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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D06P
審判 全部申し立て 2項進歩性  D06P
審判 全部申し立て 発明同一  D06P
審判 全部申し立て 特39条先願  D06P
管理番号 1065849
異議申立番号 異議2000-72930  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-31 
確定日 2002-07-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3005142号「インクジェットプリント方法、及び、プリント物」の請求項1ないし20に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3005142号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3005142号は、平成5年7月9日に出願され、平成11年11月19日にその特許の設定登録がなされ、その後、名越千栄子より特許異議の申立があり、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年8月28日付で訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
1.訂正事項
〔訂正事項a〕
特許請求の範囲の、
「【請求項1】 少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするインクジェットプリント方法(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。」との記載を、
「【請求項1】少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするインクジェットプリント方法(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せ、およびC.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー73を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。」と訂正する。

〔訂正事項b〕
特許請求の範囲の【請求項8】及び【請求項9】を削除する。

〔訂正事項c〕
特許請求の範囲の「【請求項10】」を「【請求項8】」と訂正する。

〔訂正事項d〕
特許請求の範囲の「【請求項11】」を「【請求項9】」と訂正するとともに、「請求項10」を「請求項8」と訂正する。

〔訂正事項e〕
特許請求の範囲の「【請求項12】」を「【請求項10】」と訂正するとともに、「請求項11」を「請求項9」と訂正する。

〔訂正事項f〕
「【請求項13】レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするプリント物(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せである場合を除く)。」を、
「【請求項11】レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を、マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相に染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするプリント物(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せと、C.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー73の組合せである場合を除く)。」と訂正する。

〔訂正事項g〕
特許請求の範囲の「【請求項14】」を「【請求項12】」と訂正するとともに、「請求項13」を「請求項11」と訂正する。

〔訂正事項h〕
特許請求の範囲の【請求項15】及び【請求項16】を削除する。

〔訂正事項i〕
特許請求の範囲の「【請求項17】」を「【請求項13】」と訂正するとともに、「請求項13」を「請求項11」と訂正する。

〔訂正事項j〕
特許請求の範囲の「【請求項18】」を「【請求項14】」と訂正するとともに、「請求項17」を「請求項13」と訂正する。

〔訂正事項k〕
特許請求の範囲の「【請求項19】」を「【請求項15】」と訂正するとともに、「請求項12又は13」を「請求項10又は11」と訂正する。

〔訂正事項l〕
特許請求の範囲の「【請求項20】」を「【請求項16】」と訂正するとともに、「請求項10」を「請求項15」と訂正する。

〔訂正事項m〕
明細書段落【0014】の、
「【0014】即ち、本発明のインクジェットプリント方法は、少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするものである(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。また本発明のプリント物は、レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするものである(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せである場合を除く)。」との記載を、
「【0014】即ち、本発明のインクジェットプリント方法は、少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするものである(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せ、およびC.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー73を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。また本発明のプリント物は、レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を、マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相に染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするものである(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せと、C.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー73の組合せである場合を除く)。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項aは、訂正前の特許請求の範囲請求項1において、インクジェットプリント方法をマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相にプリントを行う方法に特定するとともに、用いられるレッドインク及びブルーインクに含まれる色素をさらに限定し、かつ先願明細書に記載されたレッドインクとブルーインクの組合せをすべて除外しようとするもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。またこの訂正は、訂正前の特許請求の範囲【請求項8】及び【請求項9】、及び、願書に添付された明細書段落【0012】【0029】【0088】【表1】【0089】の記載により支持されているから、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項fは、訂正前の特許請求の範囲請求項13において、プリント物をマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相に染色されたプリント物に特定するとともに、用いられるレッドインク及びブルーインクに含まれる色素をさらに限定し、かつ先願明細書に記載されたレッドインクとブルーインクの組合せをすべて除外した上で、請求項番号を繰り上げて請求項11とするもので、特許請求の範囲の減縮並びに明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。またこの訂正は、訂正前の特許請求の範囲【請求項15】及び【請求項16】、及び、願書に添付された明細書段落【0012】【0029】【0088】【表1】【0089】の記載により支持されているから、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項b及びhは、特許請求の範囲の訂正により重複することとなった請求項を削除するもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項c〜e、g、i〜lは、請求項の削除に伴う請求項番号の繰り上げ及び引用部分の請求項番号の訂正に係るもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項mは、特許請求の範囲の訂正によって生じた明細書の記載中の不整合部分を、特許請求の範囲の記載に合わせて訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また上記b〜e、g〜mの訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について
1.本件発明
本件請求項1ないし請求項16に係る発明は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項16に記載された以下のとおりである。
「【請求項1】少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするインクジェットプリント方法(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せ、およびC.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー73を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。
【請求項2】前記布帛がポリエステル繊維を含むものである請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項3】前記熱処理が、高湿蒸熱(HTスチーミング)法またはサーモゾル法である請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項4】前記インクジェット方式が熱エネルギーを利用してインクを吐出させるインクジェット方式である請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項5】前記インクの吐出速度が5〜20m /secである請求項1又は4に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項6】前記(a)工程の前に前記布帛を前処理する請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項7】前処理として、尿素、水溶性高分子、水溶性金属塩の少なくとも1種を布帛に含有させる請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項8】混色部における色素の付着量が0.015〜0.6mg/cm2 の範囲にある請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項9】混色部における色素の付着量が0.02〜0.4mg/cm2 の範囲にある請求項8に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項10】請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェットプリント方法によりプリントされたプリント物。
【請求項11】レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を、マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相に染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするプリント物(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せと、C.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー73の組合せである場合を除く)。
【請求項12】前記プリント物がポリエステル繊維を含む布帛にプリントされたものである請求項11に記載のプリント物。
【請求項13】混色部における色素の量が0.015〜0.6mg/cm2 の範囲にある請求項11に記載のプリント物。
【請求項14】混色部における色素の量が0.02〜0.4mg/cm2 の範囲にある請求項13に記載のプリント物。
【請求項15】請求項10又は11に記載のプリント物を更に加工して得られた加工品。
【請求項16】前記加工品が前記プリント物を所望の大きさに切り離し、切り離された片に対して最終的な加工品を得るための工程を施して得られたものである請求項15に記載の加工品。」

2.申立ての理由の概要
特許異議申立人 名越千栄子は、証拠として甲第1号証(特開昭61-138784号公報、以下、「刊行物1」という)、甲第2号証(特開昭61-138785号公報、以下、「刊行物2」という)、甲第3号証(特開昭62-53493号公報、以下、「刊行物3」という)、甲第4号証(特開昭62-243890号公報、以下、「刊行物4」という)、甲第5号証(特開平1-156068号公報、以下、「刊行物5」という)、甲第6号証(特開平2-68372号公報、以下、「刊行物6」という)、甲第7号証(特願平4-12093号(特開平5-209378号公報参照)、以下、「先願1」という)及び甲第8号証(特願平4-222167号(特開平6-57652号公報参照)、以下、「先願2」という)を提出し、訂正前の本件請求項1ないし20に係る発明は、本件出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である上記刊行物1ないし6に記載された発明である(理由1)か、上記刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである(理由2)から、特許法第29条第1項第3号あるいは同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、訂正前の本件請求項1ないし20に係る発明は、上記先願1に係る発明と実質的に同一である(理由3)から、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、訂正前の本件請求項1ないし20に係る発明は、上記先願2の明細書に記載された発明と同一であるから(理由4)、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、これらの特許は取り消されるべきものであると主張している。
なお、当審において通知した取消の理由の趣旨は、訂正前の本件請求項1ないし20に係る特許は、その発明が、上記刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、また、訂正前の本件請求項1ないし20に係る特許は、その発明が、上記先願2の明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである、というもので、上記(理由2)及び(理由4)と同じである。

