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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1066950
審判番号 不服2000-10053  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-05 
確定日 2002-10-10 
事件の表示 平成 2年特許願第 67769号「高周波沿面放電を用いたガス処理方法および装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年11月28日出願公開、特開平 3-267113]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年3月17日の出願であって、その請求項1乃至10に係る発明は、平成12年7月5日付手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下「本願発明1」乃至「本願発明10」という)。
「【請求項1】ガスの入り口とガスの出口を有するガス処理部を有し、誘電体層を介してその一方の表面にコロナ放電極を他方の表面に面状誘導電極を設けてなる所の少なくとも1個の高周波沿面放電素子を、そのコロナ放電極側の高周波沿面放電発生面が該ガス処理部内のガス通路に露出する如く配設し、該コロナ放電極と該面状誘導電極の両電極間に高周波高電圧を印加し、該コロナ放電極よりその周囲の該誘電体表面に接して高周波沿面放電を発生せしめるための高周波高圧電源を接続し、該ガス入り口より該ガス処理部内に導入した処理すべきガスを、そのガスの流れが該高周波沿面放電発生面に直接接するように通過せしめて放電化学処理した後に該ガス処理部出口より排出するガス処理装置において;該ガス処理部出口に接続して設けた活性炭を充填した乾式ガス吸着装置や触媒を充填する接触反応装置で、該ガス処理部における高周波沿面放電のプラズマ化学作用により、放電化学処理したガス中に含まれる反応生成物を吸着・分解して除去することを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】請求項1に記載のガス処理装置において、該高周波沿面放電素子の誘電体層が平板状または円筒状であり、その一方の表面上にコロナ放電極を他方の表面上に面状誘導電極を設けたことを特徴とするガス処理装置。
【請求項3】請求項1に記載のガス処理装置において、該ガス処理部が少なくとも1個の円筒状誘電体層で構成され、その外表面上に面状誘導電極を配設、その内表面上にコロナ放電極を配設してその内部をガス通路とし、これによって該ガス処理部が該高周波沿面放電素子を兼ねていることを特徴とするガス処理装置。
【請求項4】請求項3のガス処理装置において、該ガス処理部を構成する円筒状誘電体の内部に、これと同心的に円筒状筒体を配設し、該円筒状誘電体層と該円筒状筒体との間の空隙にガス通路を形成した事を特徴とするガス処理装置。
【請求項5】請求項1から4までいずれか1項に記載のガス処理装置において、該コロナ放電極が線状であり、該面状誘導電極の外側を覆って別の誘電体層を設け、これによって該面状誘導電極が実質的に一つの誘電体層の内面に埋設されている事を特徴とするガス処理装置。
【請求項6】請求項1から5までいずれか1項に記載のガス処理装置において、該高周波沿面放電素子の該面状誘導電極表面を冷却する手段として、水冷部と冷却水供給部よりなる水冷却装置または、空冷部と冷却用空気供給部よりなる空冷装置を設けたことを特徴とするガス処理装置。
【請求項7】請求項1から6までいずれか1項に記載のガス処理装置において、該高周波沿面放電素子の該コロナ放電極側表面を清掃するための清掃機構を設けたことを特徴とするガス処理装置。
【請求項8】請求項1記載のガス処理装置において、該ガス処理部の上流に処理すべき対象ガス成分の処理を促進する添加ガスを注入するための添加ガス注入部を設けた事を特徴とするガス処理装置。
【請求項9】請求項1記載のガス処理装置において、該ガス処理部の上流、内部、下流の少なくともいずれかに、処理すべき対象ガス成分の処理を促進する光を照射する為の光源を設けた事を特徴とするガス処理装置。
