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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
管理番号 1066009
異議申立番号 異議2002-71035  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-04-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-04-22 
確定日 2002-10-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3221565号「クロム酸化物含有物質の処理方法およびそれを用いた路盤材、土木埋立用材、仮設材」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3221565号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.本件の経緯
本件特許第3221565号は、平成9年9月30日の出願であって、平成13年7月28日(公報発行平成13年8月17日)に設定登録され、平成14年4月22日に新日本製鐵株式会社から特許異議の申立を受けたものである。

2.特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人は、下記甲第1ないし13号証を提出し、本件請求項1ないし5に係る発明は、甲第1ないし4号証に記載された発明であるか、甲第1ないし13号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号若しくは同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
甲第1号証の1:3-1 電気炉スラグの実用化「土木技術事務所年報(平成4年度)」、75〜87頁
甲第1号証の2:甲第1号証の1が、1993年9月13日より、一般の閲覧に供されていることを証する「証明願」
甲第2号証:「骨材資源」21[84]、平成2年3月20日、骨材資源学会発行、207〜214頁
甲第3号証:「鉄と鋼」、74[4]、昭和63年4月1日、日本鉄鋼協会発行、672〜679頁
甲第4号証:「鉄鋼のスラグ」昭和60年9月改訂、鉄鋼スラグ協会発行、12〜13頁
甲第5号証の1:「WASTE MANAGEMENT」Vol.14,No.1,1994,P.3〜11
甲第5号証の2:甲第5号証の1が1994年5月10日より一般の供覧に供されていることを証する「証明願」
甲第6号証:「鉄鋼スラグの性質と利用」、昭和57年9月20日、日本鉄鋼協会発行、8〜14頁
甲第7号証:「ウォーレス・化学-電子論および構造論よりみた」3版、昭和49年3月15日、(株)廣川書店発行、168〜179頁
甲第8号証:特開平8-279817号公報
甲第9号証:「ウォーレス・化学-電子論および構造論よりみた」3版、昭和49年3月15日、(株)廣川書店発行、220頁
甲第10号証:「鉄と鋼」、74[4]、昭和63年4月1日、日本鉄鋼協会発行、632〜639頁
甲第11号証:特開昭56-24084号公報
甲第12号証:「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」、昭和49年2月17日、環境庁告示第13号
甲第13号証:「安全工学」、30[1]、平成3年3月15日、安全工学協会発行、33〜39頁

3.特許異議申立人の主張についての検討
3-1.本件発明の認定
本件発明は、明細書の請求項1ないし5に記載された事項により特定された次のとおりのものである(以下「本件発明1」ないし「本件発明5」という)。
「【請求項1】還元処理後のクロム酸化物含有物質100 重量部に対して硫黄含有スラグを0.1〜90重量部添加、混合することを特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法。
【請求項2】還元処理後のクロム酸化物含有物質100 重量部に対して硫黄含有スラグを0.1〜90重量部添加、混合した後、得られた混合物を、路盤材、土木埋立用材および仮設材の少なくともいずれかに用いることを特徴とするクロム酸化物含有物質の利用方法。