3.刊行物等の記載
刊行物1には、下記の記載がある。
1-イ:「(1)インクジェット方式によって分散染料を含む記録液を合成繊維および/または半合成繊維からなる布帛類に付与し、次いで染着処理する捺染方法において、上記布帛類または該布帛類を構成する繊維に上記記録液を受容する受容層が形成されていることを特徴とする捺染方法。」(特許請求の範囲)
1-ロ:上記布帛類について、「本発明において使用し、主として本発明を特徴づける布帛類とは、ポリエステル、ビニロン、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン等の合成繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維の如く、分散染料によって染色され得る繊維からなる布帛類、・・・」(公報第2頁右上欄第12行〜第17行)
1-ハ:上記分散染料について、「本発明方法において使用するインクジェット方式用インクの分散染料としては、従来公知のものはいずれも使用できるが、特に好ましいものは・・・;C.I.ディスパーズレッド・・・、92、・・・、126、・・・、135、・・・、145、152、・・・、181、・・・206、・・・;C.I.ディスパーズブルー・・・、73、・・・、128、・・・、201、・・・、214、224、・・・、257、・・・267、・・・;・・・等である。」(公報第3頁右上欄第13〜左下欄第19行)
1-ニ:上記染着処理について、「以上の如くして本発明方法によって布帛上にインク組成物を画像信号通りには付着させることができ、この状態のインク組成物中の染料は、単に織布等の表面のインク受容層に吸収しているに、過ぎないので、引続き加熱処理等の染着処理を行うのが好ましい。このような染着処理は、・・・過熱スチームによるスチーミング処理、温水や熱水による加熱処理、乾式の加熱処理、界面活性剤水溶液によるソーピング処理等から適当に選択する。」(公報第5頁左下欄第18行〜右下欄第8行)

刊行物2には、下記の記載がある。
2-イ:「(1)インクジェット方式によって分散染料を含む記録液を合成繊維および/または半合成繊維からなる布帛類に付与し、次いで染着処理する捺染方法において、上記布帛類に上記記録液を受容する受容層が形成され、その厚みが0.5〜30μmの範囲に調整されていることを特徴とする捺染方法。」(特許請求の範囲)
2-ロ:上記布帛類について、「本発明において使用し、主として本発明を特徴づける布帛類とは、ポリエステル、ビニロン、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン等の合成繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維の如く、分散染料によって染色され得る繊維からなる布帛類、・・・」(公報第2頁右上欄第15行〜第20行)
2-ハ:上記分散染料について、「本発明方法において使用するインクジェット方式用インクの分散染料としては、従来公知のものはいずれも使用できるが、特に好ましいものは・・・;C.I.ディスパーズレッド・・・、92、・・・、126、・・・、135、・・・、145、152、・・・、181、・・・206、・・・;C.I.ディスパーズブルー・・・、73、・・・、128、・・・、201、・・・、214、224、・・・、257、・・・267、・・・;・・・等である。」(公報第3頁左下欄第1行〜右下欄第7行)
2-ニ:上記染着処理について、「以上の如くして本発明方法によって布帛上にインク組成物を画像信号通りには付着させることができ、この状態のインク組成物中の染料は、単に織布等の表面のインク受容層に吸収しているに、過ぎないので、引続き加熱処理等の染着処理を行うのが好ましい。このような染着処理は、・・・過熱スチームによるスチーミング処理、温水や熱水による加熱処理、乾式の加熱処理、界面活性剤水溶液によるソーピング処理等から適当に選択する。」(公報第5頁右下欄第5行〜第15行)

刊行物3には、下記の記載がある。
3-イ:「(1)インクジェット方式によって分散染料を含む記録液を合成繊維からなる布帛類に付与し、次いで染着処理する捺染方法において、上記布帛類に、25℃における粘度が1,000cp以上の記録液受容層が形成されていることを特徴とする捺染方法。」(特許請求の範囲)
3-ロ:上記布帛類について、「本発明において使用し、主として本発明を特徴づける布帛類とは、ポリエステル、ビニロン、ポリプロピレン、アセテートレーヨン、アクリル、ナイロン等の合成繊維の如く、分散染料によって染色され得る繊維からなる布帛類、・・・」(公報第2頁右上欄第12行〜第16行)
3-ハ:上記分散染料について、「本発明方法において使用するインクジェット方式用インクの分散染料としては、従来公知のものはいずれも使用できるが、特に好ましいものは・・・;C.I.ディスパーズレッド・・・、92、・・・、126、・・・、135、・・・、145、152、・・・、159、・・・、177、・・・、181、・・・206、・・・;C.I.ディスパーズブルー・・・、56、・・・、73、・・・、128、・・・、154、・・・、165、・・・、201、・・・、214、224、・・・、257、・・・267、・・・、287、・・・;・・・等があげられる。」(公報第3頁右下欄第3行〜第4頁左下欄第11行)
3-ニ:上記染着処理について、「以上の如くして本発明方法によって布帛上にインク組成物を画像信号通りには付着させることができ、この状態のインク組成物中の染料は、単に織布等の表面のインク受容層に吸収しているに、過ぎないので、引続き加熱処理等の染着処理を行うのが好ましい。このような染着処理は、・・・過熱スチームによるスチーミング処理、温水や熱水による加熱処理、乾式の加熱処理、界面活性剤水溶液によるソーピング処理等から適当に選択する。」(公報第6頁右上欄第14行〜左下欄第4行)

刊行物4には、下記の記載がある。
4-イ:「繊維構造物をインクジェット法により染色または捺染するに際し、(A)少なくとも3色のマスターインクおよび染料を含有しない希釈インクからなる群より2種以上の混合により所望色インクを得ると共に、(B)実質的に同一の粘度およびにじみ防止能を有するマスターインクおよび希釈インクを用い、且つ(C)各所望色インクの面積当りの付与量を実質的に同じとすることを特徴とするインクジェット染色方法。」(特許請求の範囲第1項)
4-ロ:マスターインクの染料濃度について、「マスターインクの染料濃度は濃色を表現するに十分な量が必要であり染料によっても異なるが、染料原体として通常2〜15%のものが用いられる。」(公報第3頁右下欄第4行〜第6行)
4-ハ:インクの付与量について、「本発明においては付与量については特に限定されるものではないが、繊維構造物表面上で未付与の白場部分が実質的に存在せず全面付与される量であることが望ましい。繊維素材、繊維構造物の目付によっても異なるが、通常インク付与量Xg/m2 は
0.05×A≦X≦0.5×A
(ここでAは繊維構造物の目付g/m2 を表わす)の範囲が好ましい。」(公報第4頁左下欄第10行〜右下欄第2行)
4-ニ:実施例として、「ポリエステル繊維用に表1に示した分散染料のマスターインクを作製した。・・・・・染色布として・・・ポリエステルパレス織物(目付95g/m2 )を用いた。」(公報第5頁右上欄第12行〜左下欄第4行)

刊行物5には、下記の記載がある。
5-イ:ドット式カラープリンタにおける色再現方法について、「インクジェット式、熱転写式、レーザービーム式などのドット式カラープリンタにおいては第5図に示す減法混色を用いて色再現を行う方法が広く採用されている。この減法混色は、プリントの際、例えば目的の色表示がR(レッド)である場合、Y(イエロー)インクとM(マゼンタ)インクを混ぜ合わせ、R(レッド)の色再現を行う。同様にG(グリーン)はY(イエロー)インクとC(シアン)インクの混ぜ合わせにより、また、B(ブルー)はM(マゼンタ)インクとC(シアン)インクの混ぜ合わせにより色再現される。」(公報第1頁左下欄第18行〜右下欄第8行)
5-ロ:画像情報のプリントについて、「例えば第3図に示すフルカラーの山の風景画の斜線部に適用する場合を考える。この風景画の状況は夜であるため斜線部はBk(ブラック)となる。このとき、斜線部以外はR,B,G等の色が使われ、1ドットに2色のインクをプリントしているため色も濃くなる。」(公報第2頁左下欄第18行〜右下欄第4行、第3図)

刊行物6には、下記の記載がある。
6-イ:インクジェット印刷について、「インクジェット印刷における最小の印刷単位は1個の小さな粒子である事を説明した。これらのインクは最低でも4色(この場合イエロー、レッド、ブルー、ブラック、)のインクツボに納められ各々がノズルを介して打点される。例えばグリーンを表現する場合にはイエローインクとブルーインクが、1対2の割合にカウントされ打点される。この打点は両者が重なって打点される場合と分離して打点される場合がある。特に後者の場合打点された粒の布はく上での面積が大きくそして分離していると混合色としてみえなくなる。この打点法は人間の眼の視覚現象を応用しているものであり、この様な混色は併置加法混色と言われている。」(公報第3頁左下欄第9行〜右下欄第2行)