【請求項10】処理対象ガスの入り口と処理後のガスの出口を有するガス処理部を有し、これと別個に原料ガスの入り口と、活性ガスの出口を有する活性ガス発生部を有し、該活性ガス出口を該処理対象ガスの入り口に連通せしめ、該活性ガス発生部の内部に誘電体層を介してその一方の表面にコロナ放電極を他方の表面に面状誘導電極を設けてなる所の少なくとも1個の高周波沿面放電素子を、そのコロナ放電極側の高周波沿面放電発生面が該活性ガス発生部内のガス通路に露出する如く配設すると共に、該コロナ放電極と該面状誘導電極の両電極間に高周波高電圧を印加する為の高周波高圧電源を接続し、該コロナ放電極よりその周囲の誘電体層表面に接して高周波沿面放電を発生せしめ、該原料ガス入り口より該活性ガス発生部内に該原料ガスを導入して、該高周波沿面放電発生面に接して通過せしめる事により該高周波沿面放電のプラズマ化学作用によって該原料ガスを活性ガスに転化したうえ、該活性ガスを該活性ガス出口及び該処理対象ガス入り口を介してガス処理部上流側の処理対象ガス流中に供給してこれと混合、反応せしめて処理したうえ、該処理後のガス出口より排出するガス処理装置において;該ガス出口に接続する後処理装置として設けた活性炭を充填した乾式ガス吸着装置や触媒を充填した接触反応装置で、該ガス処理部で放電化学処理したガス中に含まれる反応生成物を吸着・分解して除去して外部に放出することを特徴とするガス処理装置。」
2.引用例
(1)これに対して、原審において平成11年10月25日付けで通知した拒絶の理由に引用した本件出願前に頒布された刊行物1「“高濃度オゾンによる医療用器具の殺菌”静電気学会誌,11[5],343-350頁」には、
(ア-1)「平面形セラミックオゾナイザ」(図4)及び、冷却フィン付きの「円筒形セラミックオゾナイザ」(図5)が、それぞれ図示されている。
(2)同じく刊行物2「“オゾンの生成とその効用”化学装置,7月号(1989)」,87-94頁」には、
(イ-1)「セラミックス円筒の中に、同軸のガラス円筒中子が設置され、原料ガスは、その間の間隙をスパイラル状に回転しながら通過する」(90頁左欄下から2行〜右欄1行)よう構成された沿面放電型セラミック発生器ユニットの断面が図示(図4)され、
(イ-2)「タングステン製電極がセラミックス焼結体として成形されていて、セラミックス保護外層の外側に直接水を流して水冷したり、フィンをまいて強制空冷にする」(90頁左欄下から9〜6行)と記載され、
(イ-3)更に、係るユニットを使用した例として、魚粕飼料乾燥空気の脱臭装置が図5に図示され、「オゾンと臭気ガスが十分に接触(最低5秒間)して酸化分解を促進させる。その後、未反応オゾン(人体に有害)を活性炭フィルタで分解解毒」(92頁左欄4〜7行)すると記載されている。
(3)同じく刊行物3「“新しいオゾン技術とバイオテクノロジー”電学誌,108[12],1173-1176頁」には、
(ウ-1)ガラス円筒中子を有する沿面放電型セラミックオゾナイザユニット(図2)が図示され、
(ウ-2)「外側のセラミック層(厚さ:1.5mm)は強度を与えるための保護層であり、その外側を水冷(図3)または空冷によって冷却する」(1174頁左欄下から6〜4行)と記載されている。
(4)同じく刊行物4「特開昭61-29358号公報」には、
(エ-1)「ケース1内に吸い込まれた外気とオゾン発生器5で作られたオゾンとは反応槽10内に導びかれ、ここで外気中に含まれた悪臭成分がオゾンによって分解され、未反応のオゾンはオゾン分解フィルター12で酸化除去された後、電動送風機13を通じて排気孔3,3より外部に吐出される。」(2頁右上欄14〜20行)と記載されている。
(5)同じく刊行物6「特開昭59-44797号公報」には、「物体の静電的処理装置」(発明の名称)が開示され、
(オ-1)「第38図は本発明によるイオン源としての電界装置を利用してボイラーや自動車エンジン等の燃焼排ガス中のSOXやNOXを酸化したり、あるいはオゾンを生成する装置」(17頁左下欄8〜11行)、
