ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:2 H01S |
---|---|
管理番号 | 1066746 |
審判番号 | 補正2002-50062 |
総通号数 | 36 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-10-18 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-11 |
確定日 | 2002-10-21 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第 77792号「導波路付半導体レーザ」において、平成14年3月6日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成5年4月5日に出願したものであって、審判請求時の平成14年3月6日付けで手続補正書が提出されたところ、前置審査において平成14年6月11日付けでその補正について補正の却下の決定がなされたものである。 なお、平成13年5月15日付け手続補正書は、平成13年9月18日付けで補正の却下の決定がなされ確定している。 2.原決定の理由 本件補正の却下の決定の理由は、次のとおりである。 『補正後の明細書の発明の詳細な説明【0042】について、「同時にレーザの低閾値化ができる」と補正された。該補正内容は、補正後の明細書の実施例に関するものではなく、出願当初明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例1(以下『補正前の実施例1』とよぶ。なお、補正前の実施例1は本補正により参考例とされた。)についての記載すなわち段落【0023】-【0024】、「本実施例の半導体レーザと従来の半導体レーザについて実際の特性について調べたところ、波長1.3μm帯の半導体レーザについては、図11に示す従来の半導体レーザでは、発振閾値15mA、電流50mAにおいて、導波路2から光出力0.3Wが得られたのに対し、本実施例においては、分岐導波路5からの取り出し光量を増加するために分岐導波路5への分岐比を70%としたとき、同一基板上で発振閾値20mA、電流50mAにおいて、導波路5からの光出力1mWが得られた。このように、共振器内のフィードバック効率が非対称合分岐構造の導入によって、発振閾値の僅かな上昇がみられたが、分岐導波路5から取り出せる光出力は大きく増大していることが判る。」に基づくものであることは、明らかである。 しかし、上記「本実施例の・・・が判る。」の記載は補正前の実施例1についての記載であって、補正前の実施例1以外については従来の半導体レーザとの特性比較について一切記載されていないし、また補正前の実施例1における従来の半導体レーザとの特性比較がそっくりそのまま補正前の実施例1以外についても当てはまることも、記載されていない。 したがって、補正後の実施例についての上記「同時にレーザの低閾値化ができる」の記載は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載されておらず、また、同明細書及び図面の記載からみて自明のこととも認められない。 したがって、この補正は、出願当初の明細書に記載された「発明の構成に関する技術的事項」が実質的に変更されたものであるから、明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法第53条第1項の規定により、結論の通り決定する。』 3.当審の判断 願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「当初明細書」という。)には、補正前の実施例1,2を説明する図1,2に関連して、 「【0025】〔実施例2〕本発明の実施例2を図2に示す。本実施例は、実施例1における導波路2の図中左側部分を活性層1’に置換したものであり、その他の構成は、実施例1と同様である。【0026】本実施例は、実施例1に比較して、活性層領域が長くなるため、増幅領域が増大し、発振閾値が低減する効果がある。・・・尚、活性層1の端面7に金属又は誘電体多層膜からなる高反射膜を設けることにより、更に、レーザの閾値低減を行うことができる。」との記載があり、 また補正前の実施例4,5を説明する図4,5に関連して、 「【0032】〔実施例5〕本発明の実施例5を図5に示す。本実施例は、図4に示す実施例4において、導波路2の一部を、活性層1’で置換したものであり、その他の構成は実施例4と同様である。【0033】本実施例においても、レーザ共振器を構成する端面6,7には金属又は誘電体多層膜よりなる高反射膜を被覆し、分岐導波路5の出射端面8には反射防止膜を被覆することができるので、分岐導波路5からの取り出し光の増大とレーザの低閾値とを同時に実現することができる。」と記載されている。 この補正前の実施例を比較した上記記載から、2つの活性層1,1’を設けた導波路付き半導体レーザは、レーザの閾値低減を行うことが理解できる。 また、同記載から、レーザ共振器を構成する端面に高反射膜を設けることができるような構造の導波路付き半導体レーザは、レーザの閾値低減を行うことが理解できる。 そして、補正後の本件発明は、 「【請求項1】半導体基板上に作成された導波路と、該導波路に結合され、前記導波路よりもバンドギャップ波長の長い活性層とを有する導波路付半導体レーザにおいて、前記導波路中に合分岐回路を挿入することにより、光出力のための一つの分岐導波路に分岐すると共に、レーザの共振器両端面を前記分岐導波路の端面とは対向する反対側の同一端面とすることを特徴とする導波路付半導体レーザ。 【請求項2】請求項1において、前記合分岐回路として非対称合分岐構造又は方向性結合器を用いることを特徴とする導波路付半導体レーザ。 【請求項3】請求項1又は2において、前記導波路、活性層の端面のうち、レーザ共振器を構成する端面には、金属又は誘導体多層膜からなる高反射膜が設けられていることを特徴とする導波路付半導体レーザ。 【請求項4】請求項1,2又は3において、前記分岐導波路の前記合分岐回路と結合している端面と異なる端面近傍は導波路端に近づくに従ってテーパ状に導波路幅が細くなることを特徴とする導波路付半導体レーザ。」であって、これは図6,7(補正後の実施例1及び2を説明する図面)に基づくものである。 とすれば、本件発明の実施例2を説明する図7には、2つの活性層1,1’を設けたものが記載されているとともに、請求項1に係る発明を具体的に限定した請求項3には、レーザ共振器を構成する端面には金属又は誘導体多層膜からなる高反射膜が設けられていることが記載されている。 してみれば、本件発明のものは、2つの活性層1,1’を設けることができ、レーザ共振器を構成する端面には金属又は誘導体多層膜からなる高反射膜が設けることができるものであるから、これによる効果は図2,5と共通することが明らかであるので、補正前の実施例1,2あるいは実施例4,5における特性比較が、補正後の実施例1,2についても当てはまることになり、これに関する効果を、補正後の本件発明に付随する効果(請求項3に係る発明の効果)として「【0042】【発明の効果】以上、実施例に基づいて具体的に説明したように、本発明によれば・・・分岐導波路から大きな光出力を取り出すことができる。また、同時にレーザの低閾値化ができる。さらに、一度に共振器の両端面に高反射膜を設けることができる。」と補正することは、明細書の要旨を変更するものではない。 なお、上記補正中「一度に共振器の両端面に高反射膜を設けることができる。」との点は、当初明細書の「【0037】〔実施例7〕本発明の実施例7を図7に示す。本実施例は、図6に示す実施例6において、・・・一つの端面7で構成されるので、一度に共振器の両端面に高反射膜を設けることができるという利点がある。」に記載がある。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記手続補正は特許法第53条第1項の規定により却下すべきものとした原決定は妥当でない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-09-26 |
出願番号 | 特願平5-77792 |
審決分類 |
P
1
7・
2-
W
(H01S)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 門田 かづよ |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 町田 光信 |
発明の名称 | 導波路付半導体レーザ |
代理人 | 澤井 敬史 |