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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01H
管理番号 1065945
異議申立番号 異議2001-72706  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-02-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-03 
確定日 2002-07-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3152248号「スタータ用マグネットスイッチ」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3152248号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕手続の経緯
特許第3152248号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成3年8月1日に特許出願され、平成13年1月26日にその発明についての特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人伊藤輝夫より特許異議の申立てがされ、取消しの理由が通知され、その指定期間である平成13年3月21日に訂正請求(後日取下げ)がされた後、再度の取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年5月17日に訂正請求がされたものである。

〔2〕訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のa〜eのとおりである。
a特許請求の範囲の請求項1に記載される「マグネットスイッチ本体と、前記マグネットスイッチ本体に固定され、スイッチ作動電流供給用端子を有する樹脂カバーと、前記樹脂カバーへ固定可能に該樹脂カバーとは別体に形成され、前記スイッチ作動電流供給用端子に接続可能に車両側カプラを嵌合可能な嵌合部を有するスイッチ作動電流供給用端子カプラと、を備えたことを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。」を「マグネットスイッチ本体と、前記マグネットスイッチ本体に固定され、スイッチ作動電流供給用端子を有する樹脂カバーと、前記樹脂カバーへ固定可能に該樹脂カバーとは別体に形成され、前記スイッチ作動電流供給用端子に接続可能に車両側カプラを嵌合可能な嵌合部を有するスイッチ作動電流供給用端子カプラと、前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムとを備え、この防水ゴムが前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成されたことを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。」と訂正する。
b特許請求の範囲の請求項2に記載される「前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムと、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のスタータ用マグネットスイッチ。」を
「前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムを備え、かつ前記スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムの底部の肉厚は、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定後の該カプラと前記カバーとの隙間より大となっていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ用マグネットスイッチ。」と訂正する。
c発明の詳細な説明中の段落【0005】の「スイッチ作動電流供給用端子カプラとを備えたことを特徴とする。さらには、前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムと、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムとを備えたことを特徴とする。」を「スイッチ作動電流供給用端子カプラと、前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムとを備え、この防水ゴムが前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成されたことを特徴とする。さらには、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムとを備え、かつ前記スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムの底部の肉厚は、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定後の該カプラと前記カバーとの隙間より大となっていることを特徴とする。」と訂正する。
d発明の詳細な説明中の段落【0006】の「さらには、車両側カプラからの浸水を車両側コネクタ用防水ゴムにより防止し、スイッチ作動電流供給用端子カプラ下部のスイッチ作動電流供給用端子挿入部側からの浸水をスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムにより防止する。」を
「さらには、スイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により押し潰されたスイッチ作動電流供給用防水ゴムのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラの防振性が確保される。」と訂正する。