(オ-2)「本実施例では特に第34図の装置でファインセラミック誘電体板18の両面に長形の細線状コロナ放電極187を設けたもの195をガス通路196内に多数ガス流に並行に配設してあり、極短パルス高圧電源180より、極短パルス高電圧を端子178,179を介してそれぞれ電界装置195の細線状コロナ放電極と87と面状埋入誘導電極9との間に印加することによって、すべての電界装置195の両面に活性プラズマを形成している。」(17頁左下欄14〜右下欄3行)、
(オ-3)「SOXやNOX等の有害成分を含む燃焼排ガスを手前の入口から矢印197の方向に通路196内を通過せしめると、上記プラズマの放電化学的作用で、これらが湿式除去の容易なSO3,NO2に酸化される。また入口から僅かのアンモニアガスを添加するとこれらと結合して硫硝安複塩のエアロゾルを生じ、下流に電気集塵装置等を設けることによって容易にこれを捕集除去することができる。」(17頁右下欄3〜11行)と記載され、
(オ-4)第34図の電界装置の説明として「端子178,179の間に上記極短パルス高電圧を印加すると、・・・細線状コロナ放電極197からその左右方向に誘電体表面2に沿う沿面コロナ放電を生じ、上記の活性プラズマが形成される。」(17頁右上欄5〜11行)、
(オ-5)「ガスとして乾燥空気ないし酸素を導入するときは、オゾンを生成することができる」(17頁右下欄14〜16行)と記載されている。
(6)同じく刊行物7「実願昭62-19830号(実開平01-202627号)のマイクロフィルム」には、
(カ-1)「板状誘電体の両面に誘導電極と放電電極とを対向配設してなる放電板を有し、この放電板の両電極に高周波高電圧を印加して無声放電を生起せしめる放電室」(実用新案登録請求の範囲)を備えたスチレン蒸気含有空気の浄化装置が記載され、
(カ-2)「放電板の放電室外へのはみ出し部に対応する箇所には放電板の回転動作により放電板を自動的に清掃する清掃手段を配設した」(4頁14〜16行)と記載されている。
(7)同じく刊行物8「特開昭51-10173号公報」には、
(キ-1)「ハロゲン化炭化水素を含有する排ガスを放電帯域中に通し、排ガス中のハロゲン化炭化水素を分解、重合し、次いでこのようにして処理した分解、重合生成物を含有する排ガスを吸収剤または吸着剤と接触させて該排ガスから分解、重合生成物を吸収または吸着除去することを特徴とする排ガス中のハロゲン化炭化水素の除去法」(特許請求の範囲)が記載され、
(キ-2)「放電方法としては例えば・・・交流コロナ・・・等を用いることができる」(2頁右上欄16〜18行)、
(キ-3)「吸着剤としては・・・活性炭・・・等の固体吸着剤を用いることができる」(2頁右下欄7〜11行)、
(キ-4)「吸着は吸着剤を充填した塔中を前記酸化後排ガスを通過をせしめる方法で実施することができる」(3頁左上欄2〜4行)と記載されている。
(8)同じく刊行物10「特開昭50-35964号公報」には、
(ク-1)「紫外線矢印l、触媒効果(触媒磁場)矢印m、ノイズ放電矢印n、を風胴(4)内に照射され、その基本波及び高周波の交差、及び交差による中間周波の合成による混合照射線となり、風胴内を通過する臭気g,g’に混合照射線エネルギーを照射する」(3頁左上欄5〜10行)と記載されている。
(9)同じく刊行物11「特開昭52-58066号公報」には、
(ケ-1)「5は前記前処理反応室1の前方に連設され、該反応室1に導入される前の排ガス中に空気イオンを供給するイオン供給室で、その内部には次に述べるイオン発生室6の開口部7が挿入され、両室5,6は連通している。イオン発生室6の内面は筒状内周面の電極6aをなし、その内部には1本又は複数本の線状(又は棒状)の電極6bが挿入され、両電極間における放電現象によりイオンを生じるものである。8はイオン発生室内に新鮮なエアを送るファン、9は前記電極間に放電電圧を印加するための交流又は直流電源10は該電源9と電極6a、6bとの間に介設されている高電圧発生装置である」(2頁左上欄15行〜右上欄8行)、
(ケ-2)「排ガスはイオン供給室5から清浄筒11を通過する過程で前述したスプレイによる中和反応及びそこでの洗浄作用のほか次に述べる如き多様の化学反応及び物理的な作用を経て浄化される」(2頁左下欄3〜6行)と記載されている。
3.本願発明と刊行物記載の発明との対比、判断
(1)本願発明1について
