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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G09B
管理番号 1065975
異議申立番号 異議1999-72437  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-23 
確定日 2002-09-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第2840062号「建造物情報を有する情報案内装置」の請求項11ないし14に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2840062号の請求項11ないし14に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第2840062号は、平成8年9月27日に特許出願され、平成10年10月16日にその発明について特許権の設定登録がなされたところ、東信雄より請求項11ないし14に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年12月4日に訂正請求がなされ、この訂正請求に対して訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月2日に上記訂正請求についての手続補正書が提出され、ついで再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年7月31日に平成12年12月4日付け訂正請求が取り下げられ再度の訂正請求がなされ、それに対して訂正拒絶理由通知を兼ねた取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年2月5日に平成13年7月31日付け訂正請求が取り下げられ再再度の訂正請求がなされ、この訂正請求に対して訂正拒絶理由通知がなされたが意見書等の提出がなかったものである。
(2)訂正の適否についての判断
平成14年2月5日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の記載を訂正請求書に添付された明細書のとおりに訂正しようとするものである。
上記訂正請求書により訂正された請求項11に係る発明は訂正明細書の請求項11に記載される事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項11】道路に関する情報を有する道路地図のデータを記憶する地図情報記憶手段と、各建築物や施設その他各種建造物毎に形状の座標列と建造物の種別や入居者の名称、電話番号、その分類を含む当該建造物に属する情報とを有する建造物形状地図のデータを記憶する建造物情報記憶手段と、検索する情報の指定に基づき、前記建造物情報記憶手段から指定された建造物に属する前記名称を検索する検索手段と、前記地図情報記憶手段又は建造物情報記憶手段から読み出した情報に基づき地図を描画して出力すると共に、前記検索手段により検索された前記名称のリストを編集して、前記道路地図のデータ又は建造物形状地図のデータと組み合わせて出力し前記名称のリストから名称が選択されるとその電話番号を前記建造物情報記憶手段から読み出し出力する制御手段と、前記制御手段により出力された情報を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする建造物情報を有する情報案内装置。」
これに対して、平成14年4月5日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何の応答もない。そして、上記訂正拒絶理由は妥当なものと認められるので、平成14年2月5日付け訂正請求は認められない。
(3)特許異議の申立てについての判断
ア.本件請求項11乃至14に係る発明
上記のとおり、平成12年12月4日、平成13年7月31日付けの訂正請求は取り下げられ、また、平成14年2月5日付けの訂正請求は認められないので、本件特許の請求項11乃至14に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲第11乃至14に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項11】 道路に関する情報を有する道路地図のデータを記憶する地図情報記憶手段と、各建築物や施設その他各種建造物毎に形状の座標列と建造物の種別や入居者、その分類を含む当該建造物に属する情報とを有する建造物形状地図のデータを記憶する建造物情報記憶手段と、検索する情報の指定に基づき前記建造物情報記憶手段から情報を検索する検索手段と、前記地図情報記憶手段又は建造物情報記憶手段から読み出した情報に基づき地図を描画して出力すると共に、前記検索手段により検索された前記建造物に属する情報を編集して前記道路地図のデータ又は建造物形状地図のデータと組み合わせて出力する制御手段と、前記制御手段により出力された情報を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする建造物情報を有する情報案内装置。