e発明の詳細な説明中の段落【0016】の「さらには、車両側カプラとスイッチ作動電流供給用端子との電気的接続およびスイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの挿入性が向上するとともに、ロック部および防水部の防水性の向上が図られるという効果がある。」を「さらには、スイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により押し潰されたスイッチ作動電流供給用防水ゴムのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラの防振性が確保されるという効果がある。」と訂正する。

イ.訂正の適否、新規事項の有無及び拡張・変更
上記訂正aは、請求項1に、「スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムとを備え、この防水ゴムが前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成された」なる事項を付加するもので、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、この事項は、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の発明の詳細な説明中の段落【0012】の「スイッチ作動電流供給用端子カプラ4の固定により押し潰された底部8bのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラ4の防振性が確保される。」なる記載から直接的、一義的に導き出されるものであるから、上記訂正aは、当初明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
また、上記訂正bは、請求項2に、「スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムの底部の肉厚は、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定後の該カプラと前記カバーとの隙間より大となっている」なる事項を付加するもので、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、この事項は、当初明細書の発明の詳細な説明中の段落【0011】の「またスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム8の底部8bの肉厚は、スイッチ作動電流供給用端子カプラ4の固定後の該カプラ4とモールドカバー2との隙間12により大となっている。」なる記載から直接的、一義的に導き出されるものであるから、上記訂正bは、当初明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加には該当しない。
さらに、上記訂正c〜eは、上記訂正事項a、bに伴い明細書の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、前述したとおり新規事項の追加には該当しない。
そして、上記訂正a〜eのいずれの訂正も実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

〔3〕特許異議申立てについての判断
ア.申立ての理由の概要
申立人伊藤輝夫は、請求項1に係る発明は、甲第1号証(実願昭59-109890号(実開昭61-24940号)のマイクロフィルム)に記載されたものにより、請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証(日本電装公開技報、整理番号66-110、1989年7月15日発行)に記載されたものにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、当該特許を取り消すべきであると主張している。

イ.本件発明
上記〔2〕で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものである。(上記〔2〕ア.訂正事項a、b参照)

ウ.刊行物等
刊行物1(実願昭59-109890号(実開昭61-24940号)のマイクロフィルム、異議申立人の提出した甲第1号証)には、ヒューズ収納カプラに関して、第1〜11図とともに以下の事項が記載されている。
(1)「本考案はヒューズ収納カプラに関し、更に詳しくは、スタータマグネットスイッチ等の電気部品を内部に有するケースに取り付けられるヒューズ収納カプラに関する。」(明細書第1頁第16〜19行)
(2)「本考案は上記事情に鑑みてなされたものであり、前記従来のスタータマグネットスイッチ等の有する問題点を解消し、例えばスタータマグネットスイッチ等の電気部品を内装するケースを1種類にして共通化を図り、追加部品を変えることによって多くのバリエーションを満足させることができる優れたヒューズ収納カプラを提供することである。」(明細書第3頁第7〜14行)
(3)「以下添付図面を用いて本考案の実施例を説明する。第1図から第6図は本考案のヒューズ収納カプラの一実施例の構成及びそのスタータマグネットスイッチへの取付状態を示すものである。図中1はスタータマグネットスイッチ本体で、リレーコイル1a及びプランジャ1bをケース2内に格納して構成されており、ケース2の上面には、例えばスタータモータ等の負荷側の接続端子3及びバッテリ等の電源側の接続端子4が突設されている。また、前記リレーコイル1aの両側はケース2の上部分2aの中央部から偏した位置に植設されたオス端子5,5にケース2の内部で電気的に接続されており、このオス端子5,5に接続される接続コード6,6によってスタータスイッチに電気的に連絡されている。この接続コード6,6はカプラなしで直接オス端子5,5に取り付けられることもあり、その場合は先端部にメス端子7,7が取り付けられて前記オス端子5,5に差し込まれる。8はオス端子5,5が導電性の物体等により前記接続端子3,4と触れるのを防止するためのシールド板及びカプラ接続時のカプラガイドである。本考案のヒューズ収納カプラ10は、カプラ本体101にヒューズ収納部102を設けて構成されており、前記シールド板8をガイドとしてケース2の上方から前記オス端子5,5に着脱可能に差し込めるようになっている。カプラ本体101にはその下面10bに前記オス端子5,5が挿入されるべきスリット孔11,12が設けられており、その上方にはカプラ本体101の上面10aに開口する角孔13,14が連続して設けられている。そして、この角孔13,14には前記接続コード6のメス端子7,7が切り起こし爪7a,7aによって挿入固定出来るようになっており、角孔13,14にメス端子7,7を取り付けた状態でカプラ10のスリット孔11,12をオス端子5,5に差し込めば、自動的にオス端子5,5と接続コード6,6とが電気的に接続されるようになっている。」(明細書第4頁第8行〜第6頁第6行)