記載(オ-2)、(オ-3)、(オ-4)からみて、刊行物6に記載される「イオン源としての電界装置」は、線状放電極と面状誘導電極の間に極短パルス高電圧を印加させることにより、放電極から沿面コロナ放電を生じさせ、活性プラズマを形成し、該活性プラズマにより排ガス中のSOXやNOXを酸化するものであるから、本願発明1の「高周波沿面放電のプラズマ化学作用により、放電化学処理」するガス処理装置に相当し、刊行物6の図38及び記載(オ-3)によれば、処理すべき燃焼排ガスは手前の入口から矢印197の方向に通路196内を通過するのであるから、該「通路196内」が本願発明1における「ガスの入口と出口を有するガス処理部」に相当することは明らかである。
本願発明1と刊行物6記載の発明とを対比すると、両者は、「ガスの入り口とガスの出口を有するガス処理部を有し、誘電体層を介してその一方の表面にコロナ放電極を他方に面状誘導電極を設けてなる所の少なくとも1個の高周波沿面放電素子を、そのコロナ放電極側の高周波沿面放電発生面が該ガス処理部内のガス通路に露出する如く配設し、該コロナ放電極と該面状誘導電極の両電極間に高周波高電圧を印加し、該コロナ放電極よりその周囲の該誘電体表面に接して高周波沿面放電を発生せしめるための高周波高圧電源を接続し、該ガス入り口より該ガス処理部内に導入した処理すべきガスを、そのガスの流れが該高周波沿面放電発生面に直接接するように通過せしめて放電化学処理した後に該ガス処理部出口より排出するガス処理装置」である点で一致し、以下の点(a)(b)で構成を異にする。
(a)本願発明1では、面状誘電電極を誘電体層の他方の表面に設けているのに対し、刊行物6記載の装置では、面状誘電電極9はセラミック誘電体板18中に埋入されている点、
(b)本願発明1では、「該ガス処理部出口に接続して設けた活性炭を充填した乾式ガス吸着装置や触媒を充填する接触反応装置で、該ガス処理部における高周波沿面放電のプラズマ化学作用により、放電化学処理したガス中に含まれる反応生成物を吸着・分解して除去」しているのに対し、刊行物6記載の装置では、記載(オ-3)「SOXやNOX等の有害成分を含む燃焼排ガスを・・・通路196内を通過せしめると、上記プラズマの放電化学的作用で、これらが湿式除去の容易なSO3,NO2に酸化される。・・・アンモニアガスを添加するとこれらと結合して硫硝安複塩のエアロゾルを生じ、下流に電気集塵装置等を設けることによって容易にこれを捕集除去することができる」に見られるように、ガス処理部の出口に、湿式処理装置や電気集塵装置を接続することが示唆されているものの、活性炭を充填した乾式ガス吸着装置や触媒を充填する接触反応装置を接続することについては記載がない点
以下、上記相違点についての検討する。
相違点(a)について:記載(オ-4)によれば、ガス中の有害成分にプラズマの放電化学的作用を生じせしめるのは、細線状コロナ放電極が設けられた誘電体表面であることを考えると、面状誘電電極を誘電体の表面に設けたことによる技術的意議は認められず、本願発明においても、請求項5で「面状誘導電極の外側を覆って別の誘電体層を設け、これによって該面状誘導電極が実質的に一つの誘電体層の内面に埋設されている」態様を本件発明1の一実施態様としていることをも勘案すると、面状誘電電極を誘電体の表面に設けるか埋設するかは、当業者がその実施に当たり適宜設計変更しうる程度のことにすぎないというべきである。
相違点(b)について:記載(キ-1)によれば「ハロゲン化炭化水素を含有する排ガスを放電帯域中に通し、排ガス中のハロゲン化炭化水素を分解、重合し、次いでこのようにして処理した分解、重合生成物を含有する排ガスを吸着剤と接触させて該排ガスから分解、重合生成物を吸収または吸着除去すること」ができるのであり、記載(キ-2)によれば「放電方法としては交流コロナを用いることができ」、記載(キ-3)によれば「吸着剤としては活性炭を用いることができる」のであるから、結局、刊行物8には、排ガス中のハロゲン化炭化水素が、交流コロナ放電で処理されると分解、重合し、吸収剤又は活性炭等の吸着剤と接触させることにより該分解、重合生成物が排ガス中から除去できることが記載されていることになる。してみれば、「交流コロナ放電装置」の一種である刊行物6記載の「電界装置」を、ハロゲン化炭化水素を含有する排ガスの処理の適用し、排ガス中のハロゲン化炭化水素を分解、重合させ、該分解、重合生成物を活性炭を充填した吸着装置で吸着除去するため、該電界装置に活性炭を充填した吸着装置を接続することは、刊行物8の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。