【請求項12】 前記制御手段は、前記表示手段に表示された地図の中心の座標を求めて該中心座標からの距離を計算し前記検索手段の検索範囲を制御することを特徴とする請求項11記載の建造物情報を有する情報案内装置。
【請求項13】 前記建造物に属する情報は、検索する情報として建造物の住所、各入居者の名称、電話番号、分類を有し、前記制御手段は、前記検索手段により検索された情報を編集してリスト形式で出力することを特徴とする請求項11記載の建造物情報を有する情報案内装置。
【請求項14】 道路に関する情報を有する道路地図のデータ、及び各建築物や施設その他各種建造物毎に形状の座標列と建造物の種別や入居者、その分類を含む当該建造物に属する情報とを有する建造物形状地図のデータを記憶し、検索する情報の指定に基づき前記建造物に属する情報を検索すると共に、検索した建造物に属する情報を編集して前記道路地図のデータ又は建造物形状地図のデータとともに出力することを特徴とする建造物情報を有する情報案内装置。」
イ.引用刊行物に記載された発明
特許明細書の請求項11乃至14に係る発明の特許に対して、当審が平成13年11月26日付けで通知した取消理由で引用した刊行物1(特開平6-331379号公報)には、
A「【請求項1】 道路の形状や接続関係、道路に関する属性情報などの地図に関する情報、地名や施設に関する属性情報などの施設等情報のリストが画面表示される表示部と、前記地図に関する情報を記憶する地図情報記憶部と、前記施設等情報を記憶する施設等情報記憶部と、前記地図に関する情報上における当該車両の現在位置を検出する現在位置検出部と、前記表示部に表示中の前記施設等情報リストの中から、所望の項目の選択を行う選択部と、前記施設等情報記憶部に記憶されている情報の中から、前記施設等情報リストとして前記表示部に表示すべき情報を選択するための条件を設定する表示選択条件設定部と、前記表示選択条件設定部にて設定された表示選択条件に基づいて前記施設等情報記憶部から読み出した情報を前記表示部に表示し、その中より前記選択部からの選択信号にて指定された項目を選択して、その内容を前記表示部に表示するように制御する表示制御部とを備えた車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】 所定の領域を設定する領域設定手段を設け、前記表示制御部は、前記施設等情報が前記領域設定手段にて設定された領域内に存在することをその表示選択条件とすることを特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】 前記領域設定手段は、所定の地点もしくは経路から一定の距離範囲を前記領域として設定することを特徴とする請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置。...
【請求項8】 目的地を設定する目的地設定部と、前記現在位置検出部にて検出された当該車両の現在位置から前記目的地までの推奨走行経路を、前記地図情報記憶部に記憶されている地図に関する情報を用いて探索する経路探索部とを設け、前記領域設定手段は、前記経路探索部にて得られた推奨走行経路を基準にして前記領域の設定を行うことを特徴とする請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項9】 前記表示制御部は前記表示選択条件設定部の設定情報に従って、前記施設等情報記憶部に記憶された施設等情報中の施設に関する属性情報の所定の基準値を前記表示選択条件とすることを特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。...