刊行物2(日本電装公開技報、整理番号66-110、1989年7月15日発行、異議申立人が提出した甲第2号証)には、マグネットスイッチに関して、第1〜3図とともに、以下の事項が記載されている。
(4)「本考案はスタータのマグネットスイッチに関するものである。」(公開技報第1頁左欄第1〜2行)
(5)「そこで、本考案では、スタータ・マグネットスイッチ内に防水型カプラに対応した50端子を設ける方法を供与する。第1図に本考案におけるマグネットスイッチ50端子部付近を側面より見たものを示す。第1図の50端子付近をA-Aにて断面としたものが第2図である。1は車輌側カプラのロック爪を掛ける部分であり、ナイロン、PBT等の適度な弾性を有する材質で成形されており、2のモールドカバーと4のフレーム絞め部ではさまれて固定される。2のモールドカバーは5の車輌側カプラの入る閉じた凹み、または隔壁2-aを有し、この部分にて5のカプラのゴムリングを締め、防水性を確保する。また、50端子部3の外周側2-bはカプラ5のロック爪の挿入をガイドすべくテーパを有し、ロック部1の有する適度な弾性と共に、カプラ挿入の作業性を向上させる。50端子3はマグネットスイッチ内部でコイルと結線・接続され、マグネットスイッチ内の密閉のため、ゴムのスペーサ6を介して、モールドカバー2へ挿入されている。このように本考案では、マグネットスイッチ内へ防水型カプラに対応した50端子構造を形成し、しかも、防水型カプラにありがちな挿入作業性の悪さに付いても、改善している。第3図の50端子部付近をB方向より見た図である。」(公開技報第1頁左欄第15行〜右欄第21行)

エ.対比・判断
(1)本件発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明の「マグネットスイッチ本体1」、「オス端子5」、「ケース2」、「カプラ本体101」は、それぞれ、本件発明1の「マグネットスイッチ本体」、「スイッチ作動電流供給用端子」、「カバー」、「スイッチ作動電流供給用端子カプラ」に相当するものと認められ、ケースが、樹脂から製造されることは周知の手段であるので、「ケース2」は、実質的に「樹脂カバー」に相当するものと認められるから、
両者は、「マグネットスイッチ本体と、前記マグネットスイッチ本体に固定され、スイッチ作動電流供給用端子を有する樹脂カバーと、前記樹脂カバーへ固定可能に該樹脂カバーとは別体に形成され、前記スイッチ作動電流供給用端子に接続可能に車両側カプラを嵌合可能な嵌合部を有するスイッチ作動電流供給用端子カプラを有するスタータ用マグネットスイッチ」の点で一致しており、
スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定に関し、前者は「スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムを備え、この防水ゴムが前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成した」のに対して、後者はそのような構成を有していない点で相違する。
また、刊行物2に記載された発明において「端子部3」、「ゴムのスペーサ6」は、本件発明の「スイッチ作動電流供給用端子」、「スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム」に相当するものと認められるが、この発明は、「スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムを備え」ることを開示するにとどまり、「防水ゴムがスイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成」する点を示唆していない。
そして、本件考案1は、上記構成を有することにより、「スイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により押し潰されたスイッチ作動電流供給用防水ゴムのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラの防振性が確保される。」という刊行物1、2によって奏されない効果を奏する。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明からは、勿論のこと、刊行物1、2に記載された発明を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(2)本件発明2は、請求項1を引用する従属項に係る発明であるから、本件発明1が刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明ができないものである以上、本件発明2も、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、2に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スタータ用マグネットスイッチ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 マグネットスイッチ本体と、
前記マグネットスイッチ本体に固定され、スイッチ作動電流供給用端子を有する樹脂カバーと、