したがって、本願発明1は、刊行物6及び刊行物8の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用し、本願発明1における「該高周波沿面放電素子の誘電体層」を平板状または円筒状としたことを特徴とする発明と認められるが、誘電体層を平板状とすることは、刊行物6の図34,図38に記載されており、誘電体層を円筒状とすることも刊行物6の図35に記載されている。
したがって、本願発明2と刊行物6記載の発明とを対比すると、その一致点、相違点は本願発明1についてのものと同じであり、本願発明1で検討した理由により、本願発明2は刊行物6及び刊行物8記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本願発明3について
本願発明3は、本願発明1を引用し、本願発明1における「ガス処理部が少なくとも1個の円筒状誘電体層で構成され、その外表面上に面状誘導電極を配設、その内表面上にコロナ放電極を配設してその内部をガス通路とし、これによって該ガス処理部が該高周波沿面放電素子を兼ねている」ことを特徴とする発明と認められるが、誘電体層を円筒状としその内面にコロナ放電極を設けることは、刊行物6の図35に記載されており、この場合、ガス処理がコロナ放電極からその左右方向に誘電体表面に沿う沿面コロナ放電によって行われること記載(オ-4)を考えれば、コロナ放電極が配設された内部がガス通路となることは当業者にとって自明である。
したがって、本願発明3と刊行物6記載の発明とを対比すると、その一致点、相違点は本願発明1についてのものと同じであり、本願発明1で検討した理由により、本願発明3は刊行物6及び刊行物8記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本願発明4について
本願発明4は、本願発明3を引用し、本願発明3における「円筒状誘電体の内部に、これと同心的に円筒状筒体を配設し、該円筒状誘電体層と該円筒状筒体との間の空隙にガス通路を形成した」ことを特徴とする発明と認められるが、誘電体層を円筒状としその内面にコロナ放電極を設けることは、刊行物6の図35に記載されている。
本願発明4と刊行物6記載の発明とを対比すると、その一致点は本願発明1についてのものと同じであり、相違点は本願発明1についての(a)(b)の他、(c)本願発明4では、円筒状誘電体の内部に、これと同心的に円筒状筒体を配設しているのに対し、刊行物6記載の装置では、係る円筒状筒状体を配設することについての記載がない点でも相違する。
しかしながら、沿面放電を利用する円筒状誘電体の内部に、これと同心的に円筒状筒体を配設しそれらの間隙にガス通路を形成することは、刊行物2の図4、記載(イ-1),あるいは刊行物3の図2に記載されているのであるから、刊行物6記載の装置において、円筒状誘電体の内部に、これと同心的に円筒状筒体を配設しそれらの間隙にガス通路を形成することは、刊行物2あるいは刊行物3の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明4は、本願発明1で検討した理由に加え、上記の理由により、刊行物2あるいは刊行物3、並びに刊行物6及び刊行物8の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本願発明5について
本願発明5は、本願発明1から本願発明4までのいずれかを引用し、「コロナ放電極が線状であり、該面状誘導電極の外側を覆って別の誘電体層を設け、これによって該面状誘導電極が実質的に一つの誘電体層の内面に埋設されている」ことを特徴とする発明と認められるが、コロナ放電極が線状であり、該面状誘導電極の外側を覆って別の誘電体層を設け、これによって該面状誘導電極が実質的に一つの誘電体層の内面に埋設されていることは、刊行物6の図34や図38に記載されている。