【請求項13】 道路の形状や接続関係、道路に関する属性情報などの地図に関する情報、地名や施設に関する属性情報などの施設等情報のリストが画面表示される表示部と、前記地図に関する情報を記憶する地図情報記憶部と、前記施設等情報を記憶する施設等情報記憶部と、前記地図に関する情報上における当該車両の現在位置を検出する現在位置検出部と、前記表示部に表示中の前記施設等情報リストの中から、所望の項目の選択を行う選択部と、前記施設等情報リストを前記表示部に表示する際に、その施設等情報を所定の順序で配列するためのソート条件を設定するソート条件設定部と、前記施設等情報記憶部から前記表示部に表示すべき情報の読み出しを行い、それを前記ソート条件設定部にて設定されたソート条件に基づいて並べかえて前記表示部に表示し、その中より前記選択部からの選択信号にて指定された項目を選択して、その内容を前記表示部に表示するように制御する表示制御部とを備えた車載用ナビゲーション装置。」(特許請求の範囲)
B「【産業上の利用分野】この発明は車載用ナビゲーション装置に関し、さらに詳細に言えば、ナビゲーション中にドライバーが必要とするさまざまな施設等に関する情報を選択し、提示する車載用ナビゲーション装置に関するものである。」【0001】
C「【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に係る車載用ナビゲーション装置は、施設等情報記憶部に記憶されている地名や施設に関する属性情報などの施設等情報の中から、施設等情報リストとして表示部に表示すべき情報を選択するための条件を設定する表示選択条件設定部と、この表示選択条件設定部によって設定された表示選択条件に基づいて施設等情報記憶部から読み出した情報を表示部にリスト表示し、選択部からの選択信号に従ってその中より所望の情報を選択して、その内容を表示部に表示するように制御する表示制御部を設けたものである。」【0006】
D「また、請求項9に記載の発明に係る車載用ナビゲーション装置は、施設等情報中の施設に関する属性情報の所定の基準値を表示選択条件設定部からの設定情報に従って表示選択条件とする表示制御部を有するものである。」【0014】
E「また、請求項13に記載の発明に係る車載用ナビゲーション装置は、施設等情報リストを表示部に表示する際に、その施設等情報を所定の順序で配列するためのソート条件を設定するソート条件設定部と、施設等情報記憶部から読み出した情報をそのソート条件に従って並べかえて表示部にリスト表示し、選択部からの選択信号に従ってその中より所望の項目を選択して、その内容を表示部に表示するように制御する表示制御部を設けたものである。」【0018】
F「【作用】請求項1に記載の発明における表示制御部は、表示選択条件設定部によって設定された、施設等情報記憶部に記憶されている地名や施設に関する属性情報などの施設等情報の中から、施設等情報リストとして表示部に表示すべき情報を選択するための表示選択条件に基づいて、施設等情報記憶部から表示部に表示すべき情報を読み出して表示部にリスト表示するように制御を行う」【0021】
G「7は地名、および施設の名称・位置座標・大きさ・規模・利用可能時間等の施設に関する属性情報などの施設等情報を記憶し格納している施設等情報記憶部である。8は道路の形状と接続関係を表わすデータ、道路に関する属性情報、例えば、高速道路、国道、県道等の道路種別、路線番号、道路幅員等のデータ、及び現在位置を確認するための目標物となる各種施設を表わす記号、路線番号を表わす記号、交換点名等のデータなど、地図に関する情報を記憶した地図情報記憶部である。」【0037】
H「13は画面に表示された情報の中から、必要な情報を選択したり、指定したりしてゆく際に、画面上の所定の位置が操作された場合に、あらかじめ割り付けられた選択信号を発生する選択部としてのタッチパネルである。14は前記表示選択条件設定部10により設定された表示選択条件に基づいて、前記施設等情報記憶部7内から表示すべき情報を読み出し、読み出した施設等情報を前記ソート条件設定部11にて設定されたソート条件に従ってソートして施設等情報リストを表示し、前記タッチパネルからの選択信号に基づき所望の情報を選択して表示するように制御を行う表示制御部であり、15は例えばこの表示制御部14の内部に配置されて、所定の領域の設定を行う領域設定手段である。16は前記表示制御部14からの表示信号に従って映像の表示を行う表示部であり」【0040】
I「図7は施設等情報リストの表示例を示す説明図、図8は案内情報の表示例を示す説明図である。」【0041】
J「29は施設リストの表示を指示するためのタッチパネル13上の施設キーの位置を示す施設キー表示部である。」【0044】