【請求項3】還元処理後のクロム酸化物含有物質100 重量部に対して硫黄含有スラグが0.1〜90重量部添加、混合されてなることを特徴とする路盤材。
【請求項4】還元処理後のクロム酸化物含有物質100 重量部に対して硫黄含有スラグが0.1〜90重量部添加、混合されてなることを特徴とする土木埋立用材。
【請求項5】還元処理後のクロム酸化物含有物質100 重量部に対して硫黄含有スラグが0.1〜90重量部添加、混合されてなることを特徴とする仮設材。」

3-2.甲各号証の記載事項
ア.甲第1号証の1「土木技術事務所年報(平成4年度)(1993年9月13日より、特殊法人日本科学技術情報センターにて閲覧可能(甲第1号証の2、参照))、75〜87頁」
ア-1.「5)平成4年調査 平成元年調査では電気炉スラグは品質変動が大きなものであることが明らかとなったが、それを克服するため、電気炉スラグに高炉スラグ微粉末を添加するようになった。」(79頁右欄5〜9行)
ア-2.「表-5 A社とB社の電気炉スラグ路盤材の構成」には、A社の構成が、酸化スラグ:85%、還元スラグ:15%、高炉スラグ微粉末:〜1%であること、B社の構成が、酸化スラグ:70〜80%、還元スラグ:20〜30%、高炉スラグ微粉末:1〜2%。であることが表示されている。(79頁)
ア-3.「表-10 電気炉スラグの変せん」には、前期:49年調査、60年調査:酸化スラグ100%、中期:62年調査、平成元年調査:酸化スラグ80〜90%、還元スラグ10〜20%、後期:平成4年調査:酸化スラグ80〜90%、還元スラグ10〜19%、高炉スラグ粉末1〜2%であることが表示されている。(84頁)
ア-4.「前述のように、電気炉スラグ調査は20年続けられたものであるが、これを表-10のように分類できる。すなわち、前期は酸化スラグ100%、中期は酸化スラグ80〜90%に還元スラグ10〜20%をブレンドし、更に後期はそれに高炉スラグ微粉末1〜2%を添加したものである。」(85頁左欄1行〜右欄3行)
ア-5.「表-12 各社の高炉スラグの化学成分」には、各社の高炉スラグ中のS分が、0.8〜1.03であることが示されている。(86頁)
イ.甲第2号証「骨材資源Vol.21NO.84(平成2年3月20日、骨材資源工学会、発行)、207〜214頁」
イ-1.「第1表 酸化スラグの化学組成成分」には、各社の酸化スラグ中のCr2O3含有量が1.27〜4.92%であることが表示されている。(211頁)
イ-2.「第2表 還元スラグの化学組成成分」には、各社の還元スラグ中のCr2O3含有量が0〜1.57%であることが表示されている。(212頁)
ウ.甲第3号証「鉄と鋼第74年(1988)第4号(昭和63年4月1日、社団法人日本鉄鋼協会、発行)、672〜679頁」
ウ-1.「近年、ステンレス鋼溶製コストの抜本的な改善を目的として、溶融還元によるクロム鉱石の直接利用技術が注目されている。これは、上底吹き転炉精錬においてクロム鉱石、フラックス及び炭材を連続的に供給しステンレス粗溶鋼を製造しようとするもので、」(672頁左欄下から9〜5行)
ウ-2.「2・2実炉試験方法 実炉試験は、八幡製鉄所第一製鋼工場の175t上吹き転炉(LD-OB)を用いて行なった。・・・。その後、一定の速度でクロム鉱石(…)、炭材を半連続的に投入し(溶融還元期)、さらに、鉱石投入終了後もしばらくは炭材の供給と送酸とを続けた(仕上げ還元期)。」(673頁右欄下から5行〜674頁左欄4行)
ウ-3.「3・2実炉試験結果 Fig.7に、溶融還元法により11%Crステンレス鋼を製造した試験結果の-例を示すが、…計算値である。これからわかるように、スラグ中の(T・Cr)は溶融還元期終了時で3%、仕上げ還元終了時には1%以下に抑制されている。」(675頁左欄下から3行〜右欄1行)
エ.甲第4号証「鉄鋼のスラグ(昭和60年9月改訂、鉄鋼スラグ協会、編集発行)、12〜13頁」
エ-1.「※5電気炉における酸化期と還元期 1 酸化期 溶鋼中に酸素を吹き込み、…、スラグを形成して溶鋼より分離させる。不要成分の溶鋼への復元を防止するため生成されたスラグは還元期精錬に先立って排出される。2 還元期 酸化期に強制的に吹き込まれた過剰な酸素の除去(脱酸)と、脱硫とが目的である。酸化スラグを排出後、還元剤としてアルミニウム、コークス粉等を散布し、生石灰などのフラックスを投入する。」(12頁)
エ-2.「電気炉の精錬工程」には、「還元期」に還元剤やフラックスが添加され、「出鋼」後に「還元スラグ」が得られることが記載されている。(13頁)
