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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1066761
審判番号 不服2000-14143  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-06 
確定日 2002-10-17 
事件の表示 平成9年特許願第231100号「多層プリント配線板の製法」[平成11年3月16日出願公開(特開平11-74647号)]拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月27日の出願であって、本願の発明は、平成12年9月27日付の手続補正は却下されたから、平成12年2月17日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲における、請求項1及び2に記載された事項によってそれぞれ特定される次のとおりのものと認める。
【請求項1】 下面側に下側導体層が設けられた絶縁層にホールを形成するホール形成工程と、
無電解めっき又は電解めっきにより前記ホールのうち前記下側導体層から前記ホールの開口手前まで導電性充填層を形成する充填層形成工程と、
前記絶縁層の上面側にて前記導電性充填層と接続するように上側導体層を形成する上側導体層形成工程と
を含み、
前記充填層形成工程において、前記ホールの開口から前記導電性充填層の上面までの深さ(T)に対するホール径(D)の比D/Tが2以上となるように前記導電性充填層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製法。
【請求項2】 請求項1記載の多層プリント配線板の製法であって、
前記充填層形成工程では、無電解めっき又は電解めっきの代わりに導体ペーストを1回印刷して前記導電性充填層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製法。

2.引用刊行物とその記載事項の概要
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-22693号公報(以下、「引用例」という)には、次のイ〜ニのとおりの記載がある。
イ 「従来の多層配線板は、第4図に示すように、基板1上に、上下の導体層2、3およびこれらの間に存する絶縁層4からなる多層配線層5を形成した構造になっており、上下の導体層2、3間の電気的接続は、上部導体層2を絶縁層4に形成されたビアホール6の壁面に沿って形成して、上部導体層2を下部導体層3に直接接触させることにより行われている。
ところが、上部のような構造の多層配線基板においては、絶縁層4の上面とビアホールの壁面とのなすコーナ部7に対応する上部導体層2部分の膜厚が薄くなりがちで、そこが切断していわゆる段切れが発生しやすいという問題がある。」(第1頁右下欄第18行〜第2頁左上欄第12行)
ロ 「まず、第2図(A)に示すように、基板11上に下部導体層13を形成し、さらに下部導体層13の所望の部分に対応する部分にビアホール14aを有する絶縁層を形成する。」(第2頁右下欄第4〜7行)
ハ 「次に、第2図(B)に示すように、絶縁層14のビアホール14aにメッキ金属を充填して導電体層15を形成する。」「無電解メッキ法の場合はメッキ電極が必要ないため、電解メッキと比べメッキ時の作業性が良い。他方、電解メッキ法の場合は、メッキできる金属の種類が無電解メッキ法に比べて多くなるが、メッキする部分を電極として使用するための接続が必要となる。」(第2頁右下欄第8〜12行、第3頁左上欄第1〜6行)
ニ 「次に、第2図(C)に示すように、絶縁層14上に導電体層15と接続するようにして上部導体層16を形成する。ビアホール14aにメッキ金属を充填しているので、導電層15の表面がへこむことはほとんどない。したがって、上部導体層16の段切れを防止することができる。」(第3頁左上欄第17行〜同右上欄第2行)