K「次に、ステップST10では、タッチパネル13からの選択信号による施設リスト表示要求の有無を判定し...“Yes”であればステップST11へ進み、表示制御部14が表示選択条件設定部10の表示選択条件の設定状態を読み出してステップST12に進む。ステップST12では、表示制御部14が、該表示選択条件に基づいて施設等情報記憶部7内に記憶されている施設等情報を読み出す。図6にこの施設等情報記憶部7内に記憶された施設等情報の内容を示す。図において、31は1つの施設に対して、その施設にユニークに付けられる施設等番号、32はホテル、駅、駐車場等のその施設の種別を表わす施設等種別コード、33はその施設の存在する地点の都道府県、市区町村を表わす行政区域コード、34はその施設の存在する地点の位置座標(X,Y)、35はその施設の名称、36はその施設の住所、電話番号、利用時間などの施設の案内情報である。」【0045】
L「表示制御部14が、読み出した施設等情報を、ソートして施設等リストとして表示するための表示信号を発生し、」【0046】
M「ここで、図7にその施設リストの表示例、図8に選択された施設の案内情報の表示例を示す。図において、41は表示された施設リスト、42および43はこの施設リスト41内の施設を選択するためのタッチパネル13上の施設選択キーの位置を示す施設選択キー表示部、44は案内表示を指示するためのタッチパネル13上の案内キーの位置を示す案内キー表示部...46は表示された案内情報である。...図7は、図5に示した地図表示画面を表示中にその施設キー表示部29がタッチされた場合、即ち、タッチパネル13の施設キーが操作された場合に表示され、また、図7の施設リスト表示画面上で施設選択キー表示部42あるいは43のタッチによるタッチパネル13の施設選択キーの操作によって所望の施設を選択した上で、案内キー表示部44をタッチしてタッチパネル13の案内キーを操作した場合に図8に示す案内表示画面が表示される。」【0047】
N「領域設定手段15は現在位置検出部4が演算して検出した現在位置から一定距離(例えば、10km)以内を所定の領域として設定し、表示制御部14はその領域内にある施設等情報のみを施設等情報記憶部7から読み出す。」【0049】
図1、図5、図6、図7、図8、図19と記載され、 上記記載によると、刊行物1には以下の発明が記載されているものと認められる。
「道路の形状や接続関係、道路に関する属性情報、例えば、高速道路、国道、県道等の道路種別、路線番号、道路幅員等のデータ、及び現在位置を確認するための目標物となる各種施設を表わす記号、路線番号を表わす記号、交換点名等のデータなど、地図に関する情報を記憶した地図情報記憶部8と、施設に付けられる施設等番号、ホテル、駅、駐車場等のその施設の種別を表わす施設等種別コード、その施設の存在する地点の都道府県、市区町村を表わす行政区域コード、施設の存在する地点の位置座標(X,Y)、施設の名称、施設の住所、電話番号、利用時間、大きさ、規模などの施設の案内情報等を記憶する施設等情報記憶部7と、表示選択条件設定部10により設定された表示選択条件に基づいて前記施設等情報記憶部7内から表示すべき情報を読み出し、あるいは現在位置検出部4が演算して検出した現在位置から一定距離以内を所定の領域として設定しその領域内にある施設等情報のみを読み出し、施設等情報記憶部から読み出した施設等情報をソート条件設定部11にて設定されたソート条件に従ってソートして施設等情報リストを表示し、その中より選択部からの選択信号にて指定された項目を選択して、その内容を表示部16に表示するように制御する表示制御部14を備えたさまざまな施設等に関する情報を提示する車載用ナビゲーション装置」。
同じく当審が平成13年11月26日付けで通知した取消理由で引用した刊行物2(特開平4-204481号公報)には
a「地図情報を扱うシステムでは、集合住宅の各世帯主名や高層ビルのテナントをなす企業・法人名などの属性データを、...その建物の代表的名称や代表企業名等だけを表示し、残りは表示しないか又は全く別のウインドウに図形とは独立した単純なリストとして出力する」(第3頁左上欄1〜8行)
b「2次元地図とは別に存在する店舗配置図やテナント入居図を第19図や第20図に示すような別ウインドウに表示した」(第3頁右上欄9〜11行)
c「表示画面上での図形やテキストに対応する各種の地図の要素を記憶するための地図データベース(101)と...各個人住居の (住居階数・住居番号・世帯主名・電話番号等)3次元的特性を有する属性データを記憶するための属性データベース(103)」(第4頁左上欄11〜18行)
d「オブジェクト検索・実行部(111)」(第4頁右上欄7行)