したがって、本願発明5と刊行物6記載の発明とを対比すると、その一致点、相違点は本願発明1についてのものと同じであり、本願発明1乃至本願発明4で検討した理由により、本願発明5は刊行物2あるいは刊行物3、並びに刊行物6及び刊行物8記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本願発明6について
本願発明6は、本願発明1から本願発明5までのいずれかを引用し、「高周波沿面放電素子の該面状誘導電極表面を冷却する手段として、水冷部と冷却水供給部よりなる水冷却装置または、空冷部と冷却用空気供給部よりなる空冷装置を設けた」ことを特徴とする発明と認められる。
本願発明6と刊行物6記載の発明とを対比すると、その一致点は本願発明1についてのものと同じであり、相違点は本願発明1についての(a)(b)の他、(d)本願発明では、高周波沿面放電素子の該面状誘導電極表面を冷却する手段として、水冷部と冷却水供給部よりなる水冷却装置または、空冷部と冷却用空気供給部よりなる空冷装置を設けているのに対し、刊行物6記載の装置では、高周波沿面放電素子の該面状誘導電極表面を冷却する手段を設けることについての記載がない点でも相違する。
しかしながら、高周波沿面放電素子の該面状誘導電極表面に、水冷部と冷却水供給部よりなる水冷却装置または、空冷部と冷却用空気供給部よりなる空冷装置を設けることは、刊行物1の記載(ア-1)、刊行物2の記載(イ-2)、あるいは刊行物3の記載(ウ-2)に記載されているのであるから、刊行物6記載の装置において、高周波沿面放電素子の該面状誘導電極表面を冷却する手段として、水冷部と冷却水供給部よりなる水冷却装置または、空冷部と冷却用空気供給部よりなる空冷装置を設けることは、刊行物2あるいは刊行物3の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明6は、本願発明1乃至本願発明5で検討した理由に加え、上記の理由により、刊行物1、刊行物2あるいは刊行物3、並びに刊行物6及び刊行物8の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本願発明7について
本願発明7は、本願発明1から本願発明6までのいずれかを引用し、「高周波沿面放電素子の該コロナ放電極側表面を清掃するための清掃機構を設けた」ことを特徴とする発明と認められる。
本願発明7と刊行物6記載の発明とを対比すると、その一致点は本願発明1についてのものと同じであり、相違点は本願発明1についての(a)(b)の他、(e)本願発明7では、高周波沿面放電素子の該コロナ放電極側表面を清掃するための清掃機構を設けているのに対し、刊行物6記載の装置では、かかる清浄機構を設けることについて記載がない点でも相違する。
しかしながら、刊行物7の記載(カ-1)、(カ-2)によれば、誘電体の両面に誘導電極と放電電極とを対向配設し、これらの両電極に高周波高電圧を印加して無声放電を生起せしめる放電室を備えたエチレン蒸気含有空気の浄化装置において、放電性能を維持するため放電極側表面を清掃するための清掃機構を設けることが記載されている。ここで、「無声放電」とは「コロナ放電」のことをいうから、刊行物6記載の装置において、同様な目的でコロナ放電極側表面に清掃機構を設けることは、刊行物7の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明7は、本願発明1乃至本願発明6で検討した理由に加え、上記の理由により、刊行物1、刊行物2あるいは刊行物3、並びに刊行物6乃至刊行物8の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本願発明8について
本願発明8は、本願発明1を引用し、「ガス処理部の上流に処理すべき対象ガス成分の処理を促進する添加ガスを注入するための添加ガス注入部を設けた」ことを特徴とする発明と認められるが、刊行物6の記載(オ-3)に記載されるアンモニアガスは、酸化されたSO3,NO2と結合して硫硝安複塩のエアロゾルを生じさせ、下流に設けた電気集塵装置等によって容易に捕集除去できるようにするものであるから、「処理すべき対象ガス成分の処理を促進する添加ガス」に相当し、該アンモニアガスはガス処理部の入口から添加されるようになっているのであるから、添加ガス注入部は「ガス処理部の上流」に設けられているから、刊行物6には「ガス処理部の上流に処理すべき対象ガス成分の処理を促進する添加ガスを注入するための添加ガス注入部を設けた」ことも記載されていることになる。