オ.甲第5号証の1「WASTE MANAGEMENT Volume14,Number1,1994(1994年5月10日より、特殊法人日本科学技術情報センターにて閲覧可能(甲第5号証の2、参照))、3〜11頁」
オ-1.「通常のポルトランドセメント(OPC)、高アルミナセメント(HAC)、及び、微粉水砕ガラス質高炉スラグ(GGBFS)を、素地形成に用いた。表1に、これら材料の化学分析値を示す。」(4頁左欄下から2行〜右欄3行)
オ-2.「OPC円柱は、水と固体の比を0.50とし、OPC-GGBFS混合円柱の比は、0.36とした。規準サンプルは蒸留水で準備し、他の円柱サンプルには、K2CrO4で5000ppmのCr(VI)を含む水、又は、Cr(NO3)3・9H2Oで5000ppmのCr(III)を含む水を添加した。」(4頁右欄7〜13行)
オ-3.4頁表1中“Ground,Granulated Blast Furnace Slag(GGBFS)”について、「“sulphide(S2-)”として、約1%のSを含んでいる。」との記載がある。(4頁右欄)
オ-4.「10%OPCで活性化され、主に高炉スラグから成る素地は、溶解性Crのレベルを低減する顕著な能力を示した。この効果は、もともとCrを含有するサンプルとCrを含めたサンプルの両方にみられた。更に、この効果は、Cr(III)とCr(VI)においてもみられた。」(5頁右欄下から2行〜6頁左欄5行)
オ-5.「他の化学的現象は、Cr(VI)のCr(III)への還元である。これは、電気化学的に活性なイオン種、例えば、S2O32-の存在が、Cr(VI)を難溶解性のCr(III)へ還元して、スラグセメント素地において酸化還元電位が低下する結果として生じる。チオ硫酸イオン(S2O32-)は、スラグ中に存在するS2-の酸化により生じ、イオンクロマトグラフイで定量できる。」(6頁右欄8〜16行)
オ-6.7頁表5には、「D.Sample prepared with mix water spiked with 5000ppm Cr(VI)」において“10%OPC/90%BFS”は、Cr6+の欄が「-」と表示されている。(7頁)
カ.甲第6号証「鉄鋼スラグの性質と利用(昭和57年9月20日、社団法人日本鉄鋼協会、発行)、8〜14頁」
カ-1.「(1)スラグ中の硫黄の存在状態 徐冷した高炉スラグ中の硫黄は、大部分CaSとして存在するが、スラグ再利用の立場からは、このCaSの安定性が問題とされている。」(8頁下から6〜2行)
キ.甲第7号証「ウォーレス・化学-電子論および構造論よりみた(昭和49年3月15日、3版、株式会社廣川書店、発行)、168〜179頁」
キ-1.「酸素とイオウは電気陰性度が低い元素、たとえばアルカリ、アルカリ士類元素と結合するとき、イオン結合によって結合する。
Ca2+ O2- 2Na+ S2-この場合、酸素(またはイオウ)じは比較的安定なオクテット構造をとる。」(172頁下から8〜4行)
(b)「酸素はこの族のほかの元素よりもイオウと共通性がある。両元素とも電気的陽性の強い元素とイオン性の化合物、たとえばCa2+O2-、Ca2+S2-を生じる。」(178頁下から8〜7行)
ク.甲第8号証「特開平6-279817号公報」
ク-1.「製鋼製錬工程で排出されカルシウム化合物として硫黄を含む硫黄含有スラグを水中浸漬、散水等によってエージングする際に抽出される水溶液であり、トータルS濃度:100〜2000mg/l及びチオ硫酸イオン濃度:(0.90〜1.75)×トータルS濃度に調整され、酸化性イオンを含有する液に対する還元剤及び/又は中和剤として使用される硫黄含有水溶液」(請求項1)
ク-2.「ステンレス鋼等の合金鋼を製造・加工する工程では、クロム酸イオン等の酸化性イオンを含む廃液が発生する。…。本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、硫黄含有スラグからえられた水溶液を廃液処理に組み合せることにより、安価な廃液処理を可能にすると共に、スラグ自体も短期間でエージングすることを目的とする。」(2頁2欄9〜18行)
ク-3.「すなわち、還元率99.9%でクロム酸イオンが三価のクロムイオンCr3+に還元された。」(5頁8欄10〜12行)
ケ.甲第9号証「ウオーレス・化学-電子論および構造論よりみた(昭和49年3月15日、3版、株式会社廣川書店、発行)、220頁」