先願1には、下記の記載がある。
7-イ:「(a)少なくともイエローと、ブラックと、及びレッド、グリーン、ブルーの中から選ばれる1種の合計3種の捺染インク小滴を布帛に順次着滴させて、少なくとも2色以上のインクによる混色部を布帛に形成する工程、(b)前記混色部を形成した布帛を熱処理することにより染料を布帛に染着させる工程、(c)染着させた布帛を洗浄することにより未染着の染料を布帛から除去する工程、上記3工程(a),(b),(c)を少なくとも有するインクジェット法を用いるカラー捺染方法において、混色部の各染料の付着量の合計を0.025〜1mg/cm2 とするとともに、混色部における捺染インク小滴の着滴順序をブラックを最初、イエローを最後とすることを特徴とするインクジェット法を用いるカラー捺染方法。」(特許請求の範囲請求項1)
7-ロ:捺染インクについて、「本発明において使用する捺染インクは、色素、水、有機溶剤、添加剤等からなる」(段落【0016】)
7-ハ:色素について、「色素としては、染料が好ましく、布帛に対して染色可能であれば良い。酸性染料、直接染料、カチオン染料、反応染料、分散染料、建染染料等を用いることができる。」(段落【0017】)

先願2には、下記の記載がある。
8-イ:「布帛に染料がドット状に染着されて、所望の捺染柄に形成されているものであって、上記ドット状の染着が分散染料によるものと反応染料によるものとから成ることを特徴とする捺染布帛。」(特許請求の範囲)
8-ロ:上記布帛について、「本発明において布帛とは、織物、編物又は不織布であって、具体的には分散染料で染着する難染色性繊維であるポリエステル,ビニロン,アセテート,ポリプロピレン等と、反応染料で染着する易染色性繊維である綿,麻,絹等の混紡品,交織物等が挙げられる。」(段落【0007】)
8-ハ:上記分散染料について、「本発明において用いられる分散染料としては、アントラキノン系,アゾ系,ニトロジフェニルアミン系,メチン系,アミノケトン系,ケトイミン系等が挙げられ、インクジェット方式のインクとして鮮明性,耐光性に優れるものとしては、例えば、C.I.デスパーズイエロー79,160;C.I.デスパーズレッド50,72,127,146,283;C.I.デスパーズブルー73,142,198,224;C.I.デスパーズブラック1等が挙げられるが、これらの染料に限定されるものではない。かかる染料はインク中において通常0.1〜20重量%を占める割合で使用される。」(段落【0008】)
8-ニ:溶媒について、「上記の分散染料及び反応染料の溶媒は通常のインクジェット捺染で用いるものが挙げられ、例えば水または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。・・・・・そして、分散染料及び反応染料からなるインクには各種の分散剤・・・等を必要に応じて添加する。」(段落【0010】)
8-ホ:インクの付与について、「そして3種または4種の分散染料(3原色または3原色とブラックの分散染料)各々から成るインクと3種または4種の反応染料(3原色または3原色とブラックの反応染料)各々から成るインクの合計6種または8種を上記インクジェット装置に用い、各々別々のヘッドから噴射させることにより、無制限に近い色数を容易に表現できるようになる。」(段落【0012】)
8-ヘ:実施例として:「一方、C.I.Reactive Yellow 17(反応染料)30重量部と水70重量部からなるインク、C.I.Reactive Red 111(反応染料)30重量部と水70重量部からなるインク、C.I.Reactive Blue 19(反応染料)30重量部と水70重量部からなるインク、C.I.Reactive Black 5(反応染料)30重量部と水70重量部からなるインク、C.I.Disperse Yellow 79(分散染料)10重量部と水90重量部からなるインク、C.I.Disperse Red 283(分散染料)10重量部と水90重量部からなるインク、C.I.Disperse Blue 224(分散染料)10重量部と水90重量部とからなるインク、C.I.Disperse Black 1(分散染料)10重量部と水90重量部とからなるインクの8種類のインクを8個のインクジェットヘッドを持つインクジェットプリンターに搭載し、上記前処理した織物に8ドット/mmの連続プリントを行い、イエロー,レッド,ブルー,ブラックの4色を得た。次いで120℃にて2分間乾燥し、210℃で60秒サーモゾルを行った。その後ケイ酸ソーダ100g/l、食塩200g/l及び残部を水で調整した処理液を該平織物にパッディング処理し、マングルで絞り率70%に絞った後、飽和蒸気102℃にて45秒間蒸熱処理した後、洗浄,乾燥し実施例1の製品を得た。」(段落【0018】)

4.対比・判断
(1)上記(理由1)について
〈請求項1について〉
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と、上記刊行物1ないし3に記載された発明とを比較すると、上記刊行物1ないし3に記載された発明は、いずれも「インクジェット方式によって分散染料を含む記録液を合成繊維および/または半合成繊維からなる布帛類に付与し、次いで染着処理する捺染方法」に係るものであり(上記記載1-イ、2-イ、3-イ参照)、用いられる分散染料(上記記載1-ハ、2-ハ、3-ハ参照)及び布帛類(上記記載1-ロ、2-ロ、3-ロ参照)、インクを付与する工程、インクが付与された布帛を熱処理する工程、熱処理した布帛を洗浄する工程を有する点(上記記載1-ニ、2-ニ、3-ニ参照)において本件発明1と共通するものである。
しかしながら、本件発明1においては、a:少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを用いてマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与すること、c:前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあること、をさらなる特定事項として含んでいるのに対して、上記刊行物1ないし3に記載された発明においては、上記a及びcの事項についてはまったく言及されていない。そして上記a及びbの事項が周知技術として自明であるとも認められないことから、本件発明1は上記a及びcの特定事項を有する点において、上記刊行物1ないし3に記載された発明とは明らかに相違するものである。
したがって、本件発明1は上記刊行物1ないし3のいずれにも記載された発明ではない。

本件発明1と、上記刊行物4に記載された発明とを比較すると、上記刊行物4に記載された発明は、「繊維構造物をインクジェット方式によって染色または捺染する方法」に係るものであり(上記記載4-イ参照)、分散染料によりポリエステル布帛を染色する点(上記記載4-ニ参照)、及びインク色素の付着量が重複する点(上記記載4-ロ、ハ、ニ参照)において本件発明1と共通するものである。
しかしながら、本件発明1においては、a:少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを用いてマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与すること、b:前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有すること、をさらなる特定事項として含んでいるのに対して、上記刊行物4に記載された発明においては、上記a及びbの事項についてはまったく言及されていない。そして上記a及びbの事項が周知技術として自明であるとも認められないことから、本件発明1は上記a及びbの特定事項を有する点において、上記刊行物4に記載された発明とは明らかに相違するものである。
したがって、本件発明1は上記刊行物4に記載された発明ではない。

上記刊行物5及び刊行物6には、インクジェットプリント方法において2色のインクを重なるように付与することが記載されている(上記記載5-イ、ロ、6-イ参照)。
しかしながら、本件発明1においては、a:少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを用いてマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与すること、b:前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有すること、c:前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にあること、をさらなる特定事項として含んでいるのに対して、上記刊行物5及び6に記載された発明においては、上記aないしcの事項についてはまったく言及されていない。そして上記aないしcの事項が周知技術として自明であるとも認められないことから、本件発明1は上記aないしcの特定事項を有する点において、上記刊行物5及び刊行物6に記載された発明とは明らかに相違するものである。
したがって、本件発明1は上記刊行物5及び刊行物6のいずれにも記載された発明ではない。

〈請求項2〜10について〉
本件請求項2ないし10に係る発明は、いずれも本件発明1の特定事項をその主たる特定事項として含むものであるが、本件発明1は上述したように上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明とは認められず、したがって同様の理由により、本件請求項2ないし10に係る発明もまた、上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明とは認められない。

〈請求項11について〉
本件請求項11に係る発明は、本件発明1のインクジェットプリント方法によって得られる「プリント物」であり、本件発明1の特定事項をその主たる特定事項として含むものである。しかし、本件発明1は上述したように上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明とは認められないので、同様の理由により、本件請求項11に係る発明もまた、上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明とは認められない。

〈請求項12〜16について〉
本件請求項12ないし16に係る発明は、いずれも本件発明11の特定事項をその主たる特定事項として含むものであるが、本件発明11は上述したように上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明とは認められず、したがって同様の理由により、本件請求項12ないし16に係る発明もまた、上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明とは認められない。