e「まず地図データ検索部(104)は、101の地図データベースから該当する地域の地図データを検索し表示用データに変換する。間取りデータ検索部(105)は地図データ検索部(104)で検索した地図データの地図要素と対応する間取りデータを102の間取りデータベースから検索し、その間取りデータは間取りデータ形式変換部(107)により対応する地図要素と完全に重なるような変型処理を加える。属性データ検索部(106)は、検索された地図データや間取りデータと対応関係のある3次元属性データを属性データベース(103)から検索し、属性データ形式変換部(108)によりすでに検索された地図データや間取りデータと対応可能なデータ形式に変換する。そして、画面様式作成部(109)では、上記検索され表示用に用意された地図データと間取りデータ及び属性データとを合成して、CRTなどの表示装置(110)上に表示する。」(第4頁右上欄15行〜左下欄10行)
f「第2図は、この4種類のデータベース(101,102,103,112)の内容を、表示部(110)に表示される地図・図面の表示対象との対応関係をつけて示したものである。まず101の地図データベースには、200で示されるような通常の2次元の地図を表示するのに必要な道路・家枠データや、地名用のテキストデータなどが記憶される。」 (第4頁左下欄17行〜右下欄3行)
g「第2図は、この4種類のデータベース(101,102,103,112)の内容を、表示部(110)に表示される地図・図面の表示対象との対応関係をつけて示したものである。まず101の地図データベースには、200で示されるうな通常の2次元の地図を表示するのに必要な道路・家枠データや、地名用のテキストデータなどが記憶される。」(第4頁左下欄17行〜右下欄3行)
h「まず第1に地図データベース(101)は、第3図に示すような(a)の図形部と(b)のテキスト部の2種類存在し、それぞれデータの格納形式は第3図に示すような可変長の順編成形式とする。第3図(a)の図形部の構造としては、ファイル先頭にはこの図形部全体のファイルサイズとレコード数を記述するヘッダ、そして各レコードには図形を構成する座標の構成点数、図形の種類や描画時の線の色などを指定するための線種、編集時に処理状況を把握するのに必要な図形の始点と終点の状況を示す情報、及び構成点数だけのX座標値とY座標値の繰り返しからなっている。」(第4頁右下欄17行〜第5頁左上欄8行)
i「これによって、関係型データベースの特徴である各属性項目別の条件検索が可能となり、例えば住居構成が3DKで2階に住む居住者名を検索するなどの条件検索が.上記文献3で示される標準的な検索手続き言語であるSQL(Structured Query Language)にて検索可能となる」(第5頁右上欄19行〜左下欄4行)
j「すでに第3図に示したように、地図データの図形部を構成するファイル(LRTOO1)、及びテキスト部を構成するファイル(TRTOO1)には、各居住者の個人家枠と1対1に対応した図形レコードとテキストレコードとが記述されており、」(第6頁左上欄14〜19行)
k「101の地図データベースに、第3図の形式で格納されている地図データの中から、(a)の図形部地図データと(b)のテキスト部地図データとを用いて、110の表示画面上に2次元的な地図として表示する。この表示の例としては、第11図(a)のように神社・交番など各種の建物や道路などの図形の外、それらの代表名称とともに表示されるものである。」(第8頁左上欄4〜11行)
図2、図3、図11、第19図、第20図と記載され、
上記記載によると、刊行物2には以下の発明が記載されているものと認められる。
「表示画面上に神社・交番など各種の建物や道路などの図形の外、それらの代表名称が表示される通常の2次元の地図を表示するのに必要な、ファイル先頭に図形部全体のファイルサイズとレコード数を記述するヘッダ、各レコードに図形を構成する座標の構成点数、図形の種類や描画時の線の色などを指定するための線種、編集時に処理状況を把握するのに必要な図形の始点と終点の状況を示す情報、及び構成点数だけのX座標値とY座標値の繰り返しからなっている道路・居住者の個人家枠等の道路・家枠用図形データ(LRT001)や、地名用のテキストデータ(TRT001)などが記憶される地図データベース(101)と、各個人住居の(住居階数・住居番号・世帯主名・電話番号等)3次元的特性を有する属性データを記憶するための属性データベース(103)と、検索された地図データや間取りデータと対応関係のある3次元属性データを属性データベース(103)から検索する属性データ検索部(106)と、検索された地図データや間取りデータと対応可能なデータ形式に変換する属性データ形式変換部(108)と、画面様式作成部(109)で合成された地図データと間取りデータ及び属性データとを、CRTなどの表示装置(110)上に表示する表示手段とを備えた地図情報を扱うシステム」。
ウ.対比及び判断
1.本件請求項11に係る発明(前者11)と各刊行物に記載された発明との対比及び判断
前者11と刊行物1に記載された発明とを対比すると、