ケ-1.「クロムの酸化状態は普通+2、+3、+6である。…。+3の酸化状態は最も安定である。」(220頁2〜3行)
コ.甲第10号証「鉄と鋼第74年(1988)第4号(昭和63年4月1日、社団法人日本鉄鋼協会、発行)、632〜639頁」
コ-1.「ステンレス鋼の装入原料となるフェロクロムは現在、電気炉を用いて製造されているが、近年電気エネルギーを用いない新製造法として溶融還元によるフェロクロムやステンレス粗鋼の溶製が試みられている。」(632頁左欄1〜4行)
コ-2.「Fig.8にCaOとSiO2のモル分率の比で定義した塩基度(xCaO/xSiO2)とCrの6価/3価の比の関係を示す。」(636頁右欄4〜6行)
サ.甲第11号証「特開昭56-24084号公報」
サ-1.「製鋼ダストに、可溶性硫化物および2価の鉄イオンを含む酸液と必要に応じて水を添加混練せしめ、該製鋼ダスト中に含まれる有害成分を無害化することを特徴とする製鋼ダストの無害化処理法。」(特許請求の範囲(1))
サ-2.「かかる製鋼ダストには有害金属が含まれる場合があり、そのうち産業廃棄物の処理に関する法令で定められている溶出試験を行なうと、6価クロム、カドミウム、鉛などが溶出することがあるため、産業廃棄物としての規制の対象となっている。」(1頁右下欄1〜6行)
サ-3.「第1表中「溶出量」に係る注(※:それぞれの金属成分の溶出量は、環境庁告示第13号(昭52.3.14改正・同第4号)にしたがう溶出試験によって求めたものである。)」(3頁左下欄下から3〜末行)
シ.甲第12号証「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年2月17日、環境庁告示第13号)」
シ-1.「溶媒(純水に水酸化ナトリウム又は塩酸を加え、水素イオン濃度指数が…以上…以下となるようにしたもの)」(1801頁、中段と下段)
ス.甲第13号証「安全工学Vol.30 NO.1(1991)、(1991年(平成3年)2月15日、安全工学協会、発行)、33〜39頁」
ス-1.「道路用については、製鋼スラグ単味および高炉スラグとの複合化を認められたこともあり、漸増している。セメント用もまたクリンカの鉄原量として漸増している。仮設道路、地盤改良材などの土木用は、本来需要がスポット的であり、年度によって異なる。」(36頁左欄1〜5行)
ス-2.「道路用(路盤材)」(36頁、図1中「製鋼スラグの用途欄」)
ス-3.「スラグは古くから製鉄所建設の際の土地造成その他、多種多様の土木工事に用いられてきた。」(38頁右欄下から2〜末行)

3-3.対比・判断
(1) 本件発明1について
記載ア-1ないし記載ア-4によれば、甲第1号証には、路盤材として、昭和60年ぐらいまでは電気炉スラグのうちの酸化スラグだけが使用されていたが、平成4年調査時には、酸化スラグ80〜90%に対し、還元スラグ10〜19%、高炉スラグ粉末1〜2%が混合されて使用されていることが開示され、記載ア-5によれば、高炉スラグ中のS分が、0.8〜1.03であることが示されているといえる。
ここで、上記路盤材のうち「高炉スラグ粉末」は本件発明1における「硫黄含有スラグ」に相当するが、該高炉スラグが添加・混合される酸化スラグないし還元スラグがクロム含有物質であること、及び還元処理された物質であることは、記載されていない。
異議申立人は、甲第2号証の記載イ-1及び記載イ-2からみて、電気炉の還元スラグは、酸化スラグ中の酸化クロムに比べ少量であるにしても、無視できないほどの量含有し、甲第4号証の記載エ-1及び記載エ-2から、還元雰囲気下で処理された後排出された「クロム酸化物含有物質」であるから、本件発明1でいう「還元処理後のクロム酸化物含有物質」であると主張する(異議申立書第14頁)。
しかしながら、記載ア-1に見られるように、電気炉スラグはそもそも品質変動が大きいものであり、甲第2号証の第2表(記載イ-2)に示される還元スラグの化学組成成分をみても、酸化クロムの組成が0のものもあり、電気炉還元スラグのすべてに酸化クロムが含まれていることを示しておらず、甲第4号証には、電気炉還元スラグが還元剤を投入して行う還元精錬後に得られるスラグであることが示されているのみであり、甲第2号証及び甲第4号証の記載をもって、甲第1号証記載の「電気炉還元スラグ」が、本件発明1でいう「クロム酸化物含有物質」とすることはできない。