(2)上記(理由2)について
〈請求項1について〉
本件発明1と上記刊行物1ないし3にそれぞれ記載された発明とを比較すると、上記(1)で述べたように両者は、本件発明1においては「少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを用いてマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する」のに対して、刊行物1ないし3記載の方法においてはインクの色とプリントの色相については特に定められていないこと(相違点A)、「少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2 の範囲にある」のに対して、上記刊行物1ないし3に記載された発明においては色素の付着量については特に定められていないこと(相違点B)の2点で相違しており、その余の点では一致している。
上記相違点Aについて検討するに、刊行物5には、レッド、ブルー、グリーン等の色が使われ、1ドットに2色のインクがプリントされることが記載されており(上記記載5-ロ参照)、刊行物6には、グリーンを表現する場合にはイエローインクとブルーインクが重なって打点されることが記載されている(上記記載6-イ参照)。しかしながら、本件発明1においては、「特にバイオレット系からブルー系の色再現性は、マゼンタとシアンの混色による手法のみでは、従来の捺染なみの色調や彩度が表現しきれなかった」(本件特許明細書段落【0011】参照)として、マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う際の問題点を認識し、これを解決することを発明の目的とした上でプリントの色相を特定しているものである。これに対して、上記刊行物5あるい刊行物6記載の方法においては、たくさんの色の組合せがある中で特にバイオレット系からブルー系の色再現性について考慮されているわけではないから、これらの記載を参照しても上記相違点Aに挙げられた構成を導き出すことはできない。
次に相違点Bについて検討するに、刊行物4にはインクの濃度とその付着量が記載されており(上記記載4-ロ、ハ、ニ参照)、これに基づいて計算すると色素の付着量が本件発明1において特定する範囲と重複する。しかしながら、本件発明1において混色部における色素の付着量を特定の範囲に定めているのは濃度、色再現範囲、染色安定性等の向上を目的としている(本件特許明細書段落【0047】参照)のに対して、刊行物4記載の発明においてインクの付与量を定めているのは繊維構造物表面上でインクが未付与の部分を存在させないようにするためであって(上記記載4-ハ参照)、その目的がまったく異なるものである。したがって刊行物4の記載を参照しても上記相違点Bに挙げられた構成を導き出すことはできない。
そして本件発明1は、上記相違点A、Bに挙げられた構成を併せて備えることによって、バイオレットからブルーの領域の色再現性が良く、しかも生産安定性にすぐれたプリント物を得ることができるという明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とは認められない。

〈請求項2〜10について〉
本件請求項2ないし10に係る発明は、いずれも本件発明1の特定事項をその主たる特定事項として含むものであるが、本件発明1は上述したように上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とは認められず、したがって同様の理由により、本件請求項2ないし10に係る発明もまた、上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とは認められない。

〈請求項11について〉
本件請求項11に係る発明は、本件発明1のインクジェットプリント方法によって得られる「プリント物」であり、本件発明1の特定事項をその主たる特定事項として含むものである。しかし、本件発明1は上述したように上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とは認められないので、同様の理由により、本件請求項11に係る発明もまた、上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とは認められない。

〈請求項12〜16について〉
本件請求項12ないし16に係る発明は、いずれも本件発明11の特定事項をその主たる特定事項として含むものであるが、本件発明11は上述したように上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とは認められず、したがって同様の理由により、本件請求項12ないし16に係る発明もまた、上記刊行物1ないし刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とは認められない。

(3)上記(理由3)について
〈請求項1について〉
本件発明1と、上記先願1に係る発明とを比較すると、先願1に係る発明が「インクジェット法を用いるカラー捺染方法」であり(上記記載7-イ参照)、使用される捺染インクが「色素、水、有機溶剤、添加剤等からなる」ものであり(上記記載7-ロ参照)、かつ色素として布帛に対して染色可能な「分散染料」が用いられるものである(上記記載7-ハ参照)ことから、両者は、「少なくとも2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛に付与してプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.025〜1mg/cm2 の範囲にあることを特徴とするインクジェットプリント方法。」である点で一致するものである。
しかし、本件発明1は「少なくともレッド、及びブルーの2色のインク」を用いて「マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相」のプリントを行う方法であるのに対して、上記先願1に係る発明は「少なくともイエローと、ブラックと、及びレッド、グリーン、ブルーの中から選ばれる1種の合計3種の捺染インク」のうちの2色以上を用いるものであるから、レッドインクとブルーインクの組合せはあり得ない。
したがって、両者は用いるインクの種類が異なるものであるから、本件発明1は上記先願1に係る発明と同一ではない。

〈請求項2〜10について〉
本件請求項2ないし10に係る発明は、いずれも本件発明1の特定事項をその主たる特定事項として含むものであるが、本件発明1は上述したように上記先願1に係る発明と同一であるとは認められず、したがって同様の理由により、本件請求項2ないし10に係る発明もまた、上記先願1に係る発明と同一であるとは認められない。

〈請求項11について〉
本件請求項11に係る発明は、本件発明1のインクジェットプリント方法によって得られる「プリント物」であり、本件発明1の特定事項をその主たる特定事項として含むものである。しかし、本件発明1は上述したように上記先願1に係る発明と同一であるとは認められないので、同様の理由により、本件請求項11に係る発明もまた、上記先願1に係る発明と同一であるとは認められない。

〈請求項12〜16について〉
本件請求項12ないし16に係る発明は、いずれも本件発明11の特定事項をその主たる特定事項として含むものであるが、本件発明11は上述したように上記先願1に係る発明と同一であるとは認められず、したがって同様の理由により、本件請求項12ないし16に係る発明もまた、上記先願1に係る発明と同一であるとは認められない。

(4)上記(理由4)について
〈請求項1について〉
本件発明1と、上記先願2に記載された発明とを比較すると、先願2に記載された発明は「布帛に染料がドット状に染着され、上記ドット状の染着が分散染料によるものと反応染料によるものとから成る捺染布帛」に係るものであって(上記記載8-イ参照)、使用される布帛が「分散染料で染着する難染色性繊維であるポリエステル,ビニロン,アセテート,ポリプロピレン等と、反応染料で染着する易染色性繊維である綿,麻,絹等の混紡品,交織物等」であり(上記記載8-ロ参照)、分散染料として「C.I.デスパーズレッド283」「C.I.デスパーズブルー72」「C.I.デスパーズブルー224」が例示され(上記記載8-ハ参照)、かつその溶媒として水、あるいは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒及び分散剤が示されており(上記記載8-ニ参照)、さらに、インクの付与形態としては2種の分散染料を含むインクが重なって付与される場合も含み得るものであって(上記記載8-ホ参照)、その混色部における色素の付着量も本件発明1で特定する範囲内の値をとり得るものである。そして、実施例の記載から、インクジェット方式によりインクの付与された布帛は熱処理を経て洗浄処理されていることは明らかである(上記記載8-ヘ参照)ことから、先願2に記載された発明においてレッドインクの色素として「ディスパーズレッド283」、ブルーインクの色素として「ディスパーズブルー73」「ディスパーズブルー224」を用いる場合に限り、両者はその構成においてすべて一致するものである。
しかし、本件発明1においては「(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合、およびC.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー73を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)」として、上記先願2に記載された発明におけるレッドインクとブルーインクの組合せと重複する場合を排除しており、インクの組合せにおいて両者が一致する部分は存在しない。
したがって、用いるインクの種類が異なるものであるから、本件発明1は上記先願2に記載された発明と同一ではない。

〈請求項2〜10について〉
本件請求項2ないし10に係る発明は、いずれも本件発明1の特定事項をその主たる特定事項として含むものであるが、本件発明1は上述したように上記先願2に記載された発明と同一であるとは認められず、したがって同様の理由により、本件請求項2ないし10に係る発明もまた、上記先願2に記載された発明と同一であるとは認められない。

〈請求項11について〉
本件請求項11に係る発明は、本件発明1のインクジェットプリント方法によって得られる「プリント物」であり、本件発明1の特定事項をその主たる特定事項として含むものである。しかし、本件発明1は上述したように上記先願2に記載された発明と同一であるとは認められないので、同様の理由により、本件請求項11に係る発明もまた、上記先願2に記載された発明と同一であるとは認められない。