刊行物1に記載された発明の「地図に関する情報を記憶した地図情報記憶部8」は道路の形状や接続関係、道路に関する属性情報、例えば、高速道路、国道、県道等の道路種別、路線番号、道路幅員等のデータ、...各種施設を表わす記号、路線番号を表わす記号、交換点名等のデータなど、地図に関する情報を記憶しているので、「道路に関する情報を有する道路地図のデータを記憶している」といえ、
刊行物1に記載された発明の「施設等情報記憶部7」はホテル、駅、駐車場等のその施設の種別を表わす施設等種別コード、...施設の存在する地点の位置座標(X,Y)、施設の名称、施設の住所、電話番号、利用可能時間、大きさ、規模などの施設の案内情報等を記憶し格納しており、施設等種別コードは建造物の種別や分類に、施設等情報は建造物に属する情報にそれぞれ相当するから、「各建築物や施設その他各種建造物毎に建造物の種別、その分類を含む当該建造物に属する情報を記憶している」といえ、
刊行物1に記載された発明の「表示部16」は表示制御部14により出力された情報を表示している(図1)から、
刊行物1に記載された発明の「地図に関する情報を記憶した地図情報記憶部8」、「施設等情報記憶部7」、「設定された表示選択条件に基づいて、前記施設等情報記憶部7内から表示すべき情報を読み出し」、「表示選択条件設定部10」、「施設等情報記憶部から読み出した施設等情報を前記ソート件設定部11にて設定されたソート条件に従ってソートして施設等情報リストを表示し」、「表示制御部14」、「表示部16」
が、それぞれ
前者11の「地図情報記憶手段」、「建造物情報記憶手段」、「検索する情報の指定に基づき、建造物情報記憶手段から情報を検索する」、「検索手段」、「検索手段により検索された前記建造物に属する情報を編集して出力する」、「制御手段」、「表示手段」
に相当するものと認められ、
刊行物1に記載された発明の「施設等に関する情報を提示する車載用ナビゲーション装置」も建造物情報に相当する施設等に関する情報を有しており、車載用ナビゲーション装置は「情報案内装置」の一種であるので、
両者は、「道路に関する情報を有する道路地図のデータを記憶する地図情報記憶手段と、各建築物や施設その他各種建造物毎に建造物の種別、その分類を含む当該建造物に属する情報を記憶する建造物情報記憶手段と、検索する情報の指定に基づき前記建造物情報記憶手段から情報を検索する検索手段と、前記検索手段により検索された前記建造物に属する情報を編集して出力する制御手段と、前記制御手段により出力された情報を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする建造物情報を有する情報案内装置」で一致し
イ 建造物に属する情報が、前者11では、「各建築物や施設その他各種建造物毎に形状の座標列と入居者、その分類を含み」、建造物情報記憶手段に記憶されるのが建造物形状地図のデータであるのに対し、上記刊行物1には、形状の座標列と入居者、その分類について記載がない点(相違点1)、
ロ 制御手段が、前者11では地図情報記憶手段又は建造物情報記憶手段から読み出した情報に基づき地図を描画して出力すると共に、検索手段により検索された建造物に属する情報を編集して道路地図のデータ又は建造物形状地図のデータと組み合わせて出力しているのに対し、上記刊行物1には、検索された建造物に属する情報と道路地図のデータ又は建造物形状地図のデータと切り替えて出力しており、建造物に属する情報を編集したものと地図のデータを組み合わせて出力する点に関する記載がない点(相違点2)で相違する。
相違点1に対して
刊行物2には、情報記憶手段(刊行物2記載の発明のデータベースが相当)に「各個人住居の(住居階数・住居番号・世帯主名・電話番号等)3次元的特性を有する属性データ」あるいは「集合住宅の各世帯主名や高層ビルのテナントをなす企業・法人名等の属性データ」(前記a)、及び「構成点数だけのX座標値とY座標値の繰り返しからなっている道路・居住者の個人家枠等の道路・家枠用図形データ」を記憶する点が記載されており、これらの世帯主名、家枠用図形データはそれぞれ、前者11の「入居者」、「建造物毎の形状の座標列」に相当するので、刊行物2には前記相違点1にかかる構成が記載されており、刊行物1記載の発明の建造物に属する情報として上記建造物毎の形状の座標列や入居者、その分類を含ませることが当業者にとって格別困難であるとはいえない。
相違点2に対して