3.発明の対比
本願請求項1の発明(以下、「本願発明」という)と、第1引用例の記載事項とを対比する。
引用例(上記ロ)記載の「下部導体層」及び「ビアホール」は、それぞれ本願発明における「下側導体層」及び「ホール」に相当しており、したがって、上記ロでいう「基板11上に下部導体層13を形成し、さらに下部導体層13の所望の部分に対応する部分にビアホール14aを有する絶縁層を形成する」工程は、本願発明における「下面側に下側導体層が設けられた絶縁層にホールを形成するホール形成工程」に相当するものといえる。
そして、引用例(上記ハ)の、「絶縁層14のビアホール14aにメッキ金属を充填して導電体層15を形成する」旨の記載は、その記載の後に、無電解メッキ法及び電解メッキ法についての言及もなされているところから、「無電解めっき又は電解めっきにより前記ホールのうち」に「下側導体層から導電性充填層を形成する充填層形成工程」を意味しており、したがって、引用例記載の「導電体層」は本願発明の「導電性充填層」に相当する。
更に、引用例(上記ニ)記載の「上部導体層」は、本願発明でいう「上側導体層」に相当するもので、上記ニの「絶縁層14上に導電体層15と接続するようにして上部導体層16を形成する」工程は、本願発明における「前記絶縁層の上面側にて前記導電性充填層と接続するように上側導体層を形成する上側導体層形成工程」に相当するといえる。
したがって、本願発明と第1引用例記載の発明との一致点と相違点は次のとおりである。
【一致点】「下面側に下側導体層が設けられた絶縁層にホールを形成するホール形成工程と、
無電解めっき又は電解めっきにより前記ホールのうち前記下側導体層から導電性充填層を形成する充填層形成工程と、
前記絶縁層の上面側にて前記導電性充填層と接続するように上側導体層を形成する上側導体層形成工程と
を含む、
多層プリント配線板の製法」である点。
【相違点】充填層形成工程に関して、本願発明では、充填層の形成を「ホールの開口手前まで」にとどめ「前記ホールの開口から前記導電性充填層の上面までの深さ(T)に対するホール径(D)の比D/Tが2以上」となるようにするのに対し、第1引用例にはそのような言及がない点。

4.相違点の検討
引用例には、ビアホール(ホール)内において、メッキ金属による充填層の形成をどの程度の高さまで行うのかについて、文言上の明確な言及はなされておらず、第1〜3図には、絶縁層とほぼ同じ高さと認められる状態が示されている。上記の図示に加えて、引用例(上記ニ)では「ビアホール14aにメッキ金属を充填しているので、導電層15の表面がへこむことはほとんどない。したがって、上部導体層16の段切れを防止することができる」という記載もある。
したがって、引用例には、メッキ金属による充填を「ホールの開口手前まで」にとどめることを、少なくとも直接的に示唆する記載があるとはいえない。
しかし、引用例の上記イで指摘された、第4図に示される、いわゆる「段切れ」の現象は、必ずしもビアホール内の充填層を「ホールの開口」と同じ高さにまでしなくても、防止、あるいは緩和できることは明らかであるし、上記の「導電層15の表面がへこむことはほとんどない。・・・」旨の記載も、導電層表面のわずかなへこみさえも絶対的に回避すべきことを示唆したものと解するのは合理的ではない。
しかも、本願明細書中で、「バイアホールを完全に充填」する場合の問題点として指摘されている、「めっき時間が長くなり生産性がよくない」こと(【0007】参照)は、当業者であれば、当然知悉すべき自明の事項であるし、長時間のメッキ液浸漬による絶縁層の浸食を回避すべきことも、特開平8-151561号公報、特開平8-18242号公報(従来技術に関する記載)等に示されるように周知の課題である。
更に、導電性充填層の上面までの深さ(T)に対するホール径(D)の比(D/T)についての「2以上」という数値限定も、臨界的な意味をもつものではなく、常識的なものにとどまる。(ホール径(D)を一定と仮定すれば、比(D/T)が大きく(深さ(T)が小さく)なるほどメッキ厚は増加してメッキ時間が長くなるし、上記の比を小さく(深さ(T)を大きく)するとメッキ時間は短くて済むが、「段切れ」の恐れは高まる。このような意味を持つ上記「比」の数値範囲をどの程度にするかは、当業者が各種の生産条件を勘案して、適宜設定すべき設計事項である。)
したがって、上記の相違点で指摘した本願発明の構成は、格別のものとはいえない。

5.本願請求項2の発明について
ビアホール内の導電性充填層の形成を、導体ペーストの印刷によって行うことは、原査定の理由で引用された特公昭61-55796号公報にも開示があるように周知の手法であるし、また、印刷の回数を1回とすることも常識的なことである。

6.むすび
以上のとおりであるから、原査定が認定するとおり、本願の各請求項に係るいずれの発明についても、特許法第29条第2項の規定によって、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-13 
結審通知日 2002-08-20 
審決日 2002-09-03 
出願番号 特願平9-231100
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 藤井 昇
ぬで島 慎二
発明の名称 多層プリント配線板の製法  
代理人 田中 敏博  
代理人 足立 勉  

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