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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1066920
審判番号 不服2001-925  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-22 
確定日 2002-10-24 
事件の表示 平成 9年特許願第127224号「建築用化粧板、化粧床材、及び建築用化粧板の製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年12月 2日出願公開、特開平10-317653]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成9年5月16日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成12年8月24日受付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「基材上に木質の化粧単板が貼着され、その化粧単板表面が、互いに直交し、かつ、前記基材にまで達する複数本の溝により区画され、表面に平面形状を長方形とする複数個の区画面がその長手方向を同じ方向として並設され、前記化粧単板の繊維方向が区画面の長手方向に一致してなる建築用化粧板において、前記区画面の長手方向に沿う第1の溝が、底部が直線状に連続し、両側内面が溝方向に直交する方向の断面形状において突出する曲面となっており、前記区画面の短手方向に沿う第2の溝の、溝方向に直交する方向の断面形状が、V字型となっており、前記第2の溝の幅を前記第1の溝に比して小さく形成した、ことを特徴とする建築用化粧板。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、特開平8-28012号公報(以下、「引用例1」という。)には、特許請求の範囲「【請求項1】基板上に化粧単板が貼着され、その化粧単板表面が互いに直交する複数本の溝により区画されて平面形状を長方形とする複数個の区画面がその長手方向を同じ方向として配置されてなる建築用化粧板において、前記化粧単板の繊維方向を前記区画面の長手方向と同じとするとともに、それぞれの溝内面を外方に突出する曲面とし、かつ、区画面の長手方向に直交する方向の横溝の内面を、長手方向の縦溝の内面に比して、より緩やかに傾斜する構成としたことを特徴とする建築用化粧板。」、段落【0002】〜【0005】「【従来の技術】一般住宅、マンション等における化粧床板として、表面の化粧単板に互いに直交する方向に縦溝と横溝とが形成されたタイプのものがある。・・・このような化粧床板を用いた場合、上記の溝それぞれは断面形状がV型であるので、どうしても立体感の豊かな柔らか味のあるフロアを形成できないとともに、溝上縁の角の存在により歩行感が悪いという問題点があった。また、この種の木質フロアでは、横溝部分が下記の理由により色濃く露呈して見栄えが悪いという問題点があった。すなわち、通常は化粧単板の繊維方向が縦溝に沿う方向とされるので、化粧単板の横溝面に導管口が位置して目立つためであり、さらに、その導管口に吸い込まれた塗料が目立つ結果による。本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、デザイン性、歩行性に優れる化粧床板として好適な建築用化粧板を提供することを目的とする。」、【0010】「化粧単板の繊維方向を区画面の長手方向と同じとしているので、化粧単板の横溝の溝内面に導管口が露呈することとなるが、横溝は縦溝に比してその曲面が緩やかに傾斜しているので、その溝内面の単位面積当たりの導管口の露呈数が少なく、横溝の内面が色濃くならない建築用化粧板が得られる。」及び図1の記載を参照すると、「基板上に木質の化粧単板が貼着され、その化粧単板表面が互いに直交する複数本の溝により区画されて平面形状を長方形とする複数個の区画面がその長手方向を同じ方向として並設され、前記化粧単板の繊維方向が区画面の長手方向に一致してなる建築用化粧板において、前記区画面の長手方向に沿う縦溝が、底部が直線状に連続し、溝内面が外方に突出する曲面となっており、前記区画面の短手方向に沿う横溝も溝内面が外方に突出する曲面で、縦溝の内面に比してより緩やかに傾斜する構成とした建築用化粧板」が記載されていると認められる。
同、実願平4-92849号(実開平6-54833号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)には、段落【0007】に「化粧単板3に、その長手方向に所定間隔で短手方向に渡る装飾溝8が形成され、また、化粧単板3の長手縁をなぞるように装飾溝9が形成されている。装飾溝8、装飾溝9の断面形状は、一般的にはV字状である・・・装飾溝8及び装飾溝9は、基板2にまで至る深さのもので」と記載されている。

3.対比・判断
本願発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「基板」、「縦溝」、「溝内面が外方に突出する曲面」、「横溝」は、それぞれ、本願発明1の「基材」、「第1の溝」、「両側内面が溝方向に直交する方向の断面形状において突出する曲面」、「第2の溝」に相当するから、両者は、基材上に木質の化粧単板が貼着され、その化粧単板表面が、互いに直交する複数本の溝により区画され、表面に平面形状を長方形とする複数個の区画面がその長手方向を同じ方向として並設され、前記化粧単板の繊維方向が区画面の長手方向に一致してなる建築用化粧板において、前記区画面の長手方向に沿う第1の溝が、底部が直線状に連続し、両側内面が溝方向に直交する方向の断面形状において突出する曲面となっており、前記区画面の短手方向に沿う第2の溝が形成されている建築用化粧板の点で一致し、下記の点で相違している。
a.本願発明1では、溝が基材にまで達するのに対し、引用例1記載の発明では、溝の深さは明記されていない点。
b.第2の溝を、本願発明1では、溝方向に直交する方向の断面形状が、V字型となっており、溝の幅を第1の溝に比して小さく形成したのに対し、引用例1記載の発明では、溝内面が外方に突出する曲面で、縦溝の内面に比してより緩やかに傾斜する構成とした点。
しかしながら、基材にまで達する溝を設けることは、引用例2にも記載されているが、周知技術にすぎず、引用例1記載の発明において、相違点aにおける本願発明1に係る構成とすることは、設計的事項にすぎない。
また、上記相違点bについて検討すると、引用例2にも記載されているが、溝方向に直交する方向の断面形状が、V字型の溝も周知技術にすぎず、かつ、第2の溝の幅を第1の溝に比して小さく形成することは、必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎない。なお、第2の溝の限定構成に関して、「化粧単板の繊維方向は区画面の長手方向と同じであり、したがって、横溝内面には化粧単板の導管孔が露呈するが、横溝は断面V字型でその幅が縦溝に比して狭くそれに伴い化粧単板端面の露呈幅も縦溝に比して小さいので、その導管孔はあまり目立つことがない。」(明細書段落【0008】)とあるが、溝の断面をV字型として溝幅を狭くすれば、溝内面に露呈する導管孔があまり目立たなくなることは、当然予測できる程度のことである。しかしながら、横溝(第2の溝)の幅を縦溝(第1の溝)に比して狭くしたからといって、上記作用効果を奏するとはいえない。
したがって、引用例1記載の発明に引用例2記載の周知技術を採用して、本願発明1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。
そして、本願発明1によってもたらされる効果も、引用例1に記載された発明及び引用例2記載の周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

4.むすび
以上のように、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び引用例2記載の周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-21 
結審通知日 2002-08-27 
審決日 2002-09-09 
出願番号 特願平9-127224
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎七字 ひろみ吉岡 麻由子  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 長島 和子
鈴木 憲子
発明の名称 建築用化粧板、化粧床材、及び建築用化粧板の製造方法  
代理人 岡田 和秀  

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