したがって、本願発明8と刊行物6記載の発明とを対比すると、その一致点、相違点は本願発明1についてのものと同じであり、本願発明1で検討した理由により、本願発明8は刊行物6及び刊行物8記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)本願発明9について
本願発明9は、本願発明1を引用し、本願発明1における「ガス処理部の上流、内部、下流の少なくともいずれかに、処理すべき対象ガス成分の処理を促進する光を照射する為の光源を設けた」ことを特徴とする発明と認められる。
本願発明9と刊行物6記載の発明とを対比すると、その一致点は本願発明1についてのものと同じであり、相違点は本願発明1についての(a)(b)の他、(f)本願発明9では、ガス処理部の上流、内部、下流の少なくともいずれかに、処理すべき対象ガス成分の処理を促進する光を照射する為の光源を設けているのに対し、刊行物6記載の装置では、ガス処理部に、そのような光源を設けることについて記載がない点でも相違する。
しかしながら、刊行物10の記載(ク-1)によれば、臭気ガスの処理装置において、放電処理と紫外線照射を組み合わせることが記載されており、刊行物6記載の装置において、放電処理部に紫外線の光源を併設することは刊行物10の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明9は、本願発明1で検討した理由に加え、上記の理由により、刊行物10、並びに刊行物6及び刊行物8の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)本願発明10について
本願発明でいう活性ガスに「イオン化された酸素」が含まれることは、本願明細書「高周波沿面放電の強力なプラズマ化学作用により、その放電域に、・・・O2・・・等のイオン、更にはO3等、多量の化学的活性種が生成され」(第13頁11〜14行)という記載より明らかであるから、記載(ケ-1)からみて、刊行物11における「イオン供給室5」、「イオン発生室6」が、本願発明10における「ガス処理部」、「活性ガス発生部」にそれぞれ相当し、記載(ケ-2)からみて、刊行物11における「前処理反応室1」が本願発明10における「後処理装置」に相当する。
本願発明10と刊行物11記載の発明とを対比すると、両者は、「処理対象ガスの入り口と処理後のガスの出口を有するガス処理部を有し、これと別個に原料ガスの入り口と、活性ガスの出口を有する活性ガス発生部を有し、該活性ガス出口を該処理対象ガスの入り口に連通せしめ、該活性ガス発生部の内部に放電極と面状誘導電極を設け、放電極側放電発生部が該活性ガス発生部内のガス通路に露出する如く配設すると共に、該放電極と該面状誘導電極の両電極間に高電圧を印加する為の高圧電源を接続し、該原料ガス入り口より該活性ガス発生部内に該原料ガスを導入して、該放電発生部に接して通過せしめる事により該放電の化学作用によって該原料ガスを活性ガスに転化したうえ、該活性ガスを該活性ガス出口及び該処理対象ガス入り口を介してガス処理部上流側の処理対象ガス流中に供給してこれと混合、反応せしめて処理したうえ、該処理後のガス出口より排出するガス処理装置において;該ガス出口に接続する後処理装置として設けた装置で、該ガス処理部で放電化学処理したガス中に含まれる反応生成物を除去して外部に放出することを特徴とするガス処理装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(g)放電手段が、本願発明10では、「誘電体層を介してその一方の表面にコロナ放電極を他方の表面に面状誘導電極を設けてなる所の少なくとも1個の高周波沿面放電素子」を用い、「該コロナ放電極と該面状誘導電極の両電極間に高周波高電圧を印加する為の高周波高圧電源を接続し、該コロナ放電極よりその周囲の誘電体層表面に接して高周波沿面放電を発生せしめ」るものであるのに対し、刊行物11記載のものは、「筒状内周面の電極6aをなし、その内部には1本又は複数本の線状(又は棒状)の電極6bが挿入され、両電極間における放電現象によりイオンを生じるもの」であって、本願発明10のような沿面放電を発生させるものではない点