上記刊行物2には、「画面様式作成部(109)で合成された地図データと間取りデータ及び属性データとを、CRTなどの表示装置(110)上に表示する」ことが記載されており、刊行物2には前記相違点2にかかる建造物に属する情報を編集したものと地図のデータを組み合わせて出力する構成が開示されているから、上記刊行物1の「建造物に属する情報を編集したもの」と「道路地図のデータ又は建造物形状地図のデータ」の出力を画面を切り替えて表示していたものに代え、前者11のように1画面に表示すべく両者を組み合わせて出力することは当業者が容易になしえることである。
また、前者11はその全体の構成によっても刊行物1、2記載の発明から予測できない効果が生じたとは認められない。
したがって、前者11は、刊行物1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2.本件請求項12に係る発明(前者12)と各刊行物に記載された発明との対比及び判断
前者12と前者11との相違点は、
制御手段が、表示手段に表示された地図の中心の座標を求めて該中心座標からの距離を計算し検索手段の検索範囲を制御する点のみである。
刊行物1には「領域設定手段は、所定の地点もしくは経路から一定の距離範囲を前記領域として設定する」(前記A【請求項3】)、「領域設定手段15は現在位置検出部4が演算して検出した現在位置から一定距離(例えば、10km)以内を所定の領域として設定し、表示制御部14はその領域内にある施設等情報のみを施設等情報記憶部7から読み出す。」(前記N)ことが記載されているから、前者12が検索手段の検索範囲を制御するにあたり、表示手段に表示された地図の中心の座標を求めて該中心座標からの距離を計算した点は、刊行物1にも施設等情報記憶部に位置座標が記憶されているので、当業者が格別困難なくなし得たものと認める。
そして、前者12はその全体の構成によっても刊行物1、2記載の発明から予測できない効果が生じたとは認められない。
したがって、前者12は、刊行物1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3.本件請求項13に係る発明(前者13)と各刊行物に記載された発明との対比及び判断
前者13と前者11との相違点は、
イ.建造物に属する情報が、検索する情報として、建造物の住所、各入居者の名称、電話番号、分類を有する点(前者11との相違点1)
ロ.制御手段が検索手段により検索された情報を編集してリスト形式で出力する点のみである。(前者11との相違点2)
刊行物1には、施設等情報記憶部7が「図6にこの施設等情報記憶部7内に記憶された施設等情報の内容を示す。図において、31は1つの施設に対して、その施設にユニークに付けられる施設等番号、32はホテル、駅、駐車場等のその施設の種別を表わす施設等種別コード、33はその施設の存在する地点の都道府県、市区町村を表わす行政区域コード、34はその施設の存在する地点の位置座標(X,Y)、35はその施設の名称、36はその施設の住所、電話番号、利用時間などの施設の案内情報である。」(前記K)ことが、刊行物2には、前者13の建造物に属する情報に相当する属性データベース(103)が「各個人住居の (住居階数・住居番号・世帯主名・電話番号等)3次元的特性を有する属性データを記憶する」(前記c)ことが記載され、前者11との相違点1に係る構成である建造物に属する情報が、建造物の住所、各入居者の名称、電話番号、分類を有する点が記載されている。
また、刊行物1には、「表示制御部14が、読み出した施設等情報を、ソートして施設等リストとして表示するための表示信号を発生し、」(前記L、第19図、第12図)と記載され、前者11との相違点2に係る構成である検索された情報を編集してリスト形式で出力する点も記載されている。
結局上記刊行物1,2には、前者13と前者11の相違点も全て記載されている。
そして、前者13はその全体の構成によっても刊行物1、2記載の発明から予測できない効果が生じたとは認められない。
したがって、前者13は、刊行物1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.本件請求項14に係る発明(前者14)と各刊行物に記載された発明との対比及び判断
前者14と刊行物1に記載された発明とを対比すると、
刊行物1に記載された「道路の形状や接続関係、道路に関する属性情報、例えば、高速道路、国道、県道等の道路種別、路線番号、道路幅員等のデータ、及び現在位置を確認するための目標物となる各種施設を表わす記号、路線番号を表わす記号、交換点名等のデータなど、地図に関する情報」、「施設に付けられる施設等番号、ホテル、駅、駐車場等のその施設の種別を表わす施設等種別コードなどの施設の案内情報」、「指定された項目を選択」、「情報を読み出し」、「施設等情報記憶部7内から表示すべき情報を読み出し、施設等情報記憶部から読み出した施設等情報をソート条件設定部11にて設定されたソート条件に従ってソートして施設等情報リストを表示し」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者14の「道路に関する情報を有する道路地図のデータ」、「各建築物や施設その他各種建造物毎に建造物の種別、その分類を含む当該建造物に属する情報」、「検索する情報の指定」、「情報を検索する」、「検索した建造物に属する情報を編集して出力する」に相当するものと認められ、
