を解消する工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。」と訂正する。
e.訂正前の特許明細書の、特許請求の範囲の請求項7を訂正後の請求項4とし、当該請求項4を「平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、
石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、
前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、TE偏波の光とTM偏波の光が分離されるように前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を増加させる工程とを有することを特徴とする光回路の製造方法。」と訂正する。
f.特許明細書の段落【0017】を「【課題を解決するための手段】本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。即ち、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路であって、前記少なくとも片方の光導波路は、GeO2、TiO2、あるいは、Ce2O3が添加された、石英系ガラスを素材として作成され、かつ、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性が解消されるように、又はTE、TMの偏波分離機能を備えるように、可視または紫外光レーザ光が照射されて前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値が調整された部分を有することを特徴とする。」と訂正する。
g.特許明細書の段落【0018】を「また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を有し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、前記平面基板上に、GeO2、TiO2、あるいは、Ce2O3を添加した石英系ガラスを素材として、前記光導波路を作成する工程と、前記光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を、偏波依存性が解消する値に調節する工程とを有することを特徴とする。」と訂正する。
h.特許明細書の段落【0019】を「また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を解消する工程とを有することを特徴とする。」と訂正する。
i.特許明細書の段落【0020】を「また、本発明は、平面基板上に設けられる光導波路を2本有するマッハツェンダ干渉計を具備し、前記光導波路は、コア部と、前記コア部の周りに設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とから構成される光回路の製造方法であって、石英系ガラスを素材とし、かつ、前記少なくとも片方の光導波路が、紫外線に敏感なドーパントを含むように、前記平面基板上に前記2本の光導波路を作成する工程と、前記少なくとも片方の光導波路に、可視または紫外光レーザ光を照射して、前記コア部の、前記基板に水平なTE方向成分に関する屈折率と前記基板に垂直なTM方向成分に関する屈折率からなる複屈折値を調節し、TE偏波の光とTM偏波の光が分離されるように前記マッハツェンダ干渉計の偏波依存性を増加させる工程とを有することを特徴とする。」と訂正する。
異議決定日 2002-06-04 
出願番号 特願平4-207882
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G02B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岡田 吉美  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 吉田 禎治
町田 光信
登録日 2000-07-21 
登録番号 特許第3090293号(P3090293)
権利者 日本電信電話株式会社
発明の名称 光回路及びその製造方法  
代理人 澤井 敬史  
代理人 澤井 敬史  
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