また、甲第3号証には、上底吹き転炉に、クロム鉱石、フラックス及び炭材を半連続的に供給した実炉試験で、クロム酸化物を含有する還元スラグが生成したことが記載されているが、甲第1号証記載の技術は、その表題のとおり「電気炉スラグの路盤材の実用化」であるから、「上底吹き転炉還元スラグ」が「電気炉還元スラグ」と代替可能なものということはできない。
さらに、甲第5号証には、高炉スラグ中に含まれるチオ硫酸イオン(S2O32-)が、Cr(VI)を難溶性のCr(III)に還元することが、甲第6号証には、高炉スラグ中の硫黄の大部分が“CaS”として存在することが、甲第7号証には、徐冷した高炉スラグにおいて硫黄の大部分が“S2-”の形態で存在していることが、甲第8号証には、硫黄含有スラグを水中浸漬、散水等によってエージングする際に抽出される硫黄含有水溶液により、クロム酸イオン等を含む廃液を処理し、廃液中のクロム酸イオンを三価のクロムイオンに還元することが、甲第9号証には、クロムの酸化状態は+3が最も安定であることが、甲第10号証には、ステンレス鋼の装入原料となるフェロクロムは、現在電気炉を用いて製造されているが、近年溶融還元によるフェロクロムやステンレス粗鋼の溶製が試みられていることが、甲第11号証には、6価クロム等の有害物質を含む製鋼ダストを、可溶性硫化物等を含む酸液で処理し無害化することが、甲第12号証には環境庁が定めた産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法が、甲第13号証には、転炉・電気炉スラグ等の鉄鋼スラグが、道路用(路盤材)セメント用、仮設道路、地盤改良剤等の土木用、土地造成などの土木工事に用いられることが、それぞれ記載されているが、本件発明1の構成を示唆するものではない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明といえないばかりか、甲第1号証ないし甲第13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(2) 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の方法で得られた混合物を、路盤材、土木埋立用材および仮設材の少なくともいずれかに用いることを特徴とするクロム酸化物含有物質の利用方法に関する発明であるから、本件発明1で検討したのと同じ理由で、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明といえないばかりか、甲第1号証ないし甲第13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3) 本件発明3ないし5は、実質的に本件発明1の方法で得られた混合物から成る路盤材、土木埋立用材ないし仮設材に関する発明であるから、本件発明1で検討したのと同じ理由で、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明といえないばかりか、甲第1号証ないし甲第13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

4.結び
以上のとおりであるから、本件発明1ないし5に係る特許は、特許異議申立の理由および証拠によっては取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
 
異議決定日 2002-09-18 
出願番号 特願平9-266535
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C04B)
P 1 651・ 121- Y (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 仁志  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 野田 直人
岡田 和加子
登録日 2001-08-17 
登録番号 特許第3221565号(P3221565)
権利者 川崎製鉄株式会社
発明の名称 クロム酸化物含有物質の処理方法およびそれを用いた路盤材、土木埋立用材、仮設材  
代理人 石田 敬  
代理人 小林 英一  
代理人 西山 雅也  
代理人 亀松 宏  
代理人 鶴田 準一  

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