前記樹脂カバーへ固定可能に該樹脂カバーとは別体に形成され、前記スイッチ作動電流供給用端子に接続可能に車両側カプラを嵌合可能な嵌合部を有するスイッチ作動電流供給用端子カプラと、
前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムとを備え、
この防水ゴム前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成されたことを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項2】 前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムを備え、かつ前記スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムの底部の肉厚は、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定後の該カプラと前記カバーの隙間より大となっていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ用マグネットスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関を始動するためのスタータのマグネットスイッチに関するもので、詳細には、端子カプラに対応するスイッチ作動電流供給用端子を有するスタータ用マグネットスイッチに関する。
【従来の技術】
従来より、内燃機関を始動するスタータのマグネットスイッチとして、スイッチ作動電流供給用端子のカプラにハウジングロック機構をもつ防水型カプラを使用するものが知られている。この種のスタータ用マグネットスイッチでは、スイッチ作動電流供給用端子にカプラのロック爪の受け部および防水ゴム受部を形成することが困難であることから、ボルト形状のスイッチ作動電流供給用端子に防水カプラ付ハーネスをねじ止めし、ボルト部分をゴムカバーで覆うという方法が用いられている。
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のスタータ用マグネットスイッチによると、スイッチ作動電流供給用端子カプラの形状に応じて、モールドカバーそのものを変える必要があり、かつスイッチ作動電流供給用端子カプラをモ-ルドカバ-と同じ材料で形成しなければならず、外部からの衝撃に対して弱いという問題がある。また、スイッチ作動電流供給用端子の接触部がゴムカバーのみで防水されているため、防水型カプラによるスイッチ作動電流供給用端子の電気的接触についての信頼性が低下する。また、防水型カプラの先端が自由端であるため、車両側カプラの組付時、車両側カプラを嵌めにくいがためにステー等の固定用補助部材を必要とし、構造が複雑になるという問題がある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、組付性および汎用性の良好なスタータ用マグネットスイッチを提供しつつ、さらには、防水型カプラに対応するスイッチ作動電流供給用端子の電気的接触についての信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明のスタータ用マグネットスイッチは、マグネットスイッチ本体と、前記マグネットスイッチ本体に固定され、スイッチ作動電流供給用端子を有する樹脂カバーと、前記樹脂カバーに固定可能に該樹脂カバーとは別体に形成され、前記スイッチ作動電流供給用端子に接続可能に車両側カプラを嵌合可能な嵌合部を有するスイッチ作動電流供給用端子カプラを嵌合可能な嵌合部を有するスイッチ作動電流供給用端子カプラと、前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムを備え、この防水ゴムが前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成されたことを特徴とする。さらには、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムとを備え、かつ前記スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムの底部の肉厚は、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定後の該カプラと前記カバーとの隙間より大となっていることを特徴とする。
【作用】
本発明のスタータ用マグネットスイッチによれば、スイッチ作動電流供給用端子カプラは樹脂カバーとは別体であり、その上部の形状を変化させることにより、樹脂カバーそのものを変えることなく多種の車両側カプラに対応できるとともに、スイッチ作動電流供給用端子カプラを別の材料、例えば熱可塑性樹脂で形成したことにより、外部からの衝撃に対して割れにくい。さらには、スイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により押し潰されたスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラの防振性が確保される。
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。自動車用内燃機関を始動するためのスタータに適用した本発明の第1実施例によるマグネットスイッチを図1〜図10に示す。第1実施例は、マグネットスイッチ本体1のモールドカバー2上に固定されたスイッチ作動電流供給用端子3に図示しない車両側カプラと組み合う熱可塑性樹脂のスイッチ作動電流供給用端子カプラ4を設けた例である。
このスイッチ作動電流供給用端子カプラ4は、車両側カプラを連結可能に対応するロック部4a、円筒状の連結部4b、位置決め用のインナ部4c、固定用足部4dおよび受溝部4eを一体に有する。防水ゴムは、車両側コネクタ用防水ゴム7とスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム8からなる。車両側コネクタ用防水ゴム7は、円筒状のもので、連結部4bの内周壁に嵌合され、内空間部にスイッチ作動電流供給用端子3の先端部3bを配置する。スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム8は、円柱状のもので、その中央部に形成されるスリット穴8aにスイッチ作動電流供給用端子3の付根部3aが挿入される。
