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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1066842
審判番号 不服2001-4764  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-29 
確定日 2002-11-12 
事件の表示 平成 9年特許願第266341号「有害物質含有汚染水の処理方法及び装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成11年 4月20日出願公開、特開平11-104618、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年9月30日に特許出願(特願平9-266341号)したものであって、その請求項1ないし5に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本件発明5」という)は、平成11年12月16日付手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 有害物質を含有する汚染水にオゾンを添加、混合した後、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着するSiO2 /Al2 O3 比70以上の高シリカペンタシルゼオライト、SiO2 /Al2 O3 比20以上の脱アルミニウムフォージャサイト、 SiO2 /Al2 O3 比20以上のメソポーラスシリケート又はこれらのうちの2種以上の混合物である高シリカ吸着剤を充填した吸着剤層を流過させることによって、汚染水中の有害物質とオゾンを前記高シリカ吸着剤に共吸着させ、前記有害物質をオゾンの作用により無害化することを特徴とする有害物質含有汚染水の処理方法。
【請求項2】 前記吸着剤層において有害物質を無害化したあとの処理水をオゾン分解剤と接触させて残留するオゾンを分解し、後流へのオゾンのリークを防止することを特徴とする請求項1に記載の有害物質含有汚染水の処理方法。
【請求項3】 オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着するSiO2 /Al2 O3 比70以上の高シリカペンタシルゼオライト、SiO2 /Al2 O3 比20以上の脱アルミニウムフォージャサイト、SiO2 /Al2 O3 比20以上のメソポーラスシリケート又はこれらのうちの2種以上の混合物である高シリカ吸着剤の吸着剤層を設けた吸着剤充填塔と、該吸着剤充填塔に有害物質を含有する汚染水を供給する供給管と、該供給管に接続され、汚染水中にオゾンを添加するオゾン発生器と、前記吸着剤充填塔から処理済みの処理水を排出する排出管とを備えてなることを特徴とする有害物質含有汚染水の処理装置。
【請求項4】 前記吸着剤充填塔の後流側に、リークするオゾンを分解するオゾン分解剤層が設けられてなることを特徴とする請求項3に記載の有害物質含有汚染水の処理装置。
【請求項5】 前記吸着剤充填塔のオゾン注入点の前流側及び/又は後流側に、浮遊物を除去するためのろ過材層が設けられてなることを特徴とする請求項3又は4に記載の有害物質含有汚染水の処理装置。」

2.原査定の理由
本願を拒絶すべきものとした原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項に係る発明は、その出願前日本国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない というものである。

3.引用刊行物記載の発明
(1)引用刊行物1(特公平6-98357号公報)には以下の記載がある。
ア-1.「汚濁水中の窒素成分を除去する処理法において、汚濁水を中性領域のまま、アンモニア態窒素(NH4+-N)を吸着剤による吸着作用で濃縮し、濃縮したアンモニア態窒素(NH4+-N)をオゾンの酸化作用で硝酸イオン(NO3-)とする工程と、前記工程での硝酸イオン(NO3-)を嫌気的バクテリアの還元作用で窒素ガスにして除去する工程とを含むことを特徴とする水処理方法」(なお、原文中の「アンモニア熊窒素」は「アンモニア態窒素」の誤記と認める)(特許請求の範囲第1項)
ア-2.「貯留槽の汚濁水を循環することにより、ゼオライトにいったん希薄なアンモニウムイオン(NH4+)を吸着、濃縮させて、そこにオゾンを接触させることによって、中性では酸化できなかったアンモニウムイオン(NH4+)が、短時間(60分以内)に、硝酸イオン(NO3-)にまで変化するということを見出したものである。」(第4頁右欄31〜37行)
ア-3.第6頁第2図には、本発明の水処理の説明図が図示されている。
(2)引用刊行物2(特開平4-313320号公報)には以下の記載がある。
イ-1.「オゾンと触媒との組合せによって、悪臭成分を吸着捕集し、分解除去する装置において、前記脱臭装置はオゾンを分解しにくくかつ悪臭成分を吸着する疎水性ゼオライトの吸着層と、余分なオゾンを分解する触媒層とを含んで構成されていることを特徴とする脱臭装置。」(特許請求の範囲【請求項1】)
イ-2.「極性物質に対する強い吸着力は、骨格中のアルミ原子数に対応するカチオンの静電力に依存するので、結晶中のAl2 O3 を減少し、SiO2 /Al2 O3 を大きくすれば撥水性が増大し、水分の吸着量を減少することができる。」(第2頁2欄42〜46行)
イ-3.「水の吸着量はSiO2 /Al2 O3 が20前後から低下し、80以上ではほとんど水の吸着をしなくなる。一方、極性臭のアンモニア、アミン、メルカプタンの吸着量はSiO2 /Al2 O3 が20〜80の範囲では大きく、特に40〜60の範囲が好ましい。」(第2頁2欄47行〜3頁3欄2行)
イ-4.「この疎水性ゼオライトは吸着剤として悪臭成分を多く吸着捕集すると同時に、オゾンの分解には大きい影響を与えないという性質を持っている。」(第3頁3欄3〜5行)
イ-5.「本発明の触媒層(図1において参照符号2で示す)で使用される余分なオゾンを分解する触媒としては通常のオゾン分解触媒が用いられる。」(第3頁3欄9〜11行)
(3)引用刊行物3(特開平8-24878号公報)には以下の記載がある。
ウ-1.「作用部9にオゾンを吸着させたシリカゲル11を用いたが、必ずしもシリカゲルを用いる必要はなく、例えばゼオライトなどオゾンを吸着しかつ容易にオゾンを放出しない多孔質体であればよく」(第5頁10欄1〜4行)
(4)引用刊行物4(特開昭64-4220号公報)には以下の記載がある。
エ-1.「一般式(I):(M2/n O)x ・(Al2 O3 )・(SiO2 )y ・(H2 O)z ・・・(I)(式中、Mは陽イオン、nはMのイオン価、xは0〜2、y≧20、zは0又は正数を示す)で表される結晶性ゼオライトから成るオゾンの吸着・分解剤。」(特許請求の範囲第1項)