〈請求項12〜16について〉
本件請求項12ないし16に係る発明は、いずれも本件発明11の特定事項をその主たる特定事項として含むものであるが、本件発明11は上述したように上記先願2に記載された発明と同一であるとであるは認められず、したがって同様の理由により、本件請求項12ないし16に係る発明もまた、上記先願2に記載された発明と同一であるとは認められない。

IV.むすび
以上のとおりであるから特許異議の申立ての理由によっては本件請求項1ないし請求項16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし請求項16に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1ないし請求項16に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インクジェットプリント方法、及び、プリント物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、
(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、
(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、
(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、
前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、
前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、
前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするインクジェットプリント方法(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せ、およびC.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー73を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。
【請求項2】 前記布帛がポリエステル繊維を含むものである請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項3】 前記熱処理が、高湿蒸熱(HTスチーミング)法またはサーモゾル法である請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項4】 前記インクジェット方式が熱エネルギーを利用してインクを吐出させるインクジェット方式である請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項5】 前記インクの吐出速度が5〜20m/secである請求項1又は4に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項6】 前記(a)工程の前に前記布帛を前処理する請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項7】 前処理として、尿素、水溶性高分子、水溶性金属塩の少なくとも1種を布帛に含有させる請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項8】 混色部における色素の付着量が0.015〜0.6mg/cm2の範囲にある請求項1に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項9】 混色部における色素の付着量が0.02〜0.4mg/cm2の範囲にある請求項8に記載のインクジェットプリント方法。
【請求項10】 請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェットプリント方法によりプリントされたプリント物。
【請求項11】 レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を、マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相に染色しているプリント物であって、
前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、
前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするプリント物(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せと、C.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー73の組合せである場合を除く)。
【請求項12】 前記プリント物がポリエステル繊維を含む布帛にプリントされたものである請求項11に記載のプリント物。
【請求項13】 混色部における色素の量が0.015〜0.6mg/cm2の範囲にある請求項11に記載のプリント物。
【請求項14】 混色部における色素の量が0.02〜0.4mg/cm2の範囲にある請求項13に記載のプリント物。
【請求項15】 請求項10又は11に記載のプリント物を更に加工して得られた加工品。
【請求項16】 前記加工品が前記プリント物を所望の大きさに切り離し、切り離された片に対して最終的な加工品を得るための工程を施して得られたものである請求項15に記載の加工品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はインクジェット法により布帛にプリントを行う方法及びプリント物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、捺染の主流はスクリーン捺染、ローラー捺染である。しかしながら、これらの方式は、多品種少量生産に不向きであり、流行への迅速な対応も困難であることから最近では、無製版の電子捺染システムの確立が要望されている。
【0003】
この要望に対してインクジェットによる捺染方法が数多く提案されており各方面からの期待も大きくなっている。
【0004】
インクジェット捺染の課題としては、(1)発色に十分な濃度を与えること、(2)色素の布帛に対する染着率が高く洗浄工程後の、廃水処理が容易であること、(3)布帛上で異色間の混色による不規則なにじみが目立たないこと、(4)色再現の範囲が広いこと、(5)常に安定した生産が可能であること、等が挙げられる。
【0005】
これらの課題を満足させるために、従来においては、主としてインクに様々な添加剤を加えたり、インクの打込量を操作したり、布帛に前もって処理を施す等の対応を行ってきた。
【0006】
また分散染料を用いて捺染を行う布帛、例えば、ポリエステル布帛に対するインクジェット捺染方法として、特開昭61-118477に、昇華温度が180℃以上の分散染料を使用するという方法が開示されている。しかし、昇華温度のみに着目した分散染料を色素としてもちいたインクを用いて捺染を行うと、各インクを単独で染着させた場合には良好な発色を示すのに対し、インクを布上で混色させた場合、使用する染料の組み合わせによっては、染着後の濃度や、色調、同じ染着条件で染着したときの繰り返しの再現性が非常に異なり、上記の(1)、(4)、(5)等を同時に満たさなくなる場合が多く、様々な色表現を行うためには、かかる方法では、まだ不十分であった。
【0007】
したがって、従来の技術だけでは、前述した各種の要求項目、とりわけ(5)項を充分に満たすことは不可能であった。
【0008】
また上記(4)の色再現範囲の広さがどこまでだせるかが、インクジェットによる捺染を広く普及させるためには重要である。
【0009】
なぜならば、従来の捺染では、色ごとに捺染糊を調合するため、非常に多くの色調の染料を自由に採用できたのに対し、インクジェットによる捺染では、インクを布上で混色させて色のバリエーションを得るため、使用するインクの色は数種類に限られしまう。
【0010】
従来の紙等の被記録材へのインクジェットプリントでは、イエロー、マゼンタ、シアンの3原色による減法混色ですべての色を表すことが多かった。
【0011】
しかし、インクジェット捺染で、ポリエステルを主体とするような布帛に対して分散染料を含有するインクを用いて捺染する際、特にバイオレット系からブルー系の色再現性は、マゼンタとシアンの混色による手法のみでは、従来の捺染なみの色調や彩度が表現しきれなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、分散染料で染色可能な繊維を主体として構成される布帛に、インクジェットプリントする際に、上述のごとき従来の一般的なインクジェット捺染の問題を解決すること、とりわけ、バイオレット系からブルー系にかけての色再現範囲が格段に広いプリント物を得ることができ、更に、加熱による染着処理条件が多少変化しても、安定な画像を得得ることができるインクジェットプリント方法及びプリント物を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
係る目的は、以下の本発明によって達成される。
【0014】
即ち、本発明のインクジェットプリント方法は、少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、
(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、
(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、
(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするものである(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せ、およびC.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー73を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。また本発明のプリント物は、レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を、マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相に染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするものである(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せと、C.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー73の組合せである場合を除く)。
【0015】
更に、本発明は、レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で染着されているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記プリント物が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛にプリントされたものであることを特徴とするプリント物である。
【0016】
本発明において使用する布帛を構成する素材としては、分散染料で染色可能な繊維を含有するものである。中でも、ポリエステル、アセテート、トリアセテートを含有するものが好ましい。その中でもポリエステルを含有するものが特に好ましいものである。上記繊維は織物、編物、不織布等いずれの形態でも使用できる。
【0017】
係る布帛は、分散染料で染色可能な繊維100%のものが好適であるが、混紡率30%以上、好ましくは、50%以上であれば、分散染料で染色可能な繊維と他の素材、例えばレーヨン、綿、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛、絹等との混紡織布又は混紡不織布等も本発明の捺染用布帛として使用することができる。
【0018】
また上記のような本発明において使用する捺染用布帛は、必要に応じて従来の前処理方法を併用することができる。特に、尿素、水溶性高分子、水溶性金属塩等を、0.01〜20重量%含有させたものが好適である。
【0019】
水溶性高分子の例としては、トウモロコシ、小麦等のデンプン物質、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グアーガム、タマリンド種子等の多糖類、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質物質、タンニン系物質、リグニン系物質等の公知の天然水溶性高分子が挙げられる。
【0020】
又、合成高分子としては、例えば、公知のポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系水溶性高分子、無水マレイン酸系水溶性高分子等が挙げられる。これらの中でも多糖類系高分子やセルロース系高分子が好ましい。
【0021】
水溶性金属塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物のように、典型的なイオン結晶を形成するものであって、pH4〜10である化合物が挙げられる。かかる化合物の代表的な例としては、例えば、アルカリ金属では、NaCl、Na2S04、KCl,CH3COONa,等があげられ、アルカリ土類金属としてはCaCl2,MgCl2等が挙げられる。中でも、Na,K,Caの塩類が好ましい。