スタータモータ部13のモータ作動電流供給用リード線14は、モータ作動電流供給用端子6のボルト16へナット15にて組付けられている。組付け時、スイッチ作動電流供給用端子3へスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム8のスリット穴8aを挿入した後、スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム8の外周にスイッチ作動電流供給用端子カプラ4のインナ部4cを嵌合し、このインナ部4cをモールドカバー受部2aにて径方向に位置決めする。位置決め後、連結部4bの内部に車両側コネクタ用防水ゴム7を嵌合する。
また、スイッチ作動電流供給用端子カプラ4は、モールドカバー2上に固定されるモータ作動電流供給用端子プレート5のスイッチ作動電流供給用端子カプラロック用爪部5aと受溝部4eにより軸方向の位置決めをされる。このとき、固定用足部4dは、モールドカバー2のツバ部2bとともにフレーム9のカシメ部9aにカシメ固定される。
モータ作動電流供給用リード線14の組付け時、モータ作動電流供給用端子プレート5が押圧され、同時にロック爪5aが押圧されることにより、スイッチ作動電流供給用端子カプラ4が二重に固定される。またスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム8の底部8bの肉厚は、スイッチ作動電流供給用端子カプラ4の固定後の該カプラ4とモールドカバー2との隙間12により大となっている。
前記第1実施例の構造によれば、車両側カプラの固定はスイッチ作動電流供給用端子カプラ4のロック部4aにて行なわれる。車両側カプラ側からの浸水は車両側コネクタ用防水ゴム7により防止され、スイッチ作動電流供給用端子3の挿入部側からの浸水はインナ部4c内のスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム8により防止される。スイッチ作動電流供給用端子カプラ4の固定により押し潰された底部8bのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラ4の防振性が確保される。またスイッチ作動電流供給用端子カプラ4の抜け止めは、固定用足部4dのカシメとモータ作動電流供給用端子プレート5のロック爪5aにて行なう。
車両側カプラを取付ける際、スイッチ作動電流供給用端子カプラ4がマグネットスイッチ1のスイッチ作動電流供給用端子3に直接安定に固定されるため、他の固定用補材の必要がなく、挿入性が向上するとともに、スイッチ周りの他の内燃機関部品との干渉を低減でき、スイッチ作動電流供給用端子部の防水性を確保することができる。また、ロック部または防水部がスイッチ作動電流供給用端子カプラ4に一体化してモールドカバー2上に位置決めされるため、ロック性および防水性の向上はもとよりモールドカバー2での搬送および組付が可能なため、スイッチアッセンブリの組立性が大幅に向上する。加えて、スイッチ作動電流供給用端子カプラ4のインナ部4cより上部の形状を変化させることにより、モールドカバー2そのものを変えることなく多種の車両側カプラに対応できるとともに、スイッチ作動電流供給用端子カプラ4を熱可塑性樹脂で形成したことにより、外部からの衝撃に対して割れにくいという優れた効果がある。
次に、本発明の第2実施例によるマグネットスイッチを図11に示す。第2実施例のマグネットスイッチは、第1実施例による車両側コネクタ用防水ゴム7とスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム8に代えて、一体の防水ゴム20を使用した例である。防水ゴム20は、スイッチ作動電流供給用端子3の付根部3aを被覆する突起部20aと連結部4bの内周壁に嵌合する円筒部20bを有する。
この第2実施例においては、車両側カプラ側からの浸水を円筒部20bにより防止し、スイッチ作動電流供給用端子3の挿入部側からの浸水を突起部20aにより防止する。また防水ゴム20が単一であるから部品点数が少ないので組付性が向上される。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のスタータ用マグネットスイッチによれば、スイッチ作動電流供給用端子カプラを樹脂カバーとは別体に形成し、スイッチ作動電流供給用端子カプラの上部の形状を変化させることにより、樹脂カバーそのものを変えることなく多種の車両側カプラに対応できるとともに、スイッチ作動電流供給用端子カプラを別の材料、例えば熱可塑性樹脂で形成することにより、外部からの衝撃に対して割れにくいという効果がある。さらには、スイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により押し潰されたスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラの防振性が確保されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施例によるスタータ用マグネットスイッチのスイッチ作動電流供給用端子カプラ部を示すもので、図4に示すB-B線断面図である。
【図2】
本発明の第1実施例によるスタータ用マグネットスイッチを示す側面図である。
【図3】
本発明の第1実施例によるスタータ用マグネットスイッチを示す正面図である。
【図4】
図3に示す矢印A方向矢視図である。
【図5】
図4に示すC-C線断面図である。
【図6】
スイッチ作動電流供給用端子を示す側面図である。
【図7】
図6に示す矢印E方向矢視図である。
【図8】
図6に示す矢印D方向矢視図である。
【図9】
第1実施例によるスタータモータを示す平面図である。
【図10】
図9に示す矢印F方向矢視図である。
【図11】
本発明の第2実施例によるスタータ用マグネットスイッチのスイッチ作動電流供給用端子カプラ部を示す断面図である。
【符号の説明】
1 マグネットスイッチ本体
2 モールドカバー(樹脂カバー)