(h)後処理装置として設けた装置が、本願発明10では「活性炭を充填した乾式ガス吸着装置や触媒を充填した接触反応装置」であるのに対し、刊行物11記載の装置では湿式洗浄装置である点
相違点(g)について:プラズマなどのイオンを発生させる放電手段として、誘電体層を介してその一方の表面にコロナ放電極を他方の表面に面状誘導電極を設けてなる所の少なくとも1個の高周波沿面放電素子を用い、該コロナ放電極と該面状誘導電極の両電極間に高周波高電圧を印加する為の高周波高圧電源を接続し、該コロナ放電極よりその周囲の誘電体層表面に接して高周波沿面放電を発生せしめるものは、刊行物6に記載されていることは、(1)で検討したとおりであり、刊行物11に記載される放電発生手段に代え、刊行物6に記載されるような、公知の装置を適用することは、当業者にとって格別困難なことではない。
相違点(h)について:刊行物11の装置においても、排ガス中のNOはNO2に酸化されていることからみて、放電作用によりイオン状の酸素やオゾンが発生しているものと認められるが、係る有害ガスが未反応のまま排出されるのを防ぐため、後段に活性炭などの分解装置を設けることは、刊行物2の記載(イ-3)、刊行物4の記載(エ-1)に示されるように、オゾンなどによるガス処理技術における常套手段である。
したがって、本願発明10は、刊行物2,刊行物4,刊行物6及び刊行物11記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでるある。
なお、請求人は審判請求書において、本願発明1〜10は、「該ガス入り口より該ガス処理部内に導入した処理すべきガスを、そのガスの流れが該高周波沿面放電発生面に直接接するように通過せしめて放電化学処理した後に該ガス処理部出口より排出する」ガス処理装置において、即ち、特定のガス処理装置において、「該ガス処理部出口に接続して設けた活性炭を充填した乾式ガス吸着装置や触媒を充填する接触反応装置で、該ガス処理部における高周波沿面放電のプラズマ化学作用により、放電化学処理したガス中に含まれる反応生成物を吸着・分解して除去すること」をその構成に欠くことができない事項としており、このような構成にすることによって「極めて強力な分解・変性作用を有する各種ラジカル、化学的活性種、O3等を、高周波沿面放電の強力なプラズマ化学作用で有効且つ大量に生成のうえ作用させて処理する」という明細書記載の作用効果を得られる旨主張している。
しかしながら、本願明細書には、「本発明によるガス処理装置において、気体状の反応生成物が生成し、これを除去する必要が生じる事があるが、かかる場合には後処理部に各種の気体状反応生成物に適合した気体除去装置を用いることが望ましい。このような気体除去装置には、・・・乾式ガス吸収装置、・・・乾式ガス吸着装置、・・・接触反応装置、・・・湿式ガス吸収装置等々、適当な任意の装置を用いることができる」(公開公報第4頁右上得欄6〜17行)と記載され、ガス処理部出口に接続する気体除去装置はガス処理部において生成する反応生成物に適合したものを用いることが望ましいとしているのであって、 請求人が主張する上記作用効果は特定のガス処理装置に特定の気体除去装置を組み合わせたことによるものとは認められず、請求人の上記主張は採用できない。
4.むすび
したがって、本願発明1ないし10は、それぞれ刊行物1〜4,6〜8,10〜11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-10-25 
結審通知日 2001-10-30 
審決日 2001-11-12 
出願番号 特願平2-67769
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大黒 浩之中野 孝一  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 野田 直人
唐戸 光雄
発明の名称 高周波沿面放電を用いたガス処理方法および装置  
代理人 斎藤 秀守  
代理人 伊藤 文彦  
代理人 斎藤 侑  

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