刊行物1の「施設等に関する情報を提示する車載用ナビゲーション装置」も建造物情報に相当する施設等に関する情報を有しており、車載用ナビゲーション装置は情報案内装置の一種であるので、
両者は、「道路に関する情報を有する道路地図のデータ、及び各建築物や施設その他各種建造物毎に建造物の種別、その分類を含む当該建造物に属する情報を有するデータを記憶し、検索する情報の指定に基づき前記建造物に属する情報を検索すると共に、検索した建造物に属する情報を編集して出力する建造物情報を有する情報案内装置」で一致し
イ 建造物に属する情報が、前者14では、「各建築物や施設その他各種建造物毎に形状の座標列と入居者、その分類を含み」、記憶されるのが建造物形状地図のデータであるのに対し、上記刊行物1には、形状の座標列と入居者、その分類について記載がない点(相違点1)、
ロ 前者14では検索した建造物に属する情報を編集して道路地図のデータ又は建造物形状地図のデータとともに出力しているのに対し、上記刊行物1には、道路地図のデータ又は建造物形状地図のデータと切り替えて出力しており、建造物に属する情報を編集したものと地図のデータをともに出力する点に関する記載がない点(相違点2)で相違する。
相違点1に対して
上記(3)ウ.の1.本件請求項11に係る発明(前者11)と各刊行物に記載された発明との対比及び判断 相違点1に対して で検討した理由により刊行物1の建造物に属する情報に建造物毎の形状の座標列や入居者、その分類を含ませることは当業者にとって格別困難ではない。
相違点2に対して
上記刊行物2には、「検索された地図データや間取りデータと対応可能なデータ形式に変換する属性データ形式変換部(108)と、画面様式作成部(109)で合成された地図データと間取りデータ及び属性データとを、CRTなどの表示装置(110)上に表示する」点が記載されており、刊行物2には前記相違点2にかかる検索した建造物に属する情報を編集して地図のデータとともに出力する構成が記載されている。そして、上記刊行物1の建造物に属する情報を編集したものと地図のデータを画面を切り替えて出力していたものに代えて刊行物2記載の構成を採用し、前者14のようにともに出力するようにすることは当業者が容易になしえることである。
また、前者14はその全体の構成によっても刊行物1、2記載の発明から予測できない効果が生じたとは認められない。
したがって、前者14は、刊行物1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項11乃至14に係る発明は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることが出来たものであるから、本件の請求項11乃至14に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件の請求項11乃至14に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-07-29 
出願番号 特願平8-255918
審決分類 P 1 652・ 121- ZB (G09B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 原 光明深田 高義  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 藤井 靖子
白樫 泰子
登録日 1998-10-16 
登録番号 特許第2840062号(P2840062)
権利者 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
発明の名称 建造物情報を有する情報案内装置  
代理人 内田 亘彦  
代理人 菅井 英雄  
代理人 韮澤 弘  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 米澤 明  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 青木 健二  
代理人 白井 博樹  

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