4.本願発明と引用刊行物に記載される発明との対比・判断
4-1.本願発明1について
記載ア-1、ア-2によれば、引用刊行物1には、アンモニア態窒素(NH4+-N)をゼオライトによる吸着作用で濃縮し、濃縮したアンモニア態窒素(NH4+-N)にオゾンを接触させ酸化する汚濁水の無害化方法が記載されている。
そして、引用刊行物1における「アンモニア態窒素(NH4+-N)」は有害物質の一種であるから、該物質を含有する汚濁水は汚染水といえ、記載ア-3の第2図によれば、オゾン発生機からのオゾンは吸着剤層の前段で汚濁水の管路に添加されているのであるから、オゾンと汚濁水は吸着工程の前段で混合されていることは明らかである。
したがって、引用刊行物1に記載された発明を本願発明1の記載に則して表現すると「有害物質を含有する汚染水にオゾンを添加、混合した後、有害物質を吸着する吸着剤を充填した吸着剤層を流過させることによって、汚染水中の有害物質を前記吸着剤に吸着させ、前記有害物質をオゾンの作用により無害化すること有害物質含有汚染水の処理方法。」となる。
本願発明1と引用刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は上記の構成で一致し、以下の点で異なる。
相違点:吸着剤が、本願発明1では、SiO2 /Al2 O3 比70以上の高シリカペンタシルゼオライト、SiO2 /Al2 O3 比20以上の脱アルミニウムフォージャサイト、 SiO2 /Al2 O3 比20以上のメソポーラスシリケート又はこれらのうちの2種以上の混合物である高シリカ吸着剤であり、有害物質とオゾンを共吸着するのに対し、引用刊行物1では、ゼオライトとしか記載されておらず、また、該ゼオライトにより有害物質の一種であるアンモニア態窒素(NH4+-N)を吸着することについては記載されているものの、オゾンを吸着することについては記載がない点
以下、上記相違点につき検討する。
記載イ-1ないしイ-4によれば、引用刊行物2には、疎水性ゼオライトのSiO2 /Al2 O3 比が大きいほど、水の吸着量は減少し、極性成分の吸着量は大きく、オゾンの分解には大きい影響は与えないことが記載されているが、いずれも、気体についての記述である。
また、記載ウ-1,記載エ-1によれば、引用刊行物3,4には、それぞれゼオライトがオゾンを吸着すること、高シリカゼオライトによりオゾンを吸着・分解することが記載されているのみである。
一方、引用刊行物1記載の方法は、記載ア-2,ア-3によれば、汚濁水を循環してゼオライト層を流過させ、汚濁水中の有害物質をゼオライトに吸着、濃縮してオゾンにより酸化するものであり、オゾンも吸着剤に吸着させて有害物質と酸化反応させることを意図していないことは明らかである。
してみれば、引用刊行物2の気体吸着における知見、引用刊行物3,4のゼオライトのオゾン吸着性に関する一般的事項が、本特許出願前に知られていたとしても、これらの記載に基づいて、引用刊行物1記載の方法におけるゼオライトとして、本願発明1で限定する上記特定のゼオライトに置き換え、有害物質とオゾンを共吸着させることにより有害物質を無害化することを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
そして、本願発明1は、上記の構成により、オゾンの作用による無害化を高効率で進行させることができるという、明細書記載の作用効果を奏するものである。

4-2.本願発明2について
また、本願発明2は、本願発明1を引用する発明であるから、本願発明1について検討したのと同じ理由で、各引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

4-3.本願発明3について
先に検討したように、引用刊行物1における「アンモニア態窒素(NH4+-N)」は有害物質の一種であり、汚濁水は汚染水といえるから、記載ア-3によれば、引用刊行物1には、「吸着剤の吸着剤層を設けた吸着剤充填塔と、該吸着剤充填塔に有害物質を含有する汚染水を供給する供給管と、該供給管に接続され、汚染水中にオゾンを添加するオゾン発生器と、前記吸着剤充填塔から処理済みの処理水を排出する排出管とを備えた有害物質含有汚染水の処理装置」が記載されているといえる。
本願発明3と引用刊行物1記載の装置とを対比すると両者は上記の構成で一致し、相違点は以下のとおりである。
相違点:吸着剤が、本願発明1では、SiO2 /Al2 O3 比70以上の高シリカペンタシルゼオライト、SiO2 /Al2 O3 比20以上の脱アルミニウムフォージャサイト、 SiO2 /Al2 O3 比20以上のメソポーラスシリケート又はこれらのうちの2種以上の混合物である高シリカ吸着剤であり、有害物質とオゾンを吸着するのに対し、引用刊行物1では、ゼオライトとしか記載されておらず、また、該ゼオライトにより有害物質の一種であるアンモニア態窒素(NH4+-N)を吸着することについては記載されているものの、オゾンを吸着することについては記載がない点
上記の相違点は、本願発明1との相違点と実質的に同じであり、本願発明1で検討したのと同じ理由で、本願発明3は各引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

4-4.本願発明4、5について
本願発明4,5は、本願発明3を引用する発明であるから、本願発明3について検討したのと同じ理由で、各引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によって本願発明を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-10-29 
出願番号 特願平9-266341
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 山田 充
米田 健志
発明の名称 有害物質含有汚染水の処理方法及び装置  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
代理人 安西 篤夫  

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