【0022】
次に、本発明を主に特徴づける本発明のインクに含有されるレッド、及び、ブルーの色素について説明する。
【0023】
イエロー、マゼンタ、シアンで表現される減法混色法によれば、マゼンタ及びシアンの2つのインクのおのおのを制御することによりバイオレットからブルー系の色相もカバーすることができる。
【0024】
しかしながら濃度の薄い領域で、彩度の高いバイオレットを表現しようとするときや、ライトブルー、マリンブルー等を表現したいときなどは、減法混色法では難しく、シアンよりも赤み、深みのある青色の色素を含有するインクが特に必須となる。
【0025】
更に、この青色の色素として、本発明では、青色の色相をもつ分散染料が用いられるが、係る色素は、単に色相から選択できるものではなく、染色特性、吐出特性等の観点から、極めて限定されたものとなる。
【0026】
本発明者らは、各種の分散染料を含有するインクを作成し、前述した布帛上で、該インクを混色させて染着させると、従来捺染に比べてインクジェットプリント方法は、使用する染料の組み合わせによって、染着後の濃度や、色調、更に、同じ染着条件で染着したときの繰り返しの再現性が非常に異なることを発見した。この現象はHTスチーミング法、及びサーモゾル法による染着処理を採用した場合、特に顕著であった。
【0027】
従来においても、ポリエステルの「浸染」染色等で2種類の分散染料を一浴で染めようとした場合に、その2種類の染料の相性によって、まれに染色濃度が異なることがあることは知られており、これは、その2種類の染料が水中でどのような構造をとっているか(お互い独立しているのか、結合しているのか)に起因するといわれている(「解説 染料化学」色染社)。しかし、これは、「浸染」染色特有の問題であり、従来の捺染の場合では、この問題はほとんど議論されていなかった。
【0028】
ところが、インクジェットプリントによる捺染においては、染料の組み合わせによる差が「浸染」染色以上に顕著となった。この理由は定かではないが、インクジェットプリントのように、インク小滴を布帛に順次着滴させる方法においては、付与される染料の絶対量が少ないこと、及びドット表現であること等により、染料の組み合わせによる差が従来よりも格段に明確に発現するためと考えられる。
【0029】
本発明者らは、上記問題を鑑みて鋭意検討を行い、以下に記載する非常に限られた色素を使用することにより、色素の組み合わせによって、染着後の濃度や、色調が変化したりせず、染着後の色再現性も非常に安定し、更に、バイオレット系からブルー系にかけての色再現範囲が格段に広くなることを知見した。
【0030】
以上のことから使用する色素は以下のものに限られる。
【0031】
レッドインク中の色素としてはC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、164、159、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、C.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有させることが好ましく、なかでもC.I.ディスパーズレッド92,126,135,145,152,159,177,181,206,283,348よりなる群の中から選ばれる少なくとも1種を含有させることがより好ましい。
【0032】
ブルーインク中の色素としてはC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、368よりなる郡の中から選ばれる少なくとも一種を含有させることが好ましく、C.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287、368よりなる群の中から選ばれる少なくとも1種を含有させることがより好ましい。
【0033】
これらの色素は、本発明のインクに少なくとも1種以上含有される。含有量は、インク全重量に対して合計で1〜25重量%、好ましくは1.5〜20重量%、より好ましくは2〜15重量%の範囲である。
【0034】
本発明のインクは、少なくとも、上述した色素、係る色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を含む。
【0035】
前記色素を分散する化合物としては、いわゆる分散剤、界面活性剤、樹脂等を用いることができる。
【0036】
分散剤または界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系のいずれも使用できるが、例えば、アニオン系のものとしては脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、及びこれらの置換誘導体等;ノニオン系のものとしてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、及びこれらの置換誘導体等が挙げられる。
【0037】
樹脂分散剤としてはスチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマール酸及びその誘導体、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、並びにこれらの塩等をあげることができる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であることが好ましい。
【0038】
更に、本発明のインクは、水性液媒体を含有し、必須成分である水は、インク全重量に対して10〜93重量%、好ましくは25〜87重量%、より好ましくは30〜82重量%の範囲含有することが好ましい。
【0039】
更に、水性液媒体として、水のほかに有機溶剤を併有することが好ましい。
【0040】
有機溶剤については、例えば、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;チオジグリコール;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;スルホラン、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0041】
上記の如き媒体を併用する場合は単独でも混合物としても使用できるが、もっとも好ましい液媒体組成は、該溶剤が少なくとも1種の多価アルコールを含有するものである。中でも、チオジグリコール、ジエチレングリコールの単独もしくはジエチレングリコール、チオジグリコール混合系は特に良好なものである。
【0042】
上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインクの全重量に対して重量%で5〜60%、好ましくは5〜50%の範囲である。
【0043】
本発明に使用するインクの主要成分は上記の通りであるが、その他公知の各種の粘度調整剤、表面張力調整剤、蛍光増白剤、消泡剤を必要に応じて添加することができる。例えば、ポリビニルアルコール、セルロース類、水溶性樹脂等の粘度調整剤;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の表面張力調整剤;緩衝液によるpH調整剤、防カビ剤等である。
【0044】
また染料を分散させるため以外の目的のため、インクの成分として各種の界面活性剤等を必要に応じて添加することができる。
【0045】
本発明におけるインクは、上記の色素、該色素を分散させる化合物、溶剤、水、その他添加物とともに、従来公知の分散方法、混合方法等をもちいて製造することができる。
【0046】
本発明のインクジェットプリント方法は、上記布帛に上記インクの小滴をインクジェット法で着滴させて、少なくとも2色以上のインクによる混色部を形成するものである。
【0047】
この場合、混色部の各色素の付着量の合計は、0.01〜1mg/cm2、好ましくは0.015〜0.6mg/cm2より好ましくは0.02〜0.4mg/cm2とするものである。この値は、インクの吐出量とインク中の色素濃度を実測することにより求めることができる。色素の付着量が0.01mg/cm2未満では、高濃度の発色が難しいので本発明の効果が明確にならない。又、1mg/cm2を超える場合は、濃度、色再現範囲、染色安定性等の向上の顕著な効果が認められない。
【0048】
係るインクジェットプリントに用いるインクジェット方式は、従来公知のいずれのインクジェット記録方式でもよいが、例えば、特開昭54-59936号公報に記載されている方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させる方式、即ち、バブルジェット方式が最も有効である。
【0049】
これは、上記方式は複数のノズルを有する記録ヘッドを用いる場合、各ノズル間のインクの吐出速度のばらつきが小さく、インクの吐出速度が5〜20m/secの範囲に集約されており、この速度で分散染料を含むインクが布帛に衝突した場合の着滴時の液滴の繊維に対する浸透の具合が最適となるためと思われる。
【0050】
本発明は、係る方式で長時間連続的にプリントを行ってもそのヒーター上の異物の沈着や断線が発生せず、安定したプリントが可能となる。
【0051】
更に係るインクジェット方法において、特に高い効果を得る条件としては、吐出液滴が20〜200pl、インク打込量が4〜40nl/mm2、駆動周波数1.5KHz以上、及びヘッド温度35〜60℃が好ましい。
【0052】
又、以上の様にして、上記の様な布帛上に付与されたインクは、この状態では単に付着しているに過ぎないので、引続き繊維への色素の染着及び未染着の色素の除去工程を施す必要がある。この様な染着及び未染着の色素の除去方法は、従来公知の方法でよい。
【0053】
なかでも、染着法に関しては、HTスチーミング法またはサーモゾル法を用いることが好ましい。さらにHTスチーミング法の場合、140℃〜180℃で2分〜30分間の処理条件の場合が好ましく、160℃〜180℃で6分〜8分間の処理条件の場合がより好ましい。サーモゾル法の場合は、160℃〜210℃で10秒〜5分の処理条件の場合が好ましく、180℃〜210℃で20秒〜2分の処理条件の場合がより好ましい。
【0054】
なお、得られたプリント物は、必要に応じて、所望の大きさに切り離され、切り離された片は縫着、接着、溶着等、最終的な加工品を得るための工程が施され、ネクタイ、ハンカチ等の加工品を得ることができる。
【0055】
本発明のインクを用いて捺染を行うのに好適な装置の一例としては、記録ヘッドの室内のインクに記録信号に対応した熱エネルギーを与え、該熱エネルギーにより液滴を発生させる装置が挙げられるが、以下これについて説明する。
【0056】
その装置の主要部であるヘッド構成例を図1、図2及び図3に示す。
【0057】
ヘッド13はインクを通す溝14を有するガラス、セラミック又はプラスチック板等と、感熱記録に用いられる発熱ヘッド15(図ではヘッドが示されているが、これに限定されるものではない)とを接着して得られる。発熱ヘッド15は酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17-1、17-2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20よりなっている。
【0058】
インク21は吐出オリフィス(微細孔)22まで来ており、圧力Pによりメニスカス23を形成している。
【0059】
今、電極17-1、17-2に電気信号が加わると、発熱ヘッド15のnで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21が吐出し、オリフィス22より記録小滴24となり、本発明に使用する布帛25に向かって飛翔する。図3には図1に示すヘッドを多数並べたマルチヘッドの外観図を示す。該マルチヘッドはマルチ溝26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同様な発熱ヘッド28を密着して製作されている。尚、図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA-B線での切断面である。
【0060】
図4に、かかるヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。
【0061】
図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッドによる記録領域に隣接した位置に配設され、又、本例の場合、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。62はキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に63はブレード61に隣接して設けられる吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62、吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及び吸収体63によってインク吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する布帛にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行う為のキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と慴動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモータ68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0062】