3 スイッチ作動電流供給用端子
4 スイッチ作動電流供給用端子カプラ
4b 連結部(円筒部)
7 車両側コネクタ用防水ゴム
8 スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴム
8a スリット穴
 
訂正の要旨 a特許請求の範囲の請求項1に記載される「マグネットスイッチ本体と、前記マグネットスイッチ本体に固定され、スイッチ作動電流供給用端子を有する樹脂カバーと、前記樹脂カバーへ固定可能に該樹脂カバーとは別体に形成され、前記スイッチ作動電流供給用端子に接続可能に車両側カプラを嵌合可能な嵌合部を有するスイッチ作動電流供給用端子カプラと、を備えたことを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。」を「マグネットスイッチ本体と、前記マグネットスイッチ本体に固定され、スイッチ作動電流供給用端子を有する樹脂カバーと、前記樹脂カバーへ固定可能に該樹脂カバーとは別体に形成され、前記スイッチ作動電流供給用端子に接続可能に車両側カプラを嵌合可能な嵌合部を有するスイッチ作動電流供給用端子カプラと、前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムとを備え、この防水ゴムが前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成されたことを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。」と訂正する。
b特許請求の範囲の請求項2に記載される「前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムと、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のスタータ用マグネットスイッチ。」を
「前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムを備え、かつ前記スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムの底部の肉厚は、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定後の該カプラと前記カバーとの隙間より大となっていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ用マグネットスイッチ。」と訂正する。
c発明の詳細な説明中の段落【0005】の「スイッチ作動電流供給用端子カプラとを備えたことを特徴とする。さらには、前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムと、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムとを備えたことを特徴とする。」を「スイッチ作動電流供給用端子カプラと、前記スイッチ作動電流供給用端子の付根部を挿入するスリット穴を有するスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムとを備え、この防水ゴムが前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により、押し潰されるように構成されたことを特徴とする。さらには、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの内部に嵌合される車両側コネクタ用防水ゴムとを備え、かつ前記スイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムの底部の肉厚は、前記スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定後の該カプラと前記カバーとの隙間より大となっていることを特徴とする。」と訂正する。
d発明の詳細な説明中の段落【0006】の「さらには、車両側カプラからの浸水を車両側コネクタ用防水ゴムにより防止し、スイッチ作動電流供給用端子カプラ下部のスイッチ作動電流供給用端子挿入部側からの浸水をスイッチ作動電流供給用端子用防水ゴムにより防止する。」を
「さらには、スイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により押し潰されたスイッチ作動電流供給用防水ゴムのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラの防振性が確保される。」と訂正する。
e発明の詳細な説明中の段落【0016】の「さらには、車両側カプラとスイッチ作動電流供給用端子との電気的接続およびスイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの挿入性が向上するとともに、ロック部および防水部の防水性の向上が図られるという効果がある。」を「さらには、スイッチ作動電流供給用端子の防水が図れることはもちろん、スイッチ作動電流供給用端子カプラの固定により押し潰されたスイッチ作動電流供給用防水ゴムのゴムの反発力によりスイッチ作動電流供給用端子カプラの防振性が確保されるという効果がある。」と訂正する。
異議決定日 2002-06-27 
出願番号 特願平3-193193
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01H)
最終処分 維持  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 和泉 等
石川 伸一
登録日 2001-01-26 
登録番号 特許第3152248号(P3152248)
権利者 株式会社デンソー
発明の名称 スタータ用マグネットスイッチ  
代理人 加藤 大登  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 加藤 大登  
代理人 碓氷 裕彦  

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