51は布帛を挿入する為の給布部、52は不図示のモータにより駆動される布送りローラである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置へ布帛が給布され、記録が進行するにつれて排布ローラ53を配した排布部へ排布される。
【0063】
上記構成において記録ヘッド65が記録終了等でホームポジションに戻る際、ヘッド回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出する様に移動する。
【0064】
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上述したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
【0065】
上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録の為に記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。図5は、ヘッドにインク供給部材、例えばチューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収容したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能ならしめる。44は廃インクを受容する吸収体である。インク収容部としては、インクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが本発明にとって好ましい。本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上記の如きヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示す如きそれらが一体になったものにも好適に用いられる。
【0066】
図6において、70は記録ユニットであって、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、ポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。72は記録ユニット内部を大気に連通させる為の大気連通口である。この記録ユニット70は、図4で示す記録ヘッドに代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対し着脱自在になっている。
【0067】
係る本発明は、オフィスユースにも適応可能であるが、特に、オフィスユース以外のインダストリアルユースに好適である。
【0068】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中部及び%とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0069】
実施例1
分散染料液(I、II)の作成
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 5部
イオン交換水 75部
ジエチレングリコール 5部
上記成分を混合し、この溶液に新たに下記分散染料15部をそれぞれ加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
分散染料 C.I.ディスパーズ レッド 145(染料分散液I用)
C.I.ディスパーズ ブルー 368(染料分散液II用)
分散機 サンドグラインダー(五十嵐機械製)
粉砕メディア ジルコニウムビーズ1mm径
粉砕メディアの充填率 50%(体積)
粉砕時間 3時間
さらに遠心分離処理(12000RPM、20分間)を行った後、フロロポアフィルターFP-250(住友電工社製)にてろ過し粗大粒子を除去して分散染料液(I、II)を得た。
【0070】
インク(A、B)の製造
・上記分散染料液(I、II) 40部
・チオジグリコール 24部
・ジエチレングリコール 11部
・イオン交換水 25部
上記の全成分を混合し、混合液を酢酸でpH5〜7に調整し、インク(A、B)を得た。
【0071】
ポリエステル100%の織布を、予め処理液(尿素10%、アルギン酸ソーダ2%、水88%)に浸し、絞り率30%で脱水後乾燥した。
【0072】
この織布に上記の様にして得られたインク(A、B)をカラーバブルジェットプリンターBJC820(商品名 キヤノン製)に搭載してプリントし、、2×4cmの大きさで下記のような印字パッチ計24種類を作成した。
・単色印字パッチ インクAを各インク打込み量2、4、6、8nl/mm2で印字したもの
インクBを各インク打込み量2、4、6、8nl/mm2で印字したもの
・混色印字パッチ インクA、Bを、上記の打込み量のすべての組み合わせで重ねて印字したもの(例えば、インクAとインクBを両方2nl/mm2印字したパッチ、やインクAを4nl/mm2、インクBを2nl/mm2印字したもの等)16種類
ついで160℃で6〜8分間の蒸熱処理による定着を行った。その後、これを中性洗剤で洗浄して、プリント物のバイオレットからブルー系の領域の再現範囲、発色安定性について評価した。その結果、表1に示したように上記領域の発色性が良好で、しかも混色部での発色安定性が良好であった。
【0073】
実施例2
分散染料液(III、IV)の作成
リグニンスルホン酸ナトリウム 2部
イオン交換水 73部
ジエチレングリコール 15部
上記成分を混合し、この溶液に新たに下記分散染料10部をそれぞれ加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
分散染料 C.I.ディスパーズ レッド 159(染料分散液III用)
C.I.ディスパーズ ブルー 267(染料分散液IV用)
分散機 サンドグラインダー(五十嵐機械製)
粉砕メディア ガラスビーズ0.5mm径
粉砕メディアの充填率 70%(体積)
粉砕時間 3時間
さらに遠心分離処理(12000RPM、20分間)を行った後、フロロポアフィルターFP-250(住友電工社製)にてろ過し粗大粒子を除去して分散染料液(III、IV)を得た。
【0074】
インク(C,D)の製造
・上記分散染料液(III、IV) 30部
・チオジグリコール 25部
・テトラエチレングリコールジメチルエーテル 5部
・イオン交換水 50部
上記の全成分を混合し、混合液を酢酸でpH5〜7に調整し、インク(C,D)を得た。
【0075】
実施例1に使用した織布に上記の様にして得られたインク(C,D)を実施例1と同様の方法で同様のパターンをプリントした。ついで200℃で40〜50秒間のサーモゾル処理による定着を行なった。その後、これを中性洗剤で洗浄して、プリント物のバイオレットからブルー系の領域の再現範囲、発色安定性について評価した。その結果、表1に示したように上記領域の発色が良好で、しかも混色部での発色安定性が良好であった。
【0076】
実施例3
分散染料液(V,VI)の作成
βナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物 20部
イオン交換水 50部
ジエチレングリコール 10部
上記成分を混合し、この溶液に新たに下記分散染料20部をそれぞれ加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
分散染料 C.I.ディスパーズ レッド92(染料分散液V用)
C.I.ディスパーズ ブルー 287(染料分散液VI用)
分散機 パールミル(アシザワ製)
粉砕メディア ガラスビーズ1mm径
粉砕メディアの充填率 50%(体積)
吐出速度 100ml/min
さらに遠心分離処理(12000RPM、20分間)を行った後、フロロポアフィルターFP-250(住友電工社製)にてろ過し粗大粒子を除去して分散染料液(V,VI)を得た。
【0077】
インク(E,F)の製造
・上記分散染料液(V,VI) 50部
・チオジグリコール 23部
・ジエチレングリコール 5部
・イソプロピルアルコール 3部
・イオン交換水 19部
上記の全成分を混合し、混合液を酢酸でpH5〜7に調整し、インク(E,F)を得た。
【0078】
ポリエステル70%、綿30%の混紡した織布をあらかじめ処理液(尿素10%、カルボキシメチルセルロース2%、水88%)に浸したあと、絞り率30%で脱水後乾燥した。この織布に上記の様にして得られたインク(E,F)を実施例1と同様の方法で同様のパターンをプリントした。ついで160℃で6分〜8分間蒸熱処理を行なった。その後、これを中性洗剤で洗浄して、プリント物のバイオレットからブルー系の領域の再現範囲、発色安定性について評価した。その結果、表1に示したように上記領域の発色が良好で、しかも混色部での発色安定性が良好であった。
【0079】
比較例1
分散染料液(VII、VIII)の作成
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 5部
イオン交換水 7部
ジエチレングリコール 5部
上記成分を混合し、この溶液に新たに下記分散染料15部をそれぞれ加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
分散染料 C.I.ディスパーズ レッド 43(染料分散液VII用)
C.I.ディスパーズ ブルー81:1(染料分散液VIII用)
分散機 サンドグラインダー(五十嵐機械製)
粉砕メディア ジルコニウムビーズ1mm径
粉砕メディアの充填率 50%(体積)
粉砕時間 3時間
さらに遠心分離処理(12000RPM、20分間)を行った後、フロロポアフィルターFP-250(住友電工社製)にてろ過し粗大粒子を除去して分散染料液(VII、VIII)を得た。
【0080】
インク(G,H)の製造
・上記分散染料液(VII、VIII) 40部
・チオジグリコール 24部
・ジエチレングリコール 11部
・イオン交換水 25部
上記の全成分を混合し、混合液を酢酸でpH5〜7に調整し、インク(G,H)を得た。
【0081】
実施例1に使用した織布に上記の様にして得られたインク(G,H)を実施例1と同様の方法で同様のパターンをプリントした。ついで160℃で6〜8分間の蒸熱処理による定着を行った。その後、これを中性洗剤で洗浄して、プリント物のバイオレットからブルー系の領域の再現範囲、発色安定性について評価した。その結果、表1に示したように上記領域の発色は余り良くなく、混色部での発色安定性が悪かった。
【0082】
比較例2
分散染料液(IX)の作成
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 5部
イオン交換水 75部
ジエチレングリコール 5部
上記成分を混合し、この溶液に新たに下記分散染料15部をそれぞれ加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
分散染料 C.I.ディスパーズレッド188(染料分散液IX用)
分散機 サンドグラインダー(五十嵐機械製)
粉砕メディア ジルコニウムビーズ1mm径
粉砕メディアの充填率 50%(体積)
粉砕時間 3時間
さらに遠心分離処理(12000RPM、20分間)を行った後、フロロポアフィルターFP-250(住友電工社製)にてろ過し粗大粒子を除去して分散染料液(IX)を得た。
【0083】
インク(I)の製造
・上記分散染料液(IX) 40部
・チオジグリコール 24部
・ジエチレングリコール 11部
・イオン交換水 25部
上記の全成分を混合し、混合液を酢酸でpH5〜7に調整し、インク(I)を得た。
【0084】
実施例1に使用した織布に上記の様にして得られたインク(I)及び実施例1で使用したインク(B)を実施例1と同様の方法で同様のパターンを印字した。ついで160℃で6〜8分間の蒸熱処理による定着を行った。その後、これを中性洗剤で洗浄して、プリント物のバイオレットからブルー系の領域の再現範囲、発色安定性について評価した。その結果、表1に示したように上記領域の発色は余り良くなく、混色部での発色安定性も悪かった。
【0085】
比較例3
分散染料液(X)の作成
βナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物 20部
イオン交換水 50部
ジエチレングリコール 10部
上記成分を混合し、この溶液に新たに下記分散染料20部をそれぞれ加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
分散染料 C.I.ディスパーズ ブルー7(シアン色)(染料分散液X用)
分散機 パールミル(アシザワ製)
粉砕メディア ガラスビーズ1mm径
粉砕メディアの充填率 50%(体積)
吐出速度 100ml/min
さらに遠心分離処理(12000RPM、20分間)を行った後、フロロポアフィルターFP-250(住友電工社製)にてろ過し粗大粒子を除去して分散染料液(X)を得た。
【0086】
インク(J)の製造
・上記分散染料液(X) 50部
・チオジグリコール 23部
・ジエチレングリコール 5部
・イソプロピルアルコール 3部
・イオン交換水 19部
上記の全成分を混合し、混合液を酢酸でpH5〜7に調整し、インク(J)を得た。
【0087】
実施例3に使用した織布に上記の様にして得られたインク(J)及び実施例3で使用したインク(E)を実施例1と同様の方法で同様のパターンをプリントした。ついで160℃で6〜8分間の蒸熱処理による定着を行った。その後、これを中性洗剤で洗浄して、プリント物のバイオレットからブルー系の領域の再現範囲、発色安定性について評価した。その結果、表1に示したように上記領域の発色は余り良くなく、混色部での発色安定性も悪かった。
【0088】
【表1】

【0089】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、バイオレットからブルーの領域の色再現性が良く、しかも生産安定性にすぐれたプリント物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
インクジェットプリント装置のヘッド部の縦断面図
【図2】
インクジェットプリント装置のヘッド部の横断面図
【図3】
図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図
【図4】
インクジェットプリント装置の一例を示す斜視図
【図5】
インクカートリッジの縦断面図
【図6】
記録ユニットの斜視図
 
訂正の要旨 訂正の要旨 [特許第3005142号]
特許第3005142号発明の明細書を、下記のとおり訂正する。
1.特許請求の範囲請求項1の、
「【請求項1】少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするインクジェットプリント方法(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。」との記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするインクジェットプリント方法(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せ、およびC.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー73を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。」と訂正する。
2.特許請求の範囲の【請求項8】及び【請求項9】を、明瞭でない記載の釈明を目的として削除する。
3.特許請求の範囲の「【請求項10】」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「【請求項8】」と訂正する。
4.特許請求の範囲の「【請求項11】」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「【請求項9】」と訂正するとともに、「請求項10」を「請求項8」と訂正する。
5.特許請求の範囲の「【請求項12】」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「【請求項10】」と訂正するとともに、「請求項11」を「請求項9」と訂正する。
6.「【請求項13】レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするプリント物(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せである場合を除く)。」を、特許請求の範囲の減縮ならびに明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【請求項11】レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を、マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相に染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするプリント物(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せと、C.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー73の組合せである場合を除く)。」と訂正する。
7.特許請求の範囲の「【請求項14】」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「【請求項12】」と訂正するとともに、「請求項13」を「請求項11」と訂正する。
8.特許請求の範囲の【請求項15】及び【請求項16】を、明瞭でない記載の釈明を目的として削除する。
9.特許請求の範囲の「【請求項17】」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「【請求項13】」と訂正するとともに、「請求項13」を「請求項11」と訂正する。
10.特許請求の範囲の「【請求項18】」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「【請求項14】」と訂正するとともに、「請求項17」を「請求項13」と訂正する。
11.特許請求の範囲の「【請求項19】」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「【請求項15】」と訂正するとともに、「請求項12又は13」を「請求項10又は11」と訂正する。
12.特許請求の範囲の「【請求項20】」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「【請求項16】」と訂正するとともに、「請求項10」を「請求項15」と訂正する。
13.明細書段落【0014】の、
「【0014】即ち、本発明のインクジェットプリント方法は、少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするものである(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。また本発明のプリント物は、レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド54、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、258、278、283、288、311、323、343、348、356、及びC.I.ディスパーズバイオレット33よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、113、128、148、154、158、165、165:1、165:2、183、197、201、214、224、225、257、266、267、287、358、及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするものである(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せである場合を除く)。」との記載を、
「【0014】即ち、本発明のインクジェットプリント方法は、少なくともレッド、及びブルーの2色のインクを、インクジェット方式によって、布帛上に付与してマンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相のプリントを行う方法であって、(a)前記2色のインクを少なくとも一部が重なるように布帛上に付与する工程、(b)前記インクが付与された布帛を熱処理する工程、(c)前記熱処理した布帛を洗浄する工程、の3工程を少なくとも有し、前記布帛が分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛であり、前記インクが何れも色素、色素を分散する化合物、及び、水性液媒体を少なくとも含有し、前記レッドインクは、色素としてC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記ブルーインクは色素としてC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記少なくとも2色のインクの混色部における色素の付着量が、0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするものである(但し、レッド及びブルーの2色のインクの組合せとして、C.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー224を含有するブルーインクとの組合せ、およびC.I.ディスパーズレッド283を含有するレッドインクとC.I.ディスパーズブルー73を含有するブルーインクとの組合せを用いる場合を除く)。また本発明のプリント物は、レッド、ブルーの2色の色素が少なくとも一部重複した状態で、分散染料で染色可能な繊維を含有する布帛を、マンセル色標系でパープルまたはパープルブルーに含まれる色相に染色しているプリント物であって、前記レッド色素がC.I.ディスパーズレッド92、126、135、145、152、159、177、181、206、283及び348よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ブルー色素がC.I.ディスパーズブルー56、73、128、154、165、201、214、224、257、266、267、287及び368よりなる群の中から選ばれる少なくとも一種であり、且つ少なくとも2色の色素の混色部における量が0.01mg〜1mg/cm2の範囲にあることを特徴とするものである(但し、前記2色の色素がC.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー224の組合せと、C.I.ディスパーズレッド283及びC.I.ディスパーズブルー73の組合せである場合を除く)。」と訂正する。
異議決定日 2002-06-25 
出願番号 特願平5-170462
審決分類 P 1 651・ 161- YA (D06P)
P 1 651・ 121- YA (D06P)
P 1 651・ 4- YA (D06P)
P 1 651・ 113- YA (D06P)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 浩子松本 直子  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 西川 和子
鈴木 紀子
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3005142号(P3005142)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 インクジェットプリント方法、及び、プリント物  
代理人 西山 恵三  
代理人 西山 恵三  
代理人 内尾 裕一  
代理人 内尾